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食品中残留許容濃度未満の抗生物質でも耐性菌が生まれる

人類が初めて単離した抗生物質ペニシリンは、元々自然界に存在している天然物である。
自然界での生存競争のため、抗生物質耐性遺伝子を獲得した細菌が、既に約3万年前には存在していたことが明らかとなっている。
www.nature.com/nature/journal/v477/n7365/full/nature10388.html

その耐性遺伝子のためか、天然物を元にして構造変換した新規抗生物質を開発しても、すぐに耐性菌が発生する。
主な耐性菌発生源として、多種類の抗生物質を使用する病院の他に、養鶏・畜産業が挙げられる。
鶏や家畜の発育促進のため、抗生物質を飼料に混合して大量に投与している。
つまり現在の養鶏・畜産業とは、既存の農業の範疇ではなく、生産効率を最大化した食肉生産工業とも言える。

ドイツ連邦リスク評価研究所の2010年の報告では、屠畜場に運ばれる前の時点で、代表的な抗生物質の残留濃度は、カットオフ値に対して、ブタで平均5.9倍、ウシで平均2.3倍残留している。
そのため、養鶏・畜産業での抗生物質使用の見直しが、さらに求められることになりそうだ。
www.bfr.bund.de/cm/350/deutsche_antibiotika_resistenzsituation_in_der_lebensmittelkette_darlink.pdf

これまでは、抗生物質の大量投与が耐性菌の発生原因だと指摘され、適切な使用方法の指導が行われていた。
以前は、インフルエンザなどのウイルス性の風邪でも、予防的に抗生物質を処方することが多かったが、今では抗生物質の適正使用について患者への啓蒙も行われている。

しかし、最近発表された研究では、耐性を持たない細菌(野生型)に対する最小発育阻止濃度(MIC,minimal inhibitory concentration)未満の濃度でも、耐性菌が発生することが示された。

PLoS Pathogens の論文(OPEN Access のため無料ダウンロード可能)と、この論文を紹介しているドイツ語記事は次の通り。
www.plospathogens.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.ppat.1002158
http://www.spiegel.de/wissenschaft/mensch/0,1518,791818,00.html

野生型MICよりも低濃度ということは、自然界での抗生物質濃度に相当すると考えられ、生存競争のために耐性遺伝子が発現している可能性を示している。
またその濃度は、ドイツでの食品中残留許容濃度未満であることが、ドイツメディアでは指摘されている。

新着文献や学会発表などをチェックしていると、天然物から新規抗菌活性物質を単離したり、新規抗生物質の開発に成功したという報告を多数見る。
しかし、耐性菌発生とのいたちごっこは延々と続くことは確実で、さらにプラスミド交換で耐性菌の種類が爆発的に増えると、治療法はなくなってしまうかもしれない。
やはり抗生物質は最後の手段に残し、日常の衛生管理・健康管理が一番大切なのかもしれない。

テーマ : 薬・医者・病院等
ジャンル : 心と身体

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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