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専門用語の根拠資料として「基礎高分子科学」を購入

今日もいろいろと忙しかった。
教会の伝道委員会担当の役員(長老)として、礼拝で奉仕する伝道委員のためのマニュアルを作成した。
また、明日の伝道委員会のレジュメと、委員会から郵送している手紙も作成した。
先週見学に来た高校生や、6月の一般向け礼拝に関して、牧師や他の役員へのメールも送信した。

やるべきことが多いのはわかっていたが、午前中は買い物などに出かけた。
特に、紀伊国屋書店でポイント2倍なので、専門書または辞書を購入しようと思った。

まず、駅に向かう途中の花壇で、咲き始めたアジサイを撮影して、教会からの手紙に添える写真とした。
マスクをしない人が増えてきたので、すいている編成の電車に乗って移動。

紀伊国屋書店では、新書などを選んでから、語学コーナーへ。
ジーニアス英和辞典にしようかと思ったが、今回はやめた。
ドイツ語関連の新刊はなかったので、化学分野のコーナーに移動した。

ここで、東京化学同人の基礎高分子科学 第2版を購入することに決めた。
トラックバックした記事に書いた、訳語を選択した根拠の文献とするためである。
わずか3行の説明文のために 4,950円も使った。
ネット検索の情報ではなく、高分子学会が編集した書籍を根拠としたかったのだ。

内容紹介のリンクは次の通り。
www.tkd-pbl.com/book/b496748.html

購入後に自宅でアクセスして、正誤表があることに気付いた。
確認してみると、購入したのは運よく3刷なので、正誤表に掲載された内容は、すべて修正済みであり安心した。
専門家が執筆して、学会で内容を確認していても、人間は間違えるということだ。


基礎高分子科学

翻訳の資料ということで、最初にこの書籍だけで会計した。
90ポイント追加されて 126ポイントとなった。
残りの書籍は合計 3,905円となったので、105ポイント使って端数を消して、auPAY で 3,800円を支払った。

忙しくなることはわかっていたが、この後、すぐに帰宅せずに、京急百貨店に寄った。
催事場で大信州展をしているから。
まず、3か所の QRコードを読み取って 100円クーポンを取得した。
信州そばでもよかったが、国産小麦全粒粉 50%パンなどを購入した。

地下に移動して RF1 でサラダ麺と 30品目サラダを購入。
先週取得した 1,000円分の商品券を使用した。
神戸コロッケでも購入。

自宅最寄り駅まで戻り、商業施設の書店で定期購読の雑誌を受け取った。
スターバックスに寄って、東電ガスのポイントを交換した 300円ギフト券を使用した。
商業施設のポイントが2倍の日なので少し増えた。

最後に寄ったのは、まいばすけっとで、イオンのクーポンを使って WAON ポイントを増やした。

午後2時に帰宅して、遅い昼食をとりながら、MemoQ のライセンスを1年更新して 142ユーロをカードで払い、最新バージョンをインストールした。
そして冒頭に書いたように、教会のために働いた。

しかし、ある Twitter で、トライアルに合格しても仕事がない、という愚痴のような情報が流れてきて、気になってしまった。
本人の状況を完全に把握していないので、何とも言えないのだが、客観視できていないだけのようにも思える。

私が担当したフリーランス翻訳者の中にも、語学の知識も経験も十分にあるとの自信をCVに書いているのに、実際に仕事を依頼してみると、納期を守らない、専門用語を調査しない、タイプミスを放置している、クライアント指定のフォーマットを無視する、フィードバックを送っても返信しないなど、翻訳ビジネスとしての態度が身についていない人が何人もいた。

改善の可能性を期待してフィードバックを送りながら、最大3回依頼することもある。
しかし、何も改善されないのならば、こちらも修正の手間が増えるだけなので、機械翻訳の方がましだと思うようになってしまう。

今回購入した「基礎高分子科学」を紹介しようと思ったが、やめることにした。
以前も「コンパクト 化合物命名法入門」などを紹介したのに、その内容を反映しない和訳が納品されたからだ。

この人は今後どうするのだろうか。
私にも他人を心配している時間的余裕はないので、目の前の案件をコツコツ処理していこう。

英日と独日の特許翻訳をしていて、一番時間を取られる作業は、専門用語の確認ではないだろうか。トラックバックした記事の additive manufacturing (英語) を再度取り上げよう。以前は「積層造形」と和訳していたが、最近は化学工学会の記事を参考にして「付加製造」にしている。JIS でも付加製造なので、あえて積層造形を使うという選択はしない方針だ。辞書では、過去に使われていた訳語を残していることが多く、積層造形と...
特許翻訳でも専門用語の確認が重要だ

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ジャンル : 学問・文化・芸術

特許翻訳でも専門用語の確認が重要だ

英日と独日の特許翻訳をしていて、一番時間を取られる作業は、専門用語の確認ではないだろうか。

トラックバックした記事の additive manufacturing (英語) を再度取り上げよう。
以前は積層造形と和訳していたが、最近は化学工学会の記事を参考にして付加製造にしている。
JIS でも付加製造なので、あえて積層造形を使うという選択はしない方針だ。

辞書では、過去に使われていた訳語を残していることが多く、積層造形と付加製造のどちらを選ぶのか迷うこともある。
訳語のところに「廃止」や「旧」などの表記をしている場合もあるが、たいていは調査が必要になる。
ということで、訳語選択の根拠となる文献資料を探す時間が一番かかるのだ。

英日特許翻訳のチェックをしていて、今年も類似のケースに出会った。
その用語を明示できないので、あいまいな表現になるが、我慢して読んでほしい。

高分子分野の専門用語で、私は有機化学専攻ではあるが、分野が異なるので初めて見た用語だった。
したがって、翻訳者が選択した訳語Aが正しいのか判断できなかった。

いつも使っている JAICI Science Dictionary Pro で検索すると、3種類登録されていた。
翻訳者が選んだ訳語Aの他に、全く異なる訳語B、そして類似の訳語B’。

高分子学会のサイトで用語の定義について調べてみると、訳語Bが記載されていた。
この時点で、訳語Bに修正することにしようと思った。

ただ、この情報は 2009年の文献なので、10年以上経過した現在の用語は、翻訳者が選択した訳語Aかもしれない。

念のため、特許情報プラットフォームで、訳語Aを入れてみると、表示された特許は2件のみ。
しかも外国語特許の和訳であった。
ネット検索してみると、学術論文はヒットしなかった。

訳語Bで調べると多数の特許が表示され、今年出願された日本語での特許もあるので、訳語Bを選択することにした。

修正して納品すれば済むのだが、依頼した翻訳者がどのように専門用語を確定しているのか心配になったので問い合わせした。

「〇〇の訳語を調査すると複数の候補がありました。訳語Aを選択していますが、これを優先する根拠となる文献は存在するのでしょうか。」

翻訳者からの回答は、残念ながら文献の有無をはっきり示すことなく、何を言いたいのかわからない長々とした説明のみ。

これまでも用語の不統一などが目立っていて、フィードバックしても改善されない。
レビュー担当者に丸投げということなのだろうか。
外国語の知識があっても、これでは、一緒に翻訳に取り組んでいるという意識が生まれない。

現状では翻訳者の人数が足りないので、機械翻訳を利用したいと考えるのも当然かもしれない。


(最終チェック・修正日 2021年08月13日)特許やメーカーの資料など、科学技術系の翻訳では、最新の専門用語を確認する必要がある。各学会で用語の改訂をすることもあるので、学会監修の用語集や辞典を購入することもある。英語表記は変わらないのに、日本語表記が改訂されることもある。ネット検索で見つかっても、今は使わない古い用語かもしれないので、念のための確認作業は必須だ。部品の製造法として注目されている技術の1...
付加製造/ additive manufacturing / additive Fertigung (専門用語 日英独)


テーマ : 語学の勉強
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「油圧放射線」とは何だろう

この連休は、世間一般と違って、特に出かける予定はない。
所属する教会に行くことが、一番の遠出である。

昨日3日は夜に教会に行って、毎月第1水曜日の聖書研究会・祈祷会に参加した。
7日には夕礼拝の司式を担当するので、明日5日に祈りの言葉を考えて、6日には讃美歌などの練習もする予定だ。

日常の買い物や家事をしてのんびり過ごす予定だったが、海外の翻訳会社から独日翻訳のチェックを頼まれた。
納期も厳しくないので受注することにした。
今月の交通費分は稼げるだろう。

今回もまた、違和感のある和訳に出会った。
それは油圧放射線

元のドイツ語は Hydraulikstrahl という複合語なので、Hydraulik + Strahl に分けて考えることになる。
それで翻訳者は、「油圧放射線」と、逐語訳したようだ。

前後を読むと、「加圧状態にある油圧系統の配管の穴や裂け目からオイルが漏れている」という状況がわかる。
オイルは加圧されているので、噴水のように勢いよく噴き出していることだろう。

ということで、文意からオイル噴出と修正した。

名詞 Strahl は多義語であるから、当然ながら、文意を理解して訳語を選択しなければならない。

例えば、小学館独和大辞典第2版の記載を一部引用しよう。

Strahl 男 単数2格 Strahls, Strahles 複数 Strahlen
 1 a) 光, 光線
 2 (液体の)噴射, 噴出
 3 ((ふつう複数で)) 〘理〙光線; 熱線, 放射線, 電磁波

2番目の意味を知らなくて「放射線」を選んだとしても、油圧系統の故障の説明には合わないことに気付いてほしい。
そして独和や独英を調べて、正しい訳語にしてほしいものだ。

また、2番目の意味のときは、複数形はまれであり、逆に3番目の意味のときは、ほぼ複数形である。

ちなみに、2番目の意味では液体だけではなく気体・ガスの場合もある。
気象用語の Strahlstrom ジェット気流 を知っていても損はないだろう。

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「アラームの咆哮」とは何だろう

ある翻訳のセミナーで受講生の1人が、「辞書の最初に載っている意味を選んでいますが、だめですか?」と質問したことがある。

このような人が複数いるためなのか、翻訳チェックの仕事をしていると、違和感のある和訳に出会うことがある。

独日翻訳チェックで最近出会ったのは、アラームの咆哮
セキュリティ装置や目覚まし時計などのアラームの音源が、猛獣やゴジラということなのだろうか。

答えを先に言うと、これは用例調査の結果、アラームの吹鳴に修正した。

例えば、三省堂国語辞典第八版では、それぞれ次のように説明されている。

咆哮 〔けものなどが〕ほえること。
吹鳴 ふきならすこと。「サイレンの―、汽笛の―」

翻訳者が咆哮としたドイツ語の単語は、動詞 aufheulen を名詞化した Aufheulen
この単語だけ見れば「咆哮」でもよいが、文脈から変だと思うのが当然だろう。

その翻訳者が使っている独和辞典は不明だが、例えば、小学館独和大辞典第二版では、動詞 aufheulen は次のように書かれている。

auf|heulen (獣が)ほえ声をあげる; (人が)泣きだす, わめく; (サイレンなどが)鳴り<響き>だす

ここでは獣ではなくアラームということで、一番最後に書かれた語義説明をヒントに用例を探すべきだろう。

「アラーム サイレン 鳴りだす」 などのキーワードで検索してみて、吹鳴を知った。

次に「吹鳴」の使用例を検索してみて、様々な文献や装置の取扱説明書などがヒットしたので、この文脈に合う和訳だと確認できた。

余裕のない納期だったからなのか、調査する時間が足りなかったのかもしれない。
または、違和感を持たなかったのかもしれない。

まあ、どちらにしても、「吹鳴」という言葉を知る機会となったと思うことにしよう。

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機密文書溶解処理の依頼は年1回

今月は野球で大騒ぎをしている日が多いと感じるが、私はニュースや情報番組で試合後の結果を確認しているだけ。
今日もリアルタイムで観戦することはなく、淡々と翻訳の仕事をしていた。

祝日なので、個人で取引している案件を処理した。
前回の投稿に書いた、とんでもないドイツ語和訳のやり直しを昼過ぎまでしていた。
意外と時間は超過せず、当初予算の約 $450 をもらうことになった。

これで昨年12月からの累計は、$1,400 を超えたので、来月末以降に為替レートを見ながら引き出す予定だ。
5月下旬に支払う個人年金保険の年払いに充当するか、定期預金にして、冷蔵庫などの買い替えに備えることにしよう。

買い物にも行かずに自宅でのんびりしていたら、ヤマト運輸のドライバーが訪ねてきた。
ビジネスメンバーズで登録しているので、宅急便料金の改訂についての説明ということだった。

そのついでに、機密文書溶解処理の依頼をした。
ヤマト運輸の機密文書リサイクルサービスのサイトは次のリンクから。
business.kuronekoyamato.co.jp/promotion/kimitsu_telework/

以前はシュレッダー処理していたが、信頼できるサービスならば、そのままリサイクルしてもらう方がよいと思った。
2021年12月に契約して、とりあえず ECOBox M を2個もらった。

1回目は 2022年2月に依頼した。
そして今日が2回目の依頼なので、約1年で ECOBox M が満杯になるということだ。
頻度の縛りはないので、年1回でもかまわないそうだ。

2,076円で心配事がなくなるのだから安いものだ。

ECOBox M には A4 用紙が約 5,000枚入り、重量は約 23 kg にもなった。
ドライバーに聞くと、このくらいの重量でも大丈夫とのことなので、Sサイズに変更しないことにした。

また、教会の役員なので個人情報に関わる資料を扱うことがあり、同様にこのサービスで処理してもらっている。
ホチキスの針が残っていてもかまわないし、紙製のフラットファイルに綴じたままでも出せるので便利だと思う。

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修正が多すぎる和訳なので翻訳者に戻してもらうことにした ⇒ 私が修正することになった

(最終チェック・修正日 2023年03月16日)

英日・独日翻訳者として翻訳会社に登録するとき、チェックもできると伝えることがほとんどだ。
時間的に私が翻訳を担当できない場合、代わりにチェッカーとしての依頼になることも多い。

チェッカーの料金は、ワード単価が翻訳の場合の 10~20% が多い。
たいていは修正量は少ないので、このくらいの料金でも受注してもよいかなと思う。

ただし、毎年1回くらい、機械翻訳未満のレベルの翻訳者に出会うことがある。
修正量が 20% くらいまでは我慢できるが、それを超えると、翻訳としての料金でなければ割に合わなくなる。

10年以上前、ドイツ語特許の和訳をチェックしたとき、半分以上直す見込みとなったので、コーディネーターに相談した。
すると、納期の関係でチェッカーの私が全部直した方が早いのではないか、ということになった。
ただ、予算の上限があり、追加の料金は支払えないと言われた。
このときはまだ副業翻訳だったこともあり、低料金でも我慢して、全部修正してしまった。

ワード単価で契約してしまうと、修正量が多いときに損をしてしまう。
予想外に手間がかかる場合を想定して、時間給で契約している翻訳会社もある。
また、同じ翻訳会社でも案件によって、ワード単価の場合もあれば、時間給のこともある。

今月依頼されたドイツ語和訳のチェック案件は、総ワード数が不明なのだが、想定作業時間が提示されていた。
つまり時間給で計算ということだ。
その時間数をなんとか確保できそうだったし、$ 450 以上もらえる計算なので受注した。

しかし、和訳のファイルは予定した日には届かなかった。
そして数日後にようやく届いた和訳のファイルを開いて驚いた。

医薬分野の文書として、まったくふさわしくない表現であり、しかもクライアント指定の表現を守っていない。
専門用語も間違っているし、そもそも用語を統一しようとしてもいない。
他にも、会社名の最後にある Inc. Inc。と句点にするなど変だ。

想定作業時間内に全部修正できそうだったが、最初から翻訳のやり直しと同じになる。
ということで、低品質なので一度翻訳者に戻すように、コーディネーターに依頼した。
しばらくしてから届いた返事では、これからクライアントと相談するとのことだ。

もし、チェッカーの私が全部やり直しをするということならば、キャンセルしたいものだ。

とんでもない和訳になっているセグメントをいくつか選んで、ドイツ語原文を Google 翻訳と DeepL に入れてみると、機械翻訳の方がまともな出力であった。

ドイツ語翻訳者は足りないので、医薬分野の知識がないのに依頼してしまうのかもしれない。
これなら機械翻訳にかけてポストエディットをした方がまともになるかもしれない。

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ジャンル : ビジネス

ひらがなが混じった「レべル」に遭遇した

私が担当する英日または独日の翻訳レビュー作業では、たいていは CAT ツールを使う。
それ以外にも、エクスポートしたワードファイルや PDF を使って、修正提案をコメント機能で記載したり、直接変更履歴を付けることもある。

