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イギリス原子力施設セラフィールドでの放射線モニタ異常値は自然界のラドンが原因

イギリスの原子力施設セラフィールドは、アイリッシュ海を汚染しているなど、いろいろと問題視されている。
日本は使用済み核燃料の再処理を委託しているのだから、環境汚染や作業員の被ばくに加担しているとも言える。
しかし日本では、六ヶ所村再処理工場の話は聞くが、セラフィールド関連のニュースはあまり流れないようだ。

ということで、同様に再処理委託をしているドイツの報道をチェックしている。
ドイツ人は心配症なので、少しでも異常があったというだけで大々的に報道してくれるので、情報収集の点では役に立つからだ。

1月31日金曜日夜に見た SPIEGEL Online で、セラフィールド施設内の放射線モニタの1つが異常値を検知したとあった。
www.spiegel.de/wissenschaft/technik/britische-atomanlage-erhoehte-strahlung-in-sellafield-gemessen-a-950332.html

この記事の投稿時点(ドイツ時間10時59分)では、施設で事故が起きたわけでもなく通常の稼働をしており、異常値を示した原因がまだ特定されていなかった。
ただし念のために最小限の作業員だけを残して、大半の作業員は自宅待機措置となっていた。

その後、バックグラウンドレベルを超えた原因は、自然界のラドンだったことが判明して、通常の勤務シフトに戻したという。
約4時間後に更新された SPIEGEL Online の記事は次の通り。
www.spiegel.de/wissenschaft/technik/atomanlage-sellafield-a-950438.html

Sellafield Ltd. の発表は次の通り。
www.sellafieldsites.com/press/sellafield-site-operating-at-reduced-manning-levels-update/
【Our in-air monitors are extremely sensitive and pick up on any abnormality. Overnight the monitoring system initially indicated elevated levels of activity. Following investigation and analysis, we can now confirm these levels to be naturally occurring background radon.】

日本の報道は少ないが、共同通信の配信記事は次の通り。
www.47news.jp/CN/201401/CN2014013101002459.html
【英中西部セラフィールドの原子力施設を管理するセラフィールド社は31日、施設で放射線量の上昇が検知されたと発表した。安全確認作業が行われたが、施設には問題が起きておらず、同社は「自然放射線を検知したものだった」との声明を出した。】

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テーマ : 原子力問題
ジャンル : ニュース

放射性炭素14の漏洩事故があったミュンヘン工科大学の研究用原子炉が運転再開

ミュンヘン近郊のガーヒンク(Garching)には、ミュンヘン工科大学の研究用原子炉施設 FRM II がある。
www.frm2.tum.de/

この FRM II では、高濃縮放射性ウランを中性子源に用いて、物理や化学、生物学、医学の基礎研究が広範に行われている。
また医療分野では、腫瘍に中性子を照射するという方法で、がん治療も実施されている。

中性子をそのまま使う研究だけではなく、核反応にも利用して、炭素14などの放射性核種の合成も行われている。
化学や生物学では、反応機構や代謝経路などの研究で、放射性炭素14で標識した化合物を使うことがある。
取り扱いには特別な設備が必要なため、非放射性同位体の炭素13で代用することもあるが、現在でも様々な基礎研究に必要とされる放射性核種である。

発電用原子炉よりは小型で、出力20Mwだとしても、放射性物質や設備の管理は厳重に行う必要がある。
しかし FRM II では定期検査時や燃料棒交換時に、冷却系統のトラブルなどが見つかっている。
それに加えて、報告義務があるトラブルも多く、管理体制についても批判されていた。

そして先月11月9日には、放射性炭素14の漏洩のために、原子炉は停止された。
年間放出許容値の上限に近付いたための措置とのことだが、詳細については公表されていない。
その後の洗浄処置で再利用可能となったため、12月6日から再稼働している。
ただし21日からはクリスマス休暇で停止している。
研究施設の発表は次の通りで、今回の漏洩では許容値を超えていないとのことだ。
www.frm2.tum.de/aktuelles/news/einzelnews/article/30-zyklus-fortgesetzt/index.html

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テーマ : 原子力問題
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MSC認証を日本で2番目に取得した土佐鰹水産が自己破産

私が好きな魚の一つであるカツオに関して、残念なニュースがあった。
MSC認証を日本で2番目に取得した土佐鰹水産が、5月7日に自己破産を申請したのだ。

会社のHPは既に閉鎖されているので、破産の経緯などの情報は、報道に頼るしかない。
高知新聞の記事は次の通り(8日の記事は短いため、9日の記事を引用する)。
www.kochinews.co.jp/

【7日、静岡地裁に自己破産を申請した土佐鰹水産(幡多郡黒潮町佐賀、明神宏幸社長)は、衰退が続く一本釣り漁業の再生を理念に掲げ、一本釣りのカツオだけを原料にたたきなどを製造・販売してきた。しかし、不漁による原料価格の高騰、東日本大震災に伴う一部事業の中断、消費の冷え込みなどに遭遇し、経営は行き詰まった。本県の水産関係者からは「一本釣りの前途に一層の厳しさを感じる」との声が上がっている。

本県だけでなく、三重、宮崎などの一本釣り漁船は、遠洋、近海を問わず長期の不漁に直面している。その背景として、太平洋上での各国大型巻き網による過剰漁獲が指摘されてきた

そうした中、土佐鰹水産は2009年、カツオ漁業としては世界で初めて、国際版「海のエコラベル」を取得。同社と契約した遠洋一本釣り漁船が漁獲したカツオにエコラベルを付けて販売することが認められた。一本釣りは、魚群を取り尽くすことがないため漁業資源に優しく、巻き網のカツオに対抗し、自社商品の優位性を売り込む狙いがあった

しかしその後、遠洋一本釣り漁船は不漁に拍車がかかり、経営環境はさらに悪化。業績拡大へ積極投資を重ねたことなどが裏目に出た。

同社はまた、宮城県気仙沼市で水揚げされる生鮮カツオを缶詰加工して対米輸出する計画を進めていたが、実現直前に東日本大震災が発生。複数企業の冷凍施設が壊滅したため、計画が宙に浮く不運にも見舞われた。

県内各地の一本釣り関係者からは「〝元気な企業〟との印象を持っていただけに、一報に驚いた」「一本釣り漁業が存廃の岐路を迎える中、先頭を切って挑戦を続けた会社。今後の展開に期待していたが残念」などの声が上がった。

持続可能な漁業の支援に取り組む世界自然保護基金(WWF)ジャパン(東京港区)の担当者は「国内漁業でのエコラベル取得は2例目と先駆的だった。しかも日本人になじみが深いカツオという魚種であり、エコラベルの認知度アップにも大いに貢献した」と残念がっている

明神社長は黒潮町佐賀の「明神水産」創業者の三男。同社でわら焼きたたきを売り出して成功を収めた後、独立して静岡に拠点を構えた。

土佐鰹水産は本社を黒潮町佐賀に置いているが、静岡県藤枝市の工場が実質的な拠点として機能してきた。】

このMSC認証エコラベル付きの鰹たたきは、イオングループで販売していたので、何度か購入したことがある。
割高ではあるものの、環境に配慮した商品を望む消費者には受け入れられるはずだった。


私が好きな魚は、サケ・サンマ・アジ・サバ・タイ・ハマチ、そしてカツオである。 高知に旅行に行ったときには、昼食も夕食もカツオのたたきを食べた。 高知から戻る直前にも、空港のレストランで、カツオのたたき定食を食べた。 そのカツオであるが、日本の一本釣りカツオ漁業が、海のエコラベルであるMSC認証を取得した。 カツオ漁業としては世界初であり、これは誇りに感じてもよいだろう。 MSCを推奨
日本のカツオ漁業がMSC認証取得:伝統の一本釣りは持続可能な漁業


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テーマ : 環境問題
ジャンル : ニュース

自然環境に配慮した養殖水産物を示す「ASC」ロゴマークが決定

30年以上前、小学校高学年の社会科の授業では、「とる漁業から、つくる漁業へ」ということで、水産物養殖を中心に、サケの人工ふ化などについても学んだ。

最近でも燃料費高騰に加えて、乱獲や密漁による資源量減少のため、効率的な養殖漁業が注目されている。
そして今では、山の中でヒラメやフグを養殖している事例まである。

天然産の方が身がしまっていておいしいと言われるが、グルメではない雑食性の私には、養殖ものでも気にしない。
それよりも、WWFジャパンの会員としては、自然環境に配慮している水産物なのかということに関心がある。

