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105倍ではなく10の5乗倍

海外の翻訳会社から頼まれた独日チェック案件は、いつもと違う依頼内容だった。

翻訳対象のファイルはたくさんあるのだが、そのうち3つのみ和訳が入っていて、それだけチェックするというものだ。
しかも作業時間は1時間以内で、もし修正が多すぎるならば、30分以内に連絡してほしいという。
そしてQA評価シートへの記入も求められている。

そう言えば、2年前も1回、似たような依頼があった。
どうやら今回も、依頼する翻訳者を決定するために、一部のみ和訳するトライアルのようだ。
そしてチェッカーの評価によって、別の翻訳者を探すかどうかを決めると思われる。

私の評価は、「チェックの手間がかかる」というもので、最終的な判断は翻訳会社が行うことになる。

文法解釈の間違いはないのだが、気になる点が3つあった。

1)対象とする生物のリストで、和名がない種について、学名をそのまま転記したものと、カタカナ表記にしたものとが混ざっている。

学名はラテン語で書くので、カタカナ表記にしないと言われている。
ただ、一般向け文書ではカタカナ表記でも認められるだろう。
ラテン語のままでもカタカナ表記でもよいから、どちらかに表記を統一してほしい。

2)地名のカタカナ表記がドイツ語の発音に似ていない。

ドイツ語の発音をカタカナ表記で正確に再現できないことは確かだが、長母音と短母音くらいは区別してほしい。
また、例えば、ah では、h は直前の母音が長母音になることを示し、それ自体は無音であり、子音 h としては発音しない。
声に出して発音すればわかるはずだが、つづりと発音の関係を知らないということなのか。

3)原文に 105 とあっても、文意から 105 と判断してほしい。

CATツールで使うためにファイルを読み込んだときに、原文での文字修飾が反映されないことがある。
ここに示した数字の勘違いは、上付き文字のタグが外れたことで生じたものだ。

「消毒は細菌数を105倍減らし、100万個の細菌が10個になる」という和訳は、すぐに変だと気付くだろう。
細菌数の関係からわかるように、「105倍減らす」ではなく、「105倍減らす」、つまり「105分の1にする=10万分の1にする」が正しい。

うまく和訳している箇所も多いが、このようなケアレスミスがあると目立つので、翻訳を依頼する場合に優先順位が下がってしまう。
いくら調べてもわからないこともあるが、このような単純なミスは避けたいものだ。

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ジャンル : ビジネス

翻訳のイベントで発表したときの反応

大学で研究していた時は、年に2~4回は学会などで発表をしていた。
一番忙しいときは、日本化学会の春年会で同じ日に2会場で発表したこともある。
ただし、企業で働くようになってからは、社内の発表や顧客向けのプレゼンはあったが、学会は情報収集での参加ばかりだった。

翻訳者になって、しかも在宅勤務なので、人前に出ることはなくなるのかと思っていたが、会社の方針もあって、年に1回は翻訳のイベントで講演することになった。

いつどこで講演したのか、それは明かさないことにするが、ドイツ語や特許翻訳に関わるものだ。
どこの会場でも、英語の翻訳者が一番多いようだが、必ずドイツ語の話を入れるようにしている。

すると、私が参加したセッション終了後の休憩時間や懇親会のときに、フリーランスの方だけではなく、翻訳会社や翻訳学校の社員が名刺交換に訪れる。
ドイツ語翻訳に関わっている人もいれば、英語翻訳者だがドイツ語に興味を持っている人もいる。

私の業務への影響は未知であるが、今後のためにも名前を知ってもらい、人脈を地道に作っていく意味はあるだろう。

先日の発表では、資料に載せていない話題として、機械翻訳への対応と翻訳者の養成について、そして英語以外の翻訳者が減った場合のリスクも話した。

私の発表直後に5分間の休憩になったのだが、すぐにある翻訳学校の方が名刺交換に訪れ、翻訳者養成の話についての感想を伝えてくれた。
また、続いて2名の方と名刺交換になり、休憩にはならなかったものの、良い反応が得られて、発表したかいがあった。

懇親会でも英語教育に携わっている方などと、これからの外国語教育や、特許翻訳者の養成や、機械翻訳への対応など、いろいろと議論ができてよかった。

たまたま、私の発表のときは、機械翻訳反対派のような人がいなかったので、反論を浴びせられることもなく、参加者アンケートも好意的なものが多かったのかもしれない。

今年10月には横浜でJTF翻訳祭が開催される。
www.jtf.jp/29thfestival/

横浜は開港のときからドイツとも関係があり、横浜日独協会もあるので、ドイツ企業にも協力を依頼して、ドイツ語特許翻訳やドイツ語翻訳者の養成などのテーマでセッションを組めないだろうか。

「なぜドイツ語を選んだの?」というタイトルでもよければ、私も10分くらい話して、いろいろな人にドイツ語を宣伝してみたい。

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【聖書でドイツ語】 正しき者の行く末は輝き出る光のようだ(箴言第4章18節)

聖書の中で私が気に入っているのは、箴言第4章である。
他にも好きな聖句はあるし、誕生日のローズンゲンも忘れられないが、一番と言われれば箴言第4章10~18節を挙げたい。

本日の日々の聖句・ローズンゲンが、その箴言第4章18節である。
和訳は新共同訳と、新しい聖書協会共同訳とで異なっているので、両方引用しておこう。

箴言第4章18節
Luther 2017: 18 Der Gerechten Pfad glänzt wie das Licht am Morgen, das immer heller leuchtet bis zum vollen Tag.

