今季の南極海調査捕鯨も目標捕獲数未達成だが開始当初の頭数に戻っただけ
今季の南極海調査捕鯨は、22億円を超える補正予算まで投入したのに、シーシェパード(SSCS)の妨害行為を食い止めることができず、捕獲頭数はクロミンククジラ266頭、ナガスクジラ1頭で終了した。
前回は途中で切り上げているので、今回は最後まで粘ったのは予算をつぎ込んだ成果なのかもしれない。
AFP日本語記事では、水産庁の発表としてSSCSの妨害の他に悪天候も影響したとあるが、鹿野農林水産大臣の会見では悪天候を強調したいという印象を受けた。
SSCS対策費を何年も追加投入しているのに完全阻止できていないが、一定の効果があったと言うことで対策費の継続投入をもくろんでいるようだ。
AFP日本語記事は次の通り。
www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2863995/8616870
【水産庁は9日、…調査捕鯨船団が帰国の途についたと発表した。悪天候や反捕鯨団体の妨害などのため、捕獲できたクジラの数はミンククジラ266頭、ナガスクジラ1頭の計267頭…。
反捕鯨団体「シー・シェパード(Sea Shepherd Conservation Society、SSCS)」は今季も捕鯨シーズンを通じて、…妨害工作を続け、捕鯨船側は放水で応じた。水産庁では、こうした妨害が捕獲頭数の低下に大きく影響したとしている。】
鹿野大臣の記者会見(3月9日)は次の通りで、抜粋して掲載する。
www.maff.go.jp/j/press-conf/min/120309.html
【記者:…調査捕鯨なんですけれども、調査が終了したということですが、…目標頭数など、定めておると思いますが、その成果も踏まえて、振り返っていかがでしたでしょうか。
大臣:…目標頭数までいきませんでした。えぇ、まあ、そういう意味で、天候等はですね、非常に、まあ、不順であったということもございます。まあ、そういう意味で、今後ですね、いろいろと調査の状況につきましてですね、分析をしながら、今後、どうしていくかということも含めてですね、検討していきたいと、こう思っております。
記者:その妨害活動への対処という点ではいかがでしたでしょうか。
大臣:…今回は、安全の確保というものを、非常に重きをなしてですね、調査捕鯨に出発してもらったわけでありますけどね、そういう点では、関係の省庁の協力も得てですね、安全は確保されたと、こういうふうに、まあ、思っておりますが、さらに、これからもですね、当然、この、安全の確保と、船団の安全の確保というのは、大変重要な課題でありますので、今後の具体的な検討課題のひとつでもあると思っております。
記者:ただ、去年、170頭で、今年、まあ、260頭と、目標を大幅に、ずっと下回り続けているんですが、あの、まあ、シー・シェパードに対するですね、対策が、ちゃんと打ち出せない中で、「今後、続けていく必要があるのか」、「意義があるのか」っていうような声もあがってきそうなんですが。
大臣:えぇ、ですから、今、申し上げますとおりにですね、シー・シェパードの妨害活動等々、あるいは、まあ、天候がですね、非常に、恵まれなかったというようなこと等々、まあ、そういう中で、いわゆる、この調査というふうなものがですね、実質的に、どうであったのかというふうなことについての分析を、これからやっていかなきゃならんと思っております。
記者:まあ、去年は、中止に追い込まれたわけですけども、まあ、今回、その、まあ、目標下回ったとはいえ、期間は、まあ、最後まで、調査ができたということは、どういうところに要因があったということですか。
大臣:やはり、安全のですね、対策というふうなものについてですね、「関係省庁の協力を得る」、というふうなことは、ひとつの成果としてですね、あったんじゃないかと思っております。それから、もうひとつは、やはり、関係国に対してもですね、実効ある措置を、この、妨害活動は、もう、「我々としては、許されない」と、いうことで、妨害活動に対しての実効ある措置を講じてもらいたいというふうなことも、あらゆる機会を通して申し上げてきました。そういう意味では、そういう安全対策についてのですね、いわゆる取組というふうなものの成果は、あったと、こう思っております。しかし、今後、どうするかということは、また、具体的なかたちで、当然、検討していかなきゃならないことだと思っております。】
平成23年度第三次補正予算では、「鯨類捕獲調査安定化推進対策」の名目で、22億円強が投入されている。
www.jfa.maff.go.jp/j/budget/23_hosei/pdf/9-2.pdf
補正予算は東日本大震災の復興対策が名目なので、【反捕鯨団体の妨害活動に対する対策を強化することにより、今年度の南極海鯨類捕獲調査を安定的に実施し、これを通じて、石巻周辺地域の復旧・復興につなげます。】とわざわざ書いている。
