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ドイツの幹細胞治療施設XCell-Centerで1歳半の幼児が死亡

日本でも iPS 細胞をはじめとして、再生医療の研究が精力的に進められているが、ドイツには幹細胞を使った民間の再生医療病院・研究施設が2007年1月から治療を開始している。

その XCell-Center GmbH  はデュッセルドルフとケルン近郊にあり、治療費は約2万ユーロと高額で、しかもリスクが高いにもかかわらず、全世界から脳性まひや、糖尿病、パーキンソン病などの治療のために患者が集まってくる。

患者自身の骨髄を採取して、そこから分離した自己幹細胞を培養して、難病の治療に利用している。

サイトは英語やドイツ語の他、ヨーロッパの主要言語だけではなく、アラビア語版と日本語版まである。
www.xcell-center.com/ (英語版)
www.xcell-center.de/ (ドイツ語版)
www.xcell-center.jp/ (日本語版)

サイトの説明では、2007年1月以降に3500人以上の患者が、安全に治療を受けているとあるが、死亡例が出ていたことが、ドイツやイギリスなどのメディアで取り上げられた。
www.telegraph.co.uk/news/worldnews/europe/germany/8082935/Baby-death-scandal-at-stem-cell-clinic-which-treats-hundreds-of-British-patients-a-year.html
www.spiegel.de/wissenschaft/medizin/0,1518,725332,00.html
www.sueddeutsche.de/wissen/duesseldorf-todesfall-nach-stammzell-therapie-1.1015986


今年8月、イタリアに住むルーマニア人夫婦が、18か月になる幼児の治療を希望した。
その子どもから得た自己幹細胞を脳内に注射したところ、急性出血が起きて急死した。

5月(報道によっては4月)にも、アゼルバイジャン人の10歳の子どもで、同じ脳内注射で急性出血が起きていたが、このときはデュッセルドルフ大学病院で緊急処置が行われて、一命をとりとめた。
この子どもの両親は、XCell-Center 社に対して訴訟を起こしている。

ドイツ・デュッセルドルフ検察では、この脳内注射という治療行為を行った女性医師について、捜査を開始したそうだ。

この脳内注射での急性出血2例があったにもかかわらず、会社ではこの治療法を禁止せず、この女性医師を勤務から外して、18日前から自粛にとどめている。
(ただ、報道によっては、この女性医師は既に退職しているだとか、治療を中止したなどと、いろいろ変わっている。)

幹細胞を使った治療自体は違法ではないため、今回判明した2例についての法的措置後に対応が決まることだろう。
ただ、治療を受ける前よりも、障害の程度が重くなったという事例があるとのことで、法律や指針の見直しは必要かもしれない。

「副作用のない薬はない、リスクが皆無の治療・手術はない」、ということを再認識したニュースであった。


追記(10月31日):
このドイツの XCell-Center GmbH と提携しているコーディネート会社が、日本にもあった。
www.medical-tour.jp/


しかし、XCell-Center 社が死亡例を公表しなかったため、コーディネートを一時中止しているとのことだ。

厚生労働省には、こういったメディカルツーリズムに関して現状把握をしているかどうか、質問メールを送った。

追記(11月1日):
このブログ記事を投稿後、時差の関係と思われるが、10月26日中に XCell-Center のリリースが出ていた。
www.xcell-center.com/news/for-our-patients---official-response-to-recent-events.aspx

メディアは中傷目的で記事を書いているだとか、今回の脳内出血は幹細胞とは無関係だとか、脳内注射という手法には危険性はないことを強調している。

このような納得しにくい対応をする病院でも、幹細胞治療を受けたいならば、そのリスクを知った上で渡航してほしいものだ。

また、ドイツ連邦議会でも、このスキャンダルが取り上げられていた。
dip21.bundestag.de/dip21/btp/17/17067.pdf

追記(11月2日):
脳性まひの子どもの治療がうまくいっている事例として、アメリカの新聞が引用されていた。
xcell-center.blogspot.com/2010/11/metrowest-daily-news-report-stem-cell.html
www.metrowestdailynews.com/highlight/x370073537/Stem-cell-treatment-helps-Holliston-girl


参考までに、渡航前の9月の記事は次の通り。
www.metrowestdailynews.com/lifestyle/health/x2003707854/Holliston-teen-seeks-stem-cell-treatment-in-Germany

追記(11月3日):
また、死亡例をスキャンダルとして報じた Telegraph は、10月24日の記事で、うまくいった治療例も取り上げた。
ただし、その治療の前に、脳内出血の医療事故が発生していたことの説明はなかったそうだ。
www.telegraph.co.uk/news/worldnews/europe/germany/8082929/Parents-of-disabled-girl-pay-15000-for-stem-cell-treatment-at-German-clinic.html


また、別の記事では、ドイツでの幹細胞治療を 「合法的抜け穴」 と称している。
www.telegraph.co.uk/health/healthnews/8082925/Stem-cell-law-loopholes-allow-XCell-Center-to-operate-in-Germany.html

加えて記事の最後に、2007年に決定したEUの規則では、2012年までに幹細胞治療の有効性と安全性を XCell 社が示す必要があると書いてあり、今回の死亡例を公表しなかったことの動機のようにほのめかしているようだ

追記(11月5日):
厚生労働省から回答があり、本件については把握していないとのことだった。
ということで、この医療ツーリズムに関して、TBSの報道特集宛てにメールを送った。

(最終チェック・修正日 2010年11月6日)

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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