新星様天体さそり座V1309は近接連星系の合体による増光現象だった
2008年9月に日本の新星捜索者によって発見された増光天体は、当初は新星とされ、さそり座V1309と命名された。
ところが、その後のスペクトル観測では、通常の新星では説明できない現象が見られた。
いっかくじゅう座V838でも同様のスペクトル変化が観測されており、類似の特異変光星をまとめて、いっかくじゅう座V838型とする新しい分類名がある。
この新星様増光天体について、様々なモデルが検討されていたが、どれも決定的な理論ではなかった。
今回のさそり座V1309では、増光前の天体が同定でき、しかも公転周期約1.4日の近接連星系であることが判明した。
この近接連星系の公転周期は徐々に短くなり、つまり2つの恒星間距離が縮まり、最終的に合体して急増光したそうだ。
さそり座V1309について報じたアストロニュースの記事と、引用された論文のPDFは次の通り。
www.astroarts.co.jp/news/2011/05/27v1309_sco/index-j.shtml
jp.arxiv.org/PS_cache/arxiv/pdf/1012/1012.0163v2.pdf (ステピエン氏の論文)
jp.arxiv.org/PS_cache/arxiv/pdf/1105/1105.2627v1.pdf
【…仮説の一つとして、2つの星が合体することにより明るくなったのではないかという仮説があります。
このたび、さそり座V1309の観測によってこの仮説が正しいのではないかと思われる証拠が見つかったとする研究がコペルニクス大学(ポーランド)のティレンダ氏らによって報告されました。
重力レンズ天体を捜索するためのサーベイ計画として知られている計画に、「OGLE」(Optical Gravitational Lensing Experiment:光学重力レンズ実験)があります。この計画での捜索範囲にこのさそり座V1309が含まれていたため、明るくなる以前も含め長年の観測データがとられていたのです。ティレンダ氏らがこのデータを解析した結果、増光前のこの天体は1.4日周期で変光しており、その変光の様子から周期1.4日の連星ではないかということが判明しました。
これを受けたワルシャワ大学のステピエン氏は、合体前の星がどのようなものだったかについての研究を行い、合体前の系はK型の巨星どうしがほとんど接触してお互いの周りを回っていたのではないかと考えています。
興味深いことにこの周期は観測が行われた数年間の間に次第に短くなっていることがわかっており、このことから、連星の公転周期が次第に短くなり、最終的に合体したのではないかということです。星の間隔が小さくなるにつれ角運動量が抜き取られていきますから、それがエネルギーとして開放されることで明るくなり2008年の増光につながったのだろうと考えられます。】
ところが、その後のスペクトル観測では、通常の新星では説明できない現象が見られた。
いっかくじゅう座V838でも同様のスペクトル変化が観測されており、類似の特異変光星をまとめて、いっかくじゅう座V838型とする新しい分類名がある。
この新星様増光天体について、様々なモデルが検討されていたが、どれも決定的な理論ではなかった。
今回のさそり座V1309では、増光前の天体が同定でき、しかも公転周期約1.4日の近接連星系であることが判明した。
この近接連星系の公転周期は徐々に短くなり、つまり2つの恒星間距離が縮まり、最終的に合体して急増光したそうだ。
さそり座V1309について報じたアストロニュースの記事と、引用された論文のPDFは次の通り。
www.astroarts.co.jp/news/2011/05/27v1309_sco/index-j.shtml
jp.arxiv.org/PS_cache/arxiv/pdf/1012/1012.0163v2.pdf (ステピエン氏の論文)
jp.arxiv.org/PS_cache/arxiv/pdf/1105/1105.2627v1.pdf
【…仮説の一つとして、2つの星が合体することにより明るくなったのではないかという仮説があります。
このたび、さそり座V1309の観測によってこの仮説が正しいのではないかと思われる証拠が見つかったとする研究がコペルニクス大学(ポーランド)のティレンダ氏らによって報告されました。
