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ノルウェー語のつづりの変化:「クジラ」は hval と kval の二種類

ノルウェー語の勉強を始めたとき、二種類の書き言葉、ブークモールとニーノシュクの存在に驚いた。

デンマーク語の影響を受けたブークモールは、ノルウェー東部が中心で、使用者数も多い。
外国語の影響を排除して生まれたニーノシュクは、ノルウェー西部の方言を基礎にしている。

様々な背景があって統一できなかったわけだが、外国人学習者はブークモールを選ぶことが多い。
参考書を見ると、まずブークモールでの説明があり、そしてニーノシュクの相違点を簡単に説明している。

ノルウェーの国名表記は、ブークモールで Norge だが、ニーノシュクでは Noreg と異なっている。
他にも、「クジラ」 はブークモールで hval だが、ニーノシュクでは kval で、hv- → kv- の対応だ。

しかし、ノルウェーの捕鯨に関する新聞記事を読んでいて、ブークモールなのに kval の事例を見つけた。

その新聞は、ノルウェー北部、ロフォーテン諸島の地元紙である。
http://www.lofotposten.no/lokale_nyheter/article4742703.ece

Det kan fanges 1016 kval i østlig sone, ..
「1016頭のクジラを東側海域で捕獲してもよく、..」
(文頭の Det は仮主語、実際の主語は 1016 kval。fanges は fange(捕獲する)のs受動態。)

他にも vågehval(ミ ンククジラ)が vågekval に、hvalkjøtt(鯨肉)が kvalkjøtt となっている。

最初はニーノシュクで書かれた記事かと思ったが、他の単語を見るとブークモールで書かれている。
別の新聞記事では hval なので、ロフォーテン諸島の方言が kval ではないかと考えた。

方言のことはわからないので、「ノルウェー夢ネット掲示版」 で質問 したところ、回答があった。
http://homepage2.nifty.com/norway-yumenet/framesamtale.htm

すると、kval もブークモールで認められた正書法とのことだ。

ということで、「ノルウェー語基礎1500語」(大学書林)で、他の単語を見ると、hvete / kveite(小麦)、hvile / kvile(休む)、hvit / kvit(白い)などがあった。

加えて今回の事例では、ロフォーテン諸島の方言に合わせて kval と表記する方が発音に合うのだろう。
ボーナスが出たら、ノルウェー語/英語辞典を買って、他の単語も見てみよう。

その後、ノルウェー語の方言について検索していたところ、Google Book で、「Historical Syntax and Linguistic Theory」 という言語学の書籍がヒットした。

疑問詞の単語のつづりについて、次のような脚注があり、kval は北部方言なのだと理解できた。

【These question words come from the Old Norse forms hvat, hvar, and hveim.
The initial sound combination has developed into kv- in most (Western and Northern) Norwegian dialects, e.g. kval ‘whale’ (cf. hval/va:l/ in Danish and Standard Eastern Norwegian (bokm?l).】

ついでに、 この説明にあるように、デンマーク語でも 「クジラ」 は hval である。
これは推測だが、外国語の影響を嫌い、方言を尊重する人は、 kval と書きたいのかもしれない。


ただ、ブークモールの kval は 「苦悶・苦痛」 という意味もある同綴異義語だから、誤解するかも。
まあノルウェー語には他にも同綴異義語があるので、文脈で判断することに慣れているのかもしれない。

「銛を打ち込まれてクジラは苦痛を感じた。」 をノルウェー語にすると、kval が2回出てくるのだろうか。
外国人にとっては面倒な話だが、言葉は生きているということを実感する事例であった。


追 記(12月13日):
大学書林の 「ノルウェー語辞典」 を入手して、kval を調べると、「くじら. = hval」 とあった。
また、ノルウェー語(ブークモール)の Wiktionary でも hval = kval であった。
http://no.wiktionary.org/wiki/hval

(最 終チェック・修正日 2009年12月13日)

テーマ : 外国語学習
ジャンル : 学校・教育

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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