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MSC認証取得済みの土佐鰹水産がマリン・エコラベル・ジャパンも取得

日本の一本釣りカツオ漁業は、巻き網漁などと異なり、資源管理に配慮した漁法として認められている。
そして、私が会員のWWFが推奨する海のエコラベルであるMSC認証を、高知県の土佐鰹水産株式会社が取得した。
www.tosakatu.jp/index.php (土佐鰹水産株式会社のHP)
www.wwf.or.jp/activities/2009/11/772404.html (WWFジャパンのプレスリリース)
www.tosakatu.jp/images/news-091104-2.pdf (認証した海洋管理協議会のプレスリリース)

私が好きな魚は、サケ・サンマ・アジ・サバ・タイ・ハマチ、そしてカツオである。 高知に旅行に行ったときには、昼食も夕食もカツオのたたきを食べた。 高知から戻る直前にも、空港のレストランで、カツオのたたき定食を食べた。 そのカツオであるが、日本の一本釣りカツオ漁業が、海のエコラベルであるMSC認証を取得した。 カツオ漁業としては世界初であり、これは誇りに感じてもよいだろう。 MSCを推奨
日本のカツオ漁業がMSC認証取得:伝統の一本釣りは持続可能な漁業


このMSC認証であるが、予備審査からの期間も長く、審査が厳しいほかに、認証を得るための資金も高額である。
その代わり、このMSC認証がないと、エコライフを求める消費者には受け入れてもらえない。
値段が高くても、環境に配慮した食品を求める消費者は、ある一定数存在する。

海洋管理協議会(MSC)のサイトで、認証済み・審査中の漁業を見ると、日本が遅れていることが明白である。
www.msc.org/jp

なぜ日本ではMSC認証が増えないのかというと、日本の水産関係者の中には、環境保護団体WWFが嫌いな人がいるからだ。
反捕鯨団体でもあるWWFは政治的背景があると批判され、さらにトロール漁法などに反対したり、日本漁業の敵と思われている。
そんなWWFが設立に関わったMSCが、日本の漁業を審査するなど、受け入れたくない人がいるのは確かである。

少々古い情報だが、水産庁の水産政策審議会企画部会・第3回加工流通消費小委員会の議事録には、次のような発言がある。
www.jfa.maff.go.jp/sinseisaku/keikaku_19/minute/180413.htm
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【最後にエコラベリングのお話が出ましたが、MSCは世界自然保護基金がバックボーンにあって、やや自然保護的な、政治的な部分も絡んでいて、もし日本に導入するのであれば独自のものをきちっと作っていかなければならない。それに当たっては、政府・水産庁の御指示のもとにきちんとした日本版のエコラベリングを作った方がいいと思います。】
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また、「海の幸に感謝する会」 という団体が、MSC認証を推進するWWFを攻撃している。
www.umisachi.jp/

過去のプレスリリースに、「水産資源の管理責任を環境保護団体に委ねていいのか?」 がある。
www.umisachi.jp/press/061227.html
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世界最大の環境保護団体・WWFが、精力的に、日本国内でMSCによる水産エコラベルの導入を促進している
各紙報道によれば、WWFは認証費用の支援を行うことを決定しており、NHK等一部報道機関も、MSC主導の水産エコラベルの普及を、水産資源の持続性確保するという観点から、「是」として報道している。

海の幸に感謝する会は、このような動きに疑問と懸念を抱く。資源の効果的な管理と持続的利用は、科学的知見の尊重と、水産物を食糧として持続的に利用することに対する根本的な理解が大前提である。漁業を締め出すために海洋保護水域の拡大運動を進め、潤沢な鯨類の利用に反対し、国連での公海トロール禁止運動等種々の反漁業キャンペーンを展開してきた団体が、水産資源の持続的利用とそれを実践する水産業の持続的発展を目指しているとは思えない
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そこで、水産庁の天下り団体でもある大日本水産会が中心となって、日本版の 「マリン・エコラベル・ジャパン(MELジャパン)」 を作り出した。
www.melj.jp/

新着プレスリリースを見ると、近海・遠洋カツオ一本釣りが、新たに認証されていた。
そして、既にMSC認証を受けている土佐鰹水産株式会社も、なぜか入っている。
www.melj.jp/upload/news/101214press2.pdf
土佐鰹水産のHPには、まだ何も出ていないので、MSCと両方取得した意味が不明である。
認証を維持するための資金も必要なのだが、国内販売用には単独行動を控えて、他社と足並みを揃えたのだろうか。
直接電話して聞いてもよいが、実際に販売されるようになれば、プレスリリースや報道が出ることだろう。
でも、ジャスコではMSC認証のカツオのたたきを買っていたので、MSC認証のままにしてほしいものだ。

私がMELジャパンに対して懐疑的なのは、WWFに対抗して設立したという、政治的事情を背景とする経緯だけではない。
認証済みの日本海かにかご漁業協会で、所属漁船が漁業法違反で処分を受け、認証の使用を無期限で自粛することになったからだ。
www.melj.jp/upload/news/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%99%E3%83%8B%E3%82%BA%E3%83%AF%E3%82%A4%E8%AA%8D%E8%A8%BC%E4%BD%BF%E7%94%A8%E8%87%AA%E7%B2%9B%E4%BF%AE%E6%AD%A3.pdf

日本海かにかご漁業協会のHPでは、この自粛の件には何も触れていないが、水産庁境港漁業調整事務所では処分(書類送検)について公表している。
kanikago.web.officelive.com/aboutus.aspx
www.jfa.maff.go.jp/sakaiminato/press/kantoku/100528.html
www.jfa.maff.go.jp/sakaiminato/press/kantoku/100608.html

違法操業が発覚して書類送検された側から、MELジャパン認証の自粛を申し出たわけだが、なぜ認証をはく奪しないのだろうか。
認証を取り消すことを想定していなかったのかもしれないが、次のように書いているのに、その後は何も発表されていない。

【…本件については、引き続き状況を確認するとともに、今後の情勢につきまして、適宜当ホームページでお知らせいたします。】

この違法操業については、食品メーカーなども知ることとなり、ズワイガニの納品先を変える動きもあったようだ。
例えば私が株主であるロック・フィールドでは、境港で水揚げされたズワイガニを使ったカニクリームコロッケを販売しているが、コンプライアンスの観点から、違法操業をした会社からは一切納品していないと回答してくれた。

水産庁の天下り団体でもある大日本水産会が関わったMELジャパンで不祥事があり、水産庁の事務所が処分を下すという、笑い話となっているのだ。

こんなMELジャパンに、MSC認証を受けた土佐鰹水産が参加するのは、やめた方がよかったのではないかと思う。

(最終チェック・修正日 2010年12月30日)

テーマ : 環境ビジネス(エコ×ビジネス)
ジャンル : ビジネス

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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