大津波の警告を無視した東京電力
政府の審議会や委員会には、専門家として科学者が委員として呼ばれることが多い。
ただし、科学者として正直に警告を発したとしても、政府側に都合の悪い情報であれば、過小評価または無視されることがある。
審議会答申や報告書に記載しようとしても、官僚が添削して削除することもある。
今回の東京電力・福島第一原発での津波による被害は、科学者の警告を政府と共に無視したことが原因である。
地震とそれに伴う大津波は自然現象による天災だが、警告無視による対策の先送りによる被害は人災である。
東京電力のHPにあるQ&Aコーナーでは、「津波に対して発電所は大丈夫ですか?」 という質問に、次のように答えている。
このような回答をまだ掲載しているということは、単なるチェック漏れなのか、それとも想定外だったことを強調するためなのか。
www.tepco.co.jp/nu/qa/qa08-j.html
【原子力発電所の津波評価においては、「安全設計審査指針」,「原子力発電所の津波評価技術(土木学会)」の考えに基づき、敷地周辺で過去に発生した津波はもとより、過去最大の津波を上回る、地震学的に想定される最大級の津波を数値シミュレーション解析により評価し、重要施設の安全性を確認しています。
具体的には、数値シミュレーション解析により求まった津波の最高水位に満潮時の水位を加えた水位においても、重要な施設の運転に支障のないこと、また、津波の最低水位から干潮時の水位を差し引いた水位においても原子炉の冷却に支障のないことを確認しています。】
しかし、共同通信の記事では、2年前の警告を東京電力が無視していたことが報じられ、海外メディアも取り上げている。
www.47news.jp/CN/201103/CN2011032601000722.html
【東日本大震災で大津波が直撃した東京電力福島第1原発(福島県)をめぐり、2009年の審議会で、平安時代の869年に起きた貞観津波の痕跡を調査した研究者が、同原発を大津波が襲う危険性を指摘していたことが26日、分かった。
東電側は「十分な情報がない」として地震想定の引き上げに難色を示し、設計上は耐震性に余裕があると主張。津波想定は先送りされ、地震想定も変更されなかった。この時点で非常用電源など設備を改修していれば原発事故は防げた可能性があり、東電の主張を是認した国の姿勢も厳しく問われそうだ。】
ただし、科学者として正直に警告を発したとしても、政府側に都合の悪い情報であれば、過小評価または無視されることがある。
審議会答申や報告書に記載しようとしても、官僚が添削して削除することもある。
今回の東京電力・福島第一原発での津波による被害は、科学者の警告を政府と共に無視したことが原因である。
地震とそれに伴う大津波は自然現象による天災だが、警告無視による対策の先送りによる被害は人災である。
東京電力のHPにあるQ&Aコーナーでは、「津波に対して発電所は大丈夫ですか?」 という質問に、次のように答えている。
このような回答をまだ掲載しているということは、単なるチェック漏れなのか、それとも想定外だったことを強調するためなのか。
www.tepco.co.jp/nu/qa/qa08-j.html
【原子力発電所の津波評価においては、「安全設計審査指針」,「原子力発電所の津波評価技術(土木学会)」の考えに基づき、敷地周辺で過去に発生した津波はもとより、過去最大の津波を上回る、地震学的に想定される最大級の津波を数値シミュレーション解析により評価し、重要施設の安全性を確認しています。
具体的には、数値シミュレーション解析により求まった津波の最高水位に満潮時の水位を加えた水位においても、重要な施設の運転に支障のないこと、また、津波の最低水位から干潮時の水位を差し引いた水位においても原子炉の冷却に支障のないことを確認しています。】
しかし、共同通信の記事では、2年前の警告を東京電力が無視していたことが報じられ、海外メディアも取り上げている。
www.47news.jp/CN/201103/CN2011032601000722.html
【東日本大震災で大津波が直撃した東京電力福島第1原発(福島県)をめぐり、2009年の審議会で、平安時代の869年に起きた貞観津波の痕跡を調査した研究者が、同原発を大津波が襲う危険性を指摘していたことが26日、分かった。
東電側は「十分な情報がない」として地震想定の引き上げに難色を示し、設計上は耐震性に余裕があると主張。津波想定は先送りされ、地震想定も変更されなかった。この時点で非常用電源など設備を改修していれば原発事故は防げた可能性があり、東電の主張を是認した国の姿勢も厳しく問われそうだ。】
危険性を指摘したのは、独立行政法人・産業技術総合研究所」の岡村行信活断層・地震研究センター長。
岡村センター長の昨年6月の挨拶は次の通りで、沿岸地域の活断層の研究も進めていた。
unit.aist.go.jp/actfault-eq/aisatsu.html
そして2年前に福島沿岸部が大津波に襲われる可能性を指摘したものの、その警告が活かされなかったことを悔やんでいる。
センターHPのトップページにある 「お見舞い」 を引用しよう。
unit.aist.go.jp/actfault-eq/index.html
【3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震で被災されました皆様に心からお見舞い申し上げます.
