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ドイツ語: 接続法II式の外交用法(婉曲用法) dürfte

ドイツ語の特許や自然科学系の記事でも、接続法を目にすることがある。

ほとんどの場合、「~と言われている」や、「~の場合に~であったと思われる」などの、第三者の意見の引用や、断定を避ける外交用法(婉曲用法)である。

今回は、太陽系外惑星に関する Max Planck 研究所の発表から、dürfen の接続法Ⅱ式、dürfte の使用例を引用しておこう。
www.mpia.de/aktuelles/2019-06-GJ3512b

Astronom*innen des CARMENES-Konsortiums haben einen neuen Exoplaneten entdeckt, der nach derzeitigem Wissensstand nicht existieren dürfte.

CARMENESコンソーシアムの天文学者らは、現時点の知識水準によればおそらく存在しないであろうとされていた新しい系外惑星を発見した。

小学館独和大辞典第2版の説明は次の通り。
((話し手の推定を控え目に示す.否定はつねに推定の内容にかかる)) おそらく…だろう,…であるといってよいだろう

テーマ : 勉強日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

的確な訳注で機械翻訳の弱点を補完する

機械翻訳の精度が向上しているという話を頻繁に聞くようになった。
すべての分野ではないが、機械翻訳の導入に伴ってポストエディットなどの新しい業務が発生し、翻訳者の働き方が変わることになるだろう。

私が取り組んでいるドイツ語特許翻訳では、クライアントから一度に何件も問い合わせが来ても、もともと人材不足のため、納期延長ができない場合は、残念ながら断ることも多い。
フリーランス翻訳者を募集しても、すでにどこかで専属になっているのか、ほとんど応募がない。
ドイツ語の特許翻訳講座もいくつかあるが、それでも養成が間に合わないので、機械翻訳を導入するしかないだろう。

機械翻訳の精度が上がっても、最終的には人間が確認することになるので、翻訳者が不要になるという世界は来ない。
ポストエディットという新しい仕事に適応するだけではなく、機械が苦手とすることを担当するようになるだろう。

機械が苦手なことの1つに、専門知識を活かした的確な訳注の作成が挙げられるだろう。
化学であれば、図示された構造式と化合物名が一致しないなどの、原文の記載ミスの指摘がある。

画像認識技術が発達すれば、機械が構造式を認識して化合物名を自動作成し、本文中の化合物名と照合するようになるかもしれない。
しかし、構造式と化合物名のどちらが間違っているのか、その研究分野の関連文献も調査して判断するのは、人間の方が優れているだろう。

ドイツ語で書かれた太陽光発電の文書で、太陽光発電パネル表面の汚れの例示に grüne Zellen (英:green cells、日:緑色の細胞)が出てきた。

この「緑色の細胞」について調査すると、「コケ・藻類」のことだった。

人間翻訳者は、原文ママで「緑色の細胞」と和訳したとしても、「具体的には何を指すのだろうか」と考えるはずだ。
そして、原文ママで和訳して訳注を付けるか、それとも具体的に「コケ・藻類」と意訳するか、というところまで考える。
しかし、機械は原文ママで和訳するだけで、気を利かせて訳注を作成することはないだろう。

人間が行う作業をすべて機械で置換するのではなく、お互いが補完し合う、新しい翻訳業務の形態を目指してほしい。

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機械翻訳をどのように利用するかを議論したい

昨日24日に、日経電子版に【AI翻訳「人間超え」へ 技術が急発展】という記事が出て、翻訳関係者が様々な反応を示している。
www.nikkei.com/article/DGXMZO49000580W9A820C1000000/

続いて本日25日には、自動翻訳の記事の抜粋が掲載された。
www.nikkei.com/article/DGXMZO4900070026082019000000/

いずれも日経エレクトロニクス9月号に掲載された記事で、1か月前に発行されていた。
再構成された記事が無料で日経電子版に掲載されて、多くの人の目にとまったことで、この2日間でツイッターも含めて多様な反応が見られた。

元の記事は2部に分かれていて、記事ごとにPDF版を購入してダウンロードできる。
本日はまだ消費税8%なので、1本432円だ。
話題になっているので、日経BPのサイトから2本とも購入して読んだ。

