川崎市の倉庫火災で一部のスプレー缶も消防法の対象となることを再認識

2011年9月27日に、川崎市宮前区の王子物流川崎倉庫で大火災があり、約60時間後に鎮火したものの、倉庫は全焼した。
この倉庫の2階に保管されていた大量のスプレー缶(パーツクリーナー)が、次々と爆発炎上したという。
そのフロアはNUロジテックが借りていたが、王子物流では危険物を保管していることを知らず、また危険物を保管するための設備・構造を満たしていなかった。

そして今年2月2日に宮前署は、NUロジテック社長を、消防法違反および倉庫業法違反の容疑で逮捕した。
逮捕を伝える地元紙の神奈川新聞の記事は次の通りで、消防法に関する記載の一部を引用しよう。
news.kanaloco.jp/localnews/article/1202030013/

【…川崎市長から危険物貯蔵所としての許可を得ずに9月27日、危険物の引火性液体・イソヘキサンを含むスプレー缶を指定数量(200リットル)以上となる約11万4千リットル保管した…】

パーツクリーナーの主成分は、引火性液体のイソヘキサン(第四類第一石油類・非水溶性液体)で、構造式は以下の通り。
ちなみに、正式な命名法に従えば、2-メチルペンタンと呼ぶ。


イソヘキサン(2-メチルペンタン)の構造式

イソヘキサンは引火性液体で危険物扱いだが、有機溶剤中毒予防規則に該当しない有機溶剤のため、部品洗浄剤として利用されている。
イソヘキサンが主成分だが、実際にはエタノールなどの他の有機溶剤も混合し、エアゾール化のための噴射剤には二酸化炭素やLNG(液化天然ガス)が使用されている。

今回の火災のニュースで、有機溶剤を含むスプレー缶も消防法の対象であることを再認識した。

私は甲種危険物取扱者の資格を持ち、職場では危険物管理担当に任命されている。
危険物を使用する社員全員が資格を持つことが望ましいが、同じ実験室にいる私が、資格を持たない社員の作業に立ち会っていると見なしている。
取得者は私を含めて5名いるので、私が出張などで不在でも、誰かが在室していれば、消防法違反にはならない。

また、実験室全体が少量危険物貯蔵・取扱所として登録されており、許可された危険物の総量を超えないよう、私は日々管理しし、そして同僚に対しては危険物管理ルールの指導をしている。

ここで言う危険物の総量とは、「指定数量の倍数の和」のことで、この倍数の和が1未満となるように管理するのが主要な任務だ。
倍数の和が0.2以上1未満であれば、消防法の代わりに地方自治体の火災防止条例が適用されて、消防署の許可で済むので、手続きや管理が少し楽になる。

危険物それぞれに、危険度に応じて指定数量が決められており、今回出てきたイソヘキサンは200リットルである。
11万4000リットルの貯蔵ということは、指定数量の倍数は 114000/200=570 となる。

複数の危険物を貯蔵または取り扱う場合、それぞれの指定数量の倍数の和を計算しなければならない。
例えば同時に、指定数量400リットルのエタノールを1200リットル貯蔵すると、1200/400=3 を加えるので、倍数の和は573となる。

消防法の規定により市町村長の許可が必要となるが、許可を得るためには、法律の基準を満たした倉庫が必要となる。
今回の倉庫は、2階部分があること自体が違反であるし、耐火性の建材も使っていない。
つまり元々、危険物を保管することは想定していなかったわけだ。

テナントのNUロジテックとしては、自社製品ではないスプレー缶は販売用に保管しただけで、危険物の有機溶剤が入っているとは全く認識していなかったのだろう。
それでもスプレー缶に表示された「火気厳禁」などの表示を見逃したわけで、知らなかったでは済まされないマネジメント・ミスである。
加えて、貸した側の王子物流も、テナント企業との賃貸契約書作成時に、保管予定の物品を確認すべきだった。

実験室でも有機溶剤の入ったスプレー缶を使用することがあるから、この火災の件で、消防法の対象だと再認識した。
アミノ酸分析用としてTLCに噴霧するニンヒドリンスプレーでは、溶剤に 1-ブタノールを使っている。
実験室の危険物数量管理では、このスプレー缶も数量に入れて計算している。

ところで、各家庭で使っている灯油(指定数量1000リットル)も危険物であり、大量保管はできない。
ただし指定数量の倍数が0.2未満、つまり200リットル未満の灯油であれば、消防署に申告する必要はない。
それでも、引火性液体だということは認識して、ファンヒーターのタンクへの移し替えや、ポリタンクの保管場所には留意してほしい。

テーマ : 社会ニュース
ジャンル : ニュース

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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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