fc2ブログ

アイスランドの今年初のナガスクジラ肉輸出は3月の震災後に約290トン

不定期ではあるがアイスランドの輸出統計で、冷凍鯨肉と、その他冷凍鯨肉製品について、日本への輸出状況を確認している。
もし関心のある人は、まずは次のサイト(アイスランド語)にアクセスしてほしい。
www.hagstofa.is/temp/Dialog/varval.asp

一番左の品目番号では、 02084001 - Fryst hvalkjöt 「冷凍鯨肉」、02084002 - Aðrar frystar hvalaafurðir 「その他冷凍鯨関連製品」 を選択する。
次の国(Land)はもちろん Japan を選ぶが、比較として例えばフェロー諸島(Færeyjar)などを同時に選んでもよいだろう。
次は知りたい期間(Tími)を年月で選ぶが、右上囲みのチェックをクリックすると全期間を選択できる。
そして、一番左ではキログラム(Kíló)と、アイスランドクローナでの価格(Fob verð krónur)を選び、[ÁFRAM] をクリックすると一覧表が表示される。

今年の1月と2月の輸出はゼロだが、3月に約290トン(正確には 289.134 トン)を輸出していた。
2010年の輸出状況を再確認すると、一度に輸出する量は約120トンから150トンの間なので、この3月の量は約2倍で目立つ。
金額は 463,820,820 アイスランドクローナで、日本円で約33億円で、キロ当たり約1500円。


昨年11月から4か月間は全く輸出がなかったが、この3月に急に再開し、しかもいつもの2倍量なので、クジラ・イルカ保護団体のWDCSがいろいろと疑っている。
3月11日の東日本大震災後に輸出していることを挙げて、支援物資のつもりなのか、それとも日本の鯨肉市場での地位を築こうとしているのかと。
www.wdcs.org/news.php

3月11日以降に輸出されたとすれば、5月1日からの連休中に、石巻でのクジラ料理の炊き出しに使われたナガスクジラ肉ということなのか。

石巻の被災地で連休中に行われた鯨肉料理の炊き出しは、いくつかのメディアや公式ツイッターが取り上げていた。
www.news24.jp/articles/2011/05/01/07182014.html (日テレニュース24)
gendai.net/articles/view/kenko/130268 (ゲンダイネット)
www.tweetdeck.com/twitter/nhk_kabun/~3Mowr (NHK報道局科学文化部の公式ツイッター)

ゲンダイネットではアイスランド産ナガスクジラと明言している。
【…宮城県石巻市で、地元の人たちに元気を出してもらおうと、連休中の3日間、鯨肉料理の炊き出しが行われる。
 これは壊滅的な被害を受けた地元の有力水産会社・大興水産が中心になって行うもので、同社の取引先であるアイスランドの鯨専門会社が被災者を励ましたいと申し出た鯨の種類は最も美味とされるナガスクジラでアイスランド産。】

NHK報道局の公式ツイッターでは、「支援物資として贈られた」 とあるが、「無償提供」 なのかどうかは不明。
(NHK科学文化部のブログには、この炊き出しについての投稿はない。
www9.nhk.or.jp/kabun-blog/

【かつて捕鯨基地として栄え、津波で大きな被害を受けた宮城県石巻市で被災した人たちを元気づけようと地元の水産会社が鯨料理の炊き出しを始めました。(5/1)
…今回の津波で鯨を扱う水産会社の工場や冷凍庫が流されて鯨の肉が供給できない状況が続いています。そこで、市内の水産会社が海外で捕鯨が盛んなアイスランドの業者から支援物資として贈られた鯨の肉およそ950キロを使ってきょうから炊き出しを始めました。会場では、煮込んだ鯨の肉をご飯の上に載せた「鯨うま煮丼」や鯨の肉の刺身が振る舞われ、訪れた人たちは、久しぶりの鯨料理を味わっていました。…】

(注:宮城県内ニュースのURL(www.nhk.or.jp/lnews/sendai/6005609611.html)はリンク切れだが、グーグルのキャッシュを見たところ、この公式ツイッターにほぼそのまま掲載されたことが確認できた。)


炊き出しに協力した水産会社に直接電話で問い合わせたところ、社長はアイスランドの捕鯨会社側と面識があるものの、輸入業者が間に入って取引しているそうだ。
直接取引ではないが、輸入鯨肉の購入発注はするわけだから、広い意味での取引先と言ってもいいのかもしれない。
鯨肉を手配したこの水産会社は、ナガスクジラ肉は無償提供されたと言っているので、輸入業者またはアイスランドの捕鯨会社が本当に支援物資として渡したのだろう。
NHKのツイッターにある950キロならば、原価は150万円程度なので、企業からの寄付としては大金ではないだろう。
それに、290トンのうちの1トン未満なのだから、残り289トンの売上利益でまかなえるのだろう。


ところで、その水産会社の話では、炊き出しに用いた鯨肉は750kgで、NHKツイッターの950kgは間違いだとのことだ。

ということで、NHKの問い合わせ先である 「NHKふれあいセンター」 に電話したところ、東京にはこのニュース原稿の記録がないため、仙台放送局が地域ニュースとして流した可能性があるという。
なぜかツイッターに投稿した報道局にはつないでもらえず、NHK仙台放送局に電話してほしいと言われた。

仙台放送局に電話すると、ここでは公式ツイッターに投稿しないため、内容については再度東京に電話してほしいと言われた。
ただ、ローカルニュースとして流したかどうかについて、取材記者に聞いたり、ニュース原稿の記録を調べてみるという。

約1時間後に仙台放送局から電話があり、調査した結果、「赤肉750kg、脂身200kgで、合計950kg」 と判明したそうだ。
つまり水産会社が言う750kgというのは、アイスランドから輸入したナガスクジラの赤肉の話だけだったわけだ。
水産会社の人はJAS法に従った呼び名を使うため、肉と脂身は別ということで、NHKの記載は間違いだと言ったのだろう。

赤肉の起源は判明したが、脂身の具体的な品名はわからず、アイスランド産なのか調査捕鯨副産物なのか、それは不明のまま。

他にもやることがあるので、この件は続報が出るまで待つことにしよう。
もしかするとアイスランドの報道で、捕鯨会社側から何か発表があるかもしれないし。

追記(5月11日):
3月に約290トンのナガスクジラ肉が日本に輸出されたわけだが、5月10日付けのアイスランドの漁業新聞とAFP英語記事を読むと、今年のナガスクジラ漁の開始は例年の6月ではなく、8月まで待つことになるそうだ。
www.fiskifrettir.is/frett/63287/
news.yahoo.com/s/afp/japandisastericelandwhaling

東日本大震災後、日本でのナガスクジラ肉の需要動向が不明のため、捕鯨をしても冷凍鯨肉の在庫が増えるだけだから、今季は予定頭数を捕獲することはないだろう。

アイスランド国内ではミンククジラ肉の方が需要があるため、ナガスクジラ肉は最初から日本向けに冷凍保管している。

南極海調査捕鯨に対する妨害行為のために、ナガスクジラの捕獲頭数は1頭にとどまったことから、アイスランドから大量に輸入するのかと思っていた。
昨年はアイスランドでナガスクジラ漁が好調に進み、在庫がたまったので、今年は新規に捕獲することもないだろう。
そうすると、アイスランドの会社 Hvalur hf. で働く25人の雇用の問題が発生するだろう。

追記(6月9日):
4月の冷凍ナガスクジラ肉の輸出量が発表された。
129.600 トンで、金額は 98,382,018 アイスランドクローナ(約6820万円)。
トン当たり金額について、昨年や今年3月の輸出時と比べると、半分以下になっている。
震災直後で、鯨肉需要が低迷するという予測のためなのだろうか。

(最終チェック・修正日 2011年06月09日)

テーマ : 環境・資源・エネルギー
ジャンル : 政治・経済

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

調査捕鯨の生鯨肉を拒否する石巻市はアイスランド産ナガスクジラ肉は受け入れていたのに

東日本大震災によって、捕鯨基地の一つである石巻市・鮎川地区も被害を受けた。 そのため、鮎川を拠点として今の時期に実施される三陸沖調査捕鯨は、今年は釧路沖へと場所を変えて行われている。 調査捕鯨...

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

FC2カウンター
カテゴリ
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR