遺伝子組換え作物への反発がヨーロッパで強いためBASFは研究拠点をアメリカに移転

私がドイツに留学していた1990年代後半、遺伝子組換え食品がヨーロッパにも導入されるという話があった。
ということで大学でも反対集会が行われ、完熟しても日持ちするトマトを例にして、環境問題専門家の講演があった。

遺伝子組換え作物と聞くと、アメリカのモンサント社のことを一番に思い浮かべる人は多いだろう。
しかし、反対の声が強いヨーロッパであっても、ドイツの総合化学企業BASFは子会社のBASF Plant Science で、遺伝子組換えジャガイモなどの開発研究をしている。
www.basf.com/group/corporate/en/ (BASFのHP、英語版)
www.basf.com/group/corporate/en/products-and-industries/biotechnology/plant-biotechnology/index (BASF Plant Science)
www.basf.com/group/corporate/en/products-and-industries/biotechnology/index (バイオテクノロジー製品のページ)

ドイツと言えばジャガイモ、というわけではないだろうが、BASFでは工業用デンプン生産用品種の Amflora と、疫病カビ抵抗性遺伝子導入型の食用 品種の Fortuna を開発し、EU委員会に商業的栽培認可の申請している。

Amflora は食用ではないためか、10年以上経過してやっと、実験的な小規模栽培ではあるが、圃場での栽培が許可された。
しかし、グリーンピースなどの実力行使型の環境保護団体が邪魔をするため、警官の護衛付きで植え付け作業をするほど、ヨーロッパでは反対派が多いことを実感させた。

また、食用品種の Fortuna についてはまだ栽培許可が下りていないことに加えて、大手食品加工会社などが、もし許可が出たとしても使用しないと宣言するなど、反対の声は大きくなっている。

ヨーロッパでこれ以上粘ったところで、栽培許可が下りるのはいつになるのか予測ができない。
そのためかBASFは、遺伝子組換え植物の研究のほとんどをアメリカの施設に移管し、販売も南北アメリカを対象とすることにした。
www.basf.com/group/pressrelease/P-12-109

この決定について報じた英語とドイツ語の記事は次の通り。
日本語記事はないため、個人で運営している情報サイトを検索してほしい。

・英語記事3編
www.businessweek.com/news/2012-01-17/basf-moves-unit-to-u-s-after-europe-rebuffs-modified-potato.html
www.nytimes.com/2012/01/17/business/global/17iht-gmo17.html
blogs.nature.com/news/2012/01/basf-abandons-gm-crop-market-in-europe.html

・ドイツ語記事3編
www.spiegel.de/wirtschaft/unternehmen/0,1518,809441,00.html
www.sueddeutsche.de/wirtschaft/basf-stellt-amflora-anbau-ein-das-ende-der-gen-kartoffel-in-europa-1.1259527
www.zeit.de/wirtschaft/unternehmen/2012-01/basf-gentechnik-usa

ヨーロッパで遺伝子組換え作物の研究を続けることは可能だが、圃場での実験栽培許可を得るにも時間がかかり、しかも消費者が拒否している状況では、投資金額を回収することは不可能に近い。

それならば、様々な遺伝子組み換え植物が既に商業的生産されているアメリカで研究した方が、すぐに販売できるかもしれない。
また、トマトやジャガイモ、トウモロコシなど南米原産の重要な作物について、野生種の遺伝子を集めるにも地理的に好都合だろう。

遺伝子組換え作物の安全性は、短期的な実験でのみ確認されたもので、今後10年以上の期間で、どのような影響が出るのかは不明だ。
導入した遺伝子が、他の遺伝子と一緒に働いて、新たな成分を生み出すかもしれないし、花粉を通じて従来品種を汚染するかもしれない。

科学的には、「現時点では何もわからない、予測できない」というのが正しい説明であり、科学の限界を認めるべきである。
そして消費者側も、その科学の限界を認識した上で、遺伝子組換え作物を受け入れるかどうかを考えなければならない。

アメリカで遺伝子組換えジャガイモが販売されるかどうか、今後の動向を注目しておこう。
TPPがまとまれば、ポテトチップス用に遺伝子組換えジャガイモを、アメリカは日本に輸出しようとするだろうから。

テーマ : 環境問題
ジャンル : ニュース

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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