ベルギーの海岸に座礁したマッコウクジラはバイオ燃料に加工予定

ベルギー北東部、北海に面した観光地 Knokken-Heist の海岸に、2月8日朝、体長約13メートル、体重約30トンのマッコウクジラが打ち上げられた。
当初はまだ生きていたそうだが、救助活動は不可能で、午後には死んでしまったという。

このストランディングを報じた外国語報道は多数あるが、ここでは以下の英語記事2本を引用しておこう。
www.dailymail.co.uk/news/article-2098615/Injured-45ft-sperm-whale-washes-beach-dies-saved.html
www.boston.com/news/world/europe/articles/2012/02/08/sperm_whale_dies_on_belgian_beach/

科学者たちはこのストランディング個体について、死因を調査しようとしている。
脂肪や内蔵組織の分析から、重金属などの汚染物質を特定したり、胃内容物にプラスチック製品などの海洋ゴミが含まれるかどうかを調査する予定だ。
コンテナ輸送船などの大型船舶との衝突による怪我が原因とも考えられるが、現時点で死因は公表されていない。

調査結果は今後、ゲント大学(Universiteit Gent)の海洋生物学研究室や、ベルギー自然科学研究所(Royal Belgian Institute of Natural Sciences)のHPで発表されることだろう。
www.marinebiology.ugent.be/ (ゲント大学・海洋生物学)
www.naturalsciences.be/ (自然科学研究所)

ある観点では海洋生物学者は、ストランディング個体という自然からのプレゼントを待っているとも言える。
どこかの国のように、調査と称して自ら殺しに行くのではなく、今回のような偶然を待つというのも、研究生活の一部だ。

組織サンプルや骨格標本は研究目的に利用できるが、残りの大量の肉や脂肪はどう処分するのだろうか。
オーストラリアでは肥料に加工したという事例がある。

今回は脂肪が多いマッコウクジラということで、捕鯨時代のように工業的利用価値があるため、鯨油をバイオ燃料に加工する予定だ。

このバイオ燃料への加工について、ドイツの SPIEGEL Online の記事を引用しよう。
www.spiegel.de/wissenschaft/natur/0,1518,814561,00.html

マッコウクジラの体重は、このドイツ語記事では約25トンとなっている(上で引用した英語記事では約30トン)。
そのうち半分ほどが脂肪とのことだから、10トンを超える鯨油が採取できることになる。

(追記(2月12日):Süddeutsche Zeitungの記事中では、「20トンから30トンの間」となっている。
【Das zwischen 20 und 30 Tonnen schwere Tier besteht zur Hälfte aus Fett. 】
www.sueddeutsche.de/wissen/ungewoehnliche-energiegewinnung-belgier-verarbeiten-gestrandeten-pottwal-zu-biokraftstoff-1.1281637

ベルギーには、食肉加工場からの廃棄物や、農場で死んだ家畜などを利用して、バイオ燃料を作る工場がある。
この工場で加工された精製バイオ燃料を火力発電に使うと、5万キロワット時の電力が得られるという。
この電力は、14世帯の年間使用電力量に相当するとのことだ(1世帯の年平均を約3,500キロワット時として)。

肉や内臓がどうなるかは書いていなかったが、動物性廃棄物と同様の処理をするのだろう。
オーストラリアのようにヨーロッパでも、肥料に加工する業者がいるかもしれない。

(追記(2月12日):バイオ燃料に加工するベルギーの会社は Electrawinds で、今回のマッコウクジラの引き取りについてのニュースリリースもある。
www.electrawinds.be/
www.electrawinds.be/electrawinds_powered_by_nature-electrawinds_artikels.asp (英語ニュースリリース))


ところで日本での扱いはどうなのかというと、ストランディング個体の報告様式が定められており、基本的な体長測定などの項目に加えて、DNA分析用サンプルの採取が求められている(費用の補助あり)。
その後の処分方法についても報告欄ではがあるが、これは定置網などでの混獲の場合であり、以下に示した農林水産省からの回答にあるように決めていないそうだ。

1.座礁して死亡した鯨類は、標本以外に使用しておりません。
 2.漂着クジラ類の取り扱いに特化したマニュアル等はございません。


水産庁の 「鯨類座礁対策マニュアル(平成16年10月12日)」 では、捕獲または混獲の場合であれば、食用の他に 「飼肥料」 とした数量も報告するが、座礁での処理方法は自由記述であり不明確だ。
www.jfa.maff.go.jp/j/whale/pdf/manual.pdf

日本の捕鯨推進派・擁護派は、「欧米人と違い日本人は、昔からクジラを余すところなく利用してきた」と豪語しているが、ストランディング個体を肥料にしないのは、過去からのクジラ文化の一部を捨てたことにならないだろうか


海岸からの輸送が困難だったり、加工費用の負担が嫌なのかもしれないが、調査捕鯨に補助金を投入してまで、食べることばかり考えるのではなく、堆肥化も文化の一つだとして検討してほしい。

特に捕鯨文化の伝統が長いと自負する地域では、クジラ由来の肥料で有機農業を実践してほしいものだ。

(最終チェック・修正日 2012年02月12日)

テーマ : 環境問題
ジャンル : ニュース

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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