HUGO BOSSとナチスとの関係を研究した書籍がやっと出版された

古くからあるドイツの企業の大半は、どうしてもナチスとの関わりについてという、暗くそして消すことのできない歴史を持っている。
戦争捕虜以外にも民間人を強制労働させたり、ユダヤ人の財産没収に協力するなど。
ナチスに協力した事実についてドイツ企業は、第三者による調査に基づく公式声明を出し、国際企業としての説明責任を果たそうとしている。

日本では、「中国人などの強制労働はなかった」と言い張る人たちがまだいるが、ドイツに学ぼうという意思はないのだろう。
ただしドイツでも、過去の負の歴史について、なるべくイメージダウンにならないように、余計な工作をする企業もあるようだ。

ドイツのファッションブランドの一つ、ヒューゴ・ボス(HUGO BOSS)は、会社沿革でナチスとの関係について説明している。
1924年に Hugo Ferdinand Boss が Metzingen に HUGO BOSS AG を設立した。
その後 Boss はナチス党員となり、ナチス親衛隊やヒトラーユーゲントも含めて、ドイツ軍用の軍服のデザインと生産を行った。
そして縫製工場などでは、フランス人やポーランド人など140名の強制労働者(主に女性)を使用し、さらに40名のフランス人捕虜も強制労働させた。

依頼を受けて調査した Roman Köster は、「Hugo Boss, 1924-1945. The History of a Clothing Factory During the Weimar Republic and Third Reich」 という書籍の出版を許可されている。
www.chbeck.de/productview.aspx
group.hugoboss.com/en/history_study.htm
group.hugoboss.com/de/history_study.htm

しかし、今回の調査依頼は2回目のもので、1999年に依頼した1回目の調査は、なぜか非公開扱いとなった。

この背景について Süddeutsche Zeitung が取り上げている。
ちなみに、記事中に商品の写真があるが、意図的に「茶色」を選んでいる。
それは茶色を意味するドイツ語 braun には、「ナチの」という軽蔑を込めた形容詞としての用法があるからだ。
www.sueddeutsche.de/wirtschaft/nazi-vergangenheit-von-hugo-boss-braune-hemden-1.1146339

今回の調査をした Roman Köster は、HUGO BOSSから資金援助を受けたが、調査内容については影響を受けていないと言っている。
報告そして著書で、強制労働者や捕虜の強制労働について取り上げているが、この内容については1回目の調査報告でも取り上げられている。

1回目の調査は、Elisabeth Timm が担当したが、副題にあるように強制労働に関するドキュメンタリーということで、強制労働が若干強調された報告となっていた。
Hugo Ferdinand Boss (1885-1948) und die Firma Hugo Boss. Eine Dokumentation.

調査を依頼したのに会社側は、何も理由を説明することなく、この報告書を非公開扱いとした。
推測では、強制労働を少し強調しすぎた Timm の報告は、期待した内容ではなかったようだ。

この不当な扱いによって研究成果の公開を阻まれた Timm は、代わりに自分のHPで、PDFファイルとして公開している。
PDFのURLに「metzingen-zwangsarbeit(メッツィンゲン-強制労働)」を入れているのは、抗議の意味かもしれない。
euroethnologie.univie.ac.at/index.php
www.metzingen-zwangsarbeit.de/hugo_boss.pdf

ざっと読んでみたところ、会社側にとって何か都合の悪い事実が、特に強調されているとは思えなかった。
今回出版された2回目の調査を読んでいないので比較できないが、報道によれば内容にそれほど違いはないそうだから、やはり謎が残る。
目次を比較すると Timm の報告が強制労働を中心にしたのに対して、Köster はバランス良く各項目を記載したようだ。

創業者の Boss は戦後、強制労働に対する罰金をきちんと支払っているし、「ヒトラーの専属縫製係」という噂は既に否定されているので、既知の事実をまとめた Timm の報告書が葬られた理由は、やはり私には理解できない。
その報告書を受け入れる心の準備が、10年以上前の1999年の時点では、経営陣にはまだなかったのかもしれない。

これからもドイツでは、企業だけではなく国民全員が、ナチス時代の負の遺産を認識・理解し、再発防止の強い意志を持ち続けることが求められるだろう。
一方日本では、過去の残虐行為や強制労働はなかったことにしようという歴史修正主義者が、たびたびメディアに登場するから、だまされないように気をつけたいものだ。

テーマ : 海外ニュース
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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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