ドイツ:薬草成分入り咳止め薬 Umckaloabo で肝臓障害副作用の疑い

【注:ドイツで販売されている風邪薬の話題だが、日本でも類似品が入手できるため注意喚起!】

現代医療では、化学合成された医薬品が多く利用されているが、その一方で、従来の薬草や漢方薬を使った治療も行われている。
天然物化学や医薬の世界でも、「Lessons from nature」という言葉が使われることがある。
抗がん剤や抗生物質の開発のため、特異な生理活性を持つ化合物を、微生物や熱帯雨林の動植物といった自然界に求めるという意味の他に、様々な薬草の知識を持つ原住民から学ぶという意味も含んでいる。
(原住民から学んだ薬草を使って医薬品を開発した企業が、利益を還元していないという批判は、ここでは省略する。)

例えば、ドイツで咳止め薬として市販されている Umckaloabo®(ウンカロアボ)は、南アフリカ原産の植物ペラルゴニウム(Pelargonium sidoides)の根から抽出した成分を含んでいる。
急性気管支炎に効果があると報告され、通常の風邪でも利用されており、子ども用シロップ(1歳以上)も販売されている。
販売しているドイツの企業 Spitzner Arzneimittel のHPと、Umckaloabo の商品説明は次の通り。
www.spitzner.de/index.php
www.umckaloabo.de/

このような南アフリカの伝統的な薬草を含む医薬品は、自然を愛するドイツ人にとっては、やはり受け入れやすい商品のようだ。
留学中に観たテレビCMでも、様々なハーブ入りの医薬品だけでなく、保湿クリームやシャンプーなどの商品がたくさんあった。
また、カモミールなどのハーブや、色とりどりの花弁を含んだお茶を飲むという健康法も人気がある。

ただ、昔から使われている薬草でも、有効成分以外に様々な化合物を含んでいるため、副作用リスクが全くないとは言えない。
紹介した Umckaloabo も、医師の処方箋なしで買える一般市販薬だが、服用の注意点や副作用リスクについては、添付文書を読んだり、薬剤師から直接説明を受けるように注意喚起されている。
ペラルゴニウム自体、その毒性についての動物実験が全く行われていないことも、留意しなければならないだろう。
www.drugs.com/npp/pelargonium.html

【No animal toxicology studies have been reported.】

しかし実際には、Umckaloabo を服用した後に急性肝障害になったと思われる症例が2004年以降で20件報告され、副作用の疑いが持たれている(現時点では「副作用」ではなく、「望ましくない医薬品作用」という表現)。
そのためドイツ連邦医薬品研究所(BfArM)は10月4日付けで、副作用情報収集などの命令を出している。
www.bfarm.de/DE/Pharmakovigilanz/stufenplanverf/Liste/stp-pelargonium.html
www.bfarm.de/SharedDocs/1_Downloads/DE/Pharmakovigilanz/stufenplverf/pelargonium.pdf

この副作用疑惑について、ドイツ紙および薬剤師向け情報紙から、代表的な記事を引用しておこう。
www.sueddeutsche.de/wissen/pflanzliches-arzneimittel-umckaloabo-gefahr-fuer-die-leber-1.1157506
www.deutsche-apotheker-zeitung.de/pharmazie/news/2011/10/06/umckaloabo-im-stufenplanverfahren.html
www.pharmazeutische-zeitung.de/index.php

服用例が多いと思われる一般市販薬で、2004年以降の急性肝障害報告が20件だけというのは少ないという印象かもしれない。
ただし今年の過去6か月に限ると、報告件数は6件であり、急増しているとも考えられる。

副作用疑惑は今年7月29日に、40代男性の肝炎症例として既に報じられていた。
www.pharmazeutische-zeitung.de/

Umckaloabo を服用してから約2週間後、上部腹部の痛みと黄疸がみられ、急性肝炎と診断された。
この男性は既往症はなく、常用している薬品もなかったため、Umckaloabo が原因ではないかと疑われている。
他にも、血中酵素濃度などの肝臓値の上昇や、黄疸が見られたという報告がある。


肝障害以外の副作用疑惑報告を含めると、今年7月までに145件もあるため、服用者から相談を受けた薬剤師は、速やかに報告することが求められている。

現時点では第一段階として、服用後の副作用情報収集と、肝障害を伴う副作用リスクに関する明確な告知が求められている。
Spitzner 社の広報担当によると、「製造販売する医薬品に責任を持つ会社として」既に対応しているとのことだ。

天然の薬草と言うと、自然のものだから体に良いと誤解しがちだ。
実際には、有効成分以外に様々な生理活性化合物を含んでいるため、中には微量でも毒性を示す化合物もあるだろう。
「副作用がない薬はない」とよく言われるが、それは伝統的な薬草を使っている医薬品でも同じことだ。

今回紹介した Umckaloabo そのものではないが、日本にも同様の成分の風邪薬を取り扱っている通販業者がある。
ウムカ(Umcka)という商品名や、原材料名にゼラニウム、ペラルゴニウム、テンジクアオイなどと書いてあるものには注意してほしい。

テーマ : 薬・医者・病院等
ジャンル : 心と身体

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

FC2カウンター
カテゴリ
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR