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2019年ノーベル化学賞「リチウムイオン電池」は脱原発・分散型システムへの移行を示唆する

毎年10月になると、日本人研究者がノーベル賞を受賞するかどうかが話題となる。
今年の物理学賞は宇宙に関する興味深いテーマでの受賞だったが、日本人に関係ないためか、ニュースでは簡単な扱いで終わってしまった。

本日9日発表の化学賞では、リチウムイオン電池の開発で3名の共同受賞となった。
受賞者は、ジョン・グッドイナフ(John B. Goodenough)、スタンリー・ウィッティンガム(M. Stanley Whittingham)、吉野彰。
ノーベル財団のサイトの記事は次のリンクから(英語)。
www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2019/summary/

その1人に日本人が入っていたので、買い物から帰宅したらテレビニュースは大騒ぎになっていた。
実用化に貢献したのが吉野博士であることは認めるが、日本はすごいと言って騒ぎすぎだ。
字数の関係なのか、受賞者のうち1人の名前を省略している報道もある。

NHKの夜9時のニュースでは、リチウムイオン電池の原理を見出したウィッティンガム教授、そして電極材料の改良をしたグッドイナフ教授について簡単に触れて、最後に吉野博士が実用化を達成したと、研究の流れを説明していた。

インタビューにもあったように、リチウムイオン電池の実用化が環境問題の解決に貢献すると期待されていることが注目点である。

先のリンク先の記事の最後には次のように書いてある。

Lithium-ion batteries have revolutionised our lives since they first entered the market in 1991. They have laid the foundation of a wireless, fossil fuel-free society, and are of the greatest benefit to humankind.

ここでは化石燃料を使わない社会について言及しているが、リチウムイオン電池を使う社会とは、脱原発・分散型電源システムの社会であろう。

ノーベル賞のニュースと並んでインパクトが大きかったのは、関西電力の原発マネー疑惑だ。
原子力発電には技術的な問題もあるが、地域社会を破壊し、原発マネーに依存するいびつな社会を生み出すことが問題だ。

先月の台風被害でも明らかとなったが、蓄電池と組み合わせた太陽光発電だけではなく、天然ガスを利用した発電システムなど、特定の地域のみではあるが、停電せずに通常の生活を送ることができた例がある。

原子力発電からは撤退し、廃炉技術の確立と廃棄物減量化などに研究を集中して、その技術を世界に売ればよい。
原発を止める代わりに、補助金を使ってでも、リチウムイオン電池やNAS電池を含む分散型システムを全国に配備すべきだ。

東日本大震災の復興予算として、学校だけでなく様々な施設に太陽光発電パネルが取り付けられた。
この前例があるのだから、これから建設する公的施設には原則として太陽光発電+蓄電池のシステムを導入してほしいものだ。


21世紀になってから、日本人の自然科学系ノーベル賞受賞者が増えたためか、毎年10月初めはメディアが騒ぐようになったと思う。基礎研究から応用まで、日本が世界をリードしていることは誇りに思ってもよいが、なんだか「日本はすごい」と印象付けることに躍起になっているように感じる。加えて、受賞者が既にアメリカ国籍を取得しているのに、日本人としてカウントしようという、いわゆる国内ルールを持ち出すのも変な感じだ。新聞...
ノーベル賞の報道の方針は「日本はすごい」と印象付けることなのか


テーマ : テクノロジー・科学ニュース
ジャンル : ニュース

WWFへの寄付金でミニトートバッグをもらった

環境保護団体のWWFジャパンに入会したのは1994年であった。
そのときは、石垣島サンゴ礁の保護活動を支援するためだった。

私が選択した年会費は1万円で、他に依頼があれば、臨時の寄付を年1万円程度行っている。
弟への仕送りが終われば、年2~5万円に増やしたいと思っている。

今月届いた寄付の依頼は、南米の海の支援である。
支援を呼びかけるWWFジャパンのサイトは次のリンクから。
www.wwf.or.jp/campaign/da/

最近はチリ産の養殖サケをスーパーの鮮魚売り場で目にするようになった。
イオンに行ったときには、少し価格が高めだが、ASC認証のサケを買うことにしよう。
認証制度には批判もあるが、持続可能な漁業の推進に寄与すると信じて支援したい。

今回の寄付では、チリイルカやマゼランペンギンの生態調査の支援もある。
漁業などの人間の活動が及ぼす影響を把握するために、継続的な調査が必要だ。

1万円の寄付をしたので、ペンギンのミニトートバッグとチリイルカのバッジが届いた。
私は使わないので、教会のバザーで売ることにしよう。


WWFトートバッグ

テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

2019年は国際周期表年

昨年末から2019年元旦にかけての新聞や雑誌の記事を見ると、2019年がどのような年になるのか、様々な予測がされている。
また、既に予定されている様々な法律の改正や、消費税増税の影響なども解説されている。

それでも化学で博士号を取った者としては、国際周期表年であることを宣伝したいものだ。
メンデレーエフが元素の周期性について発表したのが1869年ということで、今年は150年の記念の年だ。

英語と日本語のサイトは、それぞれ次の通り。
www.iypt2019.org/
iypt2019.jp/

日本でも様々なイベントが行われるので、学術的な講演の他に、元素発見競争の歴史や、元素の命名の背景など、興味があるものがあれば参加してみたい。

現在の本業である翻訳者としては、元素の名称について共通理解が得られるように期待したい。

元素の日本語名称は、日本化学会の命名法委員会が決定しているので、その正式名称を使ってほしい。

例えば、第92番元素U(Uranium)は、「ウラン」であるが、「ウラニウム」や「ウラニューム」と書いている特許もまだ見かける。
他にも、「ケイ素」を「シリコン」、「チタン」を「チタニウム」と書くのは、過去の出願と統一しているのかもしれないが、もうやめてほしいものだ。

更に英語で言えば、以前も取り上げたが、第16番元素S(硫黄)のつづりを間違えないでほしい。
「硫黄」は英語では Sulfur のみで、Sulphur というつづりは絶対に使用しない。
イギリス式つづりと主張する人もいるようだが、自然科学系の文章で sulphur を使うのは間違いである。

国際周期表年ということで、各国語での周期表も手に入れやすくなるかもしれないので、この機会にノルウェー語とアイスランド語は最低限確認してみたいものだ。

テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

商業捕鯨を再開する前に先住民アイヌの権利を保証すべき

日本政府が、国際捕鯨委員会(IWC)から脱退することを今年中に宣言するそうだ。
商業捕鯨を再開すると、東京オリンピック・パラリンピックをボイコットする選手が現れるかもしれない。

時事通信の記事は次の通り。
www.jiji.com/jc/article

【政府は20日、クジラの資源管理について話し合う国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、IWCが禁じる商業捕鯨を北西太平洋で約30年ぶりに再開する方針を固めた。…
 来週発表する。来年1月1日までにIWC事務局に通知すれば、6月末での脱退が決まる。日本の国際機関脱退は極めて異例。…
 日本は現在、資源調査の目的で南極海と北西太平洋でミンククジラなどを年間約630頭捕獲しているが、脱退により南極海での捕鯨は国際条約上できなくなる。商業捕鯨は、来年にも日本の排他的経済水域(EEZ)や近海でのみ実施する見込み。】

日本が商業捕鯨を行うには、IWCでモラトリアム終了の決議ができない現状では、IWCから脱退するのが近道ということだ。

ノルウェーとアイスランドがIWCに加盟していながら商業捕鯨をしているのは、モラトリアムに異議申立をしたから。
日本は、日米協議で異議申立を撤回したので、商業捕鯨を再開できないのは自業自得である。

アメリカ側の圧力だと言いたい人もいるようだが、当時の中曽根康弘首相が、自動車や半導体、北太平洋でのサケ・マス漁業を守るために、捕鯨を切り捨てたのだ。

IWCでは以前、非公式な提案として、南極海からの撤退と引き換えに、日本近海での小規模沿岸捕鯨の再開が打診されたことがあったが、なぜか日本側が交渉を拒絶した。

IWCを脱退すると、日本のEEZ内であっても、近隣諸国で資源管理の国際委員会を新たに設置して、捕獲枠を決めることになる。
日本が主導するにしても、中国、ロシア、韓国が必ず入るから、何も決まらないおそれがある。

