「科学」と「化学」をきちんと分けて訳してほしい
年明け納品の翻訳作業中で忙しいが、休憩時間に見たAFP記事が気になったので、簡単にメモしておこう。
数年前、新規開店した有名書店に行ったところ、「化学」 の書籍の棚に、「科学」 という札がかかっていた。
理学部で博士を取得した私は 「自然科学者」 ではあるが、専門は 「有機化学」 なので、がっかりしたことがある。
どちらも発音は 「カガク」 なので、話すときは 「のぎへんのカガク」 や 「バケ学」 と言ってみたり、「サイエンス」 や 「ケミストリー」 と言うこともある(「ケミストリー」 を 「毛虫取り」 と聞き間違える人もいるが)。
手書きのときは気付くのかもしれないが、最近はPCソフトでの漢字変換に頼るためか、「科学」 と 「化学」 の区別ができていない文章もあり、以下に引用するAFP記事もその一つだろう(加えて気になる2個所も赤字で示した)。
www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2780767/6615231
【シャンパンを化学する、美味しさの秘密は気泡 仏研究
2010年も残りわずか。内外で多くの人びとが、大みそかや新年を、シャンパンで祝うことだろう。こうした絶妙のタイミングで、フランスの研究チームが、美味しくシャンパンを味わう秘訣を化学的に解明し、米国化学会誌(American Chemical Society)の学術誌に掲載した。
…
この方法によって、シャンパンの栓を抜いたあとも、気泡の蒸発を最小限にとどめられるという。(c)AFP】
数年前、新規開店した有名書店に行ったところ、「化学」 の書籍の棚に、「科学」 という札がかかっていた。
理学部で博士を取得した私は 「自然科学者」 ではあるが、専門は 「有機化学」 なので、がっかりしたことがある。
どちらも発音は 「カガク」 なので、話すときは 「のぎへんのカガク」 や 「バケ学」 と言ってみたり、「サイエンス」 や 「ケミストリー」 と言うこともある(「ケミストリー」 を 「毛虫取り」 と聞き間違える人もいるが)。
手書きのときは気付くのかもしれないが、最近はPCソフトでの漢字変換に頼るためか、「科学」 と 「化学」 の区別ができていない文章もあり、以下に引用するAFP記事もその一つだろう(加えて気になる2個所も赤字で示した)。
www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2780767/6615231
【シャンパンを化学する、美味しさの秘密は気泡 仏研究
2010年も残りわずか。内外で多くの人びとが、大みそかや新年を、シャンパンで祝うことだろう。こうした絶妙のタイミングで、フランスの研究チームが、美味しくシャンパンを味わう秘訣を化学的に解明し、米国化学会誌(American Chemical Society)の学術誌に掲載した。
…
この方法によって、シャンパンの栓を抜いたあとも、気泡の蒸発を最小限にとどめられるという。(c)AFP】
タイトルの 「シャンパンを化学する」 からして間違いではないか。
そして、赤字で示したように、他にも間違いがあるので、以下のリンクのAFP英語記事と比較してほしい。
news.yahoo.com/s/afp/20101227/lf_afp/ussocietychemistrywinechampagnefrance_20101227172722
【Days before New Year's Eve, French researchers have found scientific evidence for what many champagne tipplers have long known -- that the bubbles are the key to a good bubbly.
そして、赤字で示したように、他にも間違いがあるので、以下のリンクのAFP英語記事と比較してほしい。
news.yahoo.com/s/afp/20101227/lf_afp/ussocietychemistrywinechampagnefrance_20101227172722
【Days before New Year's Eve, French researchers have found scientific evidence for what many champagne tipplers have long known -- that the bubbles are the key to a good bubbly.
The scientists found that the tiny bubbles "are the essence of fine champagnes and sparkling wines" and play a central role in the transfer of taste, aroma and texture, according to an article published in the American Chemical Society Journal.
…
Both measures minimize the bubbles lost after the cork is popped.】
英語では 「scientific evidence」 であり、「chemical evidence」 ではない。
以前から感じているが、和訳記事に疑問点があるときは、元の英語記事を探して読まなければならない。
翻訳の勉強にもなるので、こういった手間は気にしないが、今は自分の翻訳作業中なので時間がもったいない。
AFPに対しては、記載の訂正の他、元記事へのリンクを付記することを要望した。
2つ目の間違いとは、American Chemical Society は 「米国化学会/アメリカ化学会」 であり、「米国化学会誌」 ではない(米国化学会の会員誌は 「Chemical & Engineering News」)。
「米国化学会の学術誌に掲載した」 ならばわかるが、このような間違いは校正段階で修正してほしいものだ。
ついでだが、日本語記事中には 【気泡の蒸発を最小限にとどめられる】 とあるが、英語では、【minimize the bubbles lost】 なので、「蒸発」 ではなく 「消失」 の方がまだよいだろう。
ちなみにこの論文が掲載された学術誌とは次の通りで、あるサイトで論文がダウンロードできた。
グラスの角度の違いを比較したり、グラスの外側へと広がる炭酸ガスの様子も図示されている。
J. Agric. Food Chem. 2010, 58, 8768–8775.
web.1.c2.audiovideoweb.com/1c2web3536/champagnepouring.pdf
これから自分の翻訳作業に戻るが、誤訳しないように集中しようと、改めて思った。
追記(12月29日):
私が指摘したからなのか、29日午後に確認したところ、記事が修正されていた(見出しは「化学」のままだが)。
【…フランスの研究チームが、美味しくシャンパンを味わう秘訣を科学的に解明し、米国化学会(American Chemical Society)の学術誌に掲載した。
…シャンパンの栓を抜いたあとも、気泡の消失を最小限にとどめられるという。】
(最終チェック・修正日 2010年12月29日)
web.1.c2.audiovideoweb.com/1c2web3536/champagnepouring.pdf
これから自分の翻訳作業に戻るが、誤訳しないように集中しようと、改めて思った。
追記(12月29日):
私が指摘したからなのか、29日午後に確認したところ、記事が修正されていた(見出しは「化学」のままだが)。
【…フランスの研究チームが、美味しくシャンパンを味わう秘訣を科学的に解明し、米国化学会(American Chemical Society)の学術誌に掲載した。
…シャンパンの栓を抜いたあとも、気泡の消失を最小限にとどめられるという。】
(最終チェック・修正日 2010年12月29日)