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未登録の翻訳会社からメールが来た

個人で使っているメールアドレスの1つに、登録していない海外の翻訳会社からメールが来た。
内容は技術分野のドイツ語和訳案件の打診であった。
ワード数だけ書いてあって、具体的な分野も内容も不明だ。

私に初めてメールを出していることは文面からわかるが、どこで私の情報を知ったのかは説明していない。
個人事業主として参加した翻訳関係のイベントでも、この会社に接触したことはない。
翻訳者が情報を登録するサイトにも載せていない。

詐欺ではないように思えるが、登録した覚えがない翻訳会社からのメールなので、当然ながら返信はしていない。

国内の翻訳会社の場合、グループ内の関連会社で翻訳者情報を共有していて、ドイツ支社から依頼が来たこともある。
ただし今回は、登録済みの翻訳会社とは何の関係もない。

誰かがその翻訳会社に、私をドイツ語翻訳者として紹介したのだろうか。

以前から指摘されていることだが、別の翻訳会社に転職したコーディネーターが、翻訳者の情報を持ち出している場合があるという。

実際に海外のある翻訳会社から、「〇〇は既に退職しています。連絡が来ても無視してください」という主旨の注意喚起メールが来たことがある。

今回もこのケースだろうか。
個人情報の管理について調査する暇はないので、このまま無視しておこうと思う。

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ケイ素・シリコン・シリシウム

特許では学術用語を使用することになっている。
そのため、元素名や化合物名では原則としてIUPAC名を使う。
そして日本語名称の付け方のルールは、日本化学会命名法専門委員会が作成した日本語名称のつくり方を用いる。

それでも、専門家が読んで理解できればよいという理由で、慣用名や製品名などが使われることもある。
さらには、「酢酸エチル」の略称である「酢エチ」が使われている特許もあるくらいだ。

外国語特許を和訳する場合も、元素名や化合物名の問題が生じる場合もある。
つまり、原文が命名法に従っていない場合、原文ママで和訳するのか、それとも正しい名称に書き換えてもよいのかだ。
データベース検索のことも考慮すると、正式な名称に書き換えてもよいのではないかと思う。

不定期に調べている名称の1つに、元素名のケイ素がある。

14番元素のIUPAC名は silicon で、カタカナ表記の「シリコン」を使いたくなるが、日本語での元素名は「ケイ素」のみ。
元素を紹介するある本では、「シリコンは高純度ケイ素を意味する」という主旨の注意書きがあった。

また、衒学的と批判されそうだが、「けい素」も「珪素」も「硅素」も使わない。

英語名にはIUPAC名と同じ silicon の他に silicium がある。
この silicium(シリシウム)は、例えば、時計部品の材料の説明で目にすることが多い。
学術用語としては使わないと思っていたら、21世紀になってもまだ silicium を使っている論文や特許があった。

例えば、無機化合物の silicon dioxide(二酸化ケイ素)silicium dioxide と書いている特許をメモしておこう。

WO2018/188909 の請求項3には、以下のように記載されている。
"..., inorganic dielectric materials such as silicium dioxide, ..."

原文の英語ではこのように書いてあっても、二酸化ケイ素と和訳するものだと思っていた。
しかし、この特許の和訳、特表2020-516884では、シリシウムジオキシドとなっていた。

クライアントから指定されていたのか、それとも判断せずに原文ママでカタカナ表記にした方が安全ということなのか。
その理由はわからないが、違和感を持ってしまった。

専門家が読めば理解できるわけだが、「1つの化合物には1つの名称」という原則を優先したいので、「二酸化ケイ素」にしてほしかったと思う。

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機械翻訳のポストエディットは楽な作業ではない

本日外出先から帰宅する途中、紀伊国屋書店に寄って、定期購読の雑誌を含めて1か月分の書籍を受け取った。
化学の専門書もあったので合計金額は約3万4千円と月予算を超えてしまった。
来月は海外翻訳会社から多めに入金予定なので買いすぎたかもしれない。
辞書や専門書を買うために海外取引をしているようなものだ。

翻訳関連では、4月20日発売の新版 産業翻訳パーフェクトガイドを購入した。
出版社のリンクは次の通り。
tsuhon.jp/book/10113

税込み2千円未満でこれだけの情報が得られるのだから、怪しい翻訳講座に入会する前に読んでほしいものだ。

それで最初に読んだのは、いつものことだが機械翻訳に関する Part 5 だ。

その中でも146ページからのここまで来ている! 翻訳会社×MTPEでの囲み記事翻訳者とMTPEへの理解が気になった。
その一部を引用しよう。

「『Google翻訳を使えば、翻訳者になれる』という浅はかな思いと、翻訳ビジネスへの無理解、社会人としてのモラルの低下が根深いと感じています。(中略)ポストエディットという名称自体が『ちょっとした手直し』のイメージを与えてしまっていると危惧しています。」

翻訳すべき分量が増えているのに、翻訳者の人数は急には増やせないのだから、業務改善の手段の一つとして、ある程度の割合を機械翻訳で処理することは合理的だろう。

機械翻訳の出力をそのまま使うことは無理なので、最終的には人間翻訳者がポストエディット作業をして完成品を納品するのは当然のことだ。

ただ、人間ではあり得ないエラーが含まれているので、ポストエディット作業は意外とストレスがかかる作業だ。
タイピング時間が削減されても、エラーの修正に時間がかかるので、作業時間の短縮は10%~20%と期待したほど削減されない。

それなのに、ポストエディットは人手翻訳より楽な作業だろうという誤解が広まっているためなのか、料金を30%以上減額しようとするクライアントもいるようだ。

作業効率が上がって納期が短縮されるのならば、その時間分の料金を下げようという理屈はあるのだろう。
ただ本来は、最終的に納品した翻訳の品質に対して報酬を支払うべきだと思う。
しかし現状ではコストダウンが主目的なので、ワード数から単純計算しており、モチベーションが下がる原因の一つかもしれない。

ポストエディットは楽な作業ではないし、最終的に納品する翻訳の品質は人手翻訳と同等でなければならない。
ただ、訳文をゼロから作るわけではなので、ポストエディットは翻訳ではないと言う翻訳者もいた。
そのような発言も影響したのか、ポストエディットをレベルが低い作業と感じている人もいるという。

私は元々理系研究者ということなのか、新しい技術を導入することに興味があるので、機械翻訳+MTPEも検証しながらできるだけ取り入れようと思っている。
検証期限を3年と決めて、もし使えないと分かれば、従来の人手翻訳に戻ればいいと思う。

新技術導入の目的は、品質を維持したまま業務改善をすることだ。
それが一貫していれば、ポストエディットを楽な作業だとか、コストダウンの口実にするという発想は生まれないと思う。

まあ、全員が同じ考え方になることもあり得ないので、様々な問題を生みながら、玉石混交の業界となってしまうのだろうか。
70歳まで続けたいと思っているのだが、その頃にはどうなっていることだろうか。

自称1000万円翻訳者の浅野正憲は、在宅翻訳を勧めるブログの過去記事に、自身の誤訳を堂々と掲載したままにしている。誰が見ても誤訳というか、なんとなく翻訳をしているのだが、修正も削除もしないということは、本人は自分の訳文が正しいと思い込んでいるのだろう。これまでの経歴や翻訳者を目指した経緯については断片的な情報しかないが、自分の能力を客観的に分析できていないようだ。ただ、訳文をゼロから構築することが...
機械翻訳のポストエディットは単なる編集作業ではない


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ポリ塩化ビニル/塩化ポリビニル

4年ほど前、機械翻訳は化合物名の翻訳が苦手だと報告したことがある。
そのときの例示の1つに、ポリマーのポリ塩化ビニルもあった。

英語では、正式には poly(vinyl chloride) と、原料のモノマーをかっこでくくる。
モノマーの英語名が2語になるので、誤解を避けるためにかっこでくくるのがルールで、JIS でもそのように決まっている。

ただ、和訳ではスペースがないので、かっこなしの「塩化ポリビニル」となる。
ちなみに、ドイツ語ではスペースなしで Polyvinylchlorid と書くので、日本語同様にかっこはない。

