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「英語が使える日本人」は育つのか?(岩波ブックレット)

私は小学校英語について、文部科学省や政府、経団連などが進めたい方法では、大反対である。

英語が得意となる日本人が、今よりも数%くらいは増えるかもしれないが、
ほとんどの日本人にとっては、目標設定に伴う苦痛が増え、さらに時間とお金の無駄遣いをすることになる。

既に新学習指導要領は制定され、2011年度から小学5・6年生で、外国語活動が行われる。
もう決まったことではあるが、小学校英語反対派・慎重派は、活発な意見発表を続けている。

今月発売の以下のタイトルの岩波ブックレットでは、問題点の指摘と、提言をまとめている。

『英語が使える日本人』は育つのか? 小学校英語から大学英語までを検証する」


目次は次の通り。

いま、英語教育全般がおかしい?! -「英語が使える日本人」育成構想を問う(山田雄一郎)

【提言1】試作版『英語ノート』と「ことばへの気づき」を育む教育(大津由紀雄)
【提言2】学校英語教育を変えるために -広島市の実践から(山田雄一郎)
【提言3】語学哲学に基づく英語教育政策を(斎藤兆史)


今から5年ほど前に、【「英語が使える日本人」の育成のための行動計画】 が発表され、
そこには具体的な目標として、次のように明記されている。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/15/03/030318a.htm

国民全体に求められる英語力
中学校・高等学校を卒業したら英語でコミュニケーションができる
○ 中学校卒業段階:挨拶や応対、身近な暮らしに関わる話題などについて
平易なコミュニケーションができる(卒業者の平均が実用英語技能検定(英検)3級程度)
○ 高等学校卒業段階:日常的な話題について通常のコミュニケーションができる
(卒業者の平均が英検準2級~2級程度)

専門分野に必要な英語力や国際社会に活躍する人材等に求められる英語力

大学を卒業したら仕事で英語が使える
○ 各大学が、仕事で英語が使える人材を育成する観点から、達成目標を設定】

本書でも指摘されているが、「国民全体に求められる英語力」 に数値目標を設定している。

仕事で必要な人だけではなく、外国人と一生出会わないかもしれない人でも、英語が必要なのだ。

しかも高校卒業で 「通常のコミュニケーションができる」 とあるが、
英検準2級から2級程度の能力で、母語と同じレベルのコミュニケーションができるわけがない。

また、各大学が達成目標を設定するとあるが、これはTOEICやTOEFLの点数のようだ。


【日本人全体として、英検、TOEFL(トーフル)、TOEIC(トーイック)等客観的指標に基づいて
世界平均水準の英語力を目指すことが重要である。】

ならば本書にもあるように、まずは各省庁の官僚たちに、英語能力証明の義務化をさせるべき。


【日本人全員が英語で国際社会に打って出るわけではない。どうでも英語だというのなら、まずもって
総理大臣、閣僚、政府職員にTOEIC900点を義務づければよい。彼らは日本を代表して世界と渡り合っているのだから、国民を英語漬けにする前に率先垂範すべきである。】


その後の提言での鼎談でも出てくるが、「英語教員が備えておくべき英語力の目標値」 は低い。


【概ね全ての英語教員が、英語を使用する活動を積み重ねながらコミュニケーション能力の育成を図る
授業を行うことのできる英語力(英検準一級、TOEFL(トーフル)550点、TOEIC(トーイック)730点程度以上)及び教授力を備える】

理科教員免許を持つ私がTOEIC830なのに、英語が専門の教員がこんなレベルでよいとは。

こんなことではネイティブのALTと、授業の打ち合わせもできないではないか。


やはり小学校英語導入で得するのは、教材開発をする業者と、予算を確保できる文部科学省、
そして様々な審議会などに呼ばれている御用学者だけではないだろうか。

「学校英語」 には期待できないことに早く気づき、そして自分で努力した者だけが、
本当に必要な外国語能力を、仕事で使えるように身につけるのだと思う。

まあ、これからは、さらに英語一辺倒になると思うので、私はドイツ語のみならず、
ノルウェー語、アイスランド語も勉強して、海外報道を紹介できるという、ブログの差別化をしたい。

テーマ : 英語
ジャンル : 学校・教育

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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