「物品貿易協定 TAG (Trade Agreement on Goods)」という用語は間違い?
9月26日(日本時間9月27日)に発表された日米共同声明(Joint Statement of the United States and Japan)に関するニュースでは、二国間の貿易に関する交渉について注目されていた。
国内ニュースでは、「FTAとは異なる新しいTAG(物品貿易協定)の交渉を開始する」とあり、経済関係の番組で、いろいろな意見が出ていた。
最初は、「過去の経験から、印象の悪いFTAと言いたくないため、TAGという新語を生み出した」という意見もあったが、その後の報道を見ると、「外務省が意図的にTAGという言葉を作って、ごまかしている」ようだ。
外務省のHPには、当初は日米共同声明の日本語訳のみ掲載され、正本の英語版は、1週間以上経過してから掲載されたという。
しかも、その日本語訳は、在日アメリカ大使館の日本語仮訳とは異なっていることが指摘されている。
加えて、外務省は、英語版が正本であることには一言も触れず、日本語版が仮訳とも断っていない。
このあたりの経緯などについては、例えば、AERA.dot の記事を参照してほしい。
dot.asahi.com/dot/2018100700011.html
dot.asahi.com/dot/2018101400015.html
外務省が生み出した「物品貿易協定(TAG)」は、共同声明の3つ目に出てくる。
英語正本:www.whitehouse.gov/briefings-statements/joint-statement-united-states-japan/
3. The United States and Japan will enter into negotiations, following the completion of necessary domestic procedures, for a United States–Japan Trade Agreement on goods, as well as on other key areas including services, that can produce early achievements.
在日アメリカ大使館・日本語仮訳:jp.usembassy.gov/ja/joint-statement-united-states-japan-ja/
3. 米国と日本は、必要な国内手続が完了した後、早期に成果が生じる可能性のある物品、またサービスを含むその他重要分野における日米貿易協定の交渉を開始する。
外務省・日本語版(日本語仮訳とは書いていない):www.mofa.go.jp/mofaj/files/000402972.pdf
3 日米両国は,所要の国内調整を経た後に,日米物品貿易協定(TAG)について,また,他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについても,交渉を開始する。
外務省の日本語版だけを見ると、物品(財)に関する貿易協定の交渉を開始するが、サービスを含む他の重要分野については別個に交渉するようにも解釈できる。
しかし、英語正本を見ると、貿易協定(Trade Agreement)は単数形であり、交渉対象は、小文字で始まる物品 goods だけではなく、サービス service を含むその他の重要分野も同様に取り上げていることがわかる。
NHKワールドが配信した英語ニュースでは、TAGという新語が政府発表の通り、存在していると信じているようだ。
www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/news/20180927_06/
The leaders of Japan and the United States have agreed to enter into bilateral trade negotiations on concluding a Trade Agreement on Goods, or TAG.