重力レンズ天体を捜索するためのサーベイ計画として知られている計画に、「OGLE」(Optical Gravitational Lensing Experiment:光学重力レンズ実験)があります。この計画での捜索範囲にこのさそり座V1309が含まれていたため、明るくなる以前も含め長年の観測データがとられていたのです。ティレンダ氏らがこのデータを解析した結果、増光前のこの天体は1.4日周期で変光しており、その変光の様子から周期1.4日の連星ではないかということが判明しました。
これを受けたワルシャワ大学のステピエン氏は、合体前の星がどのようなものだったかについての研究を行い、合体前の系はK型の巨星どうしがほとんど接触してお互いの周りを回っていたのではないかと考えています。
興味深いことにこの周期は観測が行われた数年間の間に次第に短くなっていることがわかっており、このことから、連星の公転周期が次第に短くなり、最終的に合体したのではないかということです。星の間隔が小さくなるにつれ角運動量が抜き取られていきますから、それがエネルギーとして開放されることで明るくなり2008年の増光につながったのだろうと考えられます。】
ステピエン氏の論文の2ページ目、 Fig. 1 に光度曲線が示されており、増光前の光度変化を解析したところ、公転周期約1.4日の近接連星系であることが判明した。
4ページ目の Fig. 2 で公転周期の変化を示しており、2002年には1.44日に近かったが、爆発前年の2007年には1.42日まで減少している。
この論文では、周期的な変光の要因について、近接連星系でない場合も含めて、複数の仮説を検証している。
そして最終的に、巨星同士の近接連星系ならば、変光パターンと周期の変化を説明できるとした。
いっかくじゅう座V838型の全てが、巨星の近接連星系の合体とは結論できないものの、少なくともさそり座V1309では巨星同士の合体によって急増光したことは確かである。
さそり座V1309には他の事例と異なる点が2つあることも指摘されている。
まず、減光が速いこと、そして減光後の光度が、増光前の親星よりも暗くなっていることだ。
減光が速いことは質量が小さいことを示しており、さそり座V1309では太陽程度の質量だったが、いっかくじゅう座V838では太陽の8倍程度の質量だった。
増光前よりも暗くなったことから、合体後に恒星として残っているのではなく、ガス雲として飛散したと考えられている。
超新星ほどではないとしても、いっかくじゅう座V838型の激変星は、爆発後の変化も注目されている。
合体後に高速自転する超巨星となるのか、周囲に飛散したガス雲から惑星が誕生するのかなど。
類似天体の捜索を続けると共に、さそり座V1309の今後について、継続的観測も必要だろう。
4ページ目の Fig. 2 で公転周期の変化を示しており、2002年には1.44日に近かったが、爆発前年の2007年には1.42日まで減少している。
この論文では、周期的な変光の要因について、近接連星系でない場合も含めて、複数の仮説を検証している。
そして最終的に、巨星同士の近接連星系ならば、変光パターンと周期の変化を説明できるとした。
いっかくじゅう座V838型の全てが、巨星の近接連星系の合体とは結論できないものの、少なくともさそり座V1309では巨星同士の合体によって急増光したことは確かである。
さそり座V1309には他の事例と異なる点が2つあることも指摘されている。
まず、減光が速いこと、そして減光後の光度が、増光前の親星よりも暗くなっていることだ。
減光が速いことは質量が小さいことを示しており、さそり座V1309では太陽程度の質量だったが、いっかくじゅう座V838では太陽の8倍程度の質量だった。
増光前よりも暗くなったことから、合体後に恒星として残っているのではなく、ガス雲として飛散したと考えられている。
超新星ほどではないとしても、いっかくじゅう座V838型の激変星は、爆発後の変化も注目されている。
合体後に高速自転する超巨星となるのか、周囲に飛散したガス雲から惑星が誕生するのかなど。
類似天体の捜索を続けると共に、さそり座V1309の今後について、継続的観測も必要だろう。