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安倍晋三首相に「種の起源」の絵本を贈ろう ⇒ 二階幹事長にも

(最終チェック・修正日 2020年06月24日)

自民党公報がツイッターで、ダーウィンの進化論を誤用した言い回しを使って、憲法改正の必要性を訴えているそうだ。
そして多くの人々が、その無知を批判する投稿をしている。

朝日新聞の取材によると、「憲法改正について、国民の皆様にわかりやすくご理解していただくために、表現させていただきました」とのことだ。
www.asahi.com/articles/ASN6Q6674N6QULBJ00V.html

しかし、生物の進化や多様性を考えるための学説が、どうして憲法改正に関係するのか、その説明はないようだ。

自民党としては小泉郵政改革の頃から、知的レベルが低いと分類された層、いわゆるB層をターゲットにして世論誘導をしているようなので、詳しい説明などせずに有名な科学者の名前で権威付けして、なんとなくそんな感じだという雰囲気づくりをしているだけだろう。

私が好きな岩波書店は、そのような勘違いをしてしまう人向けに、進化論についてわかりやすく解説した絵本を紹介している。
以下に示したツイッターを参照してほしい。



勝手な推測で申し訳ないが、安倍晋三首相は嘘ばかり言うし、憲法の勉強もしていないし歴史も知らないし、読めない漢字も多いようなので、自分で専門書を読んで進化論を勉強したことはないだろう。

いきなり難しい進化論の専門書を読んでも理解できそうにないので、岩波書店が親切に推薦してくれた、小学3年生からおとなまで楽しめる絵本、
ダーウィンの「種の起源」を誰かプレゼントしてはどうだろうか。
www.iwanami.co.jp/book/b442802.html

原著を読まなくても、優良な解説書が入手できるのは幸せなことだ。
それに、海外で出版された外国語の書籍であっても、翻訳によって日本語で読めるのも幸せなことだ。

翻訳者のおかげで日本語で様々な知識を得られることを、日本人はもっと感謝してもよいのではないか。
「日本はすごい」と言いたいなら、誰かが主張する「民度」ではなく、世界中の知的財産に日本語でアクセス可能にしていることを挙げてほしい。

通常国会も終わって日曜日は自宅にいるようだから、安倍首相はゴルフに行かなければ、本を読む時間がたくさんあるだろう。

念のために明記しておくと、この本はおとなも楽しめる絵本であり、決して安倍首相が小学3年生レベルだと言いたいわけではない。

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テーマ : 博物学・自然・生き物
ジャンル : 学問・文化・芸術

新素材LIMEXの分析値問題は解決したのだろうか

私は翻訳の仕事で、発表前の社内文書を目にすることもある。
決算や事業計画に関する社長メッセージの世界同時発表だったり、特許出願に関連する書類ということもある。

そのため、株式投資をするときは、絶対に担当しないであろう会社を選んでいる。
自動車、機械、医療機器、医薬、化学、バイオは絶対だめだ。

ボッシュやシーメンスが気になっても、プレシジョン・システム・サイエンスが注目されていても買えない。
売買時点でその会社の翻訳をしていなくても、内部情報を持っていなくても、疑われることは嫌だ。

それで、日本株で投資しているのは、ロック・フィールドとコンコルディアFGだけだ。
代わりに投資信託として、ドイツDAX30のインデックスファンドなどを定期積立購入している。

保有株の1つであるロック・フィールドでは、脱プラスチックを進めるために、7月以降に順次、バイオマスプラスチック製レジ袋とFSC認証紙袋を導入する。

6月15日のプレスリリースは次のリンクから。
www.rockfield.co.jp/newsrelese/175.html

WWF会員としては、特にFSC認証に興味があるので、1回だけ30円を払って入れてもらうかもしれない。
数年前のキャンペーンでRF1の布製エコバッグをもらっていたので、それ以降はエコバッグを使うことにしよう。

プレスリリースで気になったのは、簡易包装に使う袋の素材で、次のように書いてある。

【簡易包装に使用する袋も石灰石から生まれた環境に優しい新素材LIMEX(ライメックス)製に順次切り替えます。】

この新素材LIMEXは、何度かテレビ番組で紹介されていた。
紙のように印刷できるということで名刺に使ったり、水に濡れても大丈夫ということで屋外掲示物への応用もあった。

このLIMEXを製造販売している会社は、株式会社TBMで、会社ウェブサイトのリンクは次の通り。
tb-m.com/limex/

石灰石(炭酸カルシウム)と熱可塑性樹脂との混合物で、最近は植物由来のバイオマスプラスチックを混合している。

エコな製品として注目されているわけだが、「オルタナ」という雑誌に批判記事が出ていた。
炭酸カルシウム量が50重量%以上というのは嘘だという記事だ。
www.alterna.co.jp/30206

その指摘に対するTBMが発表した分析データは、次のリンクで公開されていて、炭酸カルシウム量は53重量%だ。
tb-m.com/wp-content/uploads/2020/05/20200504_tbm_release.pdf

TGAのデータで300℃から400℃付近の減量は、有機物であるポリマーの分解によるものだ。
その後、さらに昇温すると、炭酸カルシウムの分解による減量は、600℃付近から始まっていて、740℃付近で完全に酸化カルシウムになっている。

オルタナの記事にはTGAのチャートがないので比較できないが、第三者機関が測定とあるので正しいのだろう。
ということは、ロット間のばらつきが大きいということなのか、それとも納品後しばらく経過すると変化するのか。

できれば、工場出荷直後の同一ロットを使って、同じ試験所の同じ測定装置を使い、さらに最低3サンプルで試験してほしいものだ。

この分析値を巡る問題は、本当に解決しているのだろうか。
5月初めにTBMが回答してから、1か月も経過しているのに、オルタナ側の対応が何も報じられていない。
TBMの発表を信じるとしても、もう少しデータを集めてから、LIMEX製の袋を導入を決めてもよかったのではないか。

また、分析値は正しいとしても、このLIMEX製の袋を、自治体のプラスチックの回収に出せないのではないか。
LIMEXのリサイクルならば可能だが、他のプラスチックと混ぜてはいけないのではないか。
そのため、自宅ではゴミ袋として再利用して、燃やすごみに出すことになるのではないか。

LIMEX製品の回収ボックスについて、神奈川県内の設置状況は次のリンクで確認できる。
upcycle-consortium.com/

それで、そごう横浜店や高島屋横浜店で買い物する前に、横浜中央郵便局に寄って入れることになるだろうか。
RF1などでLIMEX製の袋を導入するならば、デパ地下の入口にも置いてほしいものだ。

ロック・フィールドから次回の株主通信が届いたら、株主アンケートに質問を書いて送ってみよう。

テーマ : つぶやき
ジャンル : 株式・投資・マネー

「メディカル関連特許の特殊性」(化学2020年6月号)

先週注文した書籍と一緒に、化学同人の雑誌「化学」2020年6月号が本日昼前に届いた。
小惑星イトカワ、グラフェン、特許の記事を読むために購入した。

ところが一番驚いたのは、最新のトピックスに、私が大学院時代に関わった化合物が出ていたことだ。
その論文を書いた教授も知っているので、22年ぶりになるがメールを書いてみようと思った。

それで特許の記事は、
中務先生のやさしいカガク特許講座 第17回 メディカル関連特許の特殊性で、医療行為が特許侵害にならないというものだ。

今回取り上げられた特許法の条文は次の通り。
・第29条第1項(特許の要件)
・第69条第3項(特許権の効力が及ばない範囲)
・第93条(公共の利益のための通常実施権の設定の裁定)

私は化学は専門だが、特許法はほとんど知らないので、このような基本的な解説はうれしい。
特許翻訳では、権利範囲が変わらないように気を付けるが、その他にも知っていた方がよいことがあるはずだ。

日本やヨーロッパでは、「人間を手術、治療又は診断する方法」は特許されないが、アメリカでは特許されるという。

方法では特許されなくても、物であれば、例えば、「~を治療するための医薬組成物」ならば特許される。
使用方法も含めて特許請求項を書けば、実質的に「~を治療するための方法」の権利を保護できる。

ただ、PC
出願の特許翻訳では原文ママに和訳するので、「Method for treating ...」であれば、「~を治療するための方法」で納品している。
外国語特許ならばよいのかどうか、それは書いていないが、受理されているということは大丈夫なのだろう。

特許法第69条第3項では、特許権の効力が及ばない範囲が規定されている。
医師の処方箋に従って、2種類以上の薬を薬剤師が混ぜても特許権侵害にはならない。
患者を前にした医療行為は、特許権に縛られることなく自由なのだ。

