昨年流行した新型インフルエンザ(A/H1N1)で既に多剤耐性ウイルスが検出された
昨年の夏以降は、メキシコ発の新型インフルエンザ(ブタインフルエンザ、A/H1N1)の流行で大騒ぎだった。
インフルエンザそのものだけではなく、ワクチンの製造が間に合わないとか、外国製ワクチンを確保できるのか、さらにワクチンに添加する免疫増強剤アジュバントには副作用はないのかなど、いろいろと話題となった。
流行当初は、タミフルの投与で治ると言われていたが、しばらくしてタミフル耐性ウイルスが検出された。
WHOが今年6月までに、タミフル耐性ウイルスの約300症例を報告した。
対策として別の薬であるリレンザが使われるようになったが、そのリレンザも効かない多剤耐性ウイルスが、オランダで検出された。
インフルエンザそのものだけではなく、ワクチンの製造が間に合わないとか、外国製ワクチンを確保できるのか、さらにワクチンに添加する免疫増強剤アジュバントには副作用はないのかなど、いろいろと話題となった。
流行当初は、タミフルの投与で治ると言われていたが、しばらくしてタミフル耐性ウイルスが検出された。
WHOが今年6月までに、タミフル耐性ウイルスの約300症例を報告した。
対策として別の薬であるリレンザが使われるようになったが、そのリレンザも効かない多剤耐性ウイルスが、オランダで検出された。
New England Journal of Medicine に掲載された速報は次の通り。
www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc1003749
www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMc1003749 (PDF版)
昨年11月に5歳の子どもがインフルエンザ用症状で病院に搬送され、新型インフルエンザ(A/H1N1)に感染していると判明した。
まずはタミフルを投与したところ、ウイルスは一度減少したものの、再び増加した。
そのため、次にリレンザを投与すると、一度減少したウイルスが、今度も再び増加した。
リレンザの連続投与には効果がなく、残念ながら呼吸窮迫症候群で亡くなってしまった。
この多剤耐性ウイルスを実験室で検証したところ、第3の治療薬と期待されているペラミビルにも耐性だった。
これは in vitro での結果で、感染患者は見つかっていないが、ペラミビル(日本では塩野義製薬が販売、「ラピアクタ」)も同じノイラミニダーゼ阻害剤なので、耐性獲得は早いのではないだろうか。
アメリカでも、タミフルとリレンザの両方に耐性のウイルスに感染した患者が1例報告されており、欧米メディアでは取り上げている。
ドイツの報道として ZEIT Online を、英語報道としてロイターの配信記事を引用しておこう。
www.zeit.de/2010/42/Grippevirus
www.reuters.com/article/idUSTRE68S5K120100929
日本では10月1日から、インフルエンザワクチン(混合型)の予防接種が始まっている。
耐性ウイルスが生じているものの、心配な人は予防接種で免疫力を高めておくとよいだろう。
それにしても、この欧米でのニュースが日本では報道されていないのは不思議だ。
ロイター通信が配信しているのだから、ロイターの日本語版で出ていてもいいはずだが、なぜかない。
厚生労働省の発表では、9月10日に第一三共の新規抗インフルエンザウイルス薬、「イナビル」 が承認された。
wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T100915I0010.pdf
「イナビル吸入粉末剤20㎎」 についての第一三共のニュースリリースは次の通り。
www.daiichisankyo.co.jp/news/detail/003776.html
純国産ということで、日本国内でのみ使用すると思われるが、イナビル耐性ウイルスが発生しないか心配だ。
第一選択はタミフルかもしれないが、タミフル耐性の場合に次はどうするのか、今から考えた方がいいだろう。
すぐにイナビルに変えた場合に、タミフル・イナビル多剤耐性ウイルスが発生する可能性はある。
この新多剤耐性ウイルスに、リレンザやペラミビルが効けばいいが、最悪の場合は全ての耐性を獲得するかもしれない。
最近は、抗生物質が効かない多剤耐性菌の院内感染や、NDM-1遺伝子を持つ細菌の話題ばかりだが、多剤耐性インフルエンザウイルスのことも忘れないでほしいものだ。
www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc1003749
www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMc1003749 (PDF版)
昨年11月に5歳の子どもがインフルエンザ用症状で病院に搬送され、新型インフルエンザ(A/H1N1)に感染していると判明した。
まずはタミフルを投与したところ、ウイルスは一度減少したものの、再び増加した。
そのため、次にリレンザを投与すると、一度減少したウイルスが、今度も再び増加した。
リレンザの連続投与には効果がなく、残念ながら呼吸窮迫症候群で亡くなってしまった。
この多剤耐性ウイルスを実験室で検証したところ、第3の治療薬と期待されているペラミビルにも耐性だった。
これは in vitro での結果で、感染患者は見つかっていないが、ペラミビル(日本では塩野義製薬が販売、「ラピアクタ」)も同じノイラミニダーゼ阻害剤なので、耐性獲得は早いのではないだろうか。
アメリカでも、タミフルとリレンザの両方に耐性のウイルスに感染した患者が1例報告されており、欧米メディアでは取り上げている。
ドイツの報道として ZEIT Online を、英語報道としてロイターの配信記事を引用しておこう。
www.zeit.de/2010/42/Grippevirus
www.reuters.com/article/idUSTRE68S5K120100929
日本では10月1日から、インフルエンザワクチン(混合型)の予防接種が始まっている。
耐性ウイルスが生じているものの、心配な人は予防接種で免疫力を高めておくとよいだろう。
それにしても、この欧米でのニュースが日本では報道されていないのは不思議だ。
ロイター通信が配信しているのだから、ロイターの日本語版で出ていてもいいはずだが、なぜかない。
厚生労働省の発表では、9月10日に第一三共の新規抗インフルエンザウイルス薬、「イナビル」 が承認された。
wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T100915I0010.pdf
「イナビル吸入粉末剤20㎎」 についての第一三共のニュースリリースは次の通り。
www.daiichisankyo.co.jp/news/detail/003776.html
純国産ということで、日本国内でのみ使用すると思われるが、イナビル耐性ウイルスが発生しないか心配だ。
第一選択はタミフルかもしれないが、タミフル耐性の場合に次はどうするのか、今から考えた方がいいだろう。
すぐにイナビルに変えた場合に、タミフル・イナビル多剤耐性ウイルスが発生する可能性はある。
この新多剤耐性ウイルスに、リレンザやペラミビルが効けばいいが、最悪の場合は全ての耐性を獲得するかもしれない。
最近は、抗生物質が効かない多剤耐性菌の院内感染や、NDM-1遺伝子を持つ細菌の話題ばかりだが、多剤耐性インフルエンザウイルスのことも忘れないでほしいものだ。