物品の goods を大文字で書き始めて Goods にしているので、英語正本を見ていないと言ってもよいだろう。
メディアは、政府の広報機関ではないのだから、英語正本を読んだ上で、調査と取材を行って記事を書いてほしい。
文部科学省などが推進する英語教育改革では、外務省のごまかしを指摘するような人材を育成できるだろうか。
コミュニケーション能力が英会話だけだと思っているような国で、まともな批判精神を持ったジャーナリストが生まれるだろうか。
10月5日の河野外務大臣記者会見では、TAGについての質問に次のように答えている。
www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaiken4_000757.html
【共同通信 福田記者】先ほどのTAGの関係なんですが,ジョイントステイトメントを読むと,物品だけじゃなくてas well as serviceとなっていて,物品に限定しない包括的な交渉とも読めるのですが,これは明らかに日本政府はそうとは解釈していないという理解でいいでしょうか。
【河野外務大臣】物品の協定の交渉ではありますが,その中で,例えば物品の協定と同じようなタイミングで合意が出来る,例えば通関の問題とか,そういう問題については排除しないということでございます。
国会では、このTAGという新語について、アメリカに留学した安倍首相に解説してほしいものだ。
「そもそも」と同様に、なんだかんだと屁理屈をこねて、独自の英文解釈について閣議決定するのかもしれない。
国内ニュースでは、「FTAとは異なる新しいTAG(物品貿易協定)の交渉を開始する」とあり、経済関係の番組で、いろいろな意見が出ていた。
最初は、「過去の経験から、印象の悪いFTAと言いたくないため、TAGという新語を生み出した」という意見もあったが、その後の報道を見ると、「外務省が意図的にTAGという言葉を作って、ごまかしている」ようだ。
外務省のHPには、当初は日米共同声明の日本語訳のみ掲載され、正本の英語版は、1週間以上経過してから掲載されたという。
しかも、その日本語訳は、在日アメリカ大使館の日本語仮訳とは異なっていることが指摘されている。
加えて、外務省は、英語版が正本であることには一言も触れず、日本語版が仮訳とも断っていない。
このあたりの経緯などについては、例えば、AERA.dot の記事を参照してほしい。
dot.asahi.com/dot/2018100700011.html
dot.asahi.com/dot/2018101400015.html
外務省が生み出した「物品貿易協定(TAG)」は、共同声明の3つ目に出てくる。
英語正本:www.whitehouse.gov/briefings-statements/joint-statement-united-states-japan/
3. The United States and Japan will enter into negotiations, following the completion of necessary domestic procedures, for a United States–Japan Trade Agreement on goods, as well as on other key areas including services, that can produce early achievements.
在日アメリカ大使館・日本語仮訳:jp.usembassy.gov/ja/joint-statement-united-states-japan-ja/
3. 米国と日本は、必要な国内手続が完了した後、早期に成果が生じる可能性のある物品、またサービスを含むその他重要分野における日米貿易協定の交渉を開始する。
外務省・日本語版(日本語仮訳とは書いていない):www.mofa.go.jp/mofaj/files/000402972.pdf
3 日米両国は,所要の国内調整を経た後に,日米物品貿易協定(TAG)について,また,他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについても,交渉を開始する。
外務省の日本語版だけを見ると、物品(財)に関する貿易協定の交渉を開始するが、サービスを含む他の重要分野については別個に交渉するようにも解釈できる。
しかし、英語正本を見ると、貿易協定(Trade Agreement)は単数形であり、交渉対象は、小文字で始まる物品 goods だけではなく、サービス service を含むその他の重要分野も同様に取り上げていることがわかる。
NHKワールドが配信した英語ニュースでは、TAGという新語が政府発表の通り、存在していると信じているようだ。
www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/news/20180927_06/
The leaders of Japan and the United States have agreed to enter into bilateral trade negotiations on concluding a Trade Agreement on Goods, or TAG.
物品の goods を大文字で書き始めて Goods にしているので、英語正本を見ていないと言ってもよいだろう。
メディアは、政府の広報機関ではないのだから、英語正本を読んだ上で、調査と取材を行って記事を書いてほしい。
文部科学省などが推進する英語教育改革では、外務省のごまかしを指摘するような人材を育成できるだろうか。
コミュニケーション能力が英会話だけだと思っているような国で、まともな批判精神を持ったジャーナリストが生まれるだろうか。
10月5日の河野外務大臣記者会見では、TAGについての質問に次のように答えている。
www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaiken4_000757.html
【共同通信 福田記者】先ほどのTAGの関係なんですが,ジョイントステイトメントを読むと,物品だけじゃなくてas well as serviceとなっていて,物品に限定しない包括的な交渉とも読めるのですが,これは明らかに日本政府はそうとは解釈していないという理解でいいでしょうか。
【河野外務大臣】物品の協定の交渉ではありますが,その中で,例えば物品の協定と同じようなタイミングで合意が出来る,例えば通関の問題とか,そういう問題については排除しないということでございます。
国会では、このTAGという新語について、アメリカに留学した安倍首相に解説してほしいものだ。
「そもそも」と同様に、なんだかんだと屁理屈をこねて、独自の英文解釈について閣議決定するのかもしれない。