ところが、企業が研究目的ではなく、混合した医薬を製造すると特許権侵害になってしまう。

現実の問題を1つの条文だけで扱うことができないので、継ぎはぎかもしれないが、複数の条文で対応するそうだ。

また、コラムでは、「強制実施権」について説明している。
COVID-19 の治療薬やワクチンが開発されれば各国で設定されるかもしれない。

弁理士を目指さなくても、翻訳の合間に特許法を勉強して、意識しながら和訳したいものだ。

テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

「どうする!? 新型コロナ」(岡田晴恵、岩波ブックレット)

紀伊国屋BookWeb で注文していた書籍が今朝届いた。
気になっていた、どうする!? 新型コロナ(岩波ブックレット)も入っていた。

いつもなら発売当日に書店店頭で購入できるのだが、新型コロナの影響で配送も遅れているので、9日後に入手できた。

書籍紹介のリンクは次の通り。
www.iwanami.co.jp/book/b507610.html (岩波書店)
tanemaki.iwanami.co.jp/categories/854 (webマガジン「たねをまく」)

目次を含めた最初の10ページを試し読みできるので、興味のある人は確認してほしい。

本書のQ&Aでは、日本で緊急事態宣言が出された直後の4月11日までのデータに基づいていることに注意してほしい。
例えば、マスクが手に入らない場合の対策も書いてあるが、5月にはサージカルマスクが店頭に並び始めたので、念のための情報ということになる。

新型コロナウイルス SARS-CoV-2 による感染症 COVID-19 の情報は日々更新されている。
そのため、治療薬については、期待されているものが列挙されているだけで、5月に認可されたという情報は間に合わなかった。
加えて、「発熱 37.5℃以上」という判定条件(政府側は目安と言っている)が入っていることも注意。

ただし、予防法として手洗いの具体的な方法をイラスト入りでわかりやすく説明しているので、一般的な知識を得るには有用な書籍だ。
また、大流行を防ぐ対策だけではなく、「集団免疫」などの話題となった用語も解説しているので、役に立つブックレットだと思う。

ところで、著者の岡田晴恵・白鳳大学教授は、主にテレビ地上波の番組、テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」や、TBS「Nスタ」で連日解説している。

岡田教授は、アビガンの早期投与について、年齢制限などの条件付きではあるが、一日も早く承認するようにと意見を言っている。
その点について批判もあるが、現時点で可能性が少しでもあるならば、現場の医師が使える手段を増やすべきだろう。
慎重に使いながら、新しいデータが追加された時点で再検討すればいい。

また、岡田教授のこれまでの著作だけではなく、留学先を見ても感染症の最前線の研究者であることはわかる。
ドイツ・マールブルク大学医学部ウイルス学研究所は、世界的に有名な研究所だ。
アフリカミドリザル由来のウイルス性出血熱(マールブルグ病)の発生地ではあるが、それでも世界中のウイルス研究者が集まる研究所だ。

私も学部は違うが、マールブルク大学に2年間留学していて、岡田教授も自著で触れている聖エリーザベト教会の近くを毎日通って研究室に行っていた。

そのため親近感が沸くし、テレビなどでの発言内容も研究者として当然のことだと思う。
特に、2月の番組中で、PCR検査が増えない裏の理由として、一部の研究者がデータを独占して論文を書こうとしていることを挙げていた。
この発言には批判も相次いだようだが、同じマールブルク大学に関係する他分野の日本人研究者からもエールが送られている。
tetsugakuka.seesaa.net/article/473797861.html

実は私はその番組より1週間ほど前に、身近な人たちからPCR検査が増えない理由を聞かれた。
「研究者にはいろいろなタイプがある。この流行を利用して論文を書きたい人もいる。データを独占したいからではないか」と説明していた。

これは私の研究者としての経験から推測したもので、研究分野は違うし、日本の感染症研究者に取材したわけではないため、ブログ記事にすることは避けていた。
しかし、岡田教授が勇気を出して発言したのだから、遅くなってしまったが、私も岡田教授を支持することを表明したい。

もう20年以上も前になるが、私も実名で文部省の批判記事を雑誌に書いたことがあり、その後、学会重鎮から怒られてしまった。
「お前はいつからジャーナリストになったのか」と。
「研究費を増やそうという雰囲気にせっかくなりつつあるのに、余計なことを国民に知らせてはならない」とまで言われた。
若手は研究だけしていろと言いたいわけだ。
周囲の若手の中にも、「教授になるまで自分の意見は言わない」などと、「長い物には巻かれろ」を貫く者もいた。
研究者として当然持つ疑問であっても、学会を含めて政治的な勢力にとって都合の悪いことは口にしてはならないようだ。

COVID-19 にはまだわからないことがたくさんあるので、対策が手遅れとならないように、科学者の視点で疑問を自由に口にできる社会でありたいものだ。

テーマ : 感染症予防
ジャンル : 心と身体

「コンパクト 化合物命名法入門」(東京化学同人)

私は有機化学の研究で博士号を取得し、ドイツ留学もした化学者なのに、化合物の名称でいつも苦労している。
命名法が何度も改訂されていて、大学院生のときとは名称が変わっているし、廃止された名称もある。

すべてのルールを暗記しているわけではないので、翻訳者が辞書で語義を確認するように、命名法の専門書をすぐ参照できるようにしている。

特によく使うのは、
「有機化学命名法 IUPAC 2013勧告および優先IUPAC名」(東京化学同人)。
もう1つ、
「無機化学命名法 -IUPAC 2005 年勧告-」(東京化学同人)も使うことがある。

学術論文を書くわけではないが、特許翻訳では、その化合物名に翻訳名があるのか、それともカタカナで字訳するのか、ルールに従って判断しなければならない。

まあ特許の場合は学術論文とは異なり、専門家が読んで理解できれば、古い命名法であっても、慣用名であっても、試薬カタログの商品名であってもよい。

それでも、特許翻訳の検定試験では、IUPAC 命名法を知っていることが前提になるので、資料を手元に用意すべきだろう。


今月、東京化学同人から入門書が出版された。
コンパクト 化合物命名法入門だ。

www.tkd-pbl.com/book/b508974.html

508974.jpg   

内容を把握できるように、目次を引用しておこう。

1.命名法に必要な化学の基礎知識
2.IUPAC命名法の意義と発展経緯
3.IUPAC名の全体像と日本語表記
4.有機化学命名法初級編
5.有機化学命名法中級編
6.無機化学命名法初級編
7.無機化学命名法中級編
8.高分子命名法初級編
9.高分子命名法中級編
10.生化学命名法初級編
11.今後の自習のために

高分子と生化学も一緒になっていて便利だと感じたので、私も入手した。
研究者ではなくても、化学物質を扱う業務をする人ならば、持っていて損はしないことだろう。

このブログでは、ドイツ語の宣伝をしようとしているが、化学者なのだから、特許翻訳で出てきた化合物名を取り上げた方がよいかもしれない。

体系的な説明は専門書に譲るとして、迷って調べた化合物などを今後は紹介しようと思う。

テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

アビガンに前のめりになっては危険だ

(最終チェック・修正日 2020年05月10日)

新型コロナウイルス感染症COVID-19に対する治療法の開発が世界各国で進められている。
既存薬が使えるかどうか既に試験的に投与されているし、ワクチン候補の臨床試験も開始されている。
効果がはっきりしない場合もあるようだが、短期間であっても様々なデータが蓄積されている。

5月8日には学術誌 Lancet に、3剤併用による Phase 2 の報告が出た。
ロピナビル(lopinavir)-リトナビル(ritonavir)合剤、リバビリン(ribavirin)そしてインターフェロンβ-1bの組み合わせである。

論文へのリンクは次の通りで、無料で全文公開されている(PDF でダウンロード可能)。
www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31042-4/fulltext

ロピナビルとリトナビルの合剤は、元々HIVの治療に使われていて、商品名はカレトラである。
以前流行した SARS ウイルスに対して、抗ウイルス薬のリバビリンと併用して効果が見られたため、今回の新型コロナウイルス SARS-CoV-2 にも効くと期待されていた。

今回は、さらにインターフェロンβ-1bを加えた方が良い結果だという。

HIV治療薬が候補であることは、日本でも報道されていたと思うが、最近はアビガンばかり注目されているようだ。
安倍首相は、記者会見も含めて、何度もアビガンに言及している。
ただし、現時点でアビガンに前のめりになることは、選択肢を狭めてしまうのではないかと危惧される。

The New York Times の5月5日の記事では、"The prime minister has glossed over one crucial fact: (安倍首相がある重大な事実をごまかしている)" と批判している。
www.nytimes.com/2020/05/05/business/japan-avigan-coronavirus.html

