続 ドイツ語の多義語に注意: Stärke 強度、濃度、厚さ etc.
私の能力は完璧ではないが、ドイツ語翻訳者は足りないので、少しでも貢献できるように努力している。
今月受注したチェック案件でも、多義語に注意しなければならないことを再認識することになった。
そのうち Stärke という名詞を例示しよう。
たいていの独和辞典では、1番目の語義に「強さ、強度」と載っている。
これは物理的な強度だけではなく、精神的な強さ、肉体的な強さも含んでいて幅広い。
その他にも、「程度、密度」、「濃度」、「太さ、厚さ」、「勢力」、「強味、長所」などがある。
今回の案件は、レーザー加工機械の説明書である。
その中に、例えば、Materialstärke があり、翻訳者は「材料強度」と和訳していた。
材料を切断したり切削するには、材料の特徴として強度も関係するだろう。
そのため、私も最初は、そのままでよいと判断して確定のボタンを押していた。
しかし、あるセグメントに「Materialstärke をノギスで計測する」という表現が出てきた。
ノギスで計測するのは長さや厚さである。
独英辞典では技術用語の専門辞書も含めて、material thickness ばかり出てくる。
ということは、「材料の厚さ」が正しいということだ。
以前の類似の製品を検索すると、製品マニュアルは見つからなかったが、利用している大学のレポートが見つかった。
「ノギス」は出てこないが、「基材の厚さ」などに合わせてツールライブラリを選択するとある。
ということで、ここでは「材料の厚さ」が正しいと判断して修正した。
「ノギスで計測する」が出てこなければ、「材料強度」のままで納品してしまったかもしれない。
科学技術用語が得意な化学者であっても、工作機械のドイツ語をすべて知っているわけではない。
やはり翻訳は1人で完結するものではないこと、独和辞典だけでは足りないということ、そして私もミスをしないように気をつけようと再認識した週末であった。