ただ、SSCS対策に22億円も投入して調査捕鯨を継続するよりも、石巻周辺漁港に小規模でもよいから、製氷機や冷蔵・冷凍庫を備えた水産加工場を建てる方が先ではないだろうか。
ところで、今季の捕獲頭数は、調査捕鯨開始時の頭数に戻っただけだし、今は北西太平洋と沿岸での調査捕鯨も追加しているのだから、鯨肉消費量が増加していないのに無理に南極まで行かなくてもいいと思う。
850頭のクロミンククジラを捕獲しなければ生態調査ができないのであれば、この2年間の少ない頭数での結果と比較した、まともな学術論文を出してほしいものだ。
前回は途中で切り上げているので、今回は最後まで粘ったのは予算をつぎ込んだ成果なのかもしれない。
AFP日本語記事では、水産庁の発表としてSSCSの妨害の他に悪天候も影響したとあるが、鹿野農林水産大臣の会見では悪天候を強調したいという印象を受けた。
SSCS対策費を何年も追加投入しているのに完全阻止できていないが、一定の効果があったと言うことで対策費の継続投入をもくろんでいるようだ。
AFP日本語記事は次の通り。
www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2863995/8616870
【水産庁は9日、…調査捕鯨船団が帰国の途についたと発表した。悪天候や反捕鯨団体の妨害などのため、捕獲できたクジラの数はミンククジラ266頭、ナガスクジラ1頭の計267頭…。
反捕鯨団体「シー・シェパード(Sea Shepherd Conservation Society、SSCS)」は今季も捕鯨シーズンを通じて、…妨害工作を続け、捕鯨船側は放水で応じた。水産庁では、こうした妨害が捕獲頭数の低下に大きく影響したとしている。】
鹿野大臣の記者会見(3月9日)は次の通りで、抜粋して掲載する。
www.maff.go.jp/j/press-conf/min/120309.html
【記者:…調査捕鯨なんですけれども、調査が終了したということですが、…目標頭数など、定めておると思いますが、その成果も踏まえて、振り返っていかがでしたでしょうか。
大臣:…目標頭数までいきませんでした。えぇ、まあ、そういう意味で、天候等はですね、非常に、まあ、不順であったということもございます。まあ、そういう意味で、今後ですね、いろいろと調査の状況につきましてですね、分析をしながら、今後、どうしていくかということも含めてですね、検討していきたいと、こう思っております。
記者:その妨害活動への対処という点ではいかがでしたでしょうか。
大臣:…今回は、安全の確保というものを、非常に重きをなしてですね、調査捕鯨に出発してもらったわけでありますけどね、そういう点では、関係の省庁の協力も得てですね、安全は確保されたと、こういうふうに、まあ、思っておりますが、さらに、これからもですね、当然、この、安全の確保と、船団の安全の確保というのは、大変重要な課題でありますので、今後の具体的な検討課題のひとつでもあると思っております。
記者:ただ、去年、170頭で、今年、まあ、260頭と、目標を大幅に、ずっと下回り続けているんですが、あの、まあ、シー・シェパードに対するですね、対策が、ちゃんと打ち出せない中で、「今後、続けていく必要があるのか」、「意義があるのか」っていうような声もあがってきそうなんですが。
大臣:えぇ、ですから、今、申し上げますとおりにですね、シー・シェパードの妨害活動等々、あるいは、まあ、天候がですね、非常に、恵まれなかったというようなこと等々、まあ、そういう中で、いわゆる、この調査というふうなものがですね、実質的に、どうであったのかというふうなことについての分析を、これからやっていかなきゃならんと思っております。
記者:まあ、去年は、中止に追い込まれたわけですけども、まあ、今回、その、まあ、目標下回ったとはいえ、期間は、まあ、最後まで、調査ができたということは、どういうところに要因があったということですか。
大臣:やはり、安全のですね、対策というふうなものについてですね、「関係省庁の協力を得る」、というふうなことは、ひとつの成果としてですね、あったんじゃないかと思っております。それから、もうひとつは、やはり、関係国に対してもですね、実効ある措置を、この、妨害活動は、もう、「我々としては、許されない」と、いうことで、妨害活動に対しての実効ある措置を講じてもらいたいというふうなことも、あらゆる機会を通して申し上げてきました。そういう意味では、そういう安全対策についてのですね、いわゆる取組というふうなものの成果は、あったと、こう思っております。しかし、今後、どうするかということは、また、具体的なかたちで、当然、検討していかなきゃならないことだと思っております。】
平成23年度第三次補正予算では、「鯨類捕獲調査安定化推進対策」の名目で、22億円強が投入されている。
www.jfa.maff.go.jp/j/budget/23_hosei/pdf/9-2.pdf
補正予算は東日本大震災の復興対策が名目なので、【反捕鯨団体の妨害活動に対する対策を強化することにより、今年度の南極海鯨類捕獲調査を安定的に実施し、これを通じて、石巻周辺地域の復旧・復興につなげます。】とわざわざ書いている。
ただ、SSCS対策に22億円も投入して調査捕鯨を継続するよりも、石巻周辺漁港に小規模でもよいから、製氷機や冷蔵・冷凍庫を備えた水産加工場を建てる方が先ではないだろうか。
ところで、今季の捕獲頭数は、調査捕鯨開始時の頭数に戻っただけだし、今は北西太平洋と沿岸での調査捕鯨も追加しているのだから、鯨肉消費量が増加していないのに無理に南極まで行かなくてもいいと思う。
850頭のクロミンククジラを捕獲しなければ生態調査ができないのであれば、この2年間の少ない頭数での結果と比較した、まともな学術論文を出してほしいものだ。
国際捕鯨委員会(IWC)で商業捕鯨モラトリアムが決まったため、その代わりとして日本は、1987年から南極海で調査捕鯨を行っている。
異議申し立てをして商業捕鯨を継続する手段があったが、日米関係(特に安全保障関係)をより重視した日本政府は、商業捕鯨を切り捨てることにした。
しかし捕鯨産業を残そうとする一部の勢力が、「科学的生態調査目的の調査捕鯨ならば実施可能」と提案し、できるだけ長期にわたる調査計画を策定した。
ところが当時首相だった中曽根康弘は、捕鯨と無関係の群馬県出身であり、アメリカ訪問を控えていたこともあり、捕獲計画数の大幅削減を指示した。
ということで、ミンククジラ300頭前後まで捕獲目標を引き下げて、南極海での調査捕鯨が始まった。
IWCに報告された捕獲頭数は、1987/88シーズンは273頭、1988/89シーズンは241頭、そしてその後は徐々に増やして300~400頭台が続いた。
www.iwcoffice.org/conservation/table_permit.htm
転機となったのは2005年で、クロミンククジラの捕獲目標を850±85頭と倍増しただけではなく、絶滅危惧種と指摘されているナガスクジラの捕獲も実施した。
これがきっかけとなったためか、反捕鯨団体の運動は激しさを増した。
そしてザトウクジラ50頭の捕獲計画の発表はさらに反対運動を煽り、捕獲見合わせを決定したにもかかわらず、SSCSが直接妨害行為に加わったため、これは水産庁の自業自得だとの皮肉を言われるまでになった。
ところで、南極海で目視調査を毎年しているのに、タスマニアクチバシクジラ(Tasmacetus shepherdi)に一度も遭遇しなかったのは不思議だ。
発見したのはオーストラリアの南極調査チームである。
AFP日本語記事を引用しておく。
www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2860343/8526102
本当にクジラ類の生態調査をしたいのであれば、日本鯨類研究所は南極昭和基地に職員を常駐させて、継続的観測をすべきだろう。
異議申し立てをして商業捕鯨を継続する手段があったが、日米関係(特に安全保障関係)をより重視した日本政府は、商業捕鯨を切り捨てることにした。
しかし捕鯨産業を残そうとする一部の勢力が、「科学的生態調査目的の調査捕鯨ならば実施可能」と提案し、できるだけ長期にわたる調査計画を策定した。
ところが当時首相だった中曽根康弘は、捕鯨と無関係の群馬県出身であり、アメリカ訪問を控えていたこともあり、捕獲計画数の大幅削減を指示した。
ということで、ミンククジラ300頭前後まで捕獲目標を引き下げて、南極海での調査捕鯨が始まった。
IWCに報告された捕獲頭数は、1987/88シーズンは273頭、1988/89シーズンは241頭、そしてその後は徐々に増やして300~400頭台が続いた。
www.iwcoffice.org/conservation/table_permit.htm
転機となったのは2005年で、クロミンククジラの捕獲目標を850±85頭と倍増しただけではなく、絶滅危惧種と指摘されているナガスクジラの捕獲も実施した。
これがきっかけとなったためか、反捕鯨団体の運動は激しさを増した。
そしてザトウクジラ50頭の捕獲計画の発表はさらに反対運動を煽り、捕獲見合わせを決定したにもかかわらず、SSCSが直接妨害行為に加わったため、これは水産庁の自業自得だとの皮肉を言われるまでになった。
ところで、南極海で目視調査を毎年しているのに、タスマニアクチバシクジラ(Tasmacetus shepherdi)に一度も遭遇しなかったのは不思議だ。
発見したのはオーストラリアの南極調査チームである。
AFP日本語記事を引用しておく。
www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2860343/8526102
本当にクジラ類の生態調査をしたいのであれば、日本鯨類研究所は南極昭和基地に職員を常駐させて、継続的観測をすべきだろう。