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ドイツ北部でも腸管出血性大腸菌が原因の食中毒が発生している

腸管出血性大腸菌(EHEC)のO111による食中毒が、ある外食チェーン店で頻発して、連日報道されている。
今回のユッケ食中毒事件では死者が出たためなのか、そのチェーン店運営会社や取引先の食肉加工会社は、メディアスクラムだけでなく、ネット上でも袋だたきに遭っている。

大事件に発展したユッケ食中毒事件だが、その後も各地でEHECのO111やO157を原因菌とする食中毒事故は続いている。
生肉使用の基準に満たない飲食店が次々と見つかり、食肉を取扱う臨時講習会が開催されている。
そういつた衛生対策の再確認も行われているが、食肉とは無関係の団子でO157に感染した食中毒事例も報告されている。
食品を取り扱うならば、食肉に限らず、消毒と手洗いの励行は最低条件であろう。

それでヨーロッパではどうかと言うと、食肉だけではなく、牛乳やチーズといった乳製品での食中毒事故も発生している。
そして現在、ハンブルクなどドイツ北部地域では、EHECが原因の食中毒事故が発生し、患者数は増加を続けている

SPIEGEL Online と Hamburger Morgenpost、そして Süddeutsche Zeitung の記事は以下の通り。
www.spiegel.de/wissenschaft/medizin/0,1518,764099,00.html
www.mopo.de/hamburg/panorama/experten-zu-krisengipfel--in-hamburg-eingetroffen/-/5067140/8475036/-/index.html
www.sueddeutsche.de/panorama/infektionen-im-norden-dutzende-leiden-an-schwerer-durchfallerkrankung-1.1100112

在ハンブルク日本総領事館では、土日は休みのためか、HPを見ても安全情報が出ていない。
これからドイツ北部へ旅行や出張する予定の人は、テロだけではなく、食事にも気をつけてほしい。

www.hamburg.emb-japan.go.jp/jp/index.html

21日土曜日の夜までに、ハンブルクだけで患者数は13名に増加している。
シュレースヴィッヒ・ホルシュタイン州では約20名の感染者が報告され、ニーダーザクセン州では12名の患者のうち5名が集中治療室に入ったという。
ブレーメンでも土曜日夜に、感染の疑いのある患者2名が報告されている。

ハンブルクでは今週初めに EHEC 感染者が見つかったため、ハンブルク保健局は Robert-Koch 研究所に報告し、協力して対応している。
現時点で発生源は不明のようで、州政府や研究所のHPでも発表されていない。
患者は、EHEC を持つ家畜に直接触れたのかもしれないし、汚染された生牛肉や、煮沸消毒する前の生牛乳を摂取したのかもしれない。
または、既に感染していた人から、接触感染したのかもしれない。

スーパーマーケットなどで市販されている牛乳は、加熱殺菌(パスツール殺菌)済みなので、EHEC 混入を心配しなくてもよい。
ただ、生牛乳を農家から直接購入する人もいるし、加熱によって重要な栄養素が損なわれると考える人もいるので、汚染された生牛乳をそのまま飲んだ人もいるかもしれない。

ドイツでの EHEC 感染例は毎年、800件から1200件も報告されている。
ドイツ人にも生牛肉を食べる人がいるし、乳製品も多く摂取するので、感染のリスクは常にあるということだ。

皮肉なことに、EHEC 食中毒事件が報道される直前の19日、ブレーメンでアイクナー農業・消費者保護大臣が、レストランの衛生状態について、透明性のある情報提供をすることを発表した。
2012年から導入する 「Hygiene-Kennzeichnung (衛生ラベル)」 では、苦情や減点項目の合計数から、色で安全度を区別する予定だ。
www.bmelv.de/SharedDocs/Standardartikel/Ernaehrung/SichereLebensmittel/Hygiene/Konrollbarometer.html



もっとわかりやすい表示方法として、信号機のランプのようなラベルにすることも提案されている。
ミシュランガイドなど私には無縁なので、日本でも同様のレストラン衛生ラベル表示を導入してほしいものだ。
しかし、業界団体が国会議員などを使って圧力をかけて、制度化を阻止するかもしれないが。


追記(5月23日):
23日までのEHEC感染者は100名を超えており、さらに増え続けているという。
ドイツ連邦農業・消費者保護省は23日に、EHEC食中毒事故を防ぐための助言について発表した。
www.bmelv.de/SharedDocs/Standardartikel/Ernaehrung/SichereLebensmittel/Hygiene/EHEC.html

各メディアでも続報が多数出ているが、原因の特定には至っていないとある。
そのため次の記事では、生肉や加熱殺菌していない牛乳だけではなく、生野菜も含めた食品全般の衛生対策についてリスクを説明している。
www.abendblatt.de/hamburg/kommunales/article1898414/Zahl-der-Infektionen-steigt-Hier-die-wichtigsten-Antworten-zur-Erkrankung.html

追記(5月24日):
次の記事では、EHEC食中毒患者は140名を超え、感染の疑いのある患者も160名を超えているという。
また、ベルリンでも新たに2名の患者が確認され、ドイツ北部では感染地域が徐々に広がっている。
依然として感染経路が不明のため、州政府や研究機関は、飲食店や家庭での衛生管理の徹底を助言するしかない。
www.sueddeutsche.de/panorama/ehec-infektionen-die-lage-ist-ernst-1.1100655

食肉加工工場も含めて、徹底的な調査が行われることだろう。
加熱せずに食べる野菜サラダや果物の場合、とにかく十分に洗浄することが助言されている。
しかし、このような原因不明の状況ならば、野菜を食べるには、加熱した温野菜サラダや焼き野菜サラダにしたり、スープやシチューにする方が無難だろう。

在ドイツ日本大使館および各地の総領事館では、テロへの警戒を呼び掛けるのみで、このEHEC食中毒事故については何も注意喚起していない。
ベルリン・ハンブルク・ブレーメンといった北ドイツの主要都市は、日本人観光客も多いのだから、少しは考慮してほしい。

また、日本のメディアは、首相官邸と班目委員長の責任転嫁合戦を追いかけるだけでなく、こういった海外情報を伝えることも仕事の一つではないだろうか。
日本国内で起きたユッケ食中毒事件では、あれだけメディアスクラムで関係会社を徹底的に追い詰めたのに。

(最終チェック・修正日 2011年05月24日)

テーマ : ドイツ
ジャンル : 海外情報

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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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