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「ぼくたちの英語」(黒田龍之介著、三修社)

私は外国語が得意というわけではないが、興味があるので、いろいろと手を出している。
副業で英語とドイツ語の翻訳をしているが、仕事がないときはノルウェー語を勉強している。
ということで、語学関連の書籍を選んで読むことも多い。

今読んでいるのは、黒田龍之介著 「
ぼくたちの英語」(三修社)だ。
http://www.sanshusha.co.jp/np/details.do?goods_id=3440

【「使える英語」を目指していながらも実際には使えない「英会話」「英語コミュニケーション」重視に偏重した昨今の安易な語学教育行政・語学学習の流行とは相容れない、「本物」の英語を求めて。

若き英語教師とともに取り組む、楽しくも真面目な「課外」実習!

はたして、その先で著者が見たものは……?

~英語がなかなか身につかない人、英語をあきらめてしまった人、 学校の英語の時間がつまらなかった人、
自分の授業に悩んでいる先生たち、 そして、英語を勉強したことのあるすべての人へ。~ 】

章立ては次の通り。


0 はじめに

1 世間が期待する英語
2 教室で必要な英語
3 教師が学習する英語
4 プロ教師のための英語
5 がんばれ、新人英語教師!
番外編 英語教師の英国旅行
おわりに

「この本は、中学校や高校で英語を教えている教師に向けられた、一つのメッセージである。」 とあるが、
英語学習・英語教育に関心を持つ人であれば、著者独特の語りに興味を持って読めるだろう。

ここでは英語教師でなくても関係する、「1 世間が期待する英語」 から、一部引用してみよう。


英語教師の英語力

【世間では 「英語教師はとにかく英語ができること」 という要求が、ほかの科目に比べても
特に強いように感じる。

 外国語に完璧ということはない。
 たとえば、日本人の英語教師がネイティブ並みに英語を操ることは難しい。 …
日本人英語教師には、ネイティブにはない利点がたくさんある。なりよりも、外国語として苦労して学習してきたからこそ、教えることができるのではないか。 …
 それなのに、世間は英語教師にネイティブのような 「ペラペラ」 を要求するのである。
 イヤな風潮だよね。】

「ホンモノ」の英語

【入試に期待を寄せる一方で、世間では 「ホンモノの英語」 を求める声も強い。


英会話重視論が、いまの英語教育では欠かせない。 … 英会話とは世間の持つ 「欲望」 のようなものであって、それを押しとどめることは非常に難しい。

 だいたい、会話ってそんなに簡単に上達するものだろうか。 … 英会話のできることが「ホンモノの英語」 なのだろうか。そもそも 「ホンモノの英語」 って何?】

ネイティブの英語

【≪英語教師はネイティブがいちばん≫

 これも世間に根強い意見である。

 現段階で外国語指導助手の授業は部分的である。 … 日本人教師が間に入って、はじめて授業が成立しているのだ。 … 
≪英語教師はすべてネイティブ≫ というのは、非現実的な極論である。そんなの無理だって。】

早期から始める英語

【≪ええ、中学生からフツーに英語をやったんですが、考えてみれば、あのときすでに遅かったんですね。
道理で身につかなかったわけだ。やっぱり英語は小学生から始めなきゃ≫
 こういうことを、本気で信じている人がいるから、困っちゃうのである。

言語習得は非常に複雑な過程であり、ただ早くからやればいいってものではないはずだ。ちょっと頭を冷やして考えれば、わかるはずなんだけど。
 ところが、それがわからない人が多数派なのである。小学生から英語をやることはよいと決まっているのだ。それどころか議論は、どのように教えるかという点に、すでに移っている。】

遊びながら学ぶ英語

【≪小学生なんだから、難しい文法を教えてもダメだ。遊びながら楽しく、生きた英語を自然に
みにつけさせるのがいい≫
 そんなことって、可能なのだろうか。
 だって、それができるんだったら、どんな科目でも、すべて遊びながら自然に身につけさせればいいじゃん。】

英語で教える英語

【小学校英語と並んでもう一つ、高校英語の授業の一部を英語でおこなうことも世間の注目を集めており、
それに対してもこれまた賛否両論が飛び交っている。
 ここで想像してみる。授業中に英語しか使わないとどうなるか?
 答え=生徒は寝る。

 文科省が何かを思いつくと、その筋の専門家というのが雨後の筍の如く現れ、英語圏で仕入れたメソッドをもとに、「楽しい授業」 を実践してみせる。それって本当に効果があるのか。 

クラスによってはうまくいくかもしれない。だが、そうとは限らない。日本語で説明しても理解できないクラスが、英語でわかるはずがないのだ。

だったら古典の時間も、授業は古語のみで会話をし、ついでに着物姿で蹴鞠などすれば、いとをかし。】

皮肉の対象者には面白くないだろうが、私は著者の話に同意することが多く、相槌しながら読んでいる。

ここには記載しなかった話は、実際に本を手にとって読んでほしい。
そして日本の英語教育の不思議な一面について考えてほしい。

事業仕分けで英語教育改革総合プランが廃止となったが、小学校英語教育学会からは要望書が出ている。

やはり世間の英語に対する期待を背負う勢力は、強く抵抗するのだろう。
http://www.e-jes.org/

テーマ : 英語
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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