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原子力レアメタル:使用済み核燃料が資源となる?

日本は国策として、プルトニウムを利用する核燃料サイクル構想を実現しようとしている。
最近話題となった高速増殖炉もんじゅの運転再開も、プルトニウム利用計画の基本路線の一つである
この国策事業を推進する研究機関の一つが、独立行政法人 日本原子力研究開発機構である。
www.jaea.go.jp/index.shtml

プルトニウム利用に関する書籍は多いが、ここでは最近の新書の中から次の一冊を挙げておこう。
原発とプルトニウム パンドラの箱を開けてしまった科学者たち」(常石敬一著、PHPサイエンス・ワールド新書)
www.php.co.jp/bookstore/detail.php

危険なプルトニウムと心中するような国策を進めるのは、日本はエネルギー資源に乏しいことが一因である。
半永久的に利用可能なプルトニウムを含む使用済み核燃料を、貴重な資源と考えているのだ。
最近は自然エネルギー利用が注目されているが、なぜか日本はプルトニウム利用にこだわっている。

現時点で話題となっている核燃料サイクル構想は、ウランとプルトニウムに焦点を当てているが、使用済み核燃料廃棄物を希土類元素・レアメタルの資源と考える、「新核燃料 サイクル構想」 も研究されている。

レアメタルは最近注目の元素で、半導体や自動車などの重要産業では必須元素となっている。
しかし産出地の地理的偏在により、例えば中国が輸出禁止にすると、日本の産業が倒れるとまで言われている。
そのため、使用済み核燃料から希土類元素が抽出できれば、自前の資源が確保できるというわけだ。
核燃料から抽出した希土類元素を、「原子力レアメタル」 とも呼ぶ。

その新核燃料サイクル構想に関連する今年の学会発表として、第27回希土類討論会のプログラムを示しておこう。
次のPDF文書の7枚目、講演番号2C-08である(発表者と所属は要旨集から補足した)。
www.kidorui.org/doc/program27.pdf

【2C-08 核燃料サイクルにおける希土類戦略
(原研)○小澤正基、(東工大)鈴木達也、(若狭湾エネ研)篠田佳彦、(東海大)高木直行】

発表者の関連サイトは、順番にそれぞれ次の通り。
www.jaea.go.jp/04/tokai/
www.nr.titech.ac.jp/Graduate/Japanese/Laboratories/Data/tasuzuki.html
www.werc.or.jp/kenkyukaihatsu/gaiyo/kenkyuin/index.htm#enezai
www.ex.u-tokai.ac.jp/takaki-labo/

私はこの講演を聞いていないが、要旨集を入手しているので、簡単に内容をメモしておこう。

発電用原子炉内での核分裂生成物のほとんどが、有用なレアメタルであるが、現在のシステムでは廃棄物扱いであり、回収対象元素とはなっていない。

高速炉使用済み燃料中には、白金族の他に、軽希土類の生成量が多く、例えばネオジムは 16 kg/tHM。
他の希土類で多いものは、セリウム、サマリウム、ランタン、プラセオジムである。
燃焼度の低い軽水炉使用済み核燃料では、生成量が減るものの、約 10 kg/tHM とプルトニウムとほぼ同量。

そして硝酸・メタノール混液などからの完全精密分離が可能であり、希土類資源として利用できると期待している。

燃料の冷却期間などの課題もあるが、プルトニウム利用を推進するためにも、副産物とも言えるレアメタル利用を、推進派はこれから強調するのかもしれない。

テーマ : 環境・資源・エネルギー
ジャンル : 政治・経済

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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