ドイツの腸管出血性大腸菌(EHEC)食中毒アウトブレイクは終息したが多剤耐性サルモネラ菌類にも注意が必要

5月初旬からハンブルクなど北ドイツで、食中毒の大規模発生(アウトブレイク)が続いていた。
原因菌は腸管出血性大腸菌(EHEC)で、型はO104:H4と特定されたが、遺伝子型がこれまでとは異なっていた。
EHECとしての遺伝子に加えて、溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症させる強毒性遺伝子も獲得していた。
そのため、まとめてEHEC/HUSアウトブレイクと呼ぶこともある。

5月初旬はまだイースター関連のお祭りなどがあり、同時に大多数の人に感染した可能性があった。
それに潜伏期間が3日程度と比較的長く、感染源となった食品の特定にも時間がかかり、アウトブレイクを招いてしまった。

キュウリなど様々な野菜の汚染が疑われたが、最終的には、エジプトから輸入したスプラウト用種子が汚染されていたと判明した。
連邦リスク評価研究所は、連邦消費者保護・食品安全局と共に、7月21日に正式に最終発表をした。
www.bfr.bund.de/de/presseinformation/2011/23/ehec__bfr__bvl_und_rki_konkretisieren_verzehrsempfehlung_zu_rohen_sprossen_und_keimlingen-105138.html

このエジプト産汚染種子を使って栽培されたスプラウトを食べた人が、O104食中毒の被害者となった。
野菜園芸農場の生産品からだけでなく、家庭菜園や自宅のプランターで栽培していた人も感染した。
スプラウト用種子の輸入・流通・販売を禁止し、スプラウトの栽培・販売、そして食用にすることを禁止したため、患者発生数は徐々に減少した。

そして Robert Koch 研究所(RKI)に報告された症例は、7月4日が最後となり、7月26日にアウトブレイクの終息が公式に宣言された。
公表されたデータによると、EHEC/HUSを発症した患者は4000名を超え、死者は50名に達した。
www.rki.de/DE/Content/Service/Presse/Pressemitteilungen/2011/11__2011.html
www.rki.de/cln_169/nn_467482/DE/Content/InfAZ/E/EHEC/Info-HUS,templateId=raw,property=publicationFile.pdf/Info-HUS.pdf

今回のアウトブレイクへの対応の反省の1つとして、EHECなどの病原菌の遺伝子ライブラリの充実が提案されている。
ドイツは医学先進国と思っていたが、遺伝子ライブラリの検体数が少ないため、原因菌の迅速診断も遅れたと指摘されている。
www.zeit.de/wissen/gesundheit/2011-08/lerneffekt-epedemie-ehec/komplettansicht

ただし、EHECやウイルスによる食中毒は毎年1000件ほど発生しているので、これで気を許してはならない。
現在ヨーロッパでは、多剤耐性サルモネラ菌(Salmonella enterica serotype Kentucky)が恐れられている。

Journal of Infectious Diseases に掲載された論文によると、フルオロキノロン系抗生物質 ciprofloxacin に対する耐性を獲得した Salmonella enterica serotype Kentucky が、徐々に広がっていると報告された。
jid.oxfordjournals.org/content/early/2011/07/28/infdis.jir409.abstract

多剤耐性菌の調査は2000年から2008年にかけて、フランス・イングランド・ウェールズ・デンマーク・アメリカで行われ、489例が集められた。
フランスでは2002年に3例検出されただけだったが、2008年には174例にまで、10年も経たずに数十倍に増加している。
アフリカや中近東でも検出されているそうで、全世界に広まる危険性がある。

サルモネラ菌類で汚染される可能性がある身近な食品としては、例えば鶏卵や不適切な取り扱いをされた食肉類が挙げられる。
ドイツ留学中に観たテレビ番組では、大手スーパーマーケットで販売している冷凍鶏肉から、サルモネラ菌類が検出されたことを報告していた。

また鶏卵の場合、1万個に1個の割合でサルモネラ菌類が検出されると言われており、生卵を食べないように警告する人もいる。

ただし最近は、出荷前にエチレンオキシドなどで燻蒸殺菌されているはずなので、それほど気にしなくてよいようだ。
例えば、農林水産省のサルモネラ対策指針は次の通り。
www.sat.affrc.go.jp/joseki/Houki/KADENHO/2frame_KeiranSal_Taisaku_all.htm

私は肉類の中では鶏肉が好きなのでよく食べるが、十分に加熱することの他に、鶏肉に触った後はすぐに薬用せっけんで手を洗っている。
また、鶏肉を包丁で切るときは、他の食材の準備が終わってから、最後に扱うことにしている。
そして食器洗浄乾燥機の温度設定は高温にして、80℃のお湯で殺菌することも実施している。
私の対策が完璧ではないものの、夏バテで体力が落ちている時期なので、食中毒にならないように注意したい。

それにしても、薬剤耐性菌は必ず発生するものであり、新しい抗菌剤を開発することはもう無理かもしれないと感じている。
抗生物質の乱用を戒める発言は、40年くらい前にも一般向け科学雑誌で読んだことがある。
医薬品は最後の手段ということで、まずは手洗い励行など、感染予防の衛生教育を充実することが大切だろう。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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