「微小地震」の言い換えに音楽用語の「Tremolo」を使っている例

ドイツ語だけではなく、英語も含めたヨーロッパ言語を勉強していると、同じ表現を繰り返さないための言い換えによく出会う。

類語以外の言い換え方法として例えば、ニュースの対象について代名詞を使わずに、「そのアメリカ国籍の30歳男性」や、「世界ランキング10位の選手」というように、次々と詳細な情報を追加していく方法もある。

日本語の文章ではあまり馴染みがないので、そのまま翻訳すると少々違和感はあるが、原文を尊重して、最初はそのまま日本語にしておこう。
それであまりにも変な表現と感じた時は、少々工夫して、日本語らしくなるようにしたい。

今回紹介する言い換えの事例は、何度も起きる「微小地震」を、音楽用語の「Tremolo」としているニュース記事だ。
カナリア諸島 El Hierro(イエロ島)の北西部 El Golfo 付近で、7月16日から火山性微動が続いているという内容。
www.spiegel.de/wissenschaft/natur/0,1518,784059,00.html

【Täglich lassen schwache Erdbeben die Region El Golfo im Nordwesten von El Hierro nahezu unmerklich zittern. Am Mittag des 16. Juli hatte das Tremolo begonnen, seither kommt die Insel nicht zur Ruhe, es gab mehr als 7500 leichte Beben; die meisten waren schwächer als Stärke drei.】

「イエロ島北西部のエル・ゴルフォ地域は、毎日微小地震によって、ほとんど体に感じないほど小刻みに揺れている。7月16日の昼にこの微動は始まり、それ以来この島では落ち着くこともなく、7500回を超える弱い地震が起きたが、ほとんどの地震はマグニチュード3よりも小さかった。」

音楽用語 Tremolo の意味の一つは、「主に弦楽器で一つの高さの音を小刻みに演奏したり、異なる高さの音を交互に演奏したりして、震えるような音を出すこと」。

イタリア語の動詞 tremare からの派生名詞で、ドイツ語でもそのまま使っている。
その動詞 tremare は「震える」という意味で、ドイツ語では zittern(小刻みに震える)や beben(揺れる)に相当する。
(注:tremere と記載している辞書もあるが、tremare が正しい)

引用した文の最初に、「.. schwache Erdbeben .. nahezu ummerklich zittern」とあり、
この体に感じないほどの微小地震のことを、次の文では「Tremolo」という比喩的表現で言い換えている。
また、さらにその後では、「leichte Beben」として、「Erdbeben」を繰り返さないように工夫している。

Erdbeben を Beben で言い換える程度であれば、私でも思いつきそうだが、音楽用語の Tremolo を使うという発想はなかった。
自然科学とは異分野の用語である Tremolo を選択したという、この記者の
知識と発想力、文章力を称えたい。

ちなみに、
引用したドイツ語文を Google 翻訳で日本語にしてみたところ、英語を仲介言語にしているためか、めちゃくちゃなので、当然ながら手直しが必要であった。

【エルイエロほとんど感知できない震えのエル湾の北西部地域における日常の小さな地震をしましょう​​。 16日の正午に島は休むために来ていないので、7月は、トレモロを始めていた、そこに7,500人以上の光の地震があったが、ほとんどは3つの強度未満であった。】

慣用句もめちゃくちゃだし、「光の地震」というのは、仲介言語の英語の「light quake」を誤訳したのだろう。
それに、「トレモロを始めていた」は、英語でも「.. had begun the tremolo, .. 」なので、やはり翻訳作業は人間が関与すべきだと再認識した。
単語の選択を手直しすると、次は少しはましな日本語になるが、構文解釈までは手に負えないようなので、大量の対訳データベースを利用する環境が必要だろう。

今回は新語ではないものの、専門分野以外の知識も翻訳では必要だと実感した。

テーマ : 語学の勉強
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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