和訳記事の「口径6インチの天体望遠鏡」という表現を日本人はすぐに理解できるだろうか

地球に接近する小惑星や彗星(NEO)の捜索・観測は常時行われており、NASAの専用サイトでリストを見ると、ほぼ毎日何かが近くを通過している。
neo.jpl.nasa.gov/ca/

たいていは月よりも遠くを通過しているが、10月28日には 2011 UX225 が、月までの距離の0.4 倍という、天文学的にはかなり近くを通過した。
ただし地球と衝突するリスクがほとんどないためか注目されず、代わりに確実に落下してくる大型人工衛星2機の方が話題となっていた。

今月のNEOの話題としては、直径400mの 2005 YU55 が、11月8日(世界時)に月までの距離の 0.85 倍まで最接近することが取り上げられている(観測は6日から10日まで行われる予定)。
www.nasa.gov/mission_pages/asteroids/overview/yu55.html

これも地球と衝突することはないが、この小惑星が接近する機会を利用して、地上からのレーダー観測や、宇宙望遠鏡での赤外線観測などが計画されている。
最近は小惑星探査機の観測結果の報告も話題になっているが、今回は小惑星が地球に接近してくれるので、新たに探査機を送る必要もない。

ところで、今回取り上げたい話題とはNEOのことではなく、和訳ニュース記事での長さの単位表現についてである。
2005 YU55 に関するAFP記事について、英語版と日本語版から、対応している個所を抜粋しておこう。
www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5iATLgINlcjlcrkmKzRyznTLat3hQ (英語)
www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2838864/8027398 (日本語)

【英語:… The circular asteroid, named 2005 YU55, is about 1,300 feet (400 meters) wide and will come closer than the Moon, …

"It will not be visible to the naked eye. You will need a telescope that has a mirror at least six
inches
in size to see it. …

日本語:… 直径約400メートルの大型小惑星が米東部時間8日午後6時28分(日本時間9日午前8時28分)に地球に最接近する。

… 観測には最低でも口径6インチの天体望遠鏡が必要だという。…】

小惑星の直径については、原文のフィート表示を削除して、日本人に理解しやすい400メートルだけを残している。
しかし望遠鏡の口径については、原文のままの「6インチ」だけで、「約15センチ」ということを表記していない。
原文になくても日本人向け記事なのだから、センチメートル表示に書きかえるか、せめて併記すべきだと思う

ちなみにNASAの記事では、カッコ付きで15センチメートルと表示している。
www.nasa.gov/mission_pages/asteroids/news/yu55-20111025.html

【Amateur astronomers who want to get a glimpse at YU55 will need a telescope with
an aperture of 6 inches (15 centimeters) or larger.】

日本でもディスプレイやハードディスクデバイスの大きさなど、一部の分野ではインチ表示は使っている。
最近では、テレビやスマートフォンなどの液晶ディスプレイの大きさ表示で馴染みがあるかもしれない。

しかし、どれだけの日本人が、1インチ=2.54センチメートルという定義のことを知っているだろうか。
もし知らなくても、「直径6インチとは、携帯電話の液晶ディスプレイ2個分に近いだろう」と、推測できる人はいるかもしれない。

それでも、「口径15センチ以上の望遠鏡が必要」と明確に書いた方が、読者に対して親切なことは確かだ。
映画やドキュメンタリー番組の字幕や吹き替えでは、フィートやマイルではなく、メートルやキロメートルに変えている。

原文に忠実に和訳することが原則なのかもしれないが、一般向けのニュース記事であれば、日本で使っている単位に換算してほしいものだ。

日本語版の運営会社には5日昼過ぎに連絡したが、6日9時00分の時点で、修正も回答もない。

追記(11月7日):
7日14時50分にアクセスしたところ、望遠鏡の口径についての表記が修正されていた。

【観測には最低でも口径6インチ(約15センチ)の天体望遠鏡が必要だという。】

(最終チェック・修正日 2011年11月07日)

テーマ : 英語
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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