ドイツの小川の水を緑色にしたのは流出した海難救助用着色剤だった

AFP日本語版をチェックしていたら、ドイツの川に化学薬品が流出して緑色に染まった、というニュースがあった。
www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2863269/8587384
【ドイツ中部…ゲッティンゲンの工業地区の倉庫で火災が発生し、化学薬品が川に流出した。警察当局によると毒性はないという。】


あまりにも短い記事で、どういった種類の化学薬品なのか不明だ。
ドイツメディアを検索してみても、主要紙は警察発表だけに頼っているようで、追加情報がほとんどなかった。
翻訳の仕事も途中なので、このニュースはそれ以上調べることもなかった。


ただし気になっていたので、本日9日に再検索をして、地元紙 Göttinger Tabeblatt の記事(3月2日付け)を見つけた。
この記事を読んでみて、ようやく詳細がわかった。

www.goettinger-tageblatt.de/Nachrichten/Goettingen/Uebersicht/Grossbrand-Grone-gruen-verfaerbt

流れ出した緑色の化学薬品は、海難救助などでの目印に、海面着色剤として使われるウラニンであった。
ウラニンはフルオレセインの塩で、黄色や緑色など様々な色調の色素が作られている。

日本でも、船舶には救助用備品として海面着色剤を搭載することが義務付けられている。
参考として、ある着色剤の製品説明を引用しておこう。
www.kokusai-kakoh.co.jp/seihin1_1_10.html

今回の事故では、倉庫の火災でウラニンが流出したというよりは、消火のための放水によってウラニン水溶液が倉庫からあふれ出し、近くの小川に流れ込んで、緑色に染めてしまったようだ。

英語でも報道がいくつか見つかった。
特にアメリカでは、アイルランド系移民のお祭りにかけて、「一足早いセントパトリックデー?」という記事になっている。
MSNの写真ブログ記事は次の通り。
photoblog.msnbc.msn.com/_news/2012/03/02/10563097-early-st-pats-day-no-a-chemical-spill

確かに緑色の着色剤は、セントパトリックデーに、川の水をアイルランドの象徴である緑色に染めるために使われている。
実際のお祭りは3月17日に行われるから、その2週間前に起きたドイツの事件を、「一足早い…」としたのは良い表現だと思う。

川の生物や魚釣り愛好家には迷惑だったかもしれないが、無毒の着色剤が原因だったとわかって、多くの人が安堵したことだろう。
これまでもヨーロッパでは、ライン川も含めて、化学工場などからの有毒物質の漏えい事故があり、大量の魚が死んだことがある。
環境問題への意識も高いため、何かあれば最悪のことを想定する考え方になっているのだろう。

化学工場ではなく、普通の倉庫に保管してあったとしても、溶媒も保管していたのだから、近くに河川などがあるならば、放水路などを閉鎖できる設備が必要だったかもしれない。
倉庫を貸す側も、何を保管しているのか、火災時などにはどのように対処すべきなのか、事前に把握すべきだろう。
着色剤よりも、活性炭や溶媒の方が危険だし。

小川が緑色になっただけの小さなニュースかもしれないが、化学物質漏えい事故として、医薬品メーカーに勤務する私にとっては教訓となりそうだ。


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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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