クジラ・イルカ保護団体WDCSは捕鯨枠入札制度の提案を拒否

日本の捕鯨船団(建前では調査船団)が南極海に行くたびに、反捕鯨団体による執拗な妨害行為を受けており、既に年中行事のようになってきた。
水産庁や日本鯨類研究所は、環境テロリスト集団シーシェパード(SSCS)による妨害行為の宣伝に注力し、そして反捕鯨団体は日本の調査捕鯨の不当性を喧伝している。
icrwhale.org/gpandseaJapane.html (日本鯨類研究所・SSCSによる妨害行為のレポート)

この妨害行為に対抗するため、安全対策として当初は補正予算として国費が追加投入されていた。
約3億円の補正予算が2回続き、その後は本予算に組み入れて、「鯨類捕獲調査円滑化対策」という名称に変えた。

今季は、第3次補正予算の「震災復興」というキーワードに便乗し、「鯨類捕獲調査安定化推進対策」という名称で、約22億8千万円も追加している。
www.jfa.maff.go.jp/j/budget/23_hosei/pdf/9-2.pdf

鯨類捕獲調査安定化推進対策 (2,284百万円

反捕鯨団体の妨害活動に対する対策を強化することにより、今年度の南極海鯨類捕獲調査を安定的に実施し、これを通じて、石巻周辺地域の復旧・復興につなげます

前回調査の早期切上げにより、調査副産物収入が大きく落ち込んだことに対応した支援措置を講ずるとともに、反捕鯨団体の妨害活動に対する安全対策を強化します。】

これに呼応するかのように、SSCSの反捕鯨活動費も年々増加して妨害船や装備も増やしており、そして日本側がさらに対策費を増やすという循環が発生している。

水産庁の来年度本予算では安全対策費を上積みして、恒久的予算にしようと目論んでいる。
www.jfa.maff.go.jp/j/budget/24_kettei/pdf/h24_12.pdf (平成24年度予算概算要求/資源調査・資源管理等)
4.捕鯨対策
商業捕鯨再開に必要な科学的知見の収集を目的とした調査を実施するとともに、反捕鯨団体の妨害活動に対する安全対策を強化します。
鯨類捕獲調査円滑化対策1,104(715)百万円

南極海で毎年繰り広げられる無益な小競り合いを解消し、機能不全のIWC(国際捕鯨委員会)に代わる制度として、捕鯨枠入札制度が再度提案されている。
Nature の1月12日号139ページに掲載された科学者3名による COMMENT と、エディターの解説記事は次の通り。
www.nature.com/nature/journal/v481/n7380/full/481139a.html (有料)
www.nature.com/nature/journal/v481/n7380/full/481114a.html (上記コメントの概要は、この解説記事を参照のこと)

しかしその日のうちに、クジラ・イルカ保護団体のWDCSは、この入札制度を拒否すると発表した。
「クジラは商品ではない」というのが理由の一つだ。
www.wdcs.org/news.php

日本鯨類研究所は、SSCSの妨害行為の宣伝で忙しいのか、この Nature の記事についてまだコメントしていない。

まずは Nature に掲載されたコメントを、会社の昼休みにダウンロードして読んでみた。
クジラ保護のために、「市場アプローチ(market approach)」を使うという手法の紹介だ。
この考え方自体は以前からあり、IWCでの商業捕鯨モラトリアム開始前に提案されたことがある。
もし導入できれば、IWCで何も決まらない現状や、南極海での危険な衝突を回避できる可能性があるという。

捕鯨またはクジラ保護に市場アプローチを適用すると、「日本の伝統食文化」や、「クジラは知能の高い高等動物」といった主張は排除され、クジラ1頭当たりの金額、つまり経済効果を査定することになる。

経済効果とは例えば、捕鯨で得られる食肉や油脂加工品などの価格に対し、クジラ保護側はホエールウォッチングなどのエコツーリズムでの収益になる。
他にも生態系への影響や、保護区を回避する貨物船航路の変更に伴う影響など、いろいろな項目を金額に換算する。

このコメントでは、ミンククジラ1頭を13000ドル、ナガスクジラ1頭を85000ドルと仮定している。

持続可能な捕鯨という観点から捕獲枠を設定し、IWC加盟国それぞれに割り当てる。
そしてその捕獲枠を、公開された市場で入札してやり取りする。

例えば、日本のミンククジラ捕獲枠が200頭だとして、もう300頭欲しければ、他国の割り当て分を買うことになる。
それに対してクジラ保護団体は、その資金力を活かして、日本が落札できない高値で買い取って阻止するだろう。
すると捕獲枠を売却した国は、どちらと取引をしても一定額以上の金額が入るので、国内の諸問題に利用できる。

南極海で捕鯨をするとなると、反捕鯨国から買うことは無理だから、ODAで関係を深めたアフリカ諸国から買うのだろう。
それでも世界中の環境保護団体が結集すれば、日本が他国の捕鯨枠を落札することを阻止できるだけの資金力がある。

ということで仮定通りに事が進むと、日本はIWCが決めた捕獲枠分と、定置網などで混獲したクジラしか入手できない。
クジラ保護団体は危険な妨害活動をしなくてもいいし、妨害船が出す二酸化炭素や大気汚染物質を減らすこともできる。

ただ、前述したように、クジラ・イルカ保護団体のWDCSが既に反対を表明しているし、日本などの捕鯨国も承諾しないだろうから、結局は何も実現せずに、現状のまま続くことだろう。

テーマ : 環境問題
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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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