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「ナザレのイエス(Jesus von Nazareth)」の著者は神学者ラッツィンガーであり法王ではない

ローマ法王ベネディクト16世の著書が、来週3月10日に発売されることが、各国メディアで取り上げられている。

ドイツ語で書かれた著書のタイトルは、「Jesus von Nazareth(ナザレのイエス)」 で、2007年発売の第一部に続く第二部である。
第一部は、「ヨルダン川での洗礼から変容まで」、そして今回の第二部は、「エルサレム入城から復活まで」 である。

出版社の書籍紹介は次の通りで、第一部については日本語訳が出版されている。
www.herder.de/buecher/details (第一部)
www.shunjusha.co.jp/detail/isbn/978-4-393-33277-1/ (第一部日本語訳)
www.herder.de/extra/buecher/details (第二部)

発売前だが、バチカン放送のドイツ語ニュース(3月2日)でハーゲンコルト神父が、第二部の内容から3章分を取り上げている。
www.oecumene.radiovaticana.org/ted/articolo.asp

この中で、「イエスを殺したのはユダヤ人ではない」 という部分が、各メディアで特に強調されて取り上げられている。
例えばCNNでは次のように報じている。
religion.blogs.cnn.com/2011/03/02/jews-did-not-kill-jesus-pope-writes-in-new-book/ (英語)
www.cnn.co.jp/fringe/30002004.html (日本語)

【The Jewish people are not collectively responsible for the death of Jesus, Pope Benedict XVI writes a book to be published next week.
「ローマ法王ベネディクト16世が、集団としてのユダヤ人にキリストを死に追いやった責任はないと間もなく出版予定の著書のなかで断言した。」】


法王が直接話したわけではないので、その著書を実際に読むまでは何とも言えないが、「イエスを殺したのはユダヤ人ではない」 という部分を、バチカン側が意図的に流したとも推測される。

保守派とされるベネディクト16世は、ホロコースト否定派の破門解除をするなど、何かと批判されてきた。
ユダヤ教との和解に向けた話し合いも中断しているため、ユダヤ人について言及したことを、事前に注目させたかったのだろう。

他にも、コンドームの使用を禁ずる発言や、カトリック教会での児童虐待事件などの責任を問われ、国際刑事裁判所に提訴されている。
発言の一部を訂正したり、暴行事件について謝罪したりしているが、それでは不十分だと考える人たちはいるのだ。
www.kanzlei-sailer.de/pope-lawsuit-2011.pdf

バチカン側が法王のイメージ回復を望んでいることは確かなので、来週発売の著書は大々的に宣伝したいところだ。
ただしドイツ語で書かれているので、その内容がどの程度正確に伝わるのかは不明だ。
つまみ食いをするように、一部分のみ英訳されて、その情報が独り歩きする危険性もある。
まあ、カトリック教徒でもない私が心配する必要はないので、出版されてから報道をチェックしてみよう。


ところで、第一部も第二部も著者名は、Joseph Ratzinger (Benedikt XVI.) であり、神学者ラッツィンガーとして書いたはずだ。
第一部に関する高柳俊一・上智大学名誉教授の書評でも指摘されているが、法王の公式見解文書ではなく、あくまでも一神学者としての研究をまとめた論文と考えた方がよいだろう。
ci.nii.ac.jp/els/110006992686.pdf

しかしながら、ラッツィンガー博士が書いたと説明しても、カトリック信者だけでなくユダヤ教信者も、ローマ法王が公式見解を発表したと感じることだろう。

このように個人で書いたとしても、肩書などがどうしても付きまとうものである。
ドイツのメルケル首相が、カトリック教会での児童虐待について、「私がプロテスタントだからというわけではありませんが、バチカンに抗議します。」 と発言したことがある。
ドイツ首相としてバチカンに抗議しても、「異端者プロテスタントがローマ法王を非難した」 と感じる人はいることだろう。

(最終チェック・修正日 2011年03月04日)

テーマ : 聖書・キリスト教
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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