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商業捕鯨を再開する前に先住民アイヌの権利を保証すべき

日本政府が、国際捕鯨委員会(IWC)から脱退することを今年中に宣言するそうだ。
商業捕鯨を再開すると、東京オリンピック・パラリンピックをボイコットする選手が現れるかもしれない。

時事通信の記事は次の通り。
www.jiji.com/jc/article

【政府は20日、クジラの資源管理について話し合う国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、IWCが禁じる商業捕鯨を北西太平洋で約30年ぶりに再開する方針を固めた。…
 来週発表する。来年1月1日までにIWC事務局に通知すれば、6月末での脱退が決まる。日本の国際機関脱退は極めて異例。…
 日本は現在、資源調査の目的で南極海と北西太平洋でミンククジラなどを年間約630頭捕獲しているが、脱退により南極海での捕鯨は国際条約上できなくなる。商業捕鯨は、来年にも日本の排他的経済水域(EEZ)や近海でのみ実施する見込み。】

日本が商業捕鯨を行うには、IWCでモラトリアム終了の決議ができない現状では、IWCから脱退するのが近道ということだ。

ノルウェーとアイスランドがIWCに加盟していながら商業捕鯨をしているのは、モラトリアムに異議申立をしたから。
日本は、日米協議で異議申立を撤回したので、商業捕鯨を再開できないのは自業自得である。

アメリカ側の圧力だと言いたい人もいるようだが、当時の中曽根康弘首相が、自動車や半導体、北太平洋でのサケ・マス漁業を守るために、捕鯨を切り捨てたのだ。

IWCでは以前、非公式な提案として、南極海からの撤退と引き換えに、日本近海での小規模沿岸捕鯨の再開が打診されたことがあったが、なぜか日本側が交渉を拒絶した。

IWCを脱退すると、日本のEEZ内であっても、近隣諸国で資源管理の国際委員会を新たに設置して、捕獲枠を決めることになる。
日本が主導するにしても、中国、ロシア、韓国が必ず入るから、何も決まらないおそれがある。

日本の食文化を守れと騒いで、商業捕鯨を再開する前に、日本政府がすべきことは、先住民アイヌの権利を保証することだ。

IWCでの先住民生存捕鯨として、アイヌに捕獲枠を割り当てることも可能と思われたが、日本政府が提案したことはない。
ヤマト民族の大規模捕鯨の方ばかり主張して、先住民の権利を無視するのは、さすが人権後進国である。

アイヌが定期的な狩猟として捕鯨をしていたのかについては、様々な見解があるが、次の報告書を参考にしてほしい。
icfcs.kanagawa-u.ac.jp/publication/ovubsq00000012h5-att/report_02_008.pdf

積極的に捕鯨をしていたとは言えないものの、寄り鯨やイルカ猟も含めて、アイヌの狩猟文化全体からクジラとの関係を考えて、先住民の文化の復興と伝承を考えるべきではないだろうか。

アイヌの権利を考えるとき、例えば、サケの漁業権問題から検討してはどうだろうか。
来年の通常国会で、アイヌ新法が提出されるのだが、これまで100年以上も奪ってきた権利を、完全に復活させてほしいものだ。

アイヌの伝統文化を継承するために捕獲するサケの量は限定的であり、乱獲になることはない。
しかし、現状では、サケの捕獲には許可が必要で、無許可で獲ると、警察に逮捕されてしまう。

また、日本国憲法の他に主要な基本法をアイヌ語で書き、公用語として日本語とアイヌ語を規定すべきだ。
そして小学校では、英語を導入する前に、アイヌ語の時間を作ってほしい。
そうすれば、アイヌ語に興味を持つ人も増えて、公的文書をアイヌ語で残すこともできるようになるだろう。

日本の食文化を守れと騒いでいる国会議員は、率先してアイヌの権利復活を主張し、それから商業捕鯨の再開を議論してほしい。

自民党総裁選や女子テニスの話題があったためか、国際捕鯨委員会(IWC)のニュースはあまり注目されなかったようだ。今回は、日本が議長国の順番となったためか、商業捕鯨再開について議題にできたが、投票の結果は否決された。すると日本政府は、というよりも水産庁の一部、そして捕鯨推進の一部議員などの利害関係者は、国益を無視して、IWCを脱退することも視野にするという。例えば、朝日新聞の記事や論説をいくつか引用...
やはり日本政府は沿岸小規模捕鯨の実現を目指すべきではないか


