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「原発震災」は以前から警告されていた(石橋克彦・神戸大学名誉教授)

私は東北地方生まれだが本籍地は、お寺などとの関係もあり、父の実家があった兵庫県淡路島のままにしてある。
1995年の阪神・淡路大震災では、震源の隣町だったため、父の実家は屋根が落ちて潰れてしまった。
そのときは祖母のみがいたが、地震の前年から入院していたため、難を逃れた。

親戚からは、祖母がまだ生きていることに加えて、墓参りの時に家がないと恥ずかしいなどという意見が出て、私の両親との間で、実家を建て直すかどうかで散々もめた。
そして地震から2年後、更地にしてからもなお、立て直しかどうかでもめている最中に、祖母が亡くなった。

それでも、誰も住むことがなくなったはずなのに、別に所有していた土地を売ってまで、平屋一戸建てを約2千万円で再建した。
その家は賃貸住宅として利用した後、入居者の希望により、土地と併せて売却した。

この阪神・淡路大震災後に、この地域で震度6クラスの地震が想定されていたことが注目された。
しかし、兵庫県・神戸市側が震災対策予算の都合などから、「震度5を想定する」 と決めた。
地震学者の警告を無視したことが、6千名を超える死者を出す要因の一つだと非難された。

そして先週3月11日の東北地方太平洋沖大地震では、以前から警告されていた 「原発震災」 が現実のものとなった。
この 「原発震災」 という言葉を広めたのは、石橋克彦・神戸大学名誉教授である。

石橋名誉教授は、今回の大震災後、これまでの自身の論文などを簡単にまとめたサイトを公開している。
historical.seismology.jp/ishibashi/opinion/2011touhoku.html

【…
激甚な地震津波災害のうえに、東京電力福島第一原子力発電所で重大な事故が発生し、かなりの放射能が漏出して多くの住民が避難を強いられていることは、痛恨の極みです。
私は、大地震によってこのような事態が生ずることを憂慮し、1997年から警鐘を鳴らしてきましたが、こんなに早く懸念が現実化してしまうとは思いませんでした
…】

このサイトで引用されている記事のうち、次の2点を紹介しておきたい。

1:「原発震災-破滅を避けるために」、『科学』(岩波書店) Vol.67, No.10 (1997年10月号)
historical.seismology.jp/ishibashi/opinion/9710kagaku.pdf
www.iwanami.co.jp/kagaku/K_Ishibashi_Kagaku199710.pdf

原発が地震で大事故を起こす恐れは1970年代から指摘されていますが、私は震災論の立場から「原発震災」という言葉・概念を下記で提唱し、震災軽減の重要な一環としてその回避を訴えました。細かい点は古いですが、基本的コンセプトは今も通用すると思います。】

2:「原発に頼れない地震列島」、『都市問題』(東京市政調査会) Vol.99, No.8 (2008年8月号)
historical.seismology.jp/ishibashi/opinion/0808toshi.pdf

【2007年新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原発の被災の後…「(地震活動期の)日本の海岸線を縁取る(中略)原発の地震被害が日常的風景になるといってもよい」として、地震列島における原発依存は、原発震災以外にも、電力供給危機の長期継続といった地震リスクを抱えていることを指摘しました。】

岩波書店ではこれまでも、反原発・脱原発の立場での編集方針が目立つ。
上記1番目に引用した雑誌 「科学」 だけではなく、岩波新書や単行本を含めて、様々な書籍を刊行してきた。
今年2月に岩波ブックレットでは、「原発と日本の未来 原子力は温暖化対策の切り札か」(吉岡斉著)を発売した。
また、雑誌 「世界」 2011年1月号の特集は、「原子力復興という危険な夢」 であった。

戦前教育を受けた私の母に言わせると、「岩波書店の本を読んでいるとアカだと呼ばれるから困る」 そうだ。
しかし私は、健全な批判的精神を持つ一科学者として、そして市民として、また、放射性物質を扱う実験を体験したときの忘れられない緊張感からも、国策原発推進に反対の立場を貫いていきたい。

追記(3月21日):
朝日新聞の記事では、東京電力関係者の話として、福島第一原発全6機の廃炉を検討とあった。
www.asahi.com/national/update/0320/TKY201103200297.html

東京電力内で、福島第一原発の廃炉は避けられないとの見方が強まっている。東電関係者によると、建屋の爆発や炉心溶融が問題になっている1~4号機は、技術的に再稼働が難しい状態。損傷のない5、6号機についても「地元の住民感情を考えると再開は厳しく、6基とも廃炉にせざるを得ない」とみている。

1~3号機は水素の発生状況から、炉内の核燃料棒の損傷が激しいと推測される。そのため、事故が収束した後も核燃料棒を取り出せない可能性が高いという。放射線量が高いため、処理には長期間を要し、「廃炉には10年近くかかるだろう」(東電の原子力関係者)としている。】

また、「週刊金曜日」(3月18日号)では、石橋名誉教授にインタビューしているので、その一部を引用しておこう。
www.kinyobi.co.jp/backnum/tokushu/tokushu_kiji.php

【「既存の原発の震災リスクを総点検して、リスクが高い順に段階的に閉鎖・縮小するプログラムを考えることです。…
地震列島の日本で電力を大幅に原発に頼るのは、電力安定供給の点でも非常に危険な選択。野放図な電力消費を抑制し、自然エネルギーの活用拡大を含む分散型発電システムの構築こそ目指すべきです」】

(最終チェック・修正日 2011年04月24日)

テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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