原子力安全委員会も原子力村の金の力に支配されていた

日本では第二次大戦前から核物理学の基礎研究が行われていて、戦時中は原爆開発が試みられたこともある。
敗戦後に一時中断していた研究は、原子力平和利用の名の下で再開した。
アメリカからの濃縮ウラン受入のために日本原子力研究所が設立され、研究用原子炉の開発を始め、さらに実用化も検討していた。

研究の進展が遅いことに業を煮やしたのか、それとも日米同盟推進の主役になりたかったのか、中曽根康弘(当時・改進党議員)が政治主導の原子力開発を推進するため、「学者の頬を札束でひっぱたいて目を覚まさせる」という主旨の発言をした(ただし本人は否定しているが)。
そして原子力関係予算を成立させ、日本の原子力開発は政治主導という不穏な状況に変化した。

純粋な科学研究の発展ではなく、政治主導の国策体制となった時点で、金の力で全てが決まる時代が始まった。
そして電力会社や原子力関係機関、そして関係省庁が形成する強固な「原子力村」が、どのように国民をだましてきたのか、これまで何度も指摘され、そして原発および再処理施設などの危険性が何度も警告されてきた。
しかし、国民の多くは国家プロパガンダに騙され、「あたかも原発が存在していないかのような日常生活」をおくってきた。

ところが2011年3月11日以降は状況が一変し、「原子力村」に対する抗議活動が盛んになってきた。
そして反原発関連の書籍も急に増え、これまで沈黙させられていた声、無視されてきた声が、国民に届くようになってきた。
ここでは最近の資料として、岩波書店の雑誌「科学」(2011年12月号)の特集「核と原発」、そして角川SSC新書の「まやかしの安全の国」(田辺文也著)を挙げておきたい。

そして2012年元旦の朝日新聞の記事では、原子力村の金の力が、原子力安全委員会にも及んでいたことが指摘されている。
www.asahi.com/national/update/1231/OSK201112310119.html
【東京電力福島第一原子力発電所の事故時、中立的な立場で国や電力事業者を指導する権限を持つ内閣府原子力安全委員会の安全委員と非常勤の審査委員だった89人のうち、班目(まだらめ)春樹委員長を含む3割近くの24人が2010年度までの5年間に、原子力関連の企業・業界団体から計約8500万円の寄付を受けていた。朝日新聞の調べで分かった。

うち11人は原発メーカーや、審査対象となる電力会社・核燃料製造会社からも受け取っていた。

原子力業界では企業と研究者の間で共同・受託研究も多く、資金面で様々なつながりがあるとされる。中でも寄付は使途の報告義務がなく、研究者が扱いやすい金銭支援だ。安全委の委員へのその詳細が明らかになるのは初めて。委員らは影響を否定している。】


寄付金で研究をした場合、論文発表ならば謝辞に書くので資金提供があったことが発覚するが、学会出張旅費などに使った場合は表に出ない。
「委員らは影響を否定」とあるが、「瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず」という故事は、原子力村では通用しないようだ。
金の力に負けた者たちだから、電力会社や関係機関の出した資料を、ただ追認するしかできないわけだ。

先ほど紹介した新書、「まやかしの安全の国 - 原子力村からの告発」から、51-55ページの内容を抜粋して紹介したい。
119.245.217.79/book/bk_detail.php

金にものを言わせる電力会社や保安院
…保安院が国民の税金を使って、悪さをしている。自分たちではデータの分析もやらず、すべて外部に委託して、お金だけを回しているのです。
…研究費予算は、原子力安全・保安院などの委託研究に頼るようになりました。つまり、保安院から委託された研究に対してはお金は使われるが、定常的な「安全研究」のための予算はなくなっていったのです。
…大学の研究費も自分たちで取ってこなければならないという厳しい環境になっています。…
…企業や官庁から寄付金や研究費をもらってきたりして、なんとかやっている。そういう現状だから、学者たちが、電力会社や保安院の言うなりになってしまうのです。
…学者だって生活がある。家族がある。…将来まで安泰に暮らすためには安全なルートを歩かなければいけないわけです。
 では、一番安全な場所はどこかといえば、「原子力村」です。だから研究者もここに生息する。しかしそうなると、反対意見は言えなくなる。結局、学者の世界も、金がものを言う世界なのです。


諸悪の根源は、原子力安全・保安院
 お金のあるところに人は群がる。そういうシステムを作って大学や研究所を堕落させたのも、保安院であり、日本の官僚機構です。…
…原子力村は、対立する意見は受け入れない。論議をしない。
…JCO臨界事故調査委員会が…事故調査報告書をまとめて本として出版しました。私はその中で事故原因分析を担当し、…旧動燃(当時:核燃料サイクル開発機構)の役割と責任、規制機能の不全などを明らかにしましたが、それに対する抵抗はすごいものがありました。
 2004年の原子力学会の春、秋の大会のときでした。旧動燃の役割と責任を明らかにした委員会報告を発表する段になると、会場で、旧動燃の理事や訴訟対策室幹部などが前列に陣取って、「裁判に訴える」などと発言して圧力を加えようとしたのです。
 さらには、報告書を出版する段階に至っても、最後の印刷所でのゲラ校正のときまで、裁判に訴えると脅かされていた…】


お金のあるところに人は群がる」という表現、そして都合の悪い発言を抑え込もうとする反応は、原子力村だけではなく、ほとんどの学問分野に共通している。
タバコ会社が、脳腫瘍の原因が
携帯電話だという研究に資金援助すれば、逆に携帯電話会社はそれを否定する研究に資金援助する。

研究室に入る前は、純粋な好奇心で研究しようと考えていたはずの若手が、お金の力や学界権力に負けて取り込まれたり、逆に
失望して去ったりする。

これが日本の現実であり、こんな国には原発を運転管理する資格はない。
今後は核廃棄物処理・汚染除去の研究に資金が回るかもしれないが、原子力村の中だけで循環するシステムがある限り、本当に安全な生活は実現しないことだろう。

テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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