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やはり日本政府は沿岸小規模捕鯨の実現を目指すべきではないか

自民党総裁選や女子テニスの話題があったためか、国際捕鯨委員会(IWC)のニュースはあまり注目されなかったようだ。
今回は、日本が議長国の順番となったためか、商業捕鯨再開について議題にできたが、投票の結果は否決された。
すると日本政府は、というよりも水産庁の一部、そして捕鯨推進の一部議員などの利害関係者は、国益を無視して、IWCを脱退することも視野にするという。

例えば、朝日新聞の記事や論説をいくつか引用しておこう。

1) 9月15日:商業捕鯨再開案を否決 日本、脱退も視野に IWC総会
www.asahi.com/articles/DA3S13679466.html
【総会は最終日の14日、商業捕鯨の再開と組織改革をめざした日本の提案を否決した。商業捕鯨の停止継続が重要だとする決議が前日に採択されるなどクジラの保護を重視する流れが強まっており、日本は捕鯨政策の練り直しを迫られそうだ。】

2) 9月19日:捕鯨委の脱退、農水相も示唆 「あらゆる選択肢精査」
www.asahi.com/articles/DA3S13685046.html
【国際捕鯨委員会(IWC)の総会で、商業捕鯨の再開と組織改革をめざした日本の提案が否決されたことについて、斎藤健農林水産相は18日の閣議後の記者会見で、「IWCとの関係について、あらゆるオプション(選択肢)を精査せざるを得ない」と述べた。】

3) 9月19日:(社説)日本の捕鯨 IWCに背を向けるな
www.asahi.com/articles/DA3S13684894.html
【日本への批判の大きな材料になっているのが、南極海などでの捕殺を伴う調査捕鯨だ。4年前に国際司法裁判所が「科学目的とはいえない」として中止を命令した。日本は捕獲頭数を減らすなどして再開したが、IWC総会での議論を待たなかったため、強い批判が続いている。

脱退を視野に入れているのだとすれば、賛同できない。国際的な枠組みに背を向けたときに失う信用の重みを考えるべきだ。さらに、国連海洋法条約は鯨の保存、管理、研究について国際機関を通じて活動すると定めている。脱退すれば問題が解決するわけではない。

日本はIWCの管理対象外の小型鯨類について、沿岸捕鯨を続けている。資源管理に十分注意しながら、こうした捕鯨への国際理解を深めることに、まずは力を入れるべきだ。】

ここで、日本が商業捕鯨を再開できないことについて、外国からの不当な圧力だとか、クジラで譲歩すると次はマグロが狙われるなどと主張する人がいるため、森川純・酪農学園大学名誉教授の「調査捕鯨の堅持を選択することに政策的妥当性はあるのか」という記事を紹介しておこう。
www.jwcs.org/data/1112_morikawa.pdf (前編)
www.jwcs.org/data/1203_morikawa.pdf
 (後編)

ノルウェーとアイスランドが商業捕鯨を再開しているのは、モラトリアムに対して異議申立をしたからである。
日本は、当時の中曽根康弘首相の意向で、異議申立を取り下げてしまったため、再開にはIWCの議決が必要だ。
小規模沿岸捕鯨業者が捕獲を望んでいるミンククジラの異議申立も取り下げたのだから、捕獲対象は小型クジラやイルカのみになった。

中曽根内閣の事業仕分けとして、遠洋捕鯨産業を安楽死させるはずだったのに、一部抵抗勢力が調査捕鯨で鯨肉を確保することを目指した。
そして東日本大震災の復興予算までもが調査捕鯨に投入されるなど、誰も口出しできない事業になった。

調査捕鯨について、その科学的目的だけではなく、捕獲頭数の妥当性も合理的に説明できないことに加えて、水産庁担当官が、鯨肉の安定供給が目的の1つだと国会で答弁してしまったため、誰にも信用されない事業である。

以前、IWCでは非公式協議の場で、日本が南極海での捕鯨を放棄する代わりに、沿岸小規模捕鯨の再開を提案されたこともあるが、なぜか日本政府は断った。
アイヌの先住民生存捕鯨ならば認められそうなのに、これも日本政府が提案しようともしない。

日本政府と捕鯨関係者は、自ら商業捕鯨再開の道を閉ざしているのに、IWCを脱退すると脅しているが、脱退しても商業捕鯨は再開できない。

ヨーロッパの捕鯨国・地域のノルウェー・アイスランド・フェロー諸島・グリーンランドが、北大西洋海産哺乳動物委員会(NAMMCO)で持続可能な捕鯨を推進しているように、南極海で捕鯨をする場合、反捕鯨国のオーストラリア・ニュージーランドと委員会を作ることになるから、無理だ。

北西太平洋と日本海のEEZ内で捕鯨をするにしても、回遊性のクジラの資源管理について、近隣諸国と共同の委員会を設立する。
最低でも日本・ロシア・韓国が入ると思われるが、この3カ国が捕鯨について協力関係になれるのかどうか不明だ。
もし中国・台湾・北朝鮮が委員会に入るとなると、合意ができそうもない。

そのため、現実的な選択として、南極海からの永久的な撤退を宣言した後、日本のEEZ内での捕鯨について、捕獲対象をミンククジラまでの大きさのクジラとイルカにし、ナガスクジラ・マッコウクジラ・ザトウクジラなどの大型種は永久に保護対象とすれば、IWCで合意できる可能性が開けるかもしれない。

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ジャンル : 政治・経済

クジラ・イルカを脅かすのは捕鯨よりも混獲

翻訳専業となって、予想よりも20%くらい多く受注しているため、興味のあるニュースなどを細かくチェックする時間が足りなくなってきた。
それでも休憩時間などを利用して、なるべくニュースをチェックして、
特許以外の英語・ドイツ語を読むようにしている。

気になったニュースの中から今日は、国際捕鯨委員会(IWC)の話題を取り上げよう。

日本の報道では、反捕鯨国との対立ばかり取り上げられてしまい、クジラ・イルカに関する他の話題はほとんど知られないままである。

以下に引用した朝日新聞と日本経済新聞の社説を見ても、調査捕鯨の話題が中心だ。
ただし、南極海から撤退して沿岸捕鯨を続けるという提案があるところが、少し進歩していると思う。

digital.asahi.com/articles/DA3S12636100.html (朝日新聞11月1日)
【日本での鯨肉の需要はかつてと比べて大幅に減った。
調査捕鯨の維持に年間数十億円の補助金がつぎ込まれてもいる。
袋小路に立てこもるような姿勢を続けて利益があるだろうか。

国際社会の声に耳を傾け、かたくなな姿勢を改める。
一方で、和歌山県太地町などでの「沿岸小型捕鯨」への理解を広げる努力を重ねる。
そんな戦略に転じるべきではないか。】

www.nikkei.com/article/DGXKZO09015410R01C16A1EA1000/ (日本経済新聞11月1日)
【70年代以前と比べ日本国内の鯨肉需要は大幅に減少した。
遠洋での商業捕鯨をあきらめ、沿岸での捕鯨枠の確保に集中することも、政府は考えるべきではないか。】

他の捕鯨国、ノルウェーとアイスランドについて、日本では報道が少ないので、代わりにドイツ語記事を読むことになる。
ここでは Die ZEIT の記事を引用しておこう。
www.zeit.de/wissen/2016-10/walfang-verbot-norwegen-japan-iwc/komplettansicht (ノルウェーと日本の捕鯨)
www.zeit.de/2016/45/wale-gefahren-internationale-walfangkommission-japan-fischer/komplettansicht (混獲の問題)

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今年のアイスランドからの鯨肉輸入ルートは北極海経由のようだ

(最終チェック・修正日 2015年08月07日)

今年も日本の業者が、アイスランドからナガスクジラ肉を輸入するとのことで、ヨーロッパの野生動物保護団体を中心に反対意見が表明されている。
冷凍ナガスクジラ肉約1,700トンを積んだ貨物船 Winter Bay 号の情報を見ると、目的地はアフリカ西部のアンゴラとなっていたため、昨年と同じアフリカ南端を回るコースで日本に向かうと思われた。

当初は5月中旬に出航すると思われたが、6月に入っても停泊したままだった。
エンジントラブルで延期されたとのことだが、6月5日にようやく出航した。
www.theguardian.com/environment/2015/jun/05/iceland-sends-shipment-of-1700-tonnes-of-whale-meat-to-japan (英語)
www.mbl.is/frettir/innlent/2015/06/05/sending_hvalkjots_til_japans_vekur_athygli_erlendis/ (アイスランド語)

その後の航路を確認すると、昨年のアイスランド西岸を南下するルートではなく、なぜか北側を回って東進を続けていた。
そして不思議なことに、目的地がアンゴラではなく、ノルウェーのトロムセー (Tromsø) に変更されていた。
本日13日は、そのトロムセーに停泊している。
www.marinetraffic.com/en/ais/details/ships/shipid:402701/imo:8601680/mmsi:341433000/vessel:WINTER%20BAY

次の寄港地はまだ表示されていないが、北極海を通過するルートでロシアに寄港しながら、日本を目指すと予想されている。
この北極海ルートについて、イルカ・クジラ保護団体のWDCが懸念を表明している。

uk.whales.org/news/2015/06/wdc-critical-of-attempts-to-ship-whale-meat-through-russian-waters



国際司法裁判所で、日本の南極海調査捕鯨は科学的目的を達成していないことが指摘されたため、新たな調査計画が認められるまでは捕獲しないことになった。捕獲できないということは、副産物の鯨肉も供給されないことになり、他の捕鯨国のアイスランドやノルウェーから輸入しようと考えるのは自然な成り行きだ。アイスランドもノルウェーも捕鯨国ではあるが、日本とは異なり、国際捕鯨委員会のモラトリアムに異議申立をしたため、独...
今年もアイスランドからナガスクジラ肉を輸入する予定



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今年もアイスランドからナガスクジラ肉を輸入する予定

国際司法裁判所で、日本の南極海調査捕鯨は科学的目的を達成していないことが指摘されたため、新たな調査計画が認められるまでは捕獲しないことになった。
捕獲できないということは、副産物の鯨肉も供給されないことになり、他の捕鯨国のアイスランドやノルウェーから輸入しようと考えるのは自然な成り行きだ。

アイスランドもノルウェーも捕鯨国ではあるが、日本とは異なり、国際捕鯨委員会のモラトリアムに異議申立をしたため、独自に捕獲枠を設定して捕鯨を続けている。

ただしノルウェーのミンククジラの場合、尾の肉と皮から検出された殺虫剤成分が基準値を超えていたため、廃棄処分となってしまった。
www.theguardian.com/environment/world-on-a-plate/2015/mar/23/japan-refuses-norways-toxic-whale-meat

去年はアイスランドから約2,000トンのナガスクジラ肉が輸入されたが、環境保護団体グリーンピースなどが貨物船を追跡して、途中でどこにも寄港できないように妨害した。
また別のルートとして、カナダの陸路経由で太平洋側のバンクーバーに送り、そこから日本まで船で運んだこともあった。

それで今年はどうするのかと思っていたら、5月18日のアイスランドでの報道では、既に1,700トンの輸出を準備しており、レイキャビク近くの港には、貨物船「Winter Bay号」が既に待機しているとのことだ。
eyjan.pressan.is/frettir/2015/05/18/kristjan-loftsson-a-leid-i-nyja-aevintyraferd-med-hvalkjot-1-700-tonn-bida-i-hafnarfjardarhofn/

Winter Bay号を追跡したければ、次のサイトで位置情報が得られるので、興味があるならば確認してほしい。
www.marinetraffic.com/en/ais/details/ships/shipid:402701/imo:8601680/mmsi:341433000/vessel:WINTER%20BAY

現時点で目的地は、アンゴラのルアンダ港となっているが、一度寄港して燃料や食料を補給した後、アフリカ南端を回って日本に向かうと思われる。
今回も抗議デモなどいろいろあると思うので、報道をチェックしてみよう。

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テーマ : 海外ニュース
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ノルウェーがアイスランドにミンククジラ肉を輸出

(最終チェック・修正日 2014年11月04日)

アイスランドでは今年、ミンククジラ漁が不調で、10月14日時点の捕獲数は24頭にとどまっている。
9月の23頭で終了かと思っていたら、10月になってからも続けたようで、1頭増えた。
それでも今年は不漁という傾向は変わらず、10月末の漁期終了の前に、この頭数で終わったと思われる。
(追記(11月4日):11月4日に更新され、24頭で終了と確認できた。)
www.fiskistofa.is/veidar/aflastada/hvalveidar/

アイスランドで日常的に鯨肉を食べる人は、アンケートによると、人口のわずか3%だけだという。
それでも観光客が、地元の珍しい料理を食べたいということで、ミンククジラ肉のステーキは需要があるそうだ。

捕獲枠の約半分で終わり、鯨肉が足りないアイスランドとは反対に、ノルウェーでのミンククジラ漁は好調で、鯨肉が余っているという。
余った鯨肉は日本やアイスランドに輸出すると予想されていたところ、実際にアイスランドに10トン輸出する計画が発覚した。

この鯨肉輸出の情報を入手した動物福祉団体の
Animal Welfare Institute (AWI)は、プレスリリースで次のように報告している。
awionline.org/content/norway-plans-whale-meat-shipment-iceland

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反捕鯨国がアイスランド政府に捕鯨中止を申し入れたがナガスクジラ漁は続いている(9/22時点で133頭)

(最終チェック・修正日 2014年09月22日)

スロベニアで開催された国際捕鯨員会(IWC)の年次総会が終わり、日本の報道では、南極海調査捕鯨をめぐるやり取りばかり取り上げられていた印象だ。
調査捕鯨が必要だと言うだけで、科学的手法に基づく野生生物研究なのかどうかは、ほとんど説明されていなかった。
日本の食文化という観点が目立ち、商業捕鯨モラトリアムに対する異議申立を撤回した背景について、説明しようともしない。

IWCでの議題は、日本の調査捕鯨だけではなく、船舶との衝突事故やホエールウォッチングなど多岐にわたる。
反捕鯨国イギリスのガーディアン紙でさえ、「捕鯨が最大の脅威なのか」という記事を掲載し、漁業での混獲や海洋汚染など、他の要因を説明している。
www.theguardian.com/environment/live/2014/sep/16/is-whaling-the-biggest-threat-to-whales-shipping-climate-change

しかし、日本語での情報提供がわずかなためか、頑なな反捕鯨国に攻撃される被害者・日本という印象が植え付けられている。
さらに、商業捕鯨をしているアイスランドやノルウェーを批判しないのかなど、何も知らないことに起因する思い込みによる暴言も、あちこちで目にする。

アイスランドはIWC年次会合の間もナガスクジラ漁を続け、9月17日発表の統計では、124頭まで捕獲数を伸ばしている。

8日は109頭だったので、捕鯨船2隻で毎日捕獲を続けたと思われる。
(追記(9月22日):9/22時点で133頭に到達した。)
www.fiskistofa.is/veidar/aflastada/hvalveidar/

9月15日のアイスランドの報道では、EUやアメリカなど反捕鯨国が共同で、商業捕鯨の停止を求める外交措置(デマルシェ)を取ったとあったので紹介しよう。
www.mbl.is/frettir/innlent/2014/09/15/gagnryna_hvalveidar_islendinga/
www.mbl.is/frettir/english/2014/09/15/demarche_against_whaling_by_iceland/

英語記事では声明全文が掲載されているようなので、どのような抗議内容なのか、読んでみてほしい。

また、EUのプレスリリースでも、声明の内容が確認できる。
europa.eu/rapid/press-release_MEMO-14-529_en.htm
www.euinjapan.jp/media/news/news2014/20140915/170119/

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調査捕鯨継続の理由にクジラ食害論は使わないでほしい

国際捕鯨員会(IWC)の年次総会が始まり、日本でもニュースで調査捕鯨の今後について紹介していた。
反捕鯨国では、「捕鯨禁止をより効果的にすべき」や、「日本の捕鯨は科学よりも寿司をもたらした」など、批判記事が大量に出ている。

イギリスとドイツの報道を例示しておこう。
www.theguardian.com/environment/2014/sep/15/japans-whaling-has-produced-more-sushi-than-science
www.rp-online.de/panorama/wissen/walfang-verbot-soll-effizienter-werden-aid-1.4525740


日本の報道によると、調査捕鯨の新しい計画が科学的だと説明しようとしているそうだ。
科学用語を使って説明しても、鯨肉確保が第一目的であることに変わりはないので、誰にも信用されないだろう。
調査捕鯨が真に科学研究だと言うならば、海洋生態系におけるクジラの役割を解明するために、どうして致死的調査も必須なのか、そして捕獲頭数の根拠は何か、それらを中心に報道すべきだ。

その期待に反して国内では、食文化の維持や、増えたクジラが漁業に悪影響を与えるという、科学とは無関係の話ばかりが流されている。

今日15日夕方のTBSのニュース番組でも、いわゆる「クジラ食害論」を主張する日本捕鯨協会の山村会長が出てきた。
ニュースの動画は、次のサイトで紹介されている。
news.tbs.co.jp/20140915/newseye/tbs_newseye2299121.html
反捕鯨国から厳しい対応も、それでも「クジラ食べたい」

…鯨料理の有名店で開かれたのは、その名も「~もうひとつのIWC総会~いつまでもホエール食いてぇ総会」。食文化としての「鯨」を広めることや、捕鯨問題への正しい理解を求める声が相次ぎました

増えすぎた鯨に魚が食べられ漁師が困る状態は、日本でも起こっています」(日本捕鯨協会 山村和夫会長)

科学的な知見から捕鯨の必要性を訴える日本の声は届くのか。…】



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アイスランドのナガスクジラ捕獲数は109頭に達した(9/17までに124頭)

(最終チェック・修正日 2014年09月13日)

国際捕鯨員会(IWC)の商業捕鯨モラトリアムに異議申立をしたアイスランドとノルウェーは、自国周辺海域で捕鯨を続けている。
それでも、一時期停止していた影響で、鯨肉は古臭い食べ物という印象が根付き、需要はそれほど強くはない。

ノルウェーのミンククジラ漁は今年は好調で、商業捕鯨を再開した1993年以降で最高の729頭を捕獲した。
捕獲枠は1,286頭で、今年も達成できなかった。
2009年の未達成分を翌年に繰り越したため、現実的ではない捕獲枠の設定となっている。

それに対してアイスランドのミンククジラ漁は、9月8日発表の水産統計を見ると、わずか23頭にとどまっている。
www.fiskistofa.is/veidar/aflastada/hvalveidar/


同じ資料にはナガスクジラの捕獲頭数も出ていて、こちらは109頭に達している。
9月4日の報道時点では103頭だったので、数日で6頭追加というのは、ミンククジラ漁に対して好調と言えるだろう。
www.mbl.is/frettir/innlent/2014/09/04/komnir_a_fullt_aftur/

捕獲枠の154頭に到達できるかどうか、それは天候次第と思われる。
アイスランド国内ではナガスクジラ肉をほとんど食べないのに、これだけ捕獲しているのは、日本で売れるからだ。

アイスランドのナガスクジラ捕鯨と日本への輸出についてのレポートが出たので、時間がある週末にでも読んでおこう。
uk.whales.org/sites/default/files/iceland-whaling-report-2014.pdf

アイスランドの商業捕鯨には二種類あり、国内消費向けのミンククジラ漁と、日本への輸出向けのナガスクジラ漁である。今年のミンククジラ漁は不調とのことだが、ナガスクジラ漁は好調のようで、8月21日までに88頭を捕獲済みである。アイスランド国内の報道と、それを引用した英語記事は次の通り。www.visir.is/88-langreydar-veiddar-i-sumar/article/2014708229985【Síðan hvalveiðitím
アイスランドの捕鯨ではナガスクジラ88頭を捕獲済み



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南極海調査捕鯨に対するICJ判決はIWCでの議論に生かされるのか

3月31日に国際司法裁判所(ICJ)で、日本の南極海調査捕鯨に対して、計画の見直しを求める判決が出された。
ICJでは、調査捕鯨が条約に定められた科学的研究に該当することは認めたものの、「真に科学目的かどうか」に焦点を当てて、調査手法や捕獲頭数の設定根拠が科学的ではなく、本来の目的を達成できないと結論付けた。

判決後の反応は予想通りのもので、日本国内では食文化を軽視していると騒ぐ人たちが見られ、また反捕鯨国では保護団体を活気づけることになった。
いずれの立場でも、ICJが焦点を当てたはずの「真に科学目的かどうか」を取り上げることは、ほとんどなかったという印象だ。

9月15日からIWC年次総会がスロベニアで開催されるが、それに先だって11日から、科学委員会で調査捕鯨について議論される予定だ。
events.iwc.int/index.php/commission/IWC65

ICJ判決後、初のIWC年次総会となるため、日本の調査捕鯨に対する攻撃はさらに強まるのかもしれない。
ただ、そのような政治的な動きを牽制するように、Science/9月4日号に、IWCはICJの手法を学ぶべきだとする論文が掲載された。
www.sciencemag.org/content/345/6201/1125.summary

この論文、というよりも意見の表明だが、これを紹介しているのは現時点では海外報道のみなので、英語記事を引用しておこう。
www.theguardian.com/world/2014/sep/04/japan-diplomatic-row-bypassing-whaling-ban-antarctic


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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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