アセチレンガスボンベは固定しなくても大丈夫なのか?

今月になってから、すぐ近くにある店舗が改装工事をしている。
外壁工事用に足場を組んでいたので、壁塗りなどの修繕と、内装工事くらいかと思っていた。
ところが実際には大規模改装のようで、買い物から戻ったときにちょうど、店舗前の自走式二段立体駐車場をアセチレンバーナーで解体していた。

一時閉店の告知のみで、こんな大規模な工事をするとの掲示もなかったし、町内会の回覧でも告知はなかった。
足場を組むときに道路を一時的に占有するが、作業の大部分は店舗敷地内だけで行うから、近所の誰も文句は言わないと思ったのかもしれない。

ただし私のように、勤務先で危険物管理担当をしている者が作業現場を見ると、安全管理意識の低さを、どうしても指摘したくなる。
その解体現場では、酸素ボンベは地面に寝かせていたが、アセチレンボンベは地面にそのまま立たせて、どこにも固定せずに使用していた

アセチレンボンベの形状は、他のボンベと比べてやや寸胴なので、平らな場所であれば、確かに立たせることは可能だ。
またボンベには、アセチレンガスだけを充填しているのではなく、多孔質の物質に吸着させて安全性を高めている。
そのためか、溶断作業を監督していた男性は、「アセチレンボンベは倒れても中身は漏れない」と、ありきたりの言い訳をした。

しかし私は、「地震が起きたらどうなるか、倒れてレギュレーターが壊れたり、すぐ横に置いてある酸素ボンベに当たったらどうなるか、考えたこともないのか。使用時には固定するのが当然だ。」と指摘した。
店舗の現場責任者は、私の言い分に正当性があると判断したようで、ボンベを駐輪場の支柱に固定することとなった。

アセチレンガスの参考資料として、川口液化ケミカル株式会社のブログを紹介しておこう。
www.klchem.co.jp/blog/c2h2/

指摘してから2時間ほどして、震度2程度の地震があったが、揺れがわずかだったため、何も起きなくてよかった。
それでも、東日本大震災の余震活動は続いており、さらに房総半島沖の「スロー地震」が予想外の活動を始めている。
工事関係者は、このような知識を持っていないのかもしれないが、安全管理をする主任者はリスク管理を徹底すべきだ。
www.hinet.bosai.go.jp/
www.bosai.go.jp/press/2011/pdf/20111031_01.pdf (房総半島沖「スロー地震」再来に関するプレスリリース)

ボンベの暫定的固定は実現したものの、溶断時の火花が飛び散っているので、管轄の消防署に電話で相談した。
すると署員を現場に派遣して、火災防止の指導をしてくれることになった。
しばらくして消防署員から電話があり、火花が落ちてくる下側の防火措置について、消防法の観点から指導したと告げられた。

自宅の窓からのぞいてみると、作業現場とほぼ同じ高さだったため、溶断作業の様子を把握することができた。
すると、路上にいた時には気付かなかったが、溶断による金属ヒューム・粉じんが飛び散っていることが明白だった。
労働安全衛生法などの規定に従って、作業員は防じんマスクとゴーグルをしていた

作業環境などの法令について例えば、日本溶接協会安全衛生・環境委員会が作成した、簡易解説資料は次の通り。
www.jwes.or.jp/jp/safety/law.pdf

また、厚生労働省の資料から、金属ヒュームを吸引したことによる事故例を紹介しよう。
anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx

これらの資料は、溶断作業現場での作業員の安全衛生確保を目的に作成されたものであり、近隣の住民のことには触れていない。
金属ヒュームが風に乗って拡散しているはずだが、作業現場から十分離れていれば薄まって、危険性は減少するという考え方なのだろうか。
溶接と比較すると、溶断の場合には金属ヒューム・粉じんの発生は少ないものの、確実な安全性の保証はない。

金属ヒュームの組成は不明で、どの程度の危険性なのかわからないから、余計に不安になる。
屋外で溶断する場合、何か不燃材料で作ったテントのようなもので囲って、その中で作業すべきではないだろうか。
今回のような駐車場の場合、施設全体を覆うことは困難なので、作業場所だけ局所的に囲んで、飛散防止をすべきではないか。

何も知らずに近くを通った人が金属ヒュームを浴びるかもしれないし、付近の住宅で幼児が吸い込み、肺疾患につながるかもしれない。
それに加えて、撤去作業に伴う騒音も非常に気になる。

土日は市役所は休みのため、警察署に電話をして、周辺住民から粉じんと騒音について苦情が来ていることを伝えてもらうことにした。
市役所には問い合わせフォームを使って、環境・公害問題として苦情申し立てをした。
市役所の担当課職員は、月曜日にならないと対応できないので、我慢できずに私が再び文句を言いに行くかもしれない。
ついでに町内会長にも伝えておいたが、役員で話し合ってから見に行くのかもしれない。

作業をしている彼らは、与えられた仕事を淡々とこなしているだけかもしれないが、周囲に配慮することを考えてほしい。
周辺住民に不信感を与えてしまうとその店舗は、いつまでも白い目で見られることになる。
それはどんな会社でも工場でも、また個人でも同じことである。

追記(12月10日):
今朝は朝の8時半から、溶断作業に加えて、ブロック塀をドリルで壊し始めてうるさかった。
我慢できないので苦情を伝えたところ、本日の作業は、昨日解体した部分の撤去が終った時点で中止することで合意した。

日本だからなのか、改装新規開店に合わせて、日曜日にも作業するようなギリギリの工期にしているわけだ。
店舗の要望に応えるために、無理な日程で作業しているように思えるが、私が一番問題にしているのはその点ではなく、事前に工事について近所に周知しなかったことだ。
また、防音シートで覆うべきだと要請したが、予算の問題なのか無理なようで、「騒音がするのは3日くらいで、すぐに片付ければいいのではないか」と釈明していた。
それでも日曜日の早朝から一日中騒音を浴びせられるのは嫌だ。
周囲に配慮して、町内会への事前説明などで理解を得ることは、トラブルを避けるためのコミュニケーション術のはずだ。

(最終チェック・修正日 2011年12月10日)

テーマ : 今日の出来事
ジャンル : 日記

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

FC2カウンター
カテゴリ
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR