重元素は超新星爆発だけでなく中性子星連星系の融合でも生成する

貴金属の金やプラチナの話と聞くと、宝飾品や最近の商品先物投資のことかと思う人もいることだろう。
特に金は、数年前の1g当たり約1000円の時代が嘘のように、高値更新だとか利益確定で反落など、毎日経済ニュースをにぎわせている。
ところで、重元素の金などが地球に存在していることを、金取引をしている人たちは、一度でも考えたことがあるのだろうか。

親鉄元素と呼ばれる金などの重金属類は、地球が形成される過程では高温のために液体であり、鉄などと共に中心核に集まった。
しかし、金鉱床は人間が採掘可能な地球表面の地殻にあり、存在量が多い理由はなかなか判明しなかった。

仮説の一つとして、重金属を含む大量の隕石が降り注いだため、地球表面近くに金が残ったというものだ。
科学誌 Nature 9月8日号には、グリーンランド・イスア(鉄鉱石鉱山がある場所)で採取した38億年前の岩石を分析して、大量の隕石の「爆撃」が地球表面に存在する重金属の源である、という論文が掲載されている。
www.nature.com/nature/journal/v477/n7363/abs/nature10399.html

この研究を紹介しているドイツ語記事は次の通り。
www.spiegel.de/wissenschaft/weltall/0,1518,784997,00.html

この論文では金そのものではなく、タングステンの安定同位体比 182W/184W について、新しい地質年代の火山岩との比較をしている。
38億年前の岩石の同位体比は、大量の隕石爆撃の痕跡を残したものであり、地殻の重金属は隕石由来だと結論している。

重元素は宇宙で作られたわけだが、恒星内での核融合は鉄までで止まってしまうという矛盾点がある。
ということで、超新星爆発によって鉄よりも重い元素が生成するという理論が、一般的に受け入れられている。
超新星爆発では、その残骸のスペクトル観測から、鉄よりも重い元素の生成が確認できるから、事実として認知されている。

超新星爆発をシミュレーションしている、日本の理化学研究所での研究は次の通り。
www.rikenresearch.riken.jp/jpn/hom/6601

ただ、超新星爆発だけでは説明できない、より重い元素も存在している。
そのような重元素は、中性子星連星系の融合によって生成したという仮説が、最近になって有力視されている。
iopscience.iop.org/1538-4357/525/2/L121/

銀河内の元素存在量や同位体比を再現するために、様々なコンピューターシミュレーションが実施されてきた。
そして最新シミュレーション結果の論文は次の通りで、以下に引用した紹介記事のように、高速中性子捕捉過程(r-プロセス)による再現性が一番よい結果だという。
iopscience.iop.org/2041-8205/738/2/L32

この研究に参加している、マックス・プランク研究所の研究紹介記事は次の通り。
www.mpg.de/4413949/Kosmische_Kollisionen_schmieden_Gold (ドイツ語)
www.mpg.de/4414970/Cosmic_crashes_forging_gold (英語)

ただし、この仮説に用いられている中性子星連星系の融合は、現時点でまだ、直接観測による確認がされていない。
ガンマ線バーストといった、超巨大エネルギーが放出される天文現象になるのかもしれないが、今のところ不明だ。

自然科学の常として、まだ仮説の段階ということはよくあることだが、実際に観測されるときが来ることを待つことにしよう。


ところで、金やプラチナなどの貴金属取引で儲けようとしている人たちは、このような宇宙の恵みに感謝する暇もないことだろう。

(最終チェック・修正日 2011年09月16日)

テーマ : 宇宙・科学・技術
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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