他の人たちが指摘しているように、機械翻訳推進側に偏った内容であることは否定できない。
技術の進歩を紹介することが主目的なのだが、AI翻訳が発展したとしても、原理的に実現できないと指摘されていることにも触れてほしかった。

機械翻訳では、文脈を無視していることに加えて、人間が持つ常識や暗黙の了解、感情や文化的背景を反映しないので、ありえない翻訳結果を出力することがある。

そのような特徴があるためか、ネット上には、機械翻訳を利用したと思われる誤訳例が披露されていて、機械翻訳否定派は、このような致命的な誤訳をネタにして、機械翻訳が使えないと、ことさらに強調しているようだ。

例えば、「お子様は食べないように」を Google 翻訳で英訳すると、Do not eat children. と、人間の常識ではありえないものになる。

この常識外れの誤訳というのが、人間による誤訳とは異なるパターンの誤訳の発生であり、これが特徴でもある。

文脈に応じた単語の使い方を学習するBERTが出現したものの、人間の常識を学習させるために、「〇〇は食べ物ではない」または「××は食べ物である」という情報をすべて学習させることは現実的ではない。

そのため、この特徴を知ったうえでポストエディットができる、新しい翻訳人材(ポストエディター)の育成が必要になる。
私が関わる特許翻訳では、人材不足ということもあり、機械翻訳を利用しなければ大量の業務をさばききれない。
ドイツ語翻訳では、もともと人が少ないし、その中から理系知識が必要な特許翻訳をやろうという人は、さらに少なくなる。

ポストエディターも含めた翻訳人材の育成は、特にEUの大学で専門的に行われているが、日本の大学ではほとんど見られない。
関西大学の山田優教授は、数年前からポストエディターの育成の研究をしているが、なかなか広がらない。

山田教授は、京都で行われるTCシンポジウムで、ポストエディターの育成について講演する。
「ポストエディターの素養と涵養〜~国際標準のポストエディットを目指して~」

山田教授のブログ記事を参照してほしい。
ameblo.jp/chuckmy/entry-12528539285.html

私はこのシンポジウムに参加しないので、参加した人から情報をもらおうと思う。
また、機械翻訳を利用する翻訳会社で山田教授と連携して、社内翻訳者やフリーランス翻訳者の研修も行いたいものだ。

語学の勉強が不要になるとか、翻訳単価が劇的に削減できるなどの、極端な意見ばかりに注目しないでほしいものだ。

機械翻訳の導入に賛成かどうかではなく、どのように利用すれば、業務の効率化に貢献できるのかを議論したい。

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スルガ銀行定期預金の解約予約をした

スルガ銀行ANA支店は、10年近くメイン口座として利用して、ANAマイルももらっていた。

しかし、不動産融資関係の問題が生じたため、生活費などの決済口座を目的別に、2018年10月から三井住友銀行・イオン銀行・横浜銀行に移した。

スルガ銀行ANA支店には、まだ定期預金10万円が残っている。
年利0.110%と高めなので、そのまま残していたが、10月下旬の満期に合わせて解約予約をした。

この10万円は来年5月に支払う住友生命個人年金保険の年払い保険料に充当する。
現時点で積立定期が合計9万円あるので、保険料約18万円の支払いが可能である。
または、今月末に海外翻訳会社からの翻訳料金の残高が約$900になるので、代わりにこれを日本円して充当してもよいだろう。

では、この18万円を約7か月間、元本確保だと定期預金しかないだろう。
大和ネクスト銀行の期日指定定期預金だと、年利0.100%になると思われ、利息は80円くらいだ。
利息を得るというよりは、うっかり使ってしまわないように、定期預金で拘束するという考え方だ。

イオン銀行では取引ポイントに応じたステージが一番高くなり、普通預金の年利が0.150%と、定期預金よりも有利だ。
積立定期が0.08%なので、中途解約して普通預金に戻した方が利息は増えることになる。

普通預金だと、うっかり使ってしまいそうだが、iDeCo掛金を支払った後の月末残高を、20万円以上にキープするというルールを決めておけばよいだろう。

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金融資産合計が1000万円を超えた

保有している金融資産について、株式・投資信託・外貨だけではなく、iDeCoや個人年金保険なども含めて、エクセルで一覧表を作って、すぐに把握できるようにしている。

弟に毎月6~7万円を仕送りしているので、当初の予定よりも増加は遅いが、今週ようやく1000万円を超えた。
実家の不動産は入れていない。
老後2000万円問題で注目された資産形成だが、半分確保したということになるだろうか。

