バルト海東部でタラ資源量が回復してきたが他の食用魚を食べてしまう心配も

ヨーロッパの漁業は大西洋、地中海、北海、バルト海で主に行われているが、EU以外のヨーロッパ諸国だけではなく、北アフリカ諸国やトルコなどとも漁獲割り当て交渉をしなければならない。

大西洋と地中海でのクロマグロは、資源管理をするはずだったのに、実効性がないという批判もあり、禁漁の提案も出るようになった。
また、タラも乱獲による資源量減少が危惧されていて、他のニシンやサバも含めて、EUとノルウェーとの交渉がなかなか決まらなかったり、さらにアイスランドなども絡んでくると、漁獲割り当て交渉は長丁場となったり、決裂したりする。

参考として、EU・ノルウェー・アイスランドの漁業関係部署のHPを紹介しておく。
ec.europa.eu/fisheries/index_en.htm (EU)
www.regjeringen.no/en/dep/fkd.html (英語版。情報量はノルウェー語ページの方が多い。)
www.regjeringen.no/en/dep/fkd.html (英語版。)

EUではトロール漁法規制などの乱獲防止策を協議しているが、加盟国全会一致が原則なので、現時点で最大の問題であるユーロ危機への対応と同様に、混乱した状態のまま延々と交渉することになるだろう。

EU漁業委員会で2012年の漁獲割当が決まったのは、2011年12月になってからだ。
www.fis.com/fis/worldnews/worldnews.asp

決まるのも遅いし、割当量だけでなく操業日も減らされていて、例えば次の記事のようにイギリスの漁業関係者は憤っている。
www.guardian.co.uk/environment/2011/dec/17/fishing-industry-lands-controversial-deal

そんななかで、乱獲によって減少したタラ資源量がバルト海東部で回復していることが判明した。
そしてスウェーデンのタラ漁業は、その責任ある管理手法が評価されることになり、2011年6月にMSC認定を受けるまでになった。
www.msc.org/newsroom-ja/news/first-swedish-cod-fishery-receives-msc-certification

スウェーデン東部バルト海のタラ漁業が、責任ある管理と資源の回復によって、MSCエコラベルを取得しました。

たった数年前にほぼ資源の崩壊の危機にあったタラ漁業が、現在、回復し、持続的で良好に管理されている漁業として認証されました。…
 
このタラ漁は、1年のうち7月と8月の禁漁期を除く10ヶ月にわたりバルト海東部のボーンホルムで底魚底引き、フィッシュ・トラップ、延縄によって行われています。主な水揚げ港は、スウェーデン南東部沿岸のカールスクローとシムリスハムンで、どちらの町も商業漁業の長い歴史を持っています。水揚げ後のタラは、地元市場に生で売られるか、輸出用に加工されます。
…】

加えて、ドイツの SPIEGEL Online の記事を引用しておこう。
www.spiegel.de/wissenschaft/natur/0,1518,806641,00.html

Institut für Ostseefischerei(バルト海水産研究所)の Christopher Zimmermann 教授によると、バルト海東部のボーンホルム島付近のタラ資源量は、約20年前の水準に近い約40万トンに回復しており、絶滅を心配しなくてもよくなったという。
ただ、この急速な資源量回復の理由は不明のため、これから解明されることだろう。
www.vti.bund.de/de/startseite/institute/osf.html (研究所のHP)
www.vti.bund.de/de/startseite/institute/osf/personal/leitung/zimmermann-christopher.html (教授の紹介)

タラの資源量回復、そしてスウェーデンのタラ漁業がMSC認定を受けたことは評価できることだが、心配なことは、ニシン科の小魚であるスプラット(英 sprat、独 Sprotte)がタラに捕食されて減ることである。

これまではタラの資源量回復が最優先だったが、今後はタラの捕食量を考慮したスプラットの漁獲量を決めることになる。
スウェーデンではタラに加えて、スプラットについてもMSC認証を申請できるように、すぐに準備すべきだろう。

別の海域(ケルト海)では、スプラット漁業がニシンやイワシと同時にMSC審査に進んでいるので、同一の漁法で獲れる複数魚種を一括して扱うという考え方も必要になるだろう。
www.msc.org/newsroom-ja/news/celtic-sea-herring-sprat-and-sardine-fisheries-enter-msc-assessment

ドイツにとっては、バルト海西部での資源量が気になるところだが、乱獲の影響で未だに回復していない。
そのためバルト海東部、しかもボーンホルム島付近という狭い海域でのみ回復しても、ドイツの水産加工業などの関連産業が活気づくとは思えない。
先のMSCプレスリリースにあるように、スウェーデンの地元企業が恩恵を受けるだけだ。
それでも漁業関係者を説得して、絶滅を防いで資源量回復を実現し、そして消費者は値段が高くても、環境に配慮した食品を求めていることは良い傾向だ。

ところで、水産物の輸出を考えるならば、国際的に認知されたMSC認証を取得することが賢明だが、日本では独自のエコラベル制度を作ってしまった。
日本の漁業関係者はMSCの設立経緯が気に入らないため、マリン・エコラベル・ジャパンという対抗する制度を作ったが、違反操業で検挙された業者がいるなど、前途多難である。
www.jfa.maff.go.jp/sakaiminato/press/kantoku/100608.html (株式会社隆昌海産の漁業法違反)
www.melj.jp/upload/news/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%99%E3%83%8B%E3%82%BA%E3%83%AF%E3%82%A4%E8%AA%8D%E8%A8%BC%E4%BD%BF%E7%94%A8%E8%87%AA%E7%B2%9B%E4%BF%AE%E6%AD%A3.pdf(エコラベル認証の無期限使用自粛について)
www.melj.jp/upload/news/111222press.pdf
 (エコラベル認証使用自粛の解除)

テーマ : 環境問題
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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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