ポリマーの命名法については、例えば、次のリンクを参照してほしい。
www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/51/4/51_4_269/_pdf

しかし、業界によって異なるのか、かっこなしの polyvinyl chloride と書くことも多く、特許でもかっこなしの表記の方をよく見かける。
この表記のまま4年前に機械翻訳にかけたとき、塩化ポリビニルという間違った和訳が出力された。

現在は、Google 翻訳も DeepLも、正しく「ポリ塩化ビニル」と出力するようになった。
ただし、かっこ付きの正式名称を入力すると、Google は「ポリ(塩化ビニル)」、DeepL は「ポリ塩化ビニル(PVC)」になってしまった。

ということで、命名法の規則を学習していない機械翻訳では、化合物名の和訳は困難だという状況は変わらない。

しかし、人間翻訳者の中にも命名法を知らず、機械翻訳レベルの誤訳をする人はいる。

私が担当する特許翻訳でも、過去の翻訳メモリ内に「塩化ポリビニル」を見つけたことがある。
最近出願された外国語特許の和訳でも、「塩化ポリビニル」が毎年見つかる。

例えば、ロレアルが出願した特開2020-097592の請求項16に出てくる。
-----
【請求項16】
適用部材が、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエステル-ポリウレタン、NVR(天然ブタジエンゴム)、SBR(合成ブタジエンゴム)若しくはPVC(塩化ポリビニル)の発泡体又はそれらの混合物から選択される1つ又は複数の発泡体から構成されることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の器具。
-----

過去の誤訳が翻訳メモリに残り続けるので、どこかで修正が入らない限り、いつまでもこのままなのかもしれない。

化合物命名法を知らない翻訳者の悪口を言ってしまったが、日本のあるメーカーも「塩化ポリビニル」で出願していたので、理系人材でもだめな人はいるようだ。

まあ、命名法は面倒なので、いつも参考図書を見ながら確認している。
ポリ塩化ビニルは、より正式には「ポリクロロエテン(polychloroethene)」と書くべきだが、まだあまり普及していない。

機械は本を読んで確認するという作業はしないので、この調査能力という点を人間翻訳者は向上させるべきだろう。

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Genussmilchsäure(食品用乳酸)の機械翻訳その後

機械翻訳は日々学習しているようで、しばらくすると出力が変化することが多い。

2020年11月9日にドイツ語の複合語 Genussmilchsäure(食品用乳酸) DeepLGoogle で試した。

それから約3か月後の本日、2021年2月3日に変化があるのかどうかを確かめてみた。

まずは Google から。

Genussmilchsäure  Google
          2020年11月9日    2021年2月3日
      英語  Pleasure lactic acid  Pleasure lactic acid

     日本語  プレジャー乳酸    快楽乳酸

「プレジャー」が「快楽」に変わっているが、誤訳のままだ。
英訳が誤訳の pleasure lactic acid のままで、これを和訳しているのだから仕方ない。
英訳が正しいものにならない限り、和訳も使えないということだ。

DeepL では、かなり変化があった。

Genussmilchsäure   DeepL
          2020年11月9日        2021年2月3日
      英語    Lactic acid         Pleasure Lactic Acid
    (他の候補)  Edible lactic acid                Enjoyment Lactic Acid
          Lactic acid for consumption

      日本語 乳酸            プレジャー乳酸
                     (他の候補)昴の乳酸
                      昴乳酸
                      快感乳酸


和訳は改善されていない。
ただ、昨年は「乳酸」で、Genuss の部分が反映されていなかったが、本日は、「プレジャー」や「快感」などと、なんとか訳そうと頑張っている。

「昴」が出てきた理由はわからない。

もしかすると、Pleasure の前半部分 Ple- が共通する Pleiades(プレアデス)の方が正しいつづりだと推測して、これを「昴(すばる)」に和訳したのかもしれない。

このように、人間翻訳者ではありえないことをするのが、機械翻訳の特徴でもある。

英訳で昨年、他の候補に出てきた Edible lactic acid が一番合っていたのだが、本日は消えてしまった。

機械翻訳の出力が変化することは確かめられたが、改善するとは限らないこともわかるだろう。
誰かが正しい翻訳に直してフィードバックすれば、学習して向上するのかもしれないが。


ドイツ語の勉強を始めて困惑することの1つに複合語がある。複数の語をつなげて1語にしたもので、普通の独和辞典には載っていないことが多い。そのため、構成要素の単語に分けて、それぞれの意味を把握してから、再び組み合わせて全体としての意味を考える必要がある。1個の単語なのに複数回辞書を引くことになって面倒なので、ドイツ語を教えていると、英語とあまりにも違うことに文句を言われることもある。ドイツ語の造語法が...
Genussmilchsäure(食品用乳酸)は機械翻訳ではどうなるか


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「通訳者・翻訳者になる本2022」の機械翻訳の記事

1月28日発売の「通訳者・翻訳者になる本2022」を紀伊国屋書店で注文していて、本日夕方、教会から帰る途中で購入した。
既に翻訳者として仕事をしていても、業界動向の情報を把握するために、持っていても損はないと思う。
tsuhon.jp/book/9545


巻頭企画の「通訳・翻訳の新常識 ニューノーマル」では、ページ数は少ないものの、機械翻訳(MT)の記事があったので、一番先に読んだ。

そのうち、23ページに出てくる山田優教授の指摘について、実際にPE(ポストエディット)も経験している私は、ほぼ同意している。

特に、「PEとHT(人手翻訳)には共通の翻訳力が必要であり、人間翻訳者もポストエディターも同等にリスペクトされるべきといった考え方が翻訳業界全体に認識されるようになってほしい」というのは、私の願いでもある。

出力をチェックするだけのPEだから料金をディスカウントしてもいいだろうという発注側の安易な発想では、優秀な翻訳者を起用できないので品質保証は困難になるし、これからPEに取り組もうという人も現れにくくなるだろう。

また、MTPEは翻訳ではないという意見に影響されたのか、PEを一段低い地位の仕事と誤解している人もいると聞く。

最近のニューラル機械翻訳(NMT)では、HTとは異なる特有のエラーも多いので、今までとは違うスキルも必要になるのだから、一段低い地位とは言えないと思う。

まあ、分野によって相性はあるだろうから、すべてがMTに置き換わることはないと思われる。
仕事の選択権はあるのだから、PEの仕事を受注しなくてもそれはかまわない。
ただ、MTの動向については情報を常に仕入れて、変化に対応できるように準備していてもよいのではないだろうか。

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化合物名: hexanedioic acid は「ヘキサン二酸」(二は漢数字)

理系研究職から翻訳者に転職した人はどれくらいいるのだろうか。
メーカー研究所の大量リストラがあるたびに、一部の人数であっても特許翻訳に参入すれば、人材不足がいくらか解消するのではないかと思う。

化学や医薬の特許で面倒なのは、化合物名の扱いだ。
正式な IUPAC名のこともあれば、慣用名だったり、商品名だったり、統一されていない。

また、英語を使って命名する IUPAC 名で書いてあっても、日本語名称を作るときに間違えてしまうこともある。
誤訳の場合、日本語名称を読んでもその分子構造がわからないこともある。

構造式があれば、日本語名称の作り方を間違えたことが一目瞭然であるが、元々化学に慣れていない翻訳者では判断も困難かもしれない。

最近も海外メーカーの出願を調べていて、和訳された特許公報で10件ほど、ヘキサンジオン酸という見慣れないカルボン酸の名称を使っていることに気づいた。

オリジナルの英語明細書を確認すると、hexanedioic acid であり、その誘導体の構造式が出ている特許でも確認すると、命名するための基本骨格となる母体化合物は、以下に示すように炭素数6個の直鎖ジカルボン酸であった。
hexanedioic acid 
優先IUPAC名(PIN) hexanedioic acid
日本語名称(PIN)   ヘキサン二酸 (注:二は漢数字)

一般IUPAC名(GIN) adipic acid
日本語名称(GIN)  アジピン酸

正式な PIN のヘキサン二酸よりも、保存名である GIN のアジピン酸の方を見聞きしたことが多いだろう。
ただ、ヘキサン二酸の方が、骨格の炭素数も、カルボン酸部分が2つあることも、簡単にわかるので好ましい。

枝分かれのない直鎖炭化水素由来のジカルボン酸を表す ..dioic acid の部分を「…ジオン酸」と誤解したために、誤訳になってしまった。

日本の有名なメーカーでも、ジカルボン酸を「…ジオン酸」として特許明細書に書いているので、正式な名称だと勘違いしたのかもしれない。

さらに、試薬カタログでも「…ジオン酸」が出てくるので、参考資料にできない。

簡単そうに見える化合物名でも、念のために命名法と日本語名称の作り方を確認した方がよいだろう。

化合物命名法の本はいくつか市販されているので、参考資料として持っていて損はない。

ただし、最新の命名法の本なのに誤記が多数あるので、改訂版が出るまでは、出版社のサイトで正誤表を入手しておく必要がある。

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教会員のフランス語翻訳者から訳書をいただきました

教会には様々なところから人々が集まっている。
現役世代は普通の会社員が大半だが、既に引退した方を含めれば、大学教授や官僚だった人もいる。
神学者並みに聖書に詳しくて、古典ギリシャ語も楽に読める人もいる。

私は英語とドイツ語の能力の向上に忙しくて、古典ギリシャ語もヘブル語も全く学習していない。
必要なときには逐語訳聖書で確認することにしているので、英語とドイツ語の知識でなんとか対応できていると思う。

高校の英語の先生もいるし、私以外にも翻訳者や通訳者もいる。
伝道委員会で一緒に奉仕している委員には、フランス語翻訳者の方がいる。
外語大卒でパイプオルガン奏者でもある。

いろいろな分野の翻訳をしているが、特許は面倒なので、いくら頼まれても受けないと言っていた。
理系の私でも特許を読むのは疲れてしまうので、翻訳会社が外語大で特許翻訳者のリクルートをしても成果がないのは理解できる。

そして先日、そのフランス語翻訳者の方から、訳書をいただいた。
医学史に関するフランス語の書籍を、2名で半分ずつ和訳したものだ。

新しい病気が発見されたときに、その患者がどう扱われたのか、医学の発展にはかなりダークな一面があると知ることができる本だ。
読んでいて気分が悪くなるような事例もあるが、遠慮せずに書いているところが、逆に気に入った。

翻訳していて気分はどうだったのだろうか。
後で聞いてみよう。

また、化学者の私にとって、サリドマイドの章が一番気になった。
ドイツの製薬会社グリューネンタールの汚い所業も、隠すことなく記されている。

フランスの本なので、事例が欧米に偏っているのは仕方ないかもしれない。
アジアの事例ではSARSが紹介されているのみ。
それでも日本国内ではほとんど話題となっていない症例もあるので、貴重な資料になると思う。

外国の様々な著作が日本語で読めるのも、翻訳者が努力しているおかげだ。
外国語を習得しなくても、日本語だけで情報収集できるのだから、日本人は幸せなのではないだろうか。

これからも、外国の情報を知りたい人のために代理で読んで奉仕するという姿勢で取り組みたいものだ。

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ドイツ語の複合語の列挙と機械翻訳

私は元々化学者なので、機械翻訳の性能を試すときにも、自然科学系の論文や記事の英語・ドイツ語がどのように和訳されるのかに興味がある。

ドイツ語の場合、辞書に載っていない複合語が多くなるので、人間翻訳者の方が正しい和訳ができそうだが、それでも機械翻訳はいきなり進歩することがあるので、不定期であるがチェックを続ける意味はあるだろう。

トラックバックした記事では、ドイツ語の例文として、複合語の列挙で共通部分をハイフンで省略しているものを取り上げた。
機械翻訳では省略を意味するハイフンを理解できず、不正確な和訳を出力している。

今回は、Süddeutche Zeitung の記事にあった、ホスファン(優先IUPAC名 phosphane, PH3)の説明を DeepL と Google翻訳で試した。
記事のリンクは次の通りで、金星大気中にホスファン(ホスフィン)を検出した話である。
www.sueddeutsche.de/wissen/venus-leben-nasa-phosphan-1.5141383

ドイツ語原文:
Phosphan, ein Molekül aus einem Phosphor- und drei Wasserstoffatomen.

和訳例:ホスファンは、1個のリン原子と3個の水素原子からなる分子である。

DeepL:ホスファンは、1つのリンと3つの水素原子からなる分子。

Google翻訳:ホスフィン、1つのリンと3つの水素原子からなる分子。

「リン原子」と和訳しなくても意味はわかるので、誤訳とまでは言えないかもしれない。
それでもハイフンを認識しないという癖は変わらないようだ。

ところで、PH3 は、最新の IUPAC名では phosphane(日本語 ホスファン、ドイツ語 Phosphan)である。
以前使っていた phosphine(日本語 ホスフィン、ドイツ語 Phosphin)は、GIN(一般IUPAC名
として使用可能である。

DeepLが原文ママで正確に「ホスファン」と字訳しているのに、Google翻訳では「ホスフィン」に修正している。

Google翻訳ではドイツ語原文の入力の下に、「もしかして:Phosphin, ...」と出て、英訳が Phosphine, ... となってしまうので、英訳経由の和訳も「ホスフィン」になるようだ。

まあこの場合も、ホスフィンを使ってもよいので、誤訳とは言えないだろう。

これからも科学記事などを例文にして試してみよう。


(最終チェック・修正日 2019年11月18日)最近の翻訳業界では、機械翻訳(MT)を導入するかどうか、経営者だけではなく、翻訳者も決断する時期が近いと感じているかもしれない。ニューラル機械翻訳(NMT)の精度が向上したと言われていて、翻訳・通訳のアプリも販売されるなど、実用段階に既に入ったという印象を持つ人もいる。しかし、Google 翻訳にいろいろ入力してみて、おかしな訳文が出たと騒いでいる人もまだいる。N...
日本特許情報機構(Japio)のAI翻訳(独日)のデモを試した


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日本翻訳連盟から怪しい翻訳学校に対する注意喚起

2019年の秋頃から、ある怪しい翻訳学校の話題が翻訳者の Twitter などで取り上げられていた。
高額の受講料を支払ったのに、それに見合う指導は受けられず、後悔する人が続出しているという。
そのまま自滅するのかと思っていたら、類似の翻訳講座を新たに作って、そこでも初心者を騙して金儲けを続けようとしている。

今年はコロナ禍ということで、在宅でできる仕事が注目されている。
週間東洋経済2020年12月5日号の特集は「在宅仕事図鑑」で、翻訳も取り上げられていた。
ただし、本業生かして単価を高く設定している事例を紹介しており、初心者が簡単にできる副業として紹介しているわけではない。

自宅で副業翻訳を始めようという人たちが騙されないようにということなのか、本日12月11日、一般社団法人日本翻訳連盟から注意喚起が発せられた。

日本翻訳連盟のウェブサイトのリンクと、その注意喚起のリンクを以下に示しておこう。
www.jtf.jp/
www.jtf.jp/pdf/20201211.pdf

このお知らせを取り上げた Twitter の1つも示しておこう。

日本翻訳連盟のお知らせでは、具体的な名前も出ていないので、厳しさが足りないと少々不満に思う翻訳者もいることだろう。
それでも業界内の問題について公式見解を出して、立場を明らかにしたことは大切だ。

また、後半に示しているように、未経験者がトライアルを受けられる機会を提供することも、経歴詐称をやめさせるためには必要だろう。
例えば、研究者ならば、学術論文を英語で5報書いたとか、博士論文を英語で提出したなどを条件にしてもよいだろう。
他にも、検定試験以外に、公開トライアルも検討してもよいだろう。

この機会に人材育成について真剣に考えないと、10年後には外国で日本語がわかる人材を探すことになりそうだ。

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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