割合が一番多いのは、iDeCoで、約400万円。
次いで、個人年金保険2本の死亡時保険金で、約380万円。
この2つで約780万円だが、中途解約ができないので、帳簿上の資産ということになる。

換金可能な資産として、定期預金が約100万円。
外貨が約56万円。
株式・投資信託は合計で、約50万円と少ない。

もしもの場合に転居が必要になっても、100万円くらいあればなんとかなるだろう。
以前は、年収分を貯蓄しようと言われていたので、60歳までに、すぐに換金できる資産で500万円を目指したい。
それでも不安なので、最低でも70歳まで翻訳を続けることにしよう。

テーマ : 資産運用
ジャンル : 株式・投資・マネー

翻訳案件受注後に間に合わないと正直に言えば許される?

最近、ある翻訳講座について話題となり、講師のTwitter投稿を遡って読んでみた。
特許翻訳は教えていないようだし、英語だけでドイツ語はやっていないので、受講者が将来、私の業務を助けてくれることはなさそうだ。

投稿を読んで気になったのは、ビジネスマナーについて誤解を招く表現があることだった。
投稿した本人からすれば、そんな意図はないと言いたいのかもしれないが、言葉を扱う職業として不注意だと思う。
相手にどのように伝わっているのか、私も会報に原稿を書くこともあるので、自分のことを反省する意味でも記事にしておこう。

実際の仕事を受注するにあたり、対応できる内容と納期なのかどうかを判断しなければならない。
その講師の投稿によると、最初の頃は見極めが難しくて、徹夜で納期に間に合わせたこともあるそうだ。

そして特に気になったのは、次の2点である。

1) 依頼が来たらできなくても「できる」と言ってから、必死に勉強すればいい。
2) 間に合わないときには納期数日前に正直に言って、他の方に頼んでもらえばいい。

トライアルに合格しても、実際の仕事のワード数ははるかに多いし、すぐには理解できない内容のこともあるだろう。
得意な分野であっても、調査に時間がかかることはよくあることで、知らない分野はもっと時間がかかる。
できないのに「できる」と言って、自分のレベルを偽って受注するのは、発注側のことを考えていない。

必死に勉強すればいいと言っても、簡単なネット検索や書籍の読み込みで対応できればよいが、リスクがありすぎる。

もし、間に合わないと正直に言うとしても、1000ワードだけ引き継いでほしいなど、具体的な対応例も書いておかないと、誤解して、全部投げ出してしまう人もいるのではないか。

納期ギリギリはアウトとも書いているが、数日あれば余裕があるから許されると勝手に解釈して、本当に受講生にこのような対応を教えているのだろうか。

確かに、間に合わないことが早めにわかれば、発注側も対応できるかもしれないが、翻訳者の緊急手配など余計な仕事を発生させて、何とも思わないのだろうか。
他の投稿ではプロとしての心構えなど厳しいことも書いているが、これはプロ意識が高い人の発言だろうか。

急病や災害、家族の不幸などではなく、自分の能力を超える案件だからキャンセルしても大丈夫などと教えてよいのだろうか。
英語の翻訳ならば、すぐに代わりが見つかるとでも思っているのか。
それとも、もし契約が切られても、別の翻訳会社を探せばよいとでも思っているのか。

数年前に数名で分担して英日翻訳をしていたとき、納期当日にキャンセルの連絡をしてきた翻訳者がいた。
文句を言っても仕方ないので、私も含めて、そのプロジェクトに参加していた残りの数人で手分けして和訳したことがある。

そんなことを言う私も10年ほど前、交通事故で骨折したため、25万円の案件を受注2日後にキャンセルしたことがある。
このときはある外資系企業の翻訳プロジェクトに参加していて、他のメンバーにファイルを引き継いでもらえた。

このように対応してもらえることもあるが、いつも可能というわけではない。

人数の少ないドイツ語翻訳では、キャンセルされると、もっと大変だ。

私は社内翻訳者としてドイツ語特許翻訳を担当しているが、人手が足りないので、納期によっては契約フリーランス翻訳者に和訳を頼むことがある。
1件を私が和訳している間に、同時に別の1件を処理してもらえれば、1人で2件処理するよりも早く納品できる。

しかし、納期4日前に、翻訳者からキャンセルの連絡があり、1ワードも和訳していない状態で引き継いだ。
文句を言っても和訳が自然に出現するわけではないので、作業中の案件を中断して、3日かけて急いで和訳して納品したことがある。
私が担当していた案件が予定より早く進んでいたので対応できたが、もし納期前日だったら徹夜だったかもしれない。

依頼を断ったために二度と問い合わせが来なかったという話も聞くが、できないことでも「できる」と返事をしてから必死に勉強すればいいという、普遍性があるとは思えない教えを信じる翻訳者が存在するということは、発注側としても恐ろしい現実だ。

こんな翻訳者を量産しようという翻訳講座があるのだから、人間を信用せずに、機械翻訳+ポストエディットで対応しようという翻訳会社が現れても不思議ではない。

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ドイツで新生児の手の奇形が増えている?

ドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州のゲルゼンキルヘンにある聖マリア病院(Sankt-Marien-Hospital)で、今年6月から今月9月上旬までに誕生した新生児3人で、手に奇形が見られたという。

短期間に連続したことで、奇形の発生率が高くなっているのではないかと、ケルンの助産師が指摘し、専門家が原因を調査しているという。

放送局WDRの9月13日の記事は次の通り。
www1.wdr.de/nachrichten/ruhrgebiet/fehlbildung-gelsenkirchen-ursachensuche-hebamme-100.html

この指摘の後、この10年近くに見られた、約30件の類似の手の奇形が報告された。

この記事を受けて、9月16日のZEITの記事は次の通り。
www.zeit.de/wissen/gesundheit/2019-09/fehlbildungen-saeuglinge-deformation-haende-krankenhaus-geburt-gelsenkirchen/komplettansicht

奇形を持つ新生児の割合は、1~2%とのことだが、今回のように同じ病院で短い期間に、しかも同じような手の奇形が出現することは滅多にないようだ。

今回の3件の家族について、民族的・文化的・社会環境的にも共通点はないようだ。
妊婦が服用した医薬品や環境有害物質の影響が疑われているが、はっきりしたことはまだわからない。
類似の奇形はフランスでも報告されているとのことなので、協力して原因調査が進むことを期待したい。

新生児の手の奇形というと、サリドマイド(Contergan)を思い出す。
化学・医薬は人々の健康を支えてきたが、ネガティブな一面ということで、研究者は忘れてはならない事件だ。
もし医薬品の未知の副作用であると判明したならば、すぐに警告を出して、被害の拡大を防いでほしいものだ。

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ジャンル : 心と身体

「年〇万円稼ぐ」という翻訳講座は受けたくない

翻訳者になる過程は、人それぞれである。
私の場合、理系研究者でドイツ語がわかる人材が少ないので、定年後に翻訳で業界に貢献しようと思っていた。
実際には2004年11月に副業翻訳を始めた。
しかし、2016年3月、勤務先の医薬メーカー子会社が解散することになり、派遣社員を3か月続けた後、予定を10年以上前倒しして専業翻訳者となった。

医薬メーカー子会社での年収が600万円台だったので、翻訳収入の目標は年間500万円以上に設定した。
生活費や個人年金保険に加えて、弟への仕送りをどうするかという問題があり、この金額になった。

個人事業主であってもビジネスだから、事業を継続するためにも、具体的な売上目標を設定するのは当然だ。
ただ、仕事をするには、お金儲け優先ではなく、取引先との信頼関係や仕事への取り組み方を優先して考えたい。

「翻訳で年収1000万円」というキーワードを目にすることもあるが、そのような翻訳講座は、個人的な意見として、受講したくない。
語学の知識が増えるかもしれないし、翻訳能力も短期間で伸びるかもしれないが、お金儲けを優先するような宣伝文句に反感を持つだろう。

お金のことだけではなく、トライアルの訳文ならば見せてもよい、どの翻訳会社が料金が高いかなど、守秘義務の解釈が異なるので、このような講師は信用できないから嫌だ。

「最短〇か月でトライアル合格」という宣伝文句もあるようだが、なんだか受験対策の予備校みたいで、私には合わない。
テクニックを身につけた方が短期間に稼げるようになるのかもしれないが、ある程度独学で苦しむことが糧となり、将来役立つと信じている。