東洋経済オンラインでは日本語訳記事が5月9日に公開されている。
【追記(5月10日):全文和訳ではないことに注意。削除箇所は英語オリジナル記事で確認してください。】
toyokeizai.net/articles/-/349269

安倍首相が推しまくるアビガン「不都合な真実」 ヒトの病気に対する効果を示す研究は少数

ここで気になる記述をいくつか引用しておこう。
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しかし安倍氏は、ある重要な事実をごまかしている。ビガンが実際に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して効果を発揮するという確たる証拠はないという事実だ。アビガンは、動物実験でこそエボラ出血熱など致死性の高い病気を治療する可能性を示したが、ヒトの病気に対する効果を示す研究はごく少数にとどまる。

安倍首相がアビガンを宣伝することで、慎重に行われるべき医薬品の承認プロセスが国家のリーダーによる異例の介入によってねじ曲げられるのではないか、との懸念が強まっている。

安倍氏はなぜここまで強くアビガンを推すのだろうか。その理由は定かではないが、日本の一部メディアは安倍氏と富士フイルムの古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO)との親密な関係に触れている。首相の動静記録によると、2人は頻繁にゴルフや食事を共にしており、最後に会ったのは1月17日だった。
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アビガン以外の既存薬でも臨床試験が計画されているが、安倍首相のアビガンへの前のめり発言は異様に感じる。
効果が見られたという報告もあったが、現時点では、効果ははっきりしないという意見の方が優勢だ。

ただ、感染初期の患者には効くのではないかという意見もあり、期待する医療関係者も、副作用に配慮した条件付きで、アビガンを投与できるように求めている。

ただし、アビガンが無効だった場合に備えて、他の治療薬候補にも同程度に予算を投入して推進すべきではないか。
日々情報が更新される研究段階では、アビガンばかりに傾倒するのはギャンブルでしかない。

国内開発の医薬品を推して、「日本はすごい」と外国人に言わせたいテレビ番組と同じノリなのだろうか。

アビガンにこだわる理由が、富士フイルムの古森会長とゴルフをする仲だからというのは困ったものだ。
PCR関連の機器や試薬も含めて、ライフサイエンス分野を強化したい富士フイルムには好都合なことだろう。

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追記(5月10日):
実は、和訳で削除された箇所がある。

そこには、「国際感染症緊急事態への国際貢献に係る専門委員会」に呼ばれた民間企業が富士フイルムのみであることが書かれている。

そして、富士フイルムが用いた説明資料のリンクも New York Times では示されているが、東洋経済オンラインにはない。
www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusai_kansen/kokusaikouken_senmon/dai1/siryou3-3.pdf

この箇所を和訳で削除した理由は不明だ。
ちなみに、2月17日開催の専門委員会の議事次第は次のリンクから。
www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusai_kansen/kokusaikouken_senmon/dai1/gijisidai.pdf

他の候補薬についても検討すればいいのに、時間的制約があったのか、富士フイルム富山化学株式会社だけだ(議事次第での会社名が間違っている)。

公開されている事実なのに、わざわざ削除する意図が不明で、編集部に対する疑念も生じてしまう。
編集権は編集部にあるとしても、せっかく和訳した翻訳者の努力も尊重してほしいものだ。

東洋経済オンラインで和訳記事を公開してくれたことに感謝している人も多いが、全文和訳ではないことに気づいてほしい。
署名記事なのだから、本来はそのまま和訳すべきではないか。

記事が書かれて以降に新事実が報告されていたり、理解を助けるために補足したければ、それは2ページ目と同様に「編集部注」として追加すればいいのに。

訳抜けも含めて、このようなことが起こるので、オリジナルを確認するためにも、外国語を学ぶ意義は大きい。
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私は個人的体験から、富士フイルムを信用していない。
以前は特徴ある写真フィルムを愛用したこともあるが、言い過ぎだと批判されたとしても、とにかくある体験から信用していない。
アビガンを信用しないというよりも、安倍首相が信じ込んでしまう状況を作ったと疑われるような会社なので、不信感を持っている。

また、催奇形性という副作用も、アビガンが使いにくい薬であるということを示している。

私は子どものときにサリドマイド事件のドキュメンタリー番組を観て衝撃を受けたし、姉が体に合わない薬を20年近く処方されて副作用に苦しんだので、特に慎重になってほしいと言いたい。