例えば、イオンで買い物をするときは、海のエコラベルであるMSC認証のサケやカツオを購入することにしている。
www.wwf.or.jp/activities/nature/cat1136/cat1143/ (WWFジャパンでのMSCの説明)
www.topvalu.net/brand/csr/msc.html (イオンのMSC商品の紹介)

私は高給取りではないので、ボーナス時や翻訳料金が入った時くらいにしか買えないのが残念だ。
ということで、由来や環境配慮がはっきりしない水産物を買っているのではないかと、いつも心配してしまう。

養殖水産物についても同様に、環境配慮をした生産方式であることを認証するシステムが適用されることになった。
それはASC(Aquaculture Stewardship Council)認証で、以下のようなロゴマークが決定した。
www.asc-aqua.org/index.cfm (ACSの4月17日のニュースリリース)
www.wwf.or.jp/activities/2012/04/1057826.html (WWFジャパンでの説明)



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テーマ : 環境問題
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秋田のペレットストーブの灰からチェルノブイリ由来のセシウム137を検出

東京電力福島第一原発の事故に由来する放射性セシウム汚染問題は、今後何十年も続く環境汚染である。
首都圏ではいくつかの自治体で、ごみ焼却灰における高濃度汚染に悩んでいる。
土壌汚染の測定結果や除染などについて、緊急シンポジウムを追加開催している学会もある。

昨年夏には、被災地の松を燃やすかどうかで、賛否両論入り乱れての一騒動があった。
今週は秋田で、ペレットストーブの灰から放射性セシウム137が検出されたことが騒ぎとなっている。

地元紙の秋田魁新報の記事と、秋田県横手市森林組合公式ブログを引用しておこう。
www.sakigake.jp/p/akita/news.jsp (3月18日の記事)
www.sakigake.jp/p/akita/news.jsp (3月20日の記事)
hshinrin.blog14.fc2.com/blog-entry-739.html (森林組合のブログ記事)

【大館市の木質ペレット製造業者が市内の事業所などから回収したペレットストーブの焼却灰の一部から、1キロ当たり千ベクレルを超える放射性物質が検出されたことが17日、分かった。

業者は、ペレットに放射性物質が含まれていた可能性があると指摘。「原料の一部に北欧産の輸入材を使ったおがくずが含まれていた。その中に(1986年の)チェルノブイリ原発事故で汚染されたものがあった可能性がある」としているが、どの製造工程で混入したか不明。回収した灰は数キロ程度で、業者が市内のペレット製造施設内で保管している。】

【大館市の木質ペレット製造業者の製品の焼却灰から1キロ当たり千ベクレルを超える放射性物質が検出された問題で、市は19日、汚染の可能性があるペレットが本年度400トン生産され、県内11市町で既に販売されていたと発表した。原因は原料に使われていたスウェーデン産のアカマツであることも分かった。業者が製品と灰の自主回収を進めている。】

大館市のHPでは公式ツイッターも含めて、3月21日時点で、残念ながら何も情報はない。
www.city.odate.akita.jp/

具体的な数値(1300 Bq/kg)については、河北新報の記事を引用しておこう。
www.kahoku.co.jp/news/2012/03/20120320t43014.htm
【秋田県大館市は19日、暖房の燃料に使われる木材加工品「ペレット」の焼却灰から1キログラム当たり1300ベクレルの放射性セシウム137が検出されたと発表した。

国の基準では、1キログラム当たり8千ベクレル以下なら通常のゴミと同じように埋め立てが可能。肥料などとして使用する場合の暫定許容値は同400ベクレル。】

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テーマ : 環境問題
ジャンル : ニュース

東京電力は日本原子力学会特別セッションでも津波だけが原発事故の主原因と主張

今朝もデータベース翻訳を始めたが、1時間くらいで疲れてしまい、休憩することにした。

昨日19日から福井大学で、日本原子力学会の春年会が開催されているので、関連ニュースを探してみた。
すると、福島第一原発事故の特別セッションで東京電力が発表していたことを知った。
www.aesj.or.jp/meeting/2012s/j/J12Spr_TOP.html (学会の案内)
www.aesj.or.jp/meeting/2012s/j/J12Spr_specialsession.html (3月19日、福島第一原子力発電所事故特別セッション)
【第2部 福島第一原子力発電所事故対応の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(東京電力)福田俊彦

第3部 福島第一原子力発電所事故対応技術セッション(その1)
(1)福島第一原子力発電所事故 1)事故後の取り組みと今後の中長期計画 ・・・・・・・・・・・・・・・(東京電力)山下和彦
(2)福島第一原子力発電所事故 2)地震・津波の影響について  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(東京電力)土方勝一郎
(3)福島第一原子力発電所事故 3)事故時の対応状況とプラント挙動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(東京電力)宮田浩一 】

この特別セッションの内容について、福井新聞の記事から抜粋しておこう。
www.fukuishimbun.co.jp/localnews/earthquake/33698.html
【…東京電力福島第1原発事故を受けた特別セッションでは、東電が福島での事故対応や事故時のプラントの動き、地震・津波の影響などを報告。「想定したシビアアクシデント(過酷事故)を超える事故に対する備えが十分ではなかった」と謝罪した。同学会は6月末を目途に、福島事故の進展を技術的な見知からまとめる方針を示した。

…特別セッションには会員や一般聴衆ら約500人が参加。東電の福田俊彦原子力品質・安全部長はプラントパラメーターの解析結果などから「地震発生から津波到達までの間、プラントの安全性は維持できていた」と指摘。過酷事故に至った主な原因は地震ではない―とあらためて説明した。

一方、燃料損傷に伴い被覆菅の金属ジルコニウムと水蒸気が化学反応し発生した水素が、原子炉格納容器から原子炉建屋内に漏れて水素爆発を起こすことは予想していなかったと強調。想定を超える重大事故への備えが不十分で、安全対策に不備があったと認めた。
…】

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テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

福島第一原発から放出されたプルトニウム241を検出

独立行政法人・放射線医学総合研究所(放医研)の研究チームでは、福島第一原発事故で放出された放射性核種の分析研究も、継続的に行っている。
www.nirs.go.jp/index.shtml

世間一般では、事故直後は放射性ヨウ素、そして今は放射性セシウムに関心が集まっているが、放医研では不揮発性のウランの分析結果も学術誌で発表している。

共同通信の配信記事によると、放医研は福島県内の土壌から、原発事故由来のプルトニウム241を検出したそうだ。
www.47news.jp/47topics/e/226454.php
【放射線医学総合研究所(千葉市)は、東京電力福島第1原発から北西や南に20~32キロ離れた福島県内の3地点で、事故で放出されたとみられるプルトニウム241を初めて検出したと、8日付の英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」の電子版に発表した。

人体に影響のないレベルだが、プルトニウム241は他の同位体に比べて半減期が14年と比較的短く、崩壊してできるアメリシウム241は土壌を経由して主に豆類に取り込まれやすい。放医研は「内部被ばくを避けるためにも 原発20キロ圏内での分布状況を確かめる必要がある」としている。

同位体の比率から今回の事故が原因と分かった。
…】

Scientific Reports 電子版に掲載された英語論文は、無料でダウンロードできる。
プルトニウムの他の同位体、239、240との比を比較すると、長崎に投下されたプルトニウム型原爆や過去の核実験、そしてチェルノブイリ事故由来とも異なることからも、福島第一原発から放出されたと結論付けられている。
また、崩壊により生じるアメリシウム241が今後増加し、特にマメ科植物に蓄積されることが懸念されている。
www.nature.com/srep/2012/120308/srep00304/full/srep00304.html

朝日新聞の記事から、追加された情報を中心に引用しておこう。
www.asahi.com/national/update/0308/TKY201203080724.html
【…浪江町と飯舘村の落葉の層から1キロあたりそれぞれ34.8ベクレルと20.2ベクレル、Jヴィレッジの表土から1キロ当たり4.52ベクレルのプルトニウム241を検出した。プルトニウム241は、アルファ線やガンマ線を出すアメリシウム241(半減期432.7年)に変わる。

研究グループの田上恵子・放医研主任研究員は「大気圏内核実験が盛んに行われていた1963年当時の放射性降下物のデータから推定すると、今回のプルトニウム241の検出量は当時と同程度かそれ以下。特別な対策は必要ない」と話す。】

