遺伝子組換え作物の花粉が混入した蜂蜜の流通には事前認可が必要と欧州司法裁判所が決定

ドイツ・バイエルン州に住む Karl Heinz Bablok は、退職後に趣味で養蜂をしており、採取した蜂蜜を自家用消費だけではなく、販売もしていた。
やがて
500mという近距離に、モンサント社の遺伝子組換えトウモロコシMON810の実験圃場ができてから、蜂蜜にM810の花粉が混入するようになったという。

MON810の栽培実験を許可したバイエルン州を訴えたが敗訴したため、EUの欧州司法裁判所(CVRIA)に上訴していた。
そして9月6日に、遺伝子組換え作物(ここではGMOと略す)の花粉が混入した蜂蜜の販売には事前認可が必要という、他の養蜂家や小売・流通業などにも影響が及ぶ判決が出た。

以下には、英語版のPDFファイルのリンクを引用しておく。
この判決文はドイツ語やフランス語など12か国語で出ているので、語学の勉強に使いたいなど興味がある人は、Press Releases の「No 79/2011 : 6 September 2011」を探してほしい。
curia.europa.eu/jcms/upload/docs/application/pdf/2011-09/cp110079en.pdf
curia.europa.eu/jcms/jcms/Jo2_16799


この判決では、GMO由来花粉もGMO関連の法律で扱うという判断をしたわけだが、その反面、
花粉の含有量には言及せず、しかもGMOやGMO由来の花粉が人間の健康を害するかどうかも全く判断していない。
そうは言っても、GMO
由来の花粉を含む可能性のある食品は、その花粉が既に失活していることを証明してからでないと、販売できないことになってしまった。

今回の判決では蜂蜜だけではなく、花粉を含む健康食品なども対象となっている。
退職後に趣味で養蜂をしていた一人の男性の怒りが、EU全体に影響を及ぼすことになったようだ。

この判決について、ドイツの ZEIT Online と、イギリスの Gardian の記事を引用しておく。
AFPやAP、ロイターも配信しているので、やがて日本語報道が出ることだろう。
www.zeit.de/wissen/umwelt/2011-09/honig-urteil-genmais
www.zeit.de/wissen/umwelt/2011-09/honigurteil-gentechnik-kommentar
www.guardian.co.uk/environment/2011/sep/07/europe-honey-gm

この判決が出る前からEU委員会では、花粉に関して事前認可は不要であるとの見解を表明していた。
元々、蜂蜜に混入する花粉は非常に少なく、もしGMO由来の花粉が混入したとしても、事前に検査をして認可する必要性はないそうだ。
EUではMON810の栽培を認めてはいるものの、ドイツやフランスなど各国が独自に国内での栽培を禁止しているため、蜂蜜にMON810の花粉が混入するリスクは、今後はほとんど考えなくてもよいはずだ。

しかし判決が出てしまったため、この判決が有効となれば、特に輸入品については花粉混入の証明書を作る必要があるだろう。
大豆やアブラナなどのGMOを許可している国から蜂蜜を輸入すると、検査費用などのコストがかかることになるし、「GMO花粉入り」などと成分表示をすれば、売り上げは激減することは明白だ。

日本では元々、GMO混入率の基準が甘いので、厚生労働省や農林水産省の委員会で話題となっても、結局は何もせずに放置するのかもしれない。

追記(9月8日):
微量混入した花粉の安全性について、「たぶん健康被害は出ないはずだ」というだけで、誰も明確な答えを持っていない。
「ゼロ・トレランス」という考え方を採用すると、わずかでもGMO由来花粉が混入する可能性があるならば全て検査して、認証を得てから販売すべきということになる。

蜂蜜を原材料に使用している食品業界は大打撃だが、モンサント社などを批判する活動家たちは今回の判決を歓迎している。
EU域内でGMO栽培認可を取り付けることが、これまでより困難になったとわからせることができたから。

それにしても、遺伝子組換えではなく、自然の摂理に基づく交配による品種改良では、食料増産はできないのだろうか。
GMO作付により、既存の除草剤が効かないスーパー雑草が生まれたり、害虫が耐性を獲得したり、高い種子を買わされる農家が破産したり、本当に人類のためになっているのかどうか疑問だ。

(最終チェック・修正日 2011年09月08日)

テーマ : 食に関するニュース
ジャンル : ニュース

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

FC2カウンター
カテゴリ
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR