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「危うし!小学校英語」(鳥飼玖美子著、文春新書)

6月発刊の新書なので情報としては古いが、先週の学会の移動時に、
文春新書の 危うし! 小学校英語(鳥飼玖美子著)を読んだ。
http://www.bunshun.co.jp/book_db/html/6/60/50/4166605097.shtml
http://www.bunshun.co.jp/jicho/shougakueigo/shougakueigo.htm

章立ては次のとおり。

第一章 「早ければ早いほど」幻想を打ち砕く!

第二章 「親の過剰な期待」が英語必修への道を開いた
第三章 誰が英語を教えるのか
第四章 日本の英語教育はどうあるべきか
おわりに 子どもの「芽」を摘まないで

同時通訳者でもある著者は立教大学教授で、大学院の異文化コミュニケーション研究科に所属する。

http://www.rikkyo.ne.jp/grp/grad/i-c/index.html
http://www.rikkyo.ne.jp/grp/cri/ken/vin/torikai_k.html

章立てを見てもわかるように、
小学校英語必修化に反対する立場での主張を書いた本である。

一般向けなので論文というわけではないが、参考文献も示されているので、
文部科学省の策略を非難している私にとっては、利用価値のある文献である。

語学の本を全て読んでいるわけではないが、それでも新書を中心にいろいろと買っている。

この鳥飼氏の著書を本棚で探してみたら、次の2冊があった。

岩波ブックレット、「小学校でなぜ英語? ― 学校英語教育を考える」、岩波書店 (2002)

講談社現代新書、「TOEFL-TOEIC と日本人の英語力」、講談社 (2002)


私立学校は、独自のカリキュラムを組む自由があり、以前から小学校で英語教育を導入している。

すると私立小学校出身者は、英語が得意な日本人に育っているのだろうか。

しかし結果は逆で、中学から始めた外部進学の生徒にすぐに追い越されるそうだ。

小学校段階で既に英語嫌いを生んでもいるし、早く始めても定着していないことは明らかだ。

このことは、語学に限らずスポーツ・芸術などでも、個別性を無視できないことを示している。

これは教授法やカリキュラム、そして教師の問題であり、英語だけ特別の課題ではない。
同じ教育をしても、漢字や九九を覚えられない生徒や、逆上がりができない生徒もいる。


第二章では主に、子どもたちにかけられるプレッシャーについて論述している。


英語ができないと中学受験で失敗するとか、有名大学に入れないなどと強迫観念を植え付ける。

英語能力によって職業選択の自由もなくなるのであれば、親が必死になるのは当然だ。

私も読書感想文で経験したが、小学2年で入賞したためか、母親の口出しが多くなった。

障害者の姉のことでいじめられていた私が、唯一自慢できたのが、作文・読書感想文だった。
そのためか担任は、国語の時間に私を何度も指名して、感想文の発表の機会を作ってくれた。

ある日、宿題の感想文がうまく書けないとき、母は 「こう書きなさい」 と無理強いした。

翌日の国語の時間に指名されたが、私は 「自分で書いていない」 と泣いてしまった。

英語でも同じように間違った教育方針を採ってしまい、子どもを追い詰める親が増えるだろう。

足が遅くても生きていけるが、英語ができないと負け組みだとでも言いたいのだろうか。


第三章ではALTについても触れられているが、これほどいいかげんな制度はないと思う。

もっとまともな人材を採用するようにできないものか。

もしかすると、英会話教室から講師を派遣する方が安上がりという、安易な選択をするのかもしれない。



また、中央教育審議会の外国語専門部会が、小学校英語推進派で固められていることにも触れている。


名簿は次のとおり。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/meibo/05062009.htm

文中には何度も、中嶋嶺雄・国際教養大学学長/理事長 の名前が出てくる。

この人は中国の研究者なのだが、英語教育を推進したいようだ。

国際教養大学では学生に海外留学をさせるし、授業は全て英語だから、英語が得意な子どもが増えれば、
うまくいけば入学者も増えるから、大学全入時代でも潰れることはないので安心だろう。


まあ、
賛成・反対のどちらにしても、推進派ががっかりするような学習指導要領になるだろうから、文部科学省が一体何をしたいのか余計わからなくなり、子どもが被害者になっておしまいだろう。

「ゆとり教育」 の失策を、「小学校英語必修化」 で挽回することは無理だろう。

だから、新規予算を獲得する根拠に使っているだけで、その金に大人たちは群がっているだけだ。
推進派も納税者なのだから、予算がきちんと効果的に使われることを監視すべきだろう。

テーマ : 英語
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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