新共同訳: 18 神に従う人の道は輝き出る光
      進むほどに光は増し、真昼の輝きとなる。

聖書協会共同訳:
18 正しき者の行く末は輝き出る光のようだ。
        進むほどに光を増し、真昼の輝きとなる。


形容詞 Gerechten は、形容詞 gerecht を名詞化した Gerechte を更に形容詞化したもの。

テーマ : 語学の勉強
ジャンル : 学問・文化・芸術

製薬業界の希望退職増加で特許翻訳者に転職するだろうか

私が専業翻訳者になったきっかけは、勤務先の医薬メーカー子会社が解散したからだ。
私が所属していた有機合成部門は、事業譲渡先が見つからないということで、若手などごく一部の社員を除いて希望退職扱いとなった。
子会社には翻訳部門もあったが、ここは独立して医薬専門の翻訳会社を設立した。

国内の医薬メーカーはどこでも、バブル期の大量採用が原因なのか、余剰人員の削減を急いでいるようだ。
業績が悪化する前に希望退職で減らしておかないと、そのままでは65歳まで雇用することが不可能になってしまう。
抗体医薬やiPS細胞など、新しい分野で医薬開発をするためには、新しい人材に入れ替えることも必要なのだ。

それで退職した研究者たちは、どこに転職するのだろうか。
同じ業界の他社に転職する人もいれば、ベンチャーに行ったり、薬剤師として薬局で働く人もいる。

私のように翻訳者になる人はどのくらいの割合なのだろうか。
研究者・技術者から翻訳者になったという話を聞くが、具体的な人数などの統計データを見たことはない。

知的財産立国を目指すということで、様々な取り組みが行われているが、特許翻訳者が何人いるのかすら把握されていない。
日本知的財産翻訳協会の検定試験の概要には、10,000人を超えるとあり、次のリンク先の論文では6,000人前後と推定している。
www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/50/11/50_11_727/_pdf

ただし、公的資料では人数不明となっており、数百人規模という推測があるのみで、信頼できる統計がまだない。

民間企業を退職した研究者が、その専門性を活かして特許翻訳者になることが期待されているようで、特許翻訳の業界を転職先として魅力あるものにすべきと指摘されている。

専門知識はあるのだし、大量の英語論文や特許を読んだ経験もあるのだから、適切なトレーニングを受ければ特許翻訳者として活躍できるはずだ。
機械翻訳+ポストエディットという新しい職種にも向いている人がいるかもしれない。

翻訳会社や特許事務所がそれぞれ単独で募集してもよいが、できれば合同で特許翻訳者としての転職を促して、トレーニングも含めて、互いに分担して特許翻訳者の養成をしてもよいのではないか。

英語以外の外国語の人材も足りず、劇的に増加する見込みもないのだから、こちらから特許翻訳への参入を呼びかけるべきだと思う。

テーマ : 脱サラ・起業・副業
ジャンル : 就職・お仕事

讃美歌のパート自主練習のやり方はそれぞれ違うのに

私は教会で聖歌隊の奉仕をしていて、担当パートは一応バスである。
6年もほぼ毎週練習しているが、アマチュアなので、私が安定して出せる音域はたいしたことはない。
出せる音を国際式で表すと、E2~E4で、ちょうど2オクターブ分しかない。

その下のD2は、一瞬ならば出せるが、きれいな響きを出せないので、体全体を使う練習が必要だ。
だから本当のバスではないので、新しい楽譜を渡されたときは、いつも一番低い音を確認してしまう。
また、これは夢の中なのだが、出せない低い音符ばかりの楽譜が突然出てきて、「こんなの歌えない!」と叫ぶこともある。

テノールを頼まれることはほとんどないが、その上のF4~G4も、調子のよいときならば、出せないこともない。
ただし、裏声の練習をほとんどしていないので、これも課題である。

教会に集まる日曜日だけの練習では足りないので、また、他の委員会などもあって全員揃う日が少ないので、これまでは自習のために音取り用音源ファイルを配布していた。

楽譜作成ソフトでは、自動演奏モードの機能もあるので、パートごとや四声コーラスでの音源も作成できる。
私が自分で楽譜を入力したときは、ソプラノをグランドピアノにして、私の担当のバスをコントラバスにするなど、パートごとに楽器を割り当てて、練習の合間にハーモニーを楽しんだこともある。