他国と比較しても意味はないかもしれないが、物理学博士のメルケル首相だったら、安全性にも配慮して決断するのではないかと思う。

具体的なデータに基づかず、根性ワードばかりの演説をする首相を持った日本国民は、不幸かもしれない。

テーマ : コロナウイルス感染症
ジャンル : ニュース

派遣社員のときに書いた特許が成立していた

今は特許翻訳をしているが、実際に特許を書いた経験は1回しかない。
それは約20年前、大学でのポスドクを辞めて派遣社員となり、研究職として最初の勤務先となった民間企業でのことだった。
そのときは明細書の原稿を書いただけで、次の派遣先に異動したので、その特許がどうなったのかはわからなかった。

今日は機械翻訳の性能チェックのために、対象としてふさわしい化学系特許を探していた。
どうせ試すならば、自分が触ったことがある化合物が良いと思い、その化合物名で検索してみた。
すると、私が発明者の特許が存在することを、偶然発見した。

ここでその特許出願の公開番号を書いてもよいが、このブログは一応匿名扱いなので、ごく親しい知人にのみに知らせようと思う。

派遣先の企業は、田舎の海沿いにある小さな町にあった。
素材メーカーの子会社で、その技術力を活用するために、他社向けの中間体製造をしていた。
研究所というには小規模だが、工場で生産する前に実験室規模で合成法の開発を行っていた。

私の最初の仕事は、フォトクロミズムを示すある色素の重要中間体について、合成法の改良を行うことであった。
具体的には書けないが、「縮合多環芳香族化合物のハロゲン置換体」ということにしておこう。

運よく約半年で改良法を見つけたが、依頼元が特許を取る権利があると主張して、私は発明者になれなかった。
数年後に、その改良法で特許出願されて、その依頼元ではフォトクロミズム関係の研究で論文博士を取得した研究員もいた。

この中間体では特許出願できなかったものの、その中間体を使って、依頼元とは無関係の合成をすれば、独自に出願できるのではないかということになった。

ということで、次の派遣先に行く前の2か月くらいは、特許出願のための実験をしていた。
ここでも具体的な化合物名は書けないが、「パラジウム触媒を用いたクロスカップリング反応によるアリールアセチレン誘導体の合成」である。

原料となるハロゲン置換芳香族の構造式を見れば、誰でも思いつく合成であり、目的物は既存の化合物である。
ただし、文献の合成法は多段階であり、しかも面倒な操作が続き、収率も低い。
ということで、機能性材料の中間体として期待されるアリールアセチレンを、簡単に合成する方法には価値がある。

社内の知財部の審査後に出願となれば、報奨金が2万円という話もあったが、派遣社員はもらえないとのことだった。
まあそれでも、頼まれた仕事をきちんと完成させるのが化学者のプライドである。

再現可能な実験の部を書くことに専念して、明細書の他の部分や請求項は、知財部が完成させたようだ。
私が他の派遣先に移って4年後に出願されていた。
そして請求項を補正して、2012年に特許すべきものとする審決が出された。

すでに特許維持のためのお金を払っていないので、その合成法は誰でも使えるものになっている。
最近は別の合成法も開発されているので、私の合成法を使う人はいないようだ。

それでも、この世に存在した化合物に、その存在の証を残すことができたというのが、化学者としてうれしいものだ。

私が大学に残れなかったために、論文になっていない化合物がいくつかある。
もし大金持ちならば、どこかの大学に寄付して、研究を再開したいものだ。

テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

ブラックホールの影を撮影したのに予算削減

世の中は新型コロナウイルスCOVID-19の話ばかりだが、天文学の世界では3月下旬から、国立天文台の予算削減の話が注目されている。

野辺山の太陽観測用電波望遠鏡ヘリオグラフの運用停止に続いて、水沢観測所が関与するVERAプロジェクトが、プロジェクト期間中なのに、今年6月で前倒し終了となった。

水沢観測所のツイートは以下の通り。

ここで取り上げられている、VERAプロジェクトのサイトは次のリンクから。
www.miz.nao.ac.jp/veraserver/outline/index.html

ところが、4月4日の岩手日報の記事では、今年度は予算が追加されて観測が継続できそうだ。
それでも、職員の退職もあるので、来年はどうなるのかわからない。
www.miz.nao.ac.jp/veraserver/outline/index.html

【奥州市の国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹(まれき)所長)の2020年度予算が半減され、主力事業の観測が約2年前倒しで6月終了する問題で、同天文台が予算を追加し、年度内の観測を続ける方向で調整していることが3日、同天文台への取材で分かった。21年度以降の観測継続が不透明な状況は変わらず、関係者は依然として危惧している。

 同天文台の渡部潤一副台長は取材に対し、「われわれも年度途中でプロジェクトを終わらせたくはない。示したのは当初予算で、あくまで最小値。補正分を5月中には決めたい」と年度内の継続に向け調整していることを明らかにした。水沢観測所については「非常に大事な場所。なくすことは考えていない」とも強調した。】

日本の電波天文学は世界をリードしているのに、重要な研究成果も挙げているのに、不可解な理由で削減されてしまった。
論文数が足りないとも言われているが、ブラックホールの影の撮影だけではなく、星間分子を次々に検出していて、化学者の私も注目していた。

週刊誌FRIDAY4月17日号の記事では、国立天文台内部の対立が原因のようだ。
ブラックホールの影の撮影の発表で世界的な注目を浴びた本間教授が、目立ちすぎたのが面白くなかったそうだ。
大学でも研究所でも、主流派と呼ばれるグループが存在していて、いろいろと不公平な人事が行われることもある。

まあ、研究者といえども人間なので、感情的になることはある。
しかし、この決定の影響は日本だけではなく、共同研究をしているアジア各国、そして世界の電波天文学にも波及する。
こんなことでは、日本は学問ができない信用できない国とされて、国際プロジェクトに参加できなくなるだろう。

孤立すれば、ますます論文は出なくなり、世界の第一線を歩んできた歴史を汚してしまう。
そしてさらに予算は削減されて、天文台自体が消えてしまうかもしれない。
そんな覚悟が、国立天文台執行部にはあるのだろうか。

私は数年前、ハワイすばる望遠鏡のために1万円を寄付したことがある。
そのとき寄付した天文学振興募金のサイトは、次のリンクから。
www.nao.ac.jp/bokin/index.html

私が寄付できる金額は少額だが、全国から集まれば、半年だけでも観測期間を延ばすことができるかもしれない。

新型コロナウイルスCOVID-19対策にお金が必要なときに、学問をする余裕はないと言われそうだが、こんなときだからこそ、文化としての学問・芸術の火を絶やしてはいけない。

テーマ : 研究者の生活
ジャンル : 学問・文化・芸術

アミノ酸の日本語名称 トレオニン/スレオニン

特許翻訳のセミナーに参加していたとき、私が理系研究者出身ということで、大学では文系だった翻訳者から質問があった。
化学やバイオ、医薬などの分野を勉強する際の入門書についてだった。
大学1、2年向けの教科書でもよいのだが、高校理科の知識+αで読めるものとして、講談社のブルーバックスを挙げた。

ブルーバックスは最新の研究成果についてわかりやすく解説しているので、文系出身翻訳者だけではなく、私のように医薬メーカー研究所で勤務していた化学者でも、参考図書として年に数冊を読んでいる。

今月読んでいるのは、分子レベルで見た薬の働き(平山令明著、講談社、ブルーバックス B-2127)。
内容と目次は次のリンクから。
gendai.ismedia.jp/list/books/bluebacks/9784065187326

医薬の特許翻訳をする場合に必要となる知識は多岐にわたるが、基本的知識がコンパクトにまとまっているので、入門書としては有益だ。
また、主な酵素や受容体の名称では英語名が併記されているため、翻訳者にとっても勉強になるだろう。

ただし、人間が書いたものだから、間違いはある。

195ページの図5-5下側で、アンジオテンシン変換酵素に結合する化合物の説明では、分子の右側にある炭素原子2個の価数(結合の数)が四価ではなくて、五価になっている。

また、「突然変異」を使っているが、日本遺伝学会が、「変異」に改訂することを提案している。
英語の mutation という言葉には、「突然」という意味はないからである。
この改訂案は、まだ他の学会では採用していないのか、それとも一般向けだから馴染みのある「突然変異」にしたのか。

そして、有機化学者の私が一番こだわっているのは、化合物名の日本語名称である。

26ページのアミノ酸の名称で、threonine (Thr, T) の日本語名称は、私はトレオニンを使っているが、この本ではスレオニンになっている。

化合物名については、主に英語を原語とする命名法をIUPACが決めている。
そしてそのIUPAC名から、各国で使用言語での表記を決めている。
日本では、日本化学会命名法委員会が、日本語名称の作り方を決めている。

原則として、英語の発音とは無関係に日本語名称を作っており、threonine の日本語名称は、トレオニンのみである。
1つの化合物に対して、ただ1つの名称が存在することが望ましい。

英語由来の名称を慣用名として使ってもよいのではないか、という意見もありそうだが、一般向けとしては1つに統一した方がよいだろう。
専門家にとっては小さなことが、初心者にとっては学習のつまづきになるかもしれない。

また、これは余計なことかもしれないが、ドイツ語好きとしては、英語の発音に影響された自己流の日本語名称は嫌だ。

日本語での学会発表なのに、aldehyde(アルデヒド)を、わざわざ「アルデハイド」と言う人もいる。
それならば全部英語読みで、ketone(ケトン)も「キートン」、alcohol(アルコール)を「アルコホール」にすればいいのにと思うが。

細かいことかもしれないが、自分が特許翻訳をするとき、そしてチェックをするときは、最新の情報に基づいて正しい化合物名を書くようにしている。

テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

2019年ノーベル化学賞「リチウムイオン電池」は脱原発・分散型システムへの移行を示唆する

毎年10月になると、日本人研究者がノーベル賞を受賞するかどうかが話題となる。
今年の物理学賞は宇宙に関する興味深いテーマでの受賞だったが、日本人に関係ないためか、ニュースでは簡単な扱いで終わってしまった。

本日9日発表の化学賞では、リチウムイオン電池の開発で3名の共同受賞となった。
受賞者は、ジョン・グッドイナフ(John B. Goodenough)、スタンリー・ウィッティンガム(M. Stanley Whittingham)、吉野彰。
ノーベル財団のサイトの記事は次のリンクから(英語)。
www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2019/summary/

その1人に日本人が入っていたので、買い物から帰宅したらテレビニュースは大騒ぎになっていた。
実用化に貢献したのが吉野博士であることは認めるが、日本はすごいと言って騒ぎすぎだ。
字数の関係なのか、受賞者のうち1人の名前を省略している報道もある。

NHKの夜9時のニュースでは、リチウムイオン電池の原理を見出したウィッティンガム教授、そして電極材料の改良をしたグッドイナフ教授について簡単に触れて、最後に吉野博士が実用化を達成したと、研究の流れを説明していた。

インタビューにもあったように、リチウムイオン電池の実用化が環境問題の解決に貢献すると期待されていることが注目点である。

先のリンク先の記事の最後には次のように書いてある。

Lithium-ion batteries have revolutionised our lives since they first entered the market in 1991. They have laid the foundation of a wireless, fossil fuel-free society, and are of the greatest benefit to humankind.

ここでは化石燃料を使わない社会について言及しているが、リチウムイオン電池を使う社会とは、脱原発・分散型電源システムの社会であろう。

ノーベル賞のニュースと並んでインパクトが大きかったのは、関西電力の原発マネー疑惑だ。
原子力発電には技術的な問題もあるが、地域社会を破壊し、原発マネーに依存するいびつな社会を生み出すことが問題だ。

先月の台風被害でも明らかとなったが、蓄電池と組み合わせた太陽光発電だけではなく、天然ガスを利用した発電システムなど、特定の地域のみではあるが、停電せずに通常の生活を送ることができた例がある。

原子力発電からは撤退し、廃炉技術の確立と廃棄物減量化などに研究を集中して、その技術を世界に売ればよい。
原発を止める代わりに、補助金を使ってでも、リチウムイオン電池やNAS電池を含む分散型システムを全国に配備すべきだ。

東日本大震災の復興予算として、学校だけでなく様々な施設に太陽光発電パネルが取り付けられた。
この前例があるのだから、これから建設する公的施設には原則として太陽光発電+蓄電池のシステムを導入してほしいものだ。


21世紀になってから、日本人の自然科学系ノーベル賞受賞者が増えたためか、毎年10月初めはメディアが騒ぐようになったと思う。基礎研究から応用まで、日本が世界をリードしていることは誇りに思ってもよいが、なんだか「日本はすごい」と印象付けることに躍起になっているように感じる。加えて、受賞者が既にアメリカ国籍を取得しているのに、日本人としてカウントしようという、いわゆる国内ルールを持ち出すのも変な感じだ。新聞...
ノーベル賞の報道の方針は「日本はすごい」と印象付けることなのか


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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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