チェック項目には、形が似ている文字の確認もある。
例えば、カタカナのと漢数字のなど。

漢数字を使う化合物名の酸化炭素」が、カタカナを使って酸化炭素」という誤記になっていても、大部分の人は「にさんかたんそ」と読むだろう。

それでも、うっかり見逃さないように、念のために検索してみたり、ワードならばエディター機能を使うこともある。
ワードで作業をしていると、自動でエラーを検出してくれるので楽になった。
そのおかげで、今年作業したレビュー案件でも誤記を見逃さなかった。

それは生まれて初めて出会った、ひらがなが混じっただ。
混じっているひらがなとは、当然ながら真ん中のである。

下に示すように、ワードでは、左側の全部カタカナのレべルとは異なり、右側のひらがなが混じったでは、ひらがなのの下に赤色の波線が表示されるので、これでエラーに気付く。

レベル

フォントの形状は、山の角度が少々異なるようだが、人間の目では区別が困難だ。
どちらで書いてあっても誤読しないのでかまわないが、誤字なのだから、正しい表記にすべきである。

それで不思議に思ったのは、どのように入力すれば「べ」だけひらがなに変換されるのか、ということだ。

かな入力の「れべる」でもローマ字入力の「reberu」でも、スペースキーを押して変換すると、第1候補に全部カタカナの「レべル」が表示される。
これを選択するので、ひらがなが混じることはないだろう。

もしかすると、レぼると誤入力した後に、を一文字ずつ打ち直したときに、をひらがなのにしてしまったのかもしれない。

誤記は1か所のみで、他は全部カタカナの「レべル」だったので、このタイプミスの修正ミスという推測が一番起こりうると思われる。

翻訳者は納品前に推敲しているはずだが、ワードが検出したエラーの表示を見落としたのだろう。
こういった細かいこともしっかり対応できる人が生き残るのかもしれない。

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ラセミ体の「分解」とは?

日本の翻訳者の統計が見つからないので推測だが、理系研究者の経歴を有する翻訳者の割合は少ないように思う。
それは、特許の和訳での化学専門用語の誤訳事例からも感じている。
これに関して、先日行われた大学研究室のオンライン同窓会でも話題にした。

大学で化学を専攻していなくても専門書で独学すれば誤訳しないはずだ、と言われればそうだが、翻訳者だけではなく、チェッカーや担当の弁理士も含めて、誰も気付かなかったのは残念だ。

今回の例は、下に示したように、ラセミ体の分割ラセミ体の分解とした和訳だ。

その箇所は、英語では、resolution of the racemate

私も含めて化学者が読めば、ラセミ体から光学活性体を得るために分ける resolution なので、「分割」がすぐに浮かぶ。

しかし、この「分割」を挙げている辞書が少ないためか、「分解」としている和訳に出会うこともある。
「分解」と書いてあると、degredation や decomposition なので、分子構造が変化して、別の物質になったことになる。

例えば、化学・英和用語集第3版(化学同人)では、resolution と動詞の resolve は次のように記載されている。
resolution 分割<ラセミ体>分解,分解能;分離度
resolve  分ける;分割する分解する

また、mesotomism も 分割、光学分割 の意味だが、私は使ったことがない。

英辞郎を参考にする人も多いようだが、化学用語としての項目に「分割」はない。
《化学》〔化合物の〕分解、溶解 

もし、英辞郎の記載を根拠にしたのであれば、調査が足りない、専門用語を知らないと言われても仕方ない。

また、このような特許が対訳データとして登録されてしまうと、機械翻訳では自動的に「分解」という和訳も候補として表示することだろう。

JAICI Science Dictionary Pro でも、「分割」は載っていなかった。
来年の利用料を振り込む連絡のときに、ついでに登録を依頼しておこう。

ただ、resolution ability 分割能 optical resolution 光学分割、光学的分割 racemic resolution ラセミ体分割 があるので、「分割」にたどり着くことはできるかもしれない。

「分割」にたどり着かなくても、せめて「分離」にしていれば誤訳ではない。

様々な専門書で独学できるとは言え、その分野の専門家が翻訳した方がリスクが少なくなるはずだ。
私がドイツ語を知っていても、ゲーテやカントの翻訳はできない。
理系研究者の進路の1つとして、特許翻訳も考えてほしいものだ。


