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グリーンランドがザトウクジラ8頭を捕獲したがホッキョククジラ以外は捕獲枠未達成

EU議会では反捕鯨決議をするくらいなので、全加盟国が反捕鯨と思われがちだが、デンマークは捕鯨擁護派である。
デンマーク領のフェロー諸島では小型クジラ類・イルカ類が捕獲され、グリーンランドでは先住民生存捕鯨が認められている。
デンマーク本土の政府が、グリーンランド自治政府の外交を代行するため、捕鯨擁護派となっている。
また、グリーンランドの地下資源への期待もあり、デンマーク政府はグリーンランドが独立するような事態は避けたいという思惑もあるのは確かだ。

先住民生存捕鯨では、捕鯨操業と住民へ分配するコストを政府が負担しており、商業捕鯨ではないと定義されている。
IWC(国際捕鯨委員会)の科学委員会で捕獲枠が決められているが、グリーンランド自治政府はザトウクジラの捕獲を要求してきた。
いろいろあって何年も決まらなかったが、2010年にようやくザトウクジラ9頭を含む捕獲枠が決定した。

グリーンランド自治政府は、ザトウクジラの捕獲枠を得るために、ミンククジラとナガスクジラの捕獲枠の削減に応じた。
そのため、捕獲枠を全て満たしても、得られる鯨肉量は逆に減ってしまったが、それでもザトウクジラがほしかったのかも。

デンマーク議会の文書に、グリーンランドの捕鯨に関する回答文書があったので、これで捕獲状況を確認しよう。
www.ft.dk/dokumenter/tingdok.aspx

まず、ザトウクジラ捕獲の許可が出る前の、2007年の捕獲枠を見てみよう。
・ミンククジラ 200頭
・ナガスクジラ 19頭
・ホッキョククジラ 2頭(捕獲枠を未達成の場合は、翌年に繰り越し可能)

そしてグリーンランド側がザトウクジラ10頭の追加を求め、科学者がまとめたレポートでも持続可能な捕獲数が提示された。
他のクジラも含めた、小作業部会の報告書は次の通りで、住民が望む鯨肉と脂身などの量を確保するために必要な頭数なども調査されている。
www.iwcoffice.org/_documents/commission/IWC62docs/62-9.pdf

しかし2年連続で決議まで至らず、やっと2010年に、他のクジラの捕獲枠を減らすという取引で、年9頭が認められた。
この捕獲枠は3年先まで決まっており、つまり3年間で27頭の捕獲枠ということになる。
(未達成分が翌年に繰り越し可能かどうかは調査中)。

2010年に決まった捕獲枠は次の通り。
・ミンククジラ 178頭
・ナガスクジラ 10頭
・ザトウクジラ  9頭
・ホッキョククジラ 3頭(昨年未達成の1頭を繰り越したため、2頭+1頭)

そして10月24日までに捕獲された頭数は、それぞれ次の通り。
・ミンククジラ 161頭
・ナガスクジラ  5頭
ザトウクジラ  8頭
・ホッキョククジラ 3頭

ザトウクジラは8頭と、捕獲枠の9頭を満たしていないが、それでも商業捕鯨モラトリアム採択後、初めての捕獲となった。
ただしIWCの記録では、1985年以降も何頭か捕獲されている(混獲なのかどうか、調査中)。
www.iwcoffice.org/conservation/table_aboriginal.htm

せっかく復活したザトウクジラだが、ミンククジラとナガスクジラの捕獲数が減ったため、肉と脂身は足りなかったのではないか。
これまでも捕獲枠を未達成であったため、需要がないのに拡大要求するのはおかしいと、反捕鯨団体は騒ぐかも。
とりあえず、2012年まではこの捕獲枠が維持されるはずなので、今後も様子を見ておこう。

グリーンランドの捕鯨については英語やドイツ語の報道も少ないので、ノルウェー語と併せてデンマーク語の基礎を学んで、資料を読むための準備をしておきたい。

テーマ : 博物学・自然・生き物
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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