ただし、音源ファイルを作成しても、コンピューターを持っていない人もいるし、再生できるスマホアプリが見つかっても、ガラケーの人は利用できない。
そのような人は残って、教会にあるピアノで音取りしていることもある。

またある人は、音源ファイルに頼る音取りを否定している。
自宅に楽器がなくても、コンピューターのブラウザピアノやスマホの鍵盤アプリで、自分で鍵盤を押して音を確認する努力をすべきだという。
この方が自分の自習方法として、鍵盤をたたいて1音ずつ確実に音取りしたいのはわかるが、他の人の自習方法を批判するのは困ったものだ。

音源ファイルは、自分で作ったわけではないので、自主性が足りないということはあるし、苦手な音を繰り返し練習するときは不便かもしれない。
ただ、私たちは熟練したプロではないので、他のパートとのハーモニーを確認したいときや、ずっと休符だったバスが途中から加わるようなタイミングの確認には、音源ファイルがあると便利だ。

全体練習とは別に、個人の練習ではどのような方法が一番合っているのか、その人が決めればよいのではないだろうか。
このような心配よりも、イースター礼拝でうまく歌えるように祈ろう。

テーマ : 合唱
ジャンル : 音楽

翻訳料金$585で家電買い替え予定

今年の海外翻訳会社との取引は、予算よりも多くなり、3月末までに約$585が入金予定だ。
当初は住民税の支払い第1期の6月末に日本円にするつもりだったが、3月末に換金することにした。

レートを$1=107円と仮定すると約6万2千円だ。
この金額を追加して、家電を買い替えようかと思っていたら、今日の掃除中にスティック型クリーナーのステックが折れた。

安い掃除機は1万円程度だろうか。
ただ、まだ動くので、ステックと本体のそれぞれにある電源コード用フックを利用して、針金を巻き付けて、なんとか使えるようにした。
これでなんとか半年は使い続けようと思う。

一番古い家電は冷蔵庫なので、これを買い替えようと計画している。
省エネ性能も向上しているし、冷媒も温暖化対策で変わっているので、5万円程度で探してみよう。

ただし、まだ確定していないのだが、スーツを新調するかもしれない。
教会の役員に選出されると、礼拝司式などもあるので、スーツが必要だ。
現在は1着あるが、今後のことも考えると、あと1~2着は持っていてもよいだろう。
安売り量販店の他にも、デパートの催事場などで、2着オーダーできるイベントもあるので、チェックしておこう。

テーマ : 電化製品
ジャンル : ライフ

英語特許の機械翻訳で図面の説明に未だに「イチジク」と出力される

私が翻訳会社の正社員となってもうすぐ1年になる。
主に特許の英日・独日翻訳を担当している。

英日翻訳では、クライアントの希望もあって、機械翻訳+ポストエディット(MT+PE)のプロジェクトに参加している。
独日翻訳はまだPDFを見ながらCATツール上で和訳を入力しているが、英日はMT出力のPEばかりになっている。

MT+PEという新しい作業パターンが翻訳と言えるのかどうか、いろいろと議論があるが、翻訳会社は基本的に専門サービス業なので、業界の潮流の変化には臨機応変に対応しなければならないだろう。

ただ、MT出力は人手翻訳とは誤訳のパターンが全く異なるので、PEをやりたいかどうかというよりも、PEに向いている人と、まったく対応できない人に分かれてしまうだろう。

MTは、見た目では、内容を理解して翻訳したかのような出力をするが、実際には文脈を全く考慮していない。
そのため、PEをするときに、予想外の誤訳に出会って作業が止まってしまう。
思考を一時的に混乱させるので、原文を読んで思いついていた訳文を忘れてしまったり、他の修正すべき個所を飛ばしてしまうリスクがある。

以前にも指摘されていたが、図面の説明のところで、「イチジク」が出てきたので、今日も一瞬戸惑ってしまった。
これは有名な例で、こういった誤訳の発生を防ぐためのツールも開発されているという。

何が「イチジク」に誤訳されたのかというと、明細書内の図面の説明のところだ。

英語原文「Fig. 1 ..」 ⇒ MT出力 「イチジク。図1は、…」

確かに、fig は、植物の「イチジク」であるが、Fig. が Figure の略だということは、特許明細書や学術論文を読むときは、無意識のうちの前提となっているだろう。

MTは文脈を考慮しないことに加えて、略語を示すピリオドを文末と判断したため、「イチジク。」になったのだ。
ただ、学習済みのコーパスから、図面の説明と判断したのか、続く数字の 1 を「図1」としている。

人間ならば、もし誤訳しても推敲時に気付いて修正するが、MTには推敲というセルフチェック機能はないようだ。

これからMTが人間にとって使いやすく進歩することを期待したいが、PEができる人材を育成することも同時進行で行わないと、10年後には困ることになるだろう。
日本で特許申請したいのに、翻訳者が見つからないということになり、日本語を勉強した外国人翻訳者ばかりに依頼することになるかもしれない。

テーマ : 語学の勉強
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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