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「日本語は本当に『非論理的』か」(桜井邦朋著・祥伝社新書)

ドイツ語翻訳を受注して忙しいが、通勤時間に日本語に関する新書を読んだ。
日本語は本当に『非論理的』か -物理学者による日本語論」 である。

出版社の紹介記事は次の通り。
http://www.s-book.net/plsql/slib_detail?isbn=9784396111793
日本語の論理力を取り戻せ

国際舞台で、日本人のことば遣いは評判が悪い。英語の能力が問題なのではなく、曖昧でわかりにくいと
言うのだ。その理由として、日本語が言語として論理的にできていないという指摘まである。

しかし、本当にそうだろうか? 著者は、私たちが普段何気なく使う、「思います」ということばが、
日本人の論理力を破壊していると言う。日本語は本来、欧米の言語に劣らず論理的であり、豊富な表現力をもつ素晴らしい言語だったのだ。

物理学者として世界で活躍してきた著者が、日本語のすぐれた性質を見直しながら、本当の論理力を
身につけるために必要なことは何かを説く。】

章立ては次の通り。


第1章 「思う」が破壊した日本人の論理力

第2章 ディベートが生まれない知的風土
第3章 日本語のすぐれた性格を見直す
第4章 日本人の非論理的なものの見方・考え方を直すには
第5章 すぐれた文章から学ぶ論理力
第6章 ことばが文化を育む

著者の桜井邦朋博士は、NASA主任研究員の経歴もあり、アメリカでの研究経験が長い。

「大学教授」 というシリーズ本? で、日本とアメリカの研究環境の違いを論じたこともある。
英語圏で研究したことや、学会や論文で英語を使うため、「思考のためのことば」 に興味があるようだ。

「日本語は非論理的な不完全な言語であるため、日本人は論理的思考ができない」 と言う人がいる。

著者は、日本語表現の問題点を指摘しながらも、日本語でも論理的表現は可能だと論じている。
そのために、「
思考の過程であいまいな展開を徹底的に排除するように努めるべき」 と唱えている。

日本人は 「論より証拠」 や 「見ればわかる」 という表現をよく使うが、
このような態度では、物質の由来や現象の根本原因を探ろうという科学が、日本では発展しない。

日本の有名研究者の文章を英訳しようとしても、元の日本語文を書き換えないと不可能なこともあったそうだ。

日本人の思考過程が独特であり、そのまま英語にしても、一体何がテーマなのかわからなくなるのだ。
「渦巻型」 と呼ばれる日本人の思考過程では、本筋からそれた話題が挿入されることが多いそうだ。

それに対して英語圏の思考過程は 「直線的」 と呼ばれ、、パラグラフが矛盾なく並び、
テーマに関する論理的展開を順に追っていくことで、筆者が説明したいことを理解できる。


確かに、日本人研究者の講演を聞いていて、何が目的なのかわからないこともあった。

私も日本人だから、日本語が理解できないのではなく、話題の展開が全く把握できないということだ。
このような発表では、質疑応答で何も答えられない場合もあり、つまり本人も深く理解してはいない。

ある留学希望者の申請書を添削したことがあるが、留学にどのような意味があるのか理解できなかった。

どこそこ大学に留学して研究してみたいというだけで、羅列された理由に説得力は感じられなかった。
この人は、単に海外留学という経歴がほしかっただけなので、深く考えていないことが明白だった。
申請書の記入欄を、数々のレトリックで飾ったとしても、中身がなければ無意味である。

ある後輩の英語論文を添削したときも、一体何を説明したいのか理解できなかった。

彼は研究室のセミナーでも、実験結果をただ長々と説明するだけで、まとめる能力が足りなかった。
それで私が例文として、イントロ部分を全部書き直したものを渡した。
喜んだ彼は、私の文章をそのまま論文に使い、めでたく国際誌に論文が掲載された。


たまたま私は、ある国立大付属小学校で、作文の他にも、理科では説明のトレーニングを受けた。

生徒全員の能力が向上したとは言えないものの、文章で説明する方法を私は学ぶことができた。

まあ、はっきり言うことで、逆に反感を買うことも多かったが、科学者になるためには役立った。



ただ、英語論文を書いたり、海外の企業と交渉するような日本人は、一体どのくらいいるだろうか。

ということは、この本は一部の日本人(エリート層?)を対象にしているとも言える。

それでも、一部の日本人ではあっても、論理的思考法を身につけ、国際社会で活躍してほしいものだ。

そして、あいまいな表現のために日本が損をすることがないようにしてほしい。

テーマ : ことば
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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