ラセミ体の分解

テーマ : 英語
ジャンル : 学問・文化・芸術

窒素酸化物とも言うけれど

化学の専門教育を受けていない人にとって、化合物の日本語名称は苦手のようだ。

化学分野で学位を持っていなくても、独学すればよいのだが、それでも日本語名称のつくり方のルールは例外もあって面倒だ。
化学で博士号を持つ私でも、念のため命名法の専門書で確認している。
その専門書も、正誤表が100ページを超えており、確認には手間がかかる。

今回紹介する化合物名は単純なものなので、専門書で確認することもないだろう。
ただし、他の用語と混同しているためか、間違った例である。

ドイツ語原文では、Stickstoffdioxid で、英語は nitrogen dioxide、日本語は 二酸化窒素 である。
化学式ならば NO2 で、窒素原子が1個、酸素原子が2個である。

しかし、そのとき見た和訳では、二窒素酸化物となっていた。

これだと、窒素原子が2個の酸化物になるので、例えば、酸化二窒素 であれば、化学式は N2O になり、別の化合物だ。
他の窒素原子が2個の酸化物として、酸化剤などとして有用な 四酸化二窒素 N2O4 もあるが、これも別の化合物になる。

「二窒素酸化物」については、例えば、次のリンク先の資料(ニトロ化)を参照してほしい。
www.tcichemicals.com/assets/cms-pdfs/106dr.pdf

化学の知識に自信がなければ、Stickstoffdioxid をネット検索すれば、正しい 二酸化窒素 にたどり着くはすだ。
しかし、単純すぎるので調べなかったのだろう。

また、Stickstoffoxid 窒素酸化物 という用語もあるので、これにつられて、di- に相当する漢数字の「二」を頭に付けて、二窒素酸化物 にしたのかもしれない。


ついでに近年話題の Google翻訳と DeepL に Stickstoffdioxid を入力したところ、どちらも 二酸化窒素 と、正しい日本語名称が出力された。

以前から指摘されていることだが、機械翻訳よりも低品質の翻訳をする人がいるのは事実だ。

加えて、今回の誤訳例は、別の知識が邪魔をして誤訳を誘発したとも言えるだろう。

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エクスポートしたワードファイルで確認してほしいとあるのに

海外メーカーのニュースレターのドイツ語和訳チェックを受注している。
月に1回から2回、A4版1ページの短い案件だ。

この翻訳案件では、記事ごとに文字数の上限が決まっている。
というのは、ドイツ語原文のワード数でテキストが入るスペースの大きさが決まっており、これを変更できないので、機械的に上限が決まってしまう。

ということで、CATツールで和訳を入力した後、納品前にワードファイルをエクスポートして、はみ出ていないかどうか確認するようにと、指示書には明記されている。

しかし、翻訳者の和訳を受け取った時点で、すでに和訳はそのスペースをはみ出している。
もしかすると、翻訳者は、訳抜けとは思われないように全部和訳しており、文字数の上限を確認していないようだ。

翻訳者に戻すと納期に間に合わないので、コーディネーターに翻訳者の評価として伝えるだけにしている。

とりあえず文字数を気にせずに修正作業をしてから、ワードファイルをエクスポートして、次いで、和訳がはみ出ないように削る作業をしている。

最後に再びワードファイルをエクスポートして、1文字もはみ出ていないことを確認してから納品している。

しかし、クライアントからは毎回、文字数が多すぎるので減らしてほしいという連絡が来る。
添付の PDF を見ると、最後の一行が切れている記事が、毎回最低2つはある。 

納品前の確認時には問題がないのに、クライアント側でエクスポートするとはみ出るのはなぜだろう。
ワードのバージョンが違うためなのだろうか。

指示通りに文字数を削ってスペースに収めたのに、毎回追加作業が発生するのは面倒だ。
フォントサイズや行間を変えればよさそうだが、それは許可されていないため、文字数を減らすしかない。

そのため、オリジナルのドイツ語記事に載っている情報が、和訳には反映できていないこともある。
こんなこともあるので、外国語を勉強してオリジナルの情報源を確認できるようにすることは大切だと思う。

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プロフィール

MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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