自称1000万円翻訳者の浅野正憲は、在宅翻訳を勧めるブログの過去記事に、自身の誤訳を堂々と掲載したままにしている。
誰が見ても誤訳というか、なんとなく翻訳をしているのだが、修正も削除もしないということは、本人は自分の訳文が正しいと思い込んでいるのだろう。
これまでの経歴や翻訳者を目指した経緯については断片的な情報しかないが、自分の能力を客観的に分析できていないようだ。
ただ、訳文をゼロから構築することができないことに気づき始めたのか、最近は機械翻訳(MT)の出力の手直し、つまりポストエディット(PE)も講座受講生に教えているという。
しかし、ポストエディターの資格に相当しないレベルの者が教えているので、使えない中途半端な人材を増殖させているだけだ。
トラックバックした記事に引用したように、3月18日に掲載された記事では、初めての案件でMTPEをすることになった受講生が、Trados の設定で困って助けを求めているメールを紹介している。
そのメールのスクリーンショットについて、下に再度掲載しておこう。
セキュリティに関しても、ポストエディターとしての教育をまともに受けていないことが明らかだ。
このような恥ずかしい事態を公表して、自身の翻訳講座の宣伝になっていると思っているのだろうか。
反省することもなく、以下の Twitter などで批判されているように、PEが翻訳よりも楽な作業だと嘘をついて、受講生をさらに獲得しようとしている。 翻訳者とポストエディターの能力について、批判はあるが、ISO規格が定められている。
例えば、言語処理学会での次の発表を参考にしてほしい。
www.anlp.jp/proceedings/annual_meeting/2017/pdf_dir/D7-1.pdf
これに加えて、例えば、雑誌の「通訳翻訳ジャーナル」ではこれまでに何度もMTに関する記事も掲載してきた。
本当に翻訳者を目指すなら、バックナンバーを入手して、多様な情報源を参考にしてほしい。
来月5月21日発売予定の2020年夏号の特集は、「どうなる? どうする? 機械翻訳2020」だ。
この特集のために、私の勤務先もアンケートに協力しているし、掲載されるかどうかは不明だが、ドイツ語について私も回答している。
実際にMTを使ってPEをしている翻訳会社・翻訳者がアンケートに回答しているので、この特集を読めば、浅野正憲の言っていることが嘘だとわかるだろう。
また、発売したばかりの「新版 特許翻訳完全ガイドブック」でもMTを取り上げている。
特許が苦手な浅野正憲の講座では紹介しないだろうが、PEが単なる編集作業ではないことを理解できるはずだ。
PEをするには、語学能力の習得だけではなく、MTの癖も学ばないといけない。
人間が犯さない変なミスばかりではなく、人間と同じ種類のミスも出力するから、うっかりすると気づかない。
MTのミスをすべて修正するには、ゼロから訳文を創り上げる能力が必要だ。
そのため、翻訳対象分野の専門知識に加えて、翻訳者としての経験が最低でも2年、できれば5年は必要だ。
そして、人間翻訳(HT)のチェックをした経験も必須ではないかと思う。
これはMTの利用を促進したい側の責任でもあるが、MTによって翻訳作業が楽になるという誤解が広まってしまった。
普及のためには少々大げさな宣伝文句で注目を集めたかったのかもしれなが、PEができるようになるには、まずは従来の翻訳を学ぶ必要がある。
MTの使い方を熟知していれば、翻訳作業にうまく取り込めるだろうが、初心者はMT出力を信じてしまうリスクがあるので使ってはならない。
私もあるセミナーで質問を受けて、「翻訳の練習のためにMTを使ってはならない。MTのミスを指摘できるレベルまで勉強してから使うべき」と回答したことがある。
昨年11月のAAMTでも、ヨーロッパの事例紹介で、PEをやりたがる翻訳者は少ないという話が出た。
日本でもPEは不人気で、翻訳者の募集よりも困難である。
従来のHTに比べて、例えば、化学の特許ならば、長い化合物名や測定データのタイピングから解放される利点はあるものの、文脈と無関係の訳文を見て思考が止まったり、どこまで修正するかで迷ったり、意外とストレスが溜まる作業だ。
苦労する割には、翻訳料金の値下げをしようとするクライアントもいるそうなので、PEは人気がない。
しかも、能力が高い翻訳者でなければできない仕事なのに、優秀な人材ほどPEを望んでいない。
ということで、ポストエディターを確保できない翻訳会社が多いため、初心者をだまして人数を集めて売り込もうということなのか。
人数だけ集めても、まともな仕事ができずに多大な損害が出て、賠償することになるだろう。
文部科学省では、「英語が使える日本人の育成」と言っていたことがあったが、翻訳者の養成などの具体的なことは、業界に丸投げされている。
ヨーロッパのように大学で翻訳の学位を与えるようにしないと、人材育成が進まず、今後の翻訳需要に対応できないだろう。
近い将来、翻訳者もポストエディターも、日本語ネイティブでは人材が確保できなくなり、外国で日本語がわかる翻訳者を集めることになるかもしれない。自称1000万円翻訳者の浅野正憲が運営する「翻訳の学校」は、テレビ番組でも宣伝するなど、関係者のストレスを高めるばかりだ。宣伝用のブログでも、連日、様々な投稿や報告が掲載されている。そして今日、3月18日の投稿では、初めて仕事を獲得したという受講者のメッセージが公開されていた。しかし、よく読むと、初めての受注案件で勝手がわからず、困惑している様子だ。そのメッセージ部分のスクリーンショットを下に示す...
初めての翻訳案件で機械翻訳のポストエディットは危険だ
テーマ : SOHO・在宅ワーク
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