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南極海調査捕鯨打ち切りで鯨肉価格上昇の可能性

反捕鯨を主張する国や活動団体が歓喜する日が訪れた。
シーシェパード(SSCS)による執拗な妨害行為により、日本の南極海調査捕鯨が中止されると決定された。
2月18日の鹿野農林水産大臣の会見で発表された。
www.maff.go.jp/j/press-conf/min/110218.html

【…シー・シェパードは、今期の南極海におけるところの、調査捕鯨におきましても、妨害活動を行ってきたことは、ご承知のとおりであります。 …現在も、母船であ るところの日新丸が、BB号による追航を受けておりまして、船団の安全を確保するということが、困難になってきております。 …このようなことから、本日、乗務員の、まさしく生命・財産及び調査船の安全を確保するという観点から、やむを得ず、調査を切り上げる、いうことを、了としたところでございます。 調査船団の無事帰国を願っております。】

この決定を受けて、日本鯨類研究所(鯨研)がプレスリリースを出している。
icrwhale.org/110218ReleaseJp.htm

【本日、調査現場及び当研究所の意向を踏まえて農林水産大臣は、乗組員の生命・財産及び調査船の安全を確保する観点から、第2期南極海鯨類捕獲調査(JARPAII)の調査活動の切り上げを発表した。


日本が実施しているJARPAIIは国際捕鯨取締条約(ICRW)に基づくものであり、完全に合法的な調査活動である。シーシェパードが行っている妨害活動は調査捕鯨に従事する我が国の船舶および乗組員の生命・財産を脅かすものであり、このような執拗で危険極まりのない違法行為は決して許されるべきものではない。

この問題は、捕鯨の是非に関する問題ではなく、海上の安全・暴力行為に関する問題である。


しかし、オランダ政府及びオーストラリア政府は、シーシェパード船舶に対して船籍を与えているにもかかわらず、これらの船舶による暴力行為を止めることができなかった。

また、オーストラリア政府及びニュージーランド政府は、シーシェパードの極めて危険な暴力行為を非難することなく、日本政府が今期の南極海鯨類捕獲調査の切り上げを決めたことを公式に歓迎した。…】


不思議なことに、以前は妨害行為とは無関係に、船員1名が落水事故で行方不明になったときや、怪我人をフィジーに移送したときには調査を続行したのに、今回はSSCSの妨害行為を理由にして調査中止を決定した。



AFPなどの通信社が全世界に配信し、各国メディアが取り上げている。
AFPの日本語記事は短いので、
追加情報は英語記事で確認してほしい。
www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2786001/6833063 (日本語)
www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5hP3gy77az-rOqz3iqxz7G0ZYQ19g (英語)

捕鯨国のノルウェーとアイスランドでは、通信社の配信記事を元にした短い記事だけ。
www.aftenbladet.no/utenriks/1336086/Japan_stopper_hvalfangst_i_Antarktis.html (ノルウェー語)
www.mbl.is/frettir/erlent/2011/02/18/hrosa_sigri_yfir_japonum/ (アイスランド語)

反捕鯨国のメディアでは、例えばドイツではテレビ局のZDFも伝えているし、さらに小規模な地方紙に至るまで、日本の南極海捕鯨中止を歓迎する記事を掲載している。
ZDFも含めて、ドイツ語記事をいくつか列挙しておこう。
www.heute.de/ZDFheute/inhalt/24/0,3672,8213368,00.html
www.sueddeutsche.de/panorama/japan-proteste-gegen-walfang-die-jagdsaison-ist-vorbei-1.1061769
www.mopo.de/news/politik---wirtschaft/tierschuetzer-zwingen-japan-in-die-knie/-/5066858/7207006/-/index.html

調査捕鯨反対を唱えるグリーンピースでは、日本国内の鯨肉消費が低迷して在庫が減らないため、妨害行為を口実にして撤退し、捕獲数を調整したと主張しているようだ。
www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/staff/blog/33371

また、今回の調査捕鯨中止については、様々な推測が流れている。
・マグロ類の交渉で日本の主張を通すために、調査捕鯨中断という譲歩を示してみた。
・来季から海上保安庁の巡視船に護衛させるために何も反撃できなかったことを強調したかった。
・高速の妨害船に対抗するために、高性能の捕鯨母船を新規調達する予算獲得の口実にしたい。
・IWCやIMOで再度SSCS非難決議を行うために利用したい。
・アニマルプラネットの番組に提供する映像が不足するようにして、SSCSの資金源を減らしたい。
・去年のIWC議長案では南極海調査捕鯨はミンククジラ200頭、ナガスクジラ10頭であったが、今回の172頭という実績を利用して、議長案では調査費用も捻出できないし、国内需要を満たさないと主張したい。


捕獲数が計画を大幅に下回ったため、鯨肉価格の上昇圧力が高まっていると、日本経済新聞では報じている。

鯨肉価格、上昇圧力高まる 調査捕鯨中止で
18日に政府が決めた南極海での今季の調査捕鯨中止により、鯨肉価格には上昇圧力が高まりそうだ。現在までの捕獲頭数(ミンククジラとナガスクジラ合計)は前年同期比で7割少ない172頭で、供給量は大幅に減る見通し。販売元の日本鯨類研究所(鯨研、東京・中央)は値上げの検討に入った


現在、刺し身などに使うミンククジラ冷凍赤肉の卸向け価格は1キロ1750円と前年同期比100円(5%)安い。消費者のクジラ離れなどで需要が落ち込み、2009年夏から値下がりが続いている

鯨肉は調査船を運航する共同船舶(東京・中央)が捕獲した鯨を解体し、調査の副産物として鯨研が卸業者に販売する。売り上げは次回の調査費用となるため、価格は捕獲頭数に左右されやすい


消費の不振を背景に、国内在庫は高水準で推移している。水産庁の調べによると、昨年12月末で前年比25%増の5093トンだった。ただ、 調査の中止でクジラベーコンなど加工食品の原料として引き合いが強いウネスや皮は「足りなくなる可能性が高い」(鯨研)。在庫が過剰といわれる赤肉も「今後卸など関係先と調整の上、価格の検討に入る」(同)という。】


アイスランドの輸出統計では、去年は日本へ冷凍鯨肉(ナガスクジラ)を約760トン輸出している。
アイスランドにはまだ1000トン以上が保管されているので、今年は足りない分を注文するのではないだろうか。
この輸入には共同船舶が絡んでいるそうで、国内需要を満たすことは可能と思われるが、輸入鯨肉の売上を調査費用に流用できないはずなので、困っていることだろう。

それにしても、妨害対策のために、過去に補正予算として2年間で計6億円、そしてその後は本予算に編入して 「鯨類調査円滑化」 という名称に変えて使った金は、一体何だったのだろうか。

ところで、SSCSの妨害船の船籍国に抗議すると言っていたが、船籍の問題については日本側にも汚点がある。
国際法違反でパナマから船籍はく奪と罰金の処分を受けたオリエンタルブルーバード号は、船籍はく奪から1年回は再登録できない。
しかし日本側は、第二飛洋丸と改名して登録し、捕鯨船団の補給船として運用するという、国際法違反の疑いがあった。
補給船の手配は共同船舶が行っているため、水産庁に質問しても、「一民間企業の活動について関知しない」 と答えるのみ。
「調査捕鯨は合法」 と言うならば、この船籍登録疑惑についても情報公開してほしいものだ。

(最終チェック・修正日 2011年02月21日)

テーマ : 国際問題
ジャンル : 政治・経済

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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