fc2ブログ

ボランティア参加のEinstein@homeプロジェクトで珍しいパルサーを発見

事業仕分けで話題となったが、膨大なデータ超高速処理を可能にするスーパコンピュータの開発が進められている。

その一方で、多数の家庭用パソコンをネットワーク接続して、そのアイドル時間を利用してデータ解析をしようという考え方もある。
そのプロジェクトに登録すると数MB程度のデータパケットが送られてきて、専用ソフトで解析し、自動的に結果を送信する。

物理学や医学などの分野で実績を挙げている方法だが、今回は天文学でパルサー発見という成果をあげた。

Science 誌(電子版)の抄録と、日本語版の要約は次の通り。
www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/science.1195253
www.sciencemag.jp/highlight/index.jsp
--------------------------------------
【大量データの「発掘」を目的として、192の異なった国々のボランティアが所有する数十万台のコンピュータの能力を結集するという大規模プロジェクトにより、まれできわめて低い磁場のある単独のパルサーが発見された。この国際的なコンピュータネットワークは、Einstein@Homeと呼ばれ、発見されたパルサーはPSR J2007+27と命名された。Benjamin Knispelらはこの発見を報告し、Einstein@Homeプロジェクトにより、2007年2月にプエルトリコのアレシボ観測所で観測された電波調査データから、40.8ヘルツのパルサーが確認されたと述べている。分析の結果、PSR J2007+27はdisrupted recycled pulsarというパルサーの1種であり、「パルス」がきわめて長い(そのためパルサーと地上波の干渉との区別が困難であった)ことが示唆された。また、このようなデータを踏まえて研究者らは、このパルサーの磁場と回転軸が非常に近接して並んでいることを示唆している。Knispelらは、Einstein@HomeやSETIなどのプロジェクトに示されるボランティアによる大規模なコンピュータの力によって、今後数多くの発見がもたらされるであろうと期待している。】
--------------------------------------

Max-Planck 研究所のプレスリリース、SPIEGEL ONLINE の記事、読売新聞の記事はそれぞれ次の通り。
www.aei.mpg.de/pdf/pm_news/2010/PM2010_Einstein_Home_Pulsar_dt.pdf
www.spiegel.de/wissenschaft/weltall/0,1518,711702,00.html
osaka.yomiuri.co.jp/science/news/20100814-OYO8T00445.htm

--------------------------------------
日本など192か国のボランティアが持つ50万台のパソコンが結集して、新しい天体を発見した。周期的に電波やエックス線などを出す「パルサー」で、こうした試みで未知の天体が見つかるのは初めてだ。米科学誌サイエンス(電子版)に掲載された。

 「アインシュタイン@ホーム」と呼ばれるプロジェクトで、25万人以上が参加。ドイツのマックスプランク研究所が中心となり、インターネットにつ ながった各パソコンの空き時間を使って、中米プエルトリコのアレシボ天文台が公開していた観測データを分析。2007年2月のデータからパルサーを発見し た。

地球から約1万7000光年離れ、中性子でできている中性子星と判明した。通常のパルサーより信号を出す周期が長く、他の星を伴わずに単独で存在する珍しいタイプだという。】

--------------------------------------

このプロジェクトは Einstein@Home と呼ばれ、登録するとデータ解析用プログラムがダウンロードできる。
その後、約2MB量のデータパケットが送られてきて、アイドル時間を利用して解析が行われ、結果を自動的に返信する。
einstein.phys.uwm.edu/

プロジェクトの最終目的は、単なるパルサーの発見ではなく、アインシュタインが予言した重力波の検出である。
ただしその過程で、今回のように、disrupted recycled pulsar という特殊なパルサーが発見されることは、天文学の進歩につながる。
しかも、アマチュア天文ファンは、自分が参加したプロジェクトによる新発見に感激していることだろう。

このプロジェクトへの新規登録者は、通常は1日当たり80名ほどだが、この論文発表の報道直後は、1日で約2,300名が新規登録したという。

家庭用でも高性能パソコンが多数普及してきたので、こういったプロジェクトがさらに増えるのではないだろうか。
日本も、世界一のスーパーコンピュータの開発を進めることと同時に、Einstein@Home と同様のプロジェクトを進めてほしいものだ。

テーマ : 星・宇宙
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

とても参考になりました。
ありがとうございます。
プロフィール

MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

FC2カウンター
カテゴリ
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR