放射線量監視システムの入札で文部科学省は実物を見ずに書類だけで審査していた
フクシマ事故後の放射性セシウムなどの汚染は、福島第一原発周辺だけではなく、日本全体に広がっていることがわかってきた。
首都圏でも何か所か、ホットスポットと呼ばれる高濃度汚染地点が発見されており、食品汚染も含めて不安が消えることはない。
放射性物質管理を担当する文部科学省では、空間放射線量をリアルタイムで監視しようということで、補正予算に放射線量監視システムの導入費用を計上し、入札を行った。
その入札の結果、5月に福島県飯館村に計測器を無償提供した株式会社アルファ通信が、第一次補正予算の600台分を落札した(公式ブログの記事を参照)。
alphatele-marutoku.blogspot.com/2011/08/blog-post.html
【…文部科学省は、福島県内の学校及び公共施設など2700ヶ所に、放射線量を常時計測し、インターネットで開示する「リアルタイム線量測定システム」の導入を決定いたしました。第一回の競争入札を7月25日に実施し、当社もこれに応札したところ、7月29日に同省から落札業者となった旨の通知をいただきました。
…設置場所周辺の放射線量を常時測定し、累積、公開表示できるシステムとして緊急開発した「安心生活」…の性能と実績(すでに福島市、伊達市、南相馬市、飯舘村などで稼働中。東京都は8月中に都庁前に設置)が評価されたものと思っております。】
アルファ通信が飯館村に無償提供したことの公式ブログ記事、そして設置を報じた読売新聞の記事は次の通り。
alphatele-marutoku.blogspot.com/2011/05/blog-post.html
www.yomiuri.co.jp/national/news/20110528-OYT1T00356.htm
【…福島県飯舘村の役場前に28日、放射線量を常時測定して表示する機器が設置された。
東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、東京のシステム会社が開発し、同村に無償で設置した。
機器は、子供の身長に合わせ、高さ50センチの空気中の放射線量を測定。電光掲示板(縦計約30センチ、横約25センチ)に、10秒ごとに更新された数値が表示される。…
…菅野典雄村長は「村民は正確な放射線量を知りたがっており、これなら多くの人が数値を見ることができる。住民の説明資料にも活用したい」と話していた。
(2011年5月28日11時48分 読売新聞)】
ところが、実際に設置することになった「リアルタイム線量測定システム」は外観も変わっている。
装置の説明書と小学校での設置の様子の記事は次の通り。
www.alphatele.com/images/housyasenryousokuteikoukaisystem.pdf
alphatele-marutoku.blogspot.com/2011/10/blog-post.html
設置が始まったのに、測定誤差が大きいということで仕様変更を文部科学省から要請された。
しかし納期に間に合わないということで、契約解除となってしまった。
文部科学省の報道発表は次の通り。
www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/11/1313395.htm
【…第一次補正予算600台について、本年8月以来、物品供給契約…を締結した受注業者により、納入に向けた作業が行われてきましたが、放射線測定器が要求される技術仕様を満たさないこと等により、契約書上の納入期限(10月17日)を経過しても、なお未納の状況が継続しており、11月18日付けをもって当該受注業者との契約を解除し、新たな業者を選定し直すこととしました。…】
首都圏でも何か所か、ホットスポットと呼ばれる高濃度汚染地点が発見されており、食品汚染も含めて不安が消えることはない。
放射性物質管理を担当する文部科学省では、空間放射線量をリアルタイムで監視しようということで、補正予算に放射線量監視システムの導入費用を計上し、入札を行った。
その入札の結果、5月に福島県飯館村に計測器を無償提供した株式会社アルファ通信が、第一次補正予算の600台分を落札した(公式ブログの記事を参照)。
alphatele-marutoku.blogspot.com/2011/08/blog-post.html
【…文部科学省は、福島県内の学校及び公共施設など2700ヶ所に、放射線量を常時計測し、インターネットで開示する「リアルタイム線量測定システム」の導入を決定いたしました。第一回の競争入札を7月25日に実施し、当社もこれに応札したところ、7月29日に同省から落札業者となった旨の通知をいただきました。
…設置場所周辺の放射線量を常時測定し、累積、公開表示できるシステムとして緊急開発した「安心生活」…の性能と実績(すでに福島市、伊達市、南相馬市、飯舘村などで稼働中。東京都は8月中に都庁前に設置)が評価されたものと思っております。】
アルファ通信が飯館村に無償提供したことの公式ブログ記事、そして設置を報じた読売新聞の記事は次の通り。
alphatele-marutoku.blogspot.com/2011/05/blog-post.html
www.yomiuri.co.jp/national/news/20110528-OYT1T00356.htm
【…福島県飯舘村の役場前に28日、放射線量を常時測定して表示する機器が設置された。
東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、東京のシステム会社が開発し、同村に無償で設置した。
機器は、子供の身長に合わせ、高さ50センチの空気中の放射線量を測定。電光掲示板(縦計約30センチ、横約25センチ)に、10秒ごとに更新された数値が表示される。…
…菅野典雄村長は「村民は正確な放射線量を知りたがっており、これなら多くの人が数値を見ることができる。住民の説明資料にも活用したい」と話していた。
(2011年5月28日11時48分 読売新聞)】
ところが、実際に設置することになった「リアルタイム線量測定システム」は外観も変わっている。
装置の説明書と小学校での設置の様子の記事は次の通り。
www.alphatele.com/images/housyasenryousokuteikoukaisystem.pdf
alphatele-marutoku.blogspot.com/2011/10/blog-post.html
設置が始まったのに、測定誤差が大きいということで仕様変更を文部科学省から要請された。
しかし納期に間に合わないということで、契約解除となってしまった。
文部科学省の報道発表は次の通り。
www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/11/1313395.htm
【…第一次補正予算600台について、本年8月以来、物品供給契約…を締結した受注業者により、納入に向けた作業が行われてきましたが、放射線測定器が要求される技術仕様を満たさないこと等により、契約書上の納入期限(10月17日)を経過しても、なお未納の状況が継続しており、11月18日付けをもって当該受注業者との契約を解除し、新たな業者を選定し直すこととしました。…】
ところが各報道をチェックすると、文部科学省は実物を見ずに書類だけで一般競争入札をしていた。
「公的機関で校正された」と業者が主張し、証明書があったとしても、新たに第三者機関でのダブルチェックをすべきだった。
なんだか悪徳通販業者にだまされたような、ばかげた話であり、とてもエリート官僚のすることとは思えない。
朝日新聞、東京新聞、NHKの報道の抜粋を列挙しておこう。
www.asahi.com/national/update/1118/TKY201111180480.html
【文部科学省は18日、福島県内の学校や公園で放射線量を計測する「オンライン線量計」を発注した業者との契約を解除したと発表した。測定精度が低く、結果の送信ができないなどのトラブルで納期が守られなかったためと説明している。
この業者は東京都中野区の「アルファ通信」…。朝日新聞の取材に「納入が遅れたのは文科省から大幅な仕様変更を求められたため。訴訟も検討する」と反論している。
…】
www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011111990070851.html
【…
放射線量の測定器をめぐっては、誤差の大きな製品が出回っているとして国民生活センターが注意を呼び掛けていた。そんな中、国が発注者の事業で、事前に性能を見抜けなかった。審査の甘さが背景にあったとし、同省は外部の専門家にも評価に加わってもらうなどの再発防止策をまとめた。
…
先月十七日には納入されるはずだったが、通信エラーや、測定値が実際より四割も小さいケースもあった。測定器は米国製で、同社が調整したが、納期を一カ月過ぎても改善できなかった。…
残る二千百台は入札の手続きを実施中。放射線取扱主任者の資格を持つ社員がいることなど参加条件を厳しくしたという。
会見した文科省の渡辺格科学技術・学術政策局次長は「業者から出された仕様書を信用していた。…」と話した。】
www3.nhk.or.jp/news/html/20111118/t10014058371000.html
【…先月17日にシステムを作った東京の通信会社から納入できないという連絡があり、文部科学省が調べたところ、このシステムで測定した放射線量が正しい値に比べて最大で40%ほど低い値になっていたうえ、通信に障害があり、データをリアルタイムで公表できないことが分かりました。
この会社は改善を申し出ましたが、14日の新たな期限までに納入できなかったことから、文部科学省は18日、契約を解除し、今後、別の会社と契約を結んで…来年2月までにシステムを設置し直すことになりました。
文部科学省は…「入札の審査方法に改善すべき点があった。今後は外部の専門家を加えるなどの対策を取りたい」と話しています。】
アルファ通信の説明書を見ても、測定器は「シンチレータ半導体」とあるだけで、アメリカのどこの会社の製品なのか、校正した機関はどこなのか、何も明示していない。
それに、「米国RSSIの認証を取得した自社製の放射線測定器で…」と書いてあるが、これは電波を発する無線設備に関する認証のことで、決して放射線測定器の認証ではない。
訴訟するのは勝手だが、このような誤解を招く表現を用いる会社を、私は絶対に信用しない。
放射能汚染と震災復興というキーワードで補正予算を獲得することが、官僚の主要な活動目標なのだから、測定器の実物の評価など、考えることもしなかったのだろう。
追記(11月23日):
文部科学省の本年度第一次補正予算の概要は次の通りで、放射線モニタリングは6ページ目にある。
www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2011/07/05/1305347_1.pdf
「福島県における網羅的な空間線量調査 9.1億円」の中に、リアルタイム測定装置の導入が含まれている。
この予算での測定装置の予定価格は不明だが、落札価格から単純計算すると、1台約61万円と超大安売りである。
落札業者のアルファ通信は、この福島県での実績を元に全国で定価販売して、利益を狙ったのかもしれない。
通常の一般競争入札では、落札額が予定価格を大幅に下回った場合、落札者の事業実施能力の調査が行われる。
しかし、今回の補正予算は緊急措置ということや、既に設置した装置の改良版という説明で、能力調査を省略したのだろう。
ちなみに、東京都のモニタリングポストの説明は次の通りで、その説明を参考にしてほしい。
ガンマ線を測定対象としており、「○○ベクレル」からエネルギーを示す「○○グレイ」に変換し、さらに「○○シーベルト」を算出している。
monitoring.tokyo-eiken.go.jp/monitoring/sokutei/sokutei.html
また、学習院大学・田崎晴明教授(理論物理学)による、ガンマ線測定とシーベルトへの換算の解説例は次の通り。
www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/docs/BqToSv.pdf
www.gakushuin.ac.jp/~881791/halJ.htm (大学の教官紹介ページ)
(最終チェック・修正日 2011年11月23日)
「公的機関で校正された」と業者が主張し、証明書があったとしても、新たに第三者機関でのダブルチェックをすべきだった。
なんだか悪徳通販業者にだまされたような、ばかげた話であり、とてもエリート官僚のすることとは思えない。
朝日新聞、東京新聞、NHKの報道の抜粋を列挙しておこう。
www.asahi.com/national/update/1118/TKY201111180480.html
【文部科学省は18日、福島県内の学校や公園で放射線量を計測する「オンライン線量計」を発注した業者との契約を解除したと発表した。測定精度が低く、結果の送信ができないなどのトラブルで納期が守られなかったためと説明している。
この業者は東京都中野区の「アルファ通信」…。朝日新聞の取材に「納入が遅れたのは文科省から大幅な仕様変更を求められたため。訴訟も検討する」と反論している。
…】
www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011111990070851.html
【…
放射線量の測定器をめぐっては、誤差の大きな製品が出回っているとして国民生活センターが注意を呼び掛けていた。そんな中、国が発注者の事業で、事前に性能を見抜けなかった。審査の甘さが背景にあったとし、同省は外部の専門家にも評価に加わってもらうなどの再発防止策をまとめた。
…
先月十七日には納入されるはずだったが、通信エラーや、測定値が実際より四割も小さいケースもあった。測定器は米国製で、同社が調整したが、納期を一カ月過ぎても改善できなかった。…
残る二千百台は入札の手続きを実施中。放射線取扱主任者の資格を持つ社員がいることなど参加条件を厳しくしたという。
会見した文科省の渡辺格科学技術・学術政策局次長は「業者から出された仕様書を信用していた。…」と話した。】
www3.nhk.or.jp/news/html/20111118/t10014058371000.html
【…先月17日にシステムを作った東京の通信会社から納入できないという連絡があり、文部科学省が調べたところ、このシステムで測定した放射線量が正しい値に比べて最大で40%ほど低い値になっていたうえ、通信に障害があり、データをリアルタイムで公表できないことが分かりました。
この会社は改善を申し出ましたが、14日の新たな期限までに納入できなかったことから、文部科学省は18日、契約を解除し、今後、別の会社と契約を結んで…来年2月までにシステムを設置し直すことになりました。
文部科学省は…「入札の審査方法に改善すべき点があった。今後は外部の専門家を加えるなどの対策を取りたい」と話しています。】
アルファ通信の説明書を見ても、測定器は「シンチレータ半導体」とあるだけで、アメリカのどこの会社の製品なのか、校正した機関はどこなのか、何も明示していない。
それに、「米国RSSIの認証を取得した自社製の放射線測定器で…」と書いてあるが、これは電波を発する無線設備に関する認証のことで、決して放射線測定器の認証ではない。
訴訟するのは勝手だが、このような誤解を招く表現を用いる会社を、私は絶対に信用しない。
放射能汚染と震災復興というキーワードで補正予算を獲得することが、官僚の主要な活動目標なのだから、測定器の実物の評価など、考えることもしなかったのだろう。
追記(11月23日):
文部科学省の本年度第一次補正予算の概要は次の通りで、放射線モニタリングは6ページ目にある。
www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2011/07/05/1305347_1.pdf
「福島県における網羅的な空間線量調査 9.1億円」の中に、リアルタイム測定装置の導入が含まれている。
この予算での測定装置の予定価格は不明だが、落札価格から単純計算すると、1台約61万円と超大安売りである。
落札業者のアルファ通信は、この福島県での実績を元に全国で定価販売して、利益を狙ったのかもしれない。
通常の一般競争入札では、落札額が予定価格を大幅に下回った場合、落札者の事業実施能力の調査が行われる。
しかし、今回の補正予算は緊急措置ということや、既に設置した装置の改良版という説明で、能力調査を省略したのだろう。
ちなみに、東京都のモニタリングポストの説明は次の通りで、その説明を参考にしてほしい。
ガンマ線を測定対象としており、「○○ベクレル」からエネルギーを示す「○○グレイ」に変換し、さらに「○○シーベルト」を算出している。
monitoring.tokyo-eiken.go.jp/monitoring/sokutei/sokutei.html
また、学習院大学・田崎晴明教授(理論物理学)による、ガンマ線測定とシーベルトへの換算の解説例は次の通り。
www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/docs/BqToSv.pdf
www.gakushuin.ac.jp/~881791/halJ.htm (大学の教官紹介ページ)
(最終チェック・修正日 2011年11月23日)