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アイスランドのEU加盟交渉ではやはり捕鯨問題も争点になっている

金融危機をきっかけとしてアイスランドは、EU加盟に向けた交渉を行っているが、EU議会の外交委員会報告書草案が可決された(賛成48、反対2、棄権1)。
EU議会の3月22日付けプレスリリースは次の通り。
www.europarl.europa.eu/en/pressroom/content/20110318IPR15863/html/MEPs-welcome-Iceland%27s-progress-towards-EU-membership

加盟に向けて一歩前進のように思えるが、破綻した Icesave の他に、捕鯨とサバの問題がまだ障害となりそうだ。

【In its first annual report on Iceland since the launch of that country's EU membership negotiations last year, the Foreign Affairs Committee welcomes the prospect of bringing on board one of Europe's oldest democracies with its well-functioning market economy. However, some sensitive issues remain, such as the Icesave dispute, whale hunting (which is banned in the EU) and Iceland's desire to protect its fisheries and agriculture markets.

アイスランド外務省のEU加盟交渉HPでは、この草案可決についてはまだ触れていない。
europe.mfa.is/phase-2---negotiation-process/ (英語)

金融危機・自国通貨暴落をきっかけとして、アイスランドがEU加盟を申請していた。 アイスランド世論の過半数は加盟に反対なのだが、予備的な審査の結果、加盟に向けた交渉が始まることになった。 EUの英語リリースと、その日本語版、そしてアイスランド政府の発表(英語)は次の通り。 europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do www.deljpn.ec.europa.eu/modules/media/news/
アイスランドのEU加盟交渉開始:捕鯨問題は争点になるのか?



漁業問題としてサバが取り上げられているが、これはEU未加盟のノルウェーも巻き込む問題かもしれない。
アイスランドが加盟すれば、サバの資源管理方法や漁獲割り当てについてEUの規則に従わねばならないし、加えて他国の漁船がアイスランド近くで操業するようになり、水産物輸出国としては複雑な心境だろう。

また捕鯨問題については、例えばドイツ議会が捕鯨反対勧告決議を採択していることもあり、最大の障害になりそうだ。
先のプレスリリースから、捕鯨に関する部分を引用しておこう。

Fisheries: mackerel and whale hunting

"Serious divergences" remain on whale hunting, adds the committee, emphasising that the ban on whaling is part of the EU acquis (the existing body of laws and regulations that all new Member States must take on). It calls for broader discussions on the abolition of both whale hunting and the trade in whale products.】

EU加盟国はそれぞれ独自の法律や文化を持っているので、例えばマルタが離婚を禁止していても、カトリック教徒が多い加盟国ということで認められている。
しかし、捕鯨と鯨由来製品の売買は、全加盟国で禁止することが求められており、捕鯨国のアイスランドには厳しい注文だ。

金融危機からの回復を主眼とするならば、捕鯨による雇用の損失は相殺できるかもしれない。
ただ、鯨肉を食べる人は人口の数%は実際にいるので、以前のように小規模調査捕鯨に戻したり、グリーンランドのように先住民生存捕鯨に変えるのかもしれない。

そうなると、日本への輸出を目的としたナガスクジラの捕鯨は、断念しなければならない。
加盟交渉は急に進むとは思えないので、今年も捕鯨はできそうだから、今のうちにたくさん捕獲して冷凍保管し、加盟前に日本に全部輸出するのかもしれない。

ただしアイスランド統計局の記録によると、日本で需要が増えそうな去年の11月から今年1月まで、3か月連続で鯨肉輸出はない。
シーシェパードの妨害で日本の鯨肉が足りなくなりそうなので、1千トン以上のナガスクジラ肉在庫を全部放出するかもしれない。
今後の動きも、ときどきチェックしておこう。

追記(4月8日):
4月7日発表のEU議会プレスリリースによると、この報告書が採択された(賛成544、反対29、棄権41)。
http://www.europarl.europa.eu/en/pressroom/content/20110407IPR17168/html/Parliament-praises-Iceland's-progress-towards-EU-membership

そして6月27日から、最終期限を設けずに、アイスランドの加盟交渉が始まるそうだ。
ただし、捕鯨などの諸問題が壁となることは周知の通りである。

(最終チェック・修正日 2011年04月08日)

テーマ : 国際政治
ジャンル : 政治・経済

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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