両方の記事では、気になる相違点がある。
論文では、アメリシウム241による内部被ばくを避けるために、さらに詳しい調査が必要だとしている。
しかし朝日新聞の取材に対して、共著者である田上主任研究員は、「特別な対策は必要ない」と矛盾している。
論文の主著者は、鄭建(ツン・ジェン)主任研究員なのに、研究グループ内で意見対立があるのだろうか。

今回は4か所しかサンプル採取ができなかったので、放射性セシウムと同様に、もっと濃度が高い場所、つまりホットスポットが見つかるかもしれない。
過去の大気圏核実験によるフォールアウト(降下物)よりも少ないとは言っても、22世紀になっても残る放射性核種であり、
放射性セシウムと同様に、その動向を追跡調査すべきだろう。

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テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

遺伝子組換え作物への反発がヨーロッパで強いためBASFは研究拠点をアメリカに移転

私がドイツに留学していた1990年代後半、遺伝子組換え食品がヨーロッパにも導入されるという話があった。
ということで大学でも反対集会が行われ、完熟しても日持ちするトマトを例にして、環境問題専門家の講演があった。

遺伝子組換え作物と聞くと、アメリカのモンサント社のことを一番に思い浮かべる人は多いだろう。
しかし、反対の声が強いヨーロッパであっても、ドイツの総合化学企業BASFは子会社のBASF Plant Science で、遺伝子組換えジャガイモなどの開発研究をしている。
www.basf.com/group/corporate/en/ (BASFのHP、英語版)
www.basf.com/group/corporate/en/products-and-industries/biotechnology/plant-biotechnology/index (BASF Plant Science)
www.basf.com/group/corporate/en/products-and-industries/biotechnology/index (バイオテクノロジー製品のページ)

ドイツと言えばジャガイモ、というわけではないだろうが、BASFでは工業用デンプン生産用品種の Amflora と、疫病カビ抵抗性遺伝子導入型の食用 品種の Fortuna を開発し、EU委員会に商業的栽培認可の申請している。

Amflora は食用ではないためか、10年以上経過してやっと、実験的な小規模栽培ではあるが、圃場での栽培が許可された。
しかし、グリーンピースなどの実力行使型の環境保護団体が邪魔をするため、警官の護衛付きで植え付け作業をするほど、ヨーロッパでは反対派が多いことを実感させた。

また、食用品種の Fortuna についてはまだ栽培許可が下りていないことに加えて、大手食品加工会社などが、もし許可が出たとしても使用しないと宣言するなど、反対の声は大きくなっている。

ヨーロッパでこれ以上粘ったところで、栽培許可が下りるのはいつになるのか予測ができない。
そのためかBASFは、遺伝子組換え植物の研究のほとんどをアメリカの施設に移管し、販売も南北アメリカを対象とすることにした。
www.basf.com/group/pressrelease/P-12-109

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テーマ : 環境問題
ジャンル : ニュース

バルト海東部でタラ資源量が回復してきたが他の食用魚を食べてしまう心配も

ヨーロッパの漁業は大西洋、地中海、北海、バルト海で主に行われているが、EU以外のヨーロッパ諸国だけではなく、北アフリカ諸国やトルコなどとも漁獲割り当て交渉をしなければならない。

大西洋と地中海でのクロマグロは、資源管理をするはずだったのに、実効性がないという批判もあり、禁漁の提案も出るようになった。
また、タラも乱獲による資源量減少が危惧されていて、他のニシンやサバも含めて、EUとノルウェーとの交渉がなかなか決まらなかったり、さらにアイスランドなども絡んでくると、漁獲割り当て交渉は長丁場となったり、決裂したりする。

参考として、EU・ノルウェー・アイスランドの漁業関係部署のHPを紹介しておく。
ec.europa.eu/fisheries/index_en.htm (EU)
www.regjeringen.no/en/dep/fkd.html (英語版。情報量はノルウェー語ページの方が多い。)
www.regjeringen.no/en/dep/fkd.html (英語版。)

EUではトロール漁法規制などの乱獲防止策を協議しているが、加盟国全会一致が原則なので、現時点で最大の問題であるユーロ危機への対応と同様に、混乱した状態のまま延々と交渉することになるだろう。

EU漁業委員会で2012年の漁獲割当が決まったのは、2011年12月になってからだ。
www.fis.com/fis/worldnews/worldnews.asp

決まるのも遅いし、割当量だけでなく操業日も減らされていて、例えば次の記事のようにイギリスの漁業関係者は憤っている。
www.guardian.co.uk/environment/2011/dec/17/fishing-industry-lands-controversial-deal

そんななかで、乱獲によって減少したタラ資源量がバルト海東部で回復していることが判明した。
そしてスウェーデンのタラ漁業は、その責任ある管理手法が評価されることになり、2011年6月にMSC認定を受けるまでになった。
www.msc.org/newsroom-ja/news/first-swedish-cod-fishery-receives-msc-certification

スウェーデン東部バルト海のタラ漁業が、責任ある管理と資源の回復によって、MSCエコラベルを取得しました。

たった数年前にほぼ資源の崩壊の危機にあったタラ漁業が、現在、回復し、持続的で良好に管理されている漁業として認証されました。…
 
このタラ漁は、1年のうち7月と8月の禁漁期を除く10ヶ月にわたりバルト海東部のボーンホルムで底魚底引き、フィッシュ・トラップ、延縄によって行われています。主な水揚げ港は、スウェーデン南東部沿岸のカールスクローとシムリスハムンで、どちらの町も商業漁業の長い歴史を持っています。水揚げ後のタラは、地元市場に生で売られるか、輸出用に加工されます。
…】

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テーマ : 環境問題
ジャンル : ニュース

原子力安全委員会も原子力村の金の力に支配されていた

日本では第二次大戦前から核物理学の基礎研究が行われていて、戦時中は原爆開発が試みられたこともある。
敗戦後に一時中断していた研究は、原子力平和利用の名の下で再開した。
アメリカからの濃縮ウラン受入のために日本原子力研究所が設立され、研究用原子炉の開発を始め、さらに実用化も検討していた。

研究の進展が遅いことに業を煮やしたのか、それとも日米同盟推進の主役になりたかったのか、中曽根康弘(当時・改進党議員)が政治主導の原子力開発を推進するため、「学者の頬を札束でひっぱたいて目を覚まさせる」という主旨の発言をした(ただし本人は否定しているが)。
そして原子力関係予算を成立させ、日本の原子力開発は政治主導という不穏な状況に変化した。

純粋な科学研究の発展ではなく、政治主導の国策体制となった時点で、金の力で全てが決まる時代が始まった。
そして電力会社や原子力関係機関、そして関係省庁が形成する強固な「原子力村」が、どのように国民をだましてきたのか、これまで何度も指摘され、そして原発および再処理施設などの危険性が何度も警告されてきた。
しかし、国民の多くは国家プロパガンダに騙され、「あたかも原発が存在していないかのような日常生活」をおくってきた。

ところが2011年3月11日以降は状況が一変し、「原子力村」に対する抗議活動が盛んになってきた。
そして反原発関連の書籍も急に増え、これまで沈黙させられていた声、無視されてきた声が、国民に届くようになってきた。
ここでは最近の資料として、岩波書店の雑誌「科学」(2011年12月号)の特集「核と原発」、そして角川SSC新書の「まやかしの安全の国」(田辺文也著)を挙げておきたい。

そして2012年元旦の朝日新聞の記事では、原子力村の金の力が、原子力安全委員会にも及んでいたことが指摘されている。
www.asahi.com/national/update/1231/OSK201112310119.html
【東京電力福島第一原子力発電所の事故時、中立的な立場で国や電力事業者を指導する権限を持つ内閣府原子力安全委員会の安全委員と非常勤の審査委員だった89人のうち、班目(まだらめ)春樹委員長を含む3割近くの24人が2010年度までの5年間に、原子力関連の企業・業界団体から計約8500万円の寄付を受けていた。朝日新聞の調べで分かった。

うち11人は原発メーカーや、審査対象となる電力会社・核燃料製造会社からも受け取っていた。

原子力業界では企業と研究者の間で共同・受託研究も多く、資金面で様々なつながりがあるとされる。中でも寄付は使途の報告義務がなく、研究者が扱いやすい金銭支援だ。安全委の委員へのその詳細が明らかになるのは初めて。委員らは影響を否定している。】


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テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

プロフィール

MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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