活断層・地震研究センターでは,数年前から西暦869年に仙台平野を襲った貞観地震に伴う津波の研究を行ってきましたが,その結果が地域の防災対策に反映される前にこのような大震災が発生してしまい,残念でなりません.宮城県及び福島県内の調査では多くの方々にご協力して頂きましたが,その地域が甚大な被害を受けられたことに,私たちの無力さを痛感しております.被災された地域で、再びかつてのような美しい田園風景と、活気ある町並みが復活することを心より願っております.私たちは今回の事態を直視し,真に地震防災に貢献できる研究を進めるため,さらに努力して参ります.】
この貞観地震について東京電力では、地震動の解析のみで、津波被害についての解析は先送りしていた。
総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会/耐震・構造設計小委員会/第33回地震・津波、地質・地盤合同ワーキンググループで配布した説明資料は次の通りで、警告を無視・軽視したことは明らかである。
www.tepco.co.jp/nu/material/files/fg09071301.pdf
【869年貞観の地震については,今後も引き続き知見の収集に努め,適宜必要な検討を行っていく所存。】 とあるが、文部科学省の予算を使って行われた貞観地震の研究成果を無視するとは、なんと自分勝手な企業なのだろうか。
津波については再評価中だったとも言われているが、元々今回のような複数の震源域の連動を想定していないので、再評価による対策をしていても、被害に遭っていたと思われる。
それに加えて驚いたのは、東京電力の清水社長が過労のため、対策本部を一時離れていたことだ。
日本経済新聞の記事は次の通り。
【東京電力は27日夕、清水正孝社長が過労のために16日から数日間、同社本店内に設置された対策本部を離れていたことを明らかにした。ただ、入院したのではなく、役員フロアで体を休めながら、現地などの情報を収集したり、復旧作業などの指示を出していたという。…】
このような危機的状況に対応できないのであれば、株主総会も紛糾して議事進行ができないだろうから、すぐに社長を辞めて、まともな指揮ができる人に代わってほしい。
追記(4月24日):
4月19日の朝日新聞の報道では、東京電力のHPが13日に更新したときに、津波対策のページを削除したそうだ。
www.asahi.com/national/update/0419/OSK201104190035.html
【…
東電によると、13日にHPを一新した際、津波対策のページを削除した。事故の後も、HPに「考えられる最大の地震も考慮して設計しています」などという対策が載り続けていることに対し、閲覧者から非難の声が寄せられたという。
そのページには、津波対策として「敷地周辺で過去に発生した津波の記録を十分調査するとともに、過去最大の津波を上回る、地震学的に想定される最大級の津波を数値シミュレーションにより評価し、重要施設の安全性を確認しています」と記載。イラスト付きで「発電所敷地の高さに余裕を持たせるなどの様々な安全対策を講じています」としていた。】
イラストは削除されたようだが、Q&AのURLは生きているので、記載内容の確認は可能だ。
www.tepco.co.jp/nu/qa/qa08-j.html
(最終チェック・修正日 2011年04月24日)
岡村センター長の昨年6月の挨拶は次の通りで、沿岸地域の活断層の研究も進めていた。
unit.aist.go.jp/actfault-eq/aisatsu.html
そして2年前に福島沿岸部が大津波に襲われる可能性を指摘したものの、その警告が活かされなかったことを悔やんでいる。
センターHPのトップページにある 「お見舞い」 を引用しよう。
unit.aist.go.jp/actfault-eq/index.html
【3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震で被災されました皆様に心からお見舞い申し上げます.
活断層・地震研究センターでは,数年前から西暦869年に仙台平野を襲った貞観地震に伴う津波の研究を行ってきましたが,その結果が地域の防災対策に反映される前にこのような大震災が発生してしまい,残念でなりません.宮城県及び福島県内の調査では多くの方々にご協力して頂きましたが,その地域が甚大な被害を受けられたことに,私たちの無力さを痛感しております.被災された地域で、再びかつてのような美しい田園風景と、活気ある町並みが復活することを心より願っております.私たちは今回の事態を直視し,真に地震防災に貢献できる研究を進めるため,さらに努力して参ります.】
この貞観地震について東京電力では、地震動の解析のみで、津波被害についての解析は先送りしていた。
総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会/耐震・構造設計小委員会/第33回地震・津波、地質・地盤合同ワーキンググループで配布した説明資料は次の通りで、警告を無視・軽視したことは明らかである。
www.tepco.co.jp/nu/material/files/fg09071301.pdf
【869年貞観の地震については,今後も引き続き知見の収集に努め,適宜必要な検討を行っていく所存。】 とあるが、文部科学省の予算を使って行われた貞観地震の研究成果を無視するとは、なんと自分勝手な企業なのだろうか。
津波については再評価中だったとも言われているが、元々今回のような複数の震源域の連動を想定していないので、再評価による対策をしていても、被害に遭っていたと思われる。
それに加えて驚いたのは、東京電力の清水社長が過労のため、対策本部を一時離れていたことだ。
日本経済新聞の記事は次の通り。
【東京電力は27日夕、清水正孝社長が過労のために16日から数日間、同社本店内に設置された対策本部を離れていたことを明らかにした。ただ、入院したのではなく、役員フロアで体を休めながら、現地などの情報を収集したり、復旧作業などの指示を出していたという。…】
このような危機的状況に対応できないのであれば、株主総会も紛糾して議事進行ができないだろうから、すぐに社長を辞めて、まともな指揮ができる人に代わってほしい。
追記(4月24日):
4月19日の朝日新聞の報道では、東京電力のHPが13日に更新したときに、津波対策のページを削除したそうだ。
www.asahi.com/national/update/0419/OSK201104190035.html
【…
東電によると、13日にHPを一新した際、津波対策のページを削除した。事故の後も、HPに「考えられる最大の地震も考慮して設計しています」などという対策が載り続けていることに対し、閲覧者から非難の声が寄せられたという。
そのページには、津波対策として「敷地周辺で過去に発生した津波の記録を十分調査するとともに、過去最大の津波を上回る、地震学的に想定される最大級の津波を数値シミュレーションにより評価し、重要施設の安全性を確認しています」と記載。イラスト付きで「発電所敷地の高さに余裕を持たせるなどの様々な安全対策を講じています」としていた。】
イラストは削除されたようだが、Q&AのURLは生きているので、記載内容の確認は可能だ。
www.tepco.co.jp/nu/qa/qa08-j.html
(最終チェック・修正日 2011年04月24日)