日本の食文化を守れと騒いで、商業捕鯨を再開する前に、日本政府がすべきことは、先住民アイヌの権利を保証することだ。

IWCでの先住民生存捕鯨として、アイヌに捕獲枠を割り当てることも可能と思われたが、日本政府が提案したことはない。
ヤマト民族の大規模捕鯨の方ばかり主張して、先住民の権利を無視するのは、さすが人権後進国である。

アイヌが定期的な狩猟として捕鯨をしていたのかについては、様々な見解があるが、次の報告書を参考にしてほしい。
icfcs.kanagawa-u.ac.jp/publication/ovubsq00000012h5-att/report_02_008.pdf

積極的に捕鯨をしていたとは言えないものの、寄り鯨やイルカ猟も含めて、アイヌの狩猟文化全体からクジラとの関係を考えて、先住民の文化の復興と伝承を考えるべきではないだろうか。

アイヌの権利を考えるとき、例えば、サケの漁業権問題から検討してはどうだろうか。
来年の通常国会で、アイヌ新法が提出されるのだが、これまで100年以上も奪ってきた権利を、完全に復活させてほしいものだ。

アイヌの伝統文化を継承するために捕獲するサケの量は限定的であり、乱獲になることはない。
しかし、現状では、サケの捕獲には許可が必要で、無許可で獲ると、警察に逮捕されてしまう。

また、日本国憲法の他に主要な基本法をアイヌ語で書き、公用語として日本語とアイヌ語を規定すべきだ。
そして小学校では、英語を導入する前に、アイヌ語の時間を作ってほしい。
そうすれば、アイヌ語に興味を持つ人も増えて、公的文書をアイヌ語で残すこともできるようになるだろう。

日本の食文化を守れと騒いでいる国会議員は、率先してアイヌの権利復活を主張し、それから商業捕鯨の再開を議論してほしい。

自民党総裁選や女子テニスの話題があったためか、国際捕鯨委員会(IWC)のニュースはあまり注目されなかったようだ。今回は、日本が議長国の順番となったためか、商業捕鯨再開について議題にできたが、投票の結果は否決された。すると日本政府は、というよりも水産庁の一部、そして捕鯨推進の一部議員などの利害関係者は、国益を無視して、IWCを脱退することも視野にするという。例えば、朝日新聞の記事や論説をいくつか引用...
やはり日本政府は沿岸小規模捕鯨の実現を目指すべきではないか


テーマ : 気になるニュース
ジャンル : ニュース

新聞によって「タンパク質」と「たんぱく質」の二通り

本日発表されたノーベル化学賞は、タンパク質関連の研究に対して授与された。
最近は抗体医薬の特許も増えているので、今回の受賞対象の研究について、その内容を理解しておくことが必要だろう。
資金をなんとか工面して、日経サイエンスの定期購読を再開したいものだ。

このノーベル化学賞のニュースを読んでいて、新聞によって「タンパク質」と「たんぱく質」の二通りの表記があることに気づいた人も多いだろう。

この基本的な栄養素の名称は、ギリシャ語由来で、英語では protein、ドイツ語でも Protein と書く。
ドイツ語では日常語・口語では Eiweiß とも書き、これは元々は「卵白」という意味だ。
古い表記では Eiweißstoff で、これを日本語に直訳すると、漢字表記で「蛋白質」になる。

「卵」を意味する「蛋」は、常用漢字ではないため、学術用語では「タンパク質」とカタカナ交じりの表記だ。
有機酸の「蟻酸」を「ギ酸」と書くのと同様である。

しかし、食品関係では「たんぱく質」と平仮名交じりである。
例えば、株式会社明治の食育サイトを参照しよう。
www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/know/know_milk/02/num01_02.html

そして新聞では、各社が独自に用語の手引きを作成しているので、二通りの表記が見られる。
配信記事を見ると、時事通信社は「たんぱく質」で、共同通信社は「タンパク質」。
また、日本経済新聞と朝日新聞は「たんぱく質」。

最近の特許でも両方使われているが、「タンパク質」の方が圧倒的に多い。
特許は学術論文ではないかもしれないが、できれば学術用語の「タンパク質」に統一してほしいものだ。


(最終チェック・修正日 2016年09月27日)12年前に副業として翻訳を始めてから、購入した紙ベースの辞書や専門分野の辞典、文法解説書など、語学関連書籍の半分以上を、確定申告では経費として計上してきた。様々な病名が出てくる特許や報告書などの英日翻訳のときは、日本医学会の「医学用語辞典第3版」を購入して確認した。本体価格が 14,000円もしたので、経費にできて助かった。最近は何でもインターネットで調べるように...
「科学技術独和英大辞典(技法堂)」の購入を検討


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ノーベル賞週間に基礎研究の重要性を考えてほしい

10月上旬はノーベル賞の発表が行われる。
私は化学専攻だったので、化学賞に一番注目しているが、自然科学分野3賞が発表される第1週を楽しみにしている。

日本のメディアでは、日本人が受賞するかどうかばかり注目し、受賞者についても、「アメリカ国籍を取得した人も含めて日本人は〇人」という書き方をする。

今年の医学生理学賞を見ても、本庶教授の研究室には留学生も含めて多様な人材が集まっており、日本国内だけで、日本人のみの研究チームで研究が行われることはない。
科学には国境はないという現状を知っているのに、受賞者の国籍が日本かどうか、日本にゆかりのある経歴かどうかにこだわる理由がわからない。

100年前ならば、元素の発見を競っていたフランス対ドイツのようなこともあるだろうが、21世紀にそんな意識を持つこともないだろう。

日本人が受賞したと騒ぎ、安倍首相も電話で祝辞を述べ、そして文部科学省はノーベル賞受賞数の目標まで掲げているのに、基礎研究を強力に支援しようという話は、いつになっても出てこない。

私が博士号を取得した頃は、アメリカ並みに博士を倍増すれば日本はよくなる、というずさんな計画が実行されていた。
それでも、博士後期課程3年間の奨学金に加えて、研究費も年90万円もらえたし、海外派遣の定員も増えて、私は2年間のドイツ留学もできたので、これならばなんとか生き残れると思っていた。
しかし、日本国内では任期制の研究職ばかり増え、ポスドク(博士研究員)という不安定な身分で、35歳までに消えてゆく研究者もいた。

私の場合は、ある教授の不正行為を内部告発するなど、学会重鎮の支援を受けられない事態を招いたため、アカデミック研究職を諦めたが、ポストがないために失業するポスドクは多い。

当時の有馬文部大臣は、「私も博士号取得後は数年くらい無職みたいなものだった。頑張れ」という主旨の、無責任な話をしていた。
大学院重点化という改革をしたものの、大学法人化で予算が減少して、基礎研究に回す資金がなくなってきた。
競争的資金の取得や民間企業の寄付講座、大学発ベンチャーという道もあるが、何に利用できるのかわからない基礎研究に取り組む余裕はない。

一般の人たちも私に対して、「何に使えるのですか」と質問することが多く、「何か新しいことを発見しましたか」とは聞かない。
日本では学問がまだ
文化になっていないためか、国費を投入したならば見返りがないといけないと思うようだ。
遊ぶために税金を使ったわけでもないのに、新しい知識を積み上げたことは、あまり評価されないようだ。

ノーベル賞受賞者が何度も基礎研究の重要性を訴えているのに、対策を講じようとしない日本は、取り返しのつかない事態になるまで先送りするのだろうか。

うがった見方をすると、研究費が足りないならば、防衛省が大学との共同研究を行う安全保障技術研究推進制度に応募しろということなのかもしれない。
そのようにして国家の言いなりになる大学を作ろうというのだろうか。
日本の防衛に協力しない大学研究者は、非国民として非難されることになるのだうか。

そんな時代になったら、良心ある研究者は亡命して、海外で研究を続けて、人材流出により日本をどん底に落とせばよい。
そのくらいボロボロにならないと、目が覚めないのかもしれない。

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やはり日本政府は沿岸小規模捕鯨の実現を目指すべきではないか

自民党総裁選や女子テニスの話題があったためか、国際捕鯨委員会(IWC)のニュースはあまり注目されなかったようだ。
今回は、日本が議長国の順番となったためか、商業捕鯨再開について議題にできたが、投票の結果は否決された。
すると日本政府は、というよりも水産庁の一部、そして捕鯨推進の一部議員などの利害関係者は、国益を無視して、IWCを脱退することも視野にするという。

例えば、朝日新聞の記事や論説をいくつか引用しておこう。

1) 9月15日:商業捕鯨再開案を否決 日本、脱退も視野に IWC総会
www.asahi.com/articles/DA3S13679466.html
【総会は最終日の14日、商業捕鯨の再開と組織改革をめざした日本の提案を否決した。商業捕鯨の停止継続が重要だとする決議が前日に採択されるなどクジラの保護を重視する流れが強まっており、日本は捕鯨政策の練り直しを迫られそうだ。】

2) 9月19日:捕鯨委の脱退、農水相も示唆 「あらゆる選択肢精査」
www.asahi.com/articles/DA3S13685046.html
【国際捕鯨委員会(IWC)の総会で、商業捕鯨の再開と組織改革をめざした日本の提案が否決されたことについて、斎藤健農林水産相は18日の閣議後の記者会見で、「IWCとの関係について、あらゆるオプション(選択肢)を精査せざるを得ない」と述べた。】

3) 9月19日:(社説)日本の捕鯨 IWCに背を向けるな
www.asahi.com/articles/DA3S13684894.html
【日本への批判の大きな材料になっているのが、南極海などでの捕殺を伴う調査捕鯨だ。4年前に国際司法裁判所が「科学目的とはいえない」として中止を命令した。日本は捕獲頭数を減らすなどして再開したが、IWC総会での議論を待たなかったため、強い批判が続いている。

脱退を視野に入れているのだとすれば、賛同できない。国際的な枠組みに背を向けたときに失う信用の重みを考えるべきだ。さらに、国連海洋法条約は鯨の保存、管理、研究について国際機関を通じて活動すると定めている。脱退すれば問題が解決するわけではない。

日本はIWCの管理対象外の小型鯨類について、沿岸捕鯨を続けている。資源管理に十分注意しながら、こうした捕鯨への国際理解を深めることに、まずは力を入れるべきだ。】

ここで、日本が商業捕鯨を再開できないことについて、外国からの不当な圧力だとか、クジラで譲歩すると次はマグロが狙われるなどと主張する人がいるため、森川純・酪農学園大学名誉教授の「調査捕鯨の堅持を選択することに政策的妥当性はあるのか」という記事を紹介しておこう。
www.jwcs.org/data/1112_morikawa.pdf (前編)
www.jwcs.org/data/1203_morikawa.pdf
 (後編)

ノルウェーとアイスランドが商業捕鯨を再開しているのは、モラトリアムに対して異議申立をしたからである。
日本は、当時の中曽根康弘首相の意向で、異議申立を取り下げてしまったため、再開にはIWCの議決が必要だ。
小規模沿岸捕鯨業者が捕獲を望んでいるミンククジラの異議申立も取り下げたのだから、捕獲対象は小型クジラやイルカのみになった。

中曽根内閣の事業仕分けとして、遠洋捕鯨産業を安楽死させるはずだったのに、一部抵抗勢力が調査捕鯨で鯨肉を確保することを目指した。
そして東日本大震災の復興予算までもが調査捕鯨に投入されるなど、誰も口出しできない事業になった。

調査捕鯨について、その科学的目的だけではなく、捕獲頭数の妥当性も合理的に説明できないことに加えて、水産庁担当官が、鯨肉の安定供給が目的の1つだと国会で答弁してしまったため、誰にも信用されない事業である。

以前、IWCでは非公式協議の場で、日本が南極海での捕鯨を放棄する代わりに、沿岸小規模捕鯨の再開を提案されたこともあるが、なぜか日本政府は断った。
アイヌの先住民生存捕鯨ならば認められそうなのに、これも日本政府が提案しようともしない。

日本政府と捕鯨関係者は、自ら商業捕鯨再開の道を閉ざしているのに、IWCを脱退すると脅しているが、脱退しても商業捕鯨は再開できない。

ヨーロッパの捕鯨国・地域のノルウェー・アイスランド・フェロー諸島・グリーンランドが、北大西洋海産哺乳動物委員会(NAMMCO)で持続可能な捕鯨を推進しているように、南極海で捕鯨をする場合、反捕鯨国のオーストラリア・ニュージーランドと委員会を作ることになるから、無理だ。

北西太平洋と日本海のEEZ内で捕鯨をするにしても、回遊性のクジラの資源管理について、近隣諸国と共同の委員会を設立する。
最低でも日本・ロシア・韓国が入ると思われるが、この3カ国が捕鯨について協力関係になれるのかどうか不明だ。
もし中国・台湾・北朝鮮が委員会に入るとなると、合意ができそうもない。

そのため、現実的な選択として、南極海からの永久的な撤退を宣言した後、日本のEEZ内での捕鯨について、捕獲対象をミンククジラまでの大きさのクジラとイルカにし、ナガスクジラ・マッコウクジラ・ザトウクジラなどの大型種は永久に保護対象とすれば、IWCで合意できる可能性が開けるかもしれない。

テーマ : 環境・資源・エネルギー
ジャンル : 政治・経済

ドイツの脱原発映画「モルゲン、明日」を観に行こう

映画館に行くのは、年に1回くらいと少ない。
興味のあるドキュメンタリーやSFを観たいのだが、日曜日は教会に行くし、土曜日や祝日も直前に用事ができることがあるので、なかなか予定できない。

それでも今年は、6月に「ゲッペルスと私」を岩波ホールで観た。
そして11月公開の「パウロ 愛と赦しの物語」を観る予定だ。

それに加えて、10月には「モルゲン、明日」というドイツの脱原発に関するドキュメンタリーを観たいと思っている。
公式サイトは次の通り。
www.masakosakata.com/index.html

【福島第一原発の事故から3ヶ月後の2011年6月、ドイツは2022年までにすべての原発を廃炉にすることを決めた。一方、当事国の日本では事故収束の糸口も見えないまま再稼動が始まり、原発輸出の話さえ出ている。

両国の違いはどこからくるのだろう。答えを求めて「私」はドイツに向かった。

そこで出会ったのは、都市で、村で、学校で、教会で脱原発と自然エネルギーへ情熱を燃やし、実践する多くの人々。第二次世界対戦での自国の行いを深く反省し、1968年の学生運動をきっかけに芽生えた反原発・環境保護の意識と情熱を政治に反映し、次世代につなげようとしている彼らの姿は、世界は市民の手で変えられると教えてくれる。】

10月6日から14日まで、東京・シネマハウス大塚で上映とのことだが、13日土曜日しか空いていない。
仕事が忙しくなければ、平日に有給休暇を取得して、西荻窪郵便局などの新規使用風景印の収集も兼ねて都内に行って、映画鑑賞もしたいものだ。
11月3日からは、横浜シネマリンで上映されるが、できれば10月に観たい。

ドイツ政府の脱原発の決定や、ドイツ市民の環境意識の高さは、単純に日本に当てはめることはできないものの、彼らの決断の背景を知ることは大切だと思う。

危険な日本の原発を止められなかった、化学者であり、WWFジャパン会員でもある私が、これからどのように活動していくのか、そのヒントになれば幸いだ。

教会には興味を持つ人もいるので、日曜日の礼拝の後に紹介してみよう。

テーマ : 気になる映画
ジャンル : 映画

元素名は「シリコン」ではなく「ケイ素」と書いてほしい

翻訳専業となった私は、既に研究職ではないが、自然科学の様々な動向は、趣味と実益を兼ねてチェックしている。

最近は、SI単位系の定義の改訂にも興味がある。
そして今年2018年に注目されていることとは、質量の単位であるキログラムの定義の変更が予定されていることだ。

キログラムの定義の変更について、2015年のナショナルジオグラフィック日本版の記事は次の通り。
natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/a/072100020/

これまでは、国際キログラム原器で定義していたが、ある原子をアボガドロ定数個集めた質量に変えることになった。
そのためには、アボガドロ定数を正確に決定する必要がある。

日本の産業技術研究所で、その測定を達成したことの報告は次の通り。
www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2017/pr20171024/pr20171024.html

ドイツでも達成しており、ドイツ物理工学研究所(PTB)の研究紹介のサイトは次の通り。
www.ptb.de/cms/forschung-entwicklung/forschung-zum-neuen-si/ptb-experimente/kilogramm-und-mol-atome-zaehlen.html

そして今月は、この改訂について解説した講談社ブルーバックスの 「新しい1キログラムの測り方」(臼田孝著)を読んでいる。
gendai.ismedia.jp/list/books/bluebacks/9784065020562
gendai.ismedia.jp/articles/-/55228



今回取り上げるのは、アボガド定数の決定に使われた高純度ケイ素について、元素名なのに 「シリコン」 と書いていることだ。

第9章 「新しいキログラムへの道 - 動き出した国際プロジェクト」 を見ると、アボガドロ定数の決定に使用する理想的な材料としてケイ素が紹介されている。

元素名の和名は、日本化学会が決定しており、原子番号14の元素は 「ケイ素」 であって、シリコン」 ではない

「シリコン」 は、特に電子材料の分野で、高純度ケイ素を意味する業界用語であって、学術用語ではない。

「材料」 として説明しているため、「シリコン」 でもよいのではないか、または、研究者ではない一般人向けには、「シリコン」 の方がなじみがあるのではないか、などと言われそうだが、科学的に正確な記述を優先して、「ケイ素」 にしてほしかった。

例えば、171ページにある同位体についても、「シリコン28」 には違和感がある。

出版元の講談社への問い合わせは、メールフォームがなかったので、時間があるときに電話して聞いてみよう。

テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

ドイツMycroProsの古細菌を使ったメタン生成プラントを導入しよう

特許翻訳の仕事に直結するかどうかはわからないが、ドイツで開発されている新技術についての情報収集を、不定期ではあるが行っている。
主に新聞の報道から探していて、特に環境問題への対策技術に関心がある。

その中には、日本でも導入してほしい技術もある。
日本は独自技術の開発にこだわるようだが、プロジェクトへの人材や資金の投入が中途半端なので、ドイツから導入した方が早いと思う。
テレビ番組などで、日本はすごい、という印象を持たせようと頑張っているが、ここは現実を認めて、他国からなんでも金で買えばいい。

今週注目したのは、MycroPros のメタン生成技術である。
技術の紹介サイトは以下の通り。
micropyros.jimdo.com/verfahren/

ちなみに、特許は、DE102012221286A1 で、これはドイツ語で出願された。

風力発電や太陽光発電の余剰電力を捨てずに水の電気分解に利用して水素を生産し、その水素と二酸化炭素との反応を、古細菌の一種であるメタン菌を利用して、高効率でメタンを生産するものだ。

以前から、Power to Gas 事業がドイツでは発展している。
その紹介として以下の資料を参考に挙げておこう。
www.mitsui.com/mgssi/ja/report/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/10/20/131115du_goto.pdf (三井物産の資料)
www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy/suiso_nenryodenchi/co2free/pdf/001_03_00.pdf (NEDO新エネルギー部の報告)
www.audi-mediacenter.com/en/audi-e-gas-slash-audi-g-tron-240
 (Audi e-gas)

従来技術では、水素と二酸化炭素との反応に使う化学触媒は、高温の反応温度が必要であったり、アンモニアや硫化水素などが触媒毒となって反応が止まるなど、欠点もあった。

古細菌を使うメタン生産システムでは、100℃以下の比較的低い温度で反応が可能で、アンモニアなどが含まれていても反応が進むことが利点である。

二酸化炭素源として、下水処理場やバイオマス発酵プラントなどを使う場合、アンモニアや硫化水素を除去する必要がないため、特に有利である。

更に、バイオマス発酵で、ある程度のメタン発酵をさせておき、メタンと二酸化炭素との混合物を得て、これを続けて水素と反応させることも可能だ。

天然ガスと比較した場合のコストの問題はあるものの、風力発電などの余剰電力を活用する方法でもあるし、国内で再生エネルギーの循環ができる点も、将来のために早めに導入すべき技術だと思う。

先に示したNEDOの資料にもあるように、日本では水素の生産に力点が置かれているようで、メタン生産には言及していない。

需要を考えるとメタン生産を目標にした方がよいと思うし、大規模太陽光発電所の電力の受電を大手電力会社が拒否している現状では、メタン生産のために利用する方針に転換すべきではないか。

テーマ : テクノロジー・科学ニュース
ジャンル : ニュース

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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