1月に落下するロシア探査機に搭載された放射性コバルト57の量は10マイクログラム

ロシアが11月に、火星の衛星フォボスを調査する探査機「フォボス・グルント(Phobos Grund、Фобос-Грунт)を打ち上げたが、残念ながら予定の軌道に投入できなかった。
地球周回中になんとかしてロケット再点火を試みようとしたが、地上基地との交信が確立できず、見失ってしまった。
そのためロシア宇宙庁ロスコスモスは失敗を認め、12月16日に、来年1月上旬に地球に落下するという計算結果を発表した。

ロスコスモスでは英語サイトも作っているが、以下に示すフォボス・グルントの失敗も含めて、ニュースの大半はロシア語である(Google翻訳で、日本語ではなく英語にすると、その概要を把握しやすい)。
www.federalspace.ru/main.php (12月16日発表・ロシア語)

ロシア語のテキストを購入したが、今はノルウェー語などのゲルマン諸語の勉強が先なので、簡単な挨拶くらいしかわからない。
ということで、日本語・英語・ドイツ語のニュース記事から、フォボス・グルントの地球落下についての情報を集めている。

ドイツ語記事として SPIEGEL Online から、日本語記事として読売新聞から引用しよう。
www.spiegel.de/wissenschaft/weltall/0,1518,804209,00.html
www.yomiuri.co.jp/science/news/20111217-OYT1T00311.htm

SPIEGEL Online の記事冒頭部分は、かなり皮肉を込めた表現になっている。
要約すると、「クレーターだらけの火星の衛星を探査するはずだったフォボス・グルントが、地球に落下してクレーターを作る」。

燃え尽きずに地上に落下する量や、放射性物質コバルト57を搭載している記述は共通なので、読売新聞から引用しよう。

【…機体の一部が大気圏で燃え尽きず20~30個の破片となって地球に落ちる見込みで、破片の重量の合計は最大200キロ・グラムになるという。微量の放射性物質「コバルト57」を積んでいるが、落下による「放射能汚染の恐れはない」としている。

現段階での落下予想地点は日本を含む「北緯51度4分から南緯51度4分の間」としか分からず、詳細判明は落下の数日前になるという。…】

放射性物質コバルト57は微量で汚染の恐れはないと説明されても、具体的な量や使用目的が不明だと、余計に不安になる人もいるだろう。
過去にソ連の人工衛星(スパイ衛星)が落下したときには、電源として太陽電池ではなく、放射性ウランを使った原子力熱電対電池搭載型だと発覚した。

また、土星探査機カッシーニには放射性プルトニウムを利用した原子力電池が搭載されていたため、打ち上げ時だけではなく、地球スイングバイのときにも、落下を不安視する諸団体が抗議声明を発していた。

そういった過去の経緯もあり、「微量のコバルト57」と説明されても、具体的な情報がないと不安になるはずだ。
先に引用したロシア語のニュースリリースでは、「10マイクログラム」と記載されている。
【…Радиоизотопный источник (Кобальт-57), … - 10 микрограмм, …】

秘密主義のソ連ではないのだから、認めたくない失敗であっても、英語で全情報を公開してほしいものだ。
または、ロシア語を理解できる日本の記者などが、要約記事を書いてほしいものだ。


核種と量から、太陽風や宇宙線を観測する機器の、校正用線源と考えられる。
コバルト57の半減期は 271.84日で、1年よりも短いということも含めて、環境に影響はないとロスコスモスは言いたいようだ。

ちなみに、環境測定に用いるガンマ線測定器の校正については、以下のIAEA資料で146ページ以降の説明を参考にしてほしい(日本語訳)。

www.nirs.go.jp/hibaku/kenkyu/te_1092_jp.pdf

今の日本では、フォボス・グルントに積まれた10マイクログラムのコバルト57よりも、日本全土にまき散らされたセシウム137、そして海の汚染の方が心配だ。

テーマ : 放射能ニュース
ジャンル : ニュース

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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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