個人的意見を言えば、「信頼を勝ち取るために実践すること」が宣伝文句であれば魅力的に感じる。

最後に、聖書から、仕事をするときに大切に思っている個所を引用しよう。
マタイによる福音書第6章24節から抜粋(新共同訳)

「だれも、二人の主人に仕えることはできない。… あなたがたは、神と富とに仕えることはできない。」

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日本人の名前の読み方がわからないというコメント

先月下旬に受注したネイティブ日英翻訳のチェックでは、日本人の名前の読み方がわからないというコメントが付いていた。
もっと粘り強く検索すれば判明したかもしれないが、時間切れでチェッカーの私に回ってきたようだ。

文献を引用するときに著者名を入れて、「〇〇らは以下のように報告している。」などと書くことがある。
原文日本語では、日本人著者の姓名は、ほとんどの場合漢字で書かれていて、当然ながら、フリガナはない。

その分野では有名な研究者なのだろうが、残念ながら私も知らない人だったので、全くわからない。
ということで、日本語で書かれた論文や学会会員誌などで、ローマ字表記が併記されているかどうかをひたすら検索した。

ある著者の名は、であったが、私は初めて見る名なので読めなかった。
翻訳者は Shige と書いていた。

検索すると日本の学会誌の日本語記事がヒットした。
その記事をダウンロードして確認すると、1ページ目の脚注に著者名のローマ字表記があり、Susumu だった。

読みが簡単な苗字でも面倒な例として、大木 (Ohki)大矢 (Oya)が出てきた。

翻訳者は、「大木」をヘボン式で Oki としていたが、念のため検索して、実際の論文を見ると、Ohki になっていた。
それに対して「大矢」では、論文でも Oya だった。

また、2015年ノーベル化学賞受賞者の大村教授は、Ōmura である。
このように、長母音オオのローマ字表記を確認するには、本人が書いている論文などを探す必要があるわけだ。


ノーベル財団の2015年ノーベル医学生理学賞についての記事では、大村智教授の名前のアルファベット表記は 「Satoshi Ōmura」 と、「オオ」という長音の表記が 「Ō」 になっている。www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/2015/【The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2015 was divided, one half jointly to William C. Cam
ノーベル賞受賞者大村教授のアルファベット表記はŌmura


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化合物名の略称は面倒だ

化合物名は長いので、繰り返し出てくる場合には、略称を使うことが多い。
例えば、人気のサプリメントに入っている「ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid)」は、英語名由来の「DHA」と表記する。

DHAならば有名と思われるので、最初から略称のままで書いてあっても、文脈からドコサヘキサエン酸のことだと理解できるだろう。

しかし、著者自身が有名だと思っている略称について、誰もが知っているというわけではない。

ある薬剤の特許で、列挙された含有成分の1つに「DHC」とあったが、これが具体的にどのような化合物を指すのかは、特許中に一度も出てこなかった。

含有成分の列挙の部分は、" .., vitamin C, .., DHA, DHC, .. " となっていた。

担当した翻訳者は勘違いしたのか、「…、ビタミンC、…、DHA(DHC製)、…」と和訳していた。

確かに、DHA入りのサプリメントをDHCという会社が販売しているが、ここは含有成分の列挙なので、DHCは会社名ではなくて、化合物名の略称であると判断してほしかった。

では、DHCは具体的にどのような化合物名の略称なのだろうか。

その特許に何も出ていないので推測になるが、「ジヒドロセラミド(dihydroceramide)」
かもしれない。

例えば、次の論文の Abstract に出てくる。
www.jbc.org/content/early/2011/09/13/jbc.M111.297994

【We describe a rapid, time-dependent, marked upregulation of dihydroceramides (DHCs) in mammalian cells and in the lungs of hypoxic rats.】

また、咳止め薬の「ジヒドロコデイン(dihydrocodein)」もありそうだが、今回の薬剤にはふさわしくない成分だ。

他にもあるかもしれないが、このDHCは、請求項では含有成分として記載がないので、これ以上調査はしなかった。

とりあえず、持っている知識が邪魔をして、文脈に反する誤訳をしてしまう事例として記憶しておこう。

テーマ : 英語
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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