福島第一原発から放出されたプルトニウム241を検出

独立行政法人・放射線医学総合研究所(放医研)の研究チームでは、福島第一原発事故で放出された放射性核種の分析研究も、継続的に行っている。
www.nirs.go.jp/index.shtml

世間一般では、事故直後は放射性ヨウ素、そして今は放射性セシウムに関心が集まっているが、放医研では不揮発性のウランの分析結果も学術誌で発表している。

共同通信の配信記事によると、放医研は福島県内の土壌から、原発事故由来のプルトニウム241を検出したそうだ。
www.47news.jp/47topics/e/226454.php
【放射線医学総合研究所(千葉市)は、東京電力福島第1原発から北西や南に20~32キロ離れた福島県内の3地点で、事故で放出されたとみられるプルトニウム241を初めて検出したと、8日付の英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」の電子版に発表した。

人体に影響のないレベルだが、プルトニウム241は他の同位体に比べて半減期が14年と比較的短く、崩壊してできるアメリシウム241は土壌を経由して主に豆類に取り込まれやすい。放医研は「内部被ばくを避けるためにも 原発20キロ圏内での分布状況を確かめる必要がある」としている。

同位体の比率から今回の事故が原因と分かった。
…】

Scientific Reports 電子版に掲載された英語論文は、無料でダウンロードできる。
プルトニウムの他の同位体、239、240との比を比較すると、長崎に投下されたプルトニウム型原爆や過去の核実験、そしてチェルノブイリ事故由来とも異なることからも、福島第一原発から放出されたと結論付けられている。
また、崩壊により生じるアメリシウム241が今後増加し、特にマメ科植物に蓄積されることが懸念されている。
www.nature.com/srep/2012/120308/srep00304/full/srep00304.html

朝日新聞の記事から、追加された情報を中心に引用しておこう。
www.asahi.com/national/update/0308/TKY201203080724.html
【…浪江町と飯舘村の落葉の層から1キロあたりそれぞれ34.8ベクレルと20.2ベクレル、Jヴィレッジの表土から1キロ当たり4.52ベクレルのプルトニウム241を検出した。プルトニウム241は、アルファ線やガンマ線を出すアメリシウム241(半減期432.7年)に変わる。

研究グループの田上恵子・放医研主任研究員は「大気圏内核実験が盛んに行われていた1963年当時の放射性降下物のデータから推定すると、今回のプルトニウム241の検出量は当時と同程度かそれ以下。特別な対策は必要ない」と話す。】

両方の記事では、気になる相違点がある。
論文では、アメリシウム241による内部被ばくを避けるために、さらに詳しい調査が必要だとしている。
しかし朝日新聞の取材に対して、共著者である田上主任研究員は、「特別な対策は必要ない」と矛盾している。
論文の主著者は、鄭建(ツン・ジェン)主任研究員なのに、研究グループ内で意見対立があるのだろうか。

今回は4か所しかサンプル採取ができなかったので、放射性セシウムと同様に、もっと濃度が高い場所、つまりホットスポットが見つかるかもしれない。
過去の大気圏核実験によるフォールアウト(降下物)よりも少ないとは言っても、22世紀になっても残る放射性核種であり、
放射性セシウムと同様に、その動向を追跡調査すべきだろう。

放医研の研究発表は学会や学術誌が中心で、研究所HPでのプレスリリースに出ていない。
報告書などの出版物もあるが、迅速な発表がされていないことが批判されてもいる。

確かに日本原子力学会では、福島第一原発事故関連の論文については、迅速な発表を支援する体制を整えていて、論文投稿を推奨している。
www.aesj.or.jp/publication/AnnouncementAESJ110414.htm
【日本原子力学会編集委員会(論文誌)では、大震災による福島原子力発電所事故に関連した研究論文(Rapid communication[速報]、Article[論文]、Technical Material[技術資料])を募集しています。科学的な根拠に基づく事故関連の研究論文を掲載することは、本学会論文誌の果たすべき役割であると認識しております。

投稿された原稿は、迅速な審査により、可能な限り早く公開(電子版および冊子体)できるように配慮いたしますので、積極的な投稿をお願いします。なお、速報での公表後に、同内容を含んだ論文として投稿することが可能です。また、和文論文誌へ掲載された論文にあっても、申請により編集委員会が認めた場合には、英文誌に転載することができます。…】

国際的に注目されている原発事故だから、外国の英文誌に掲載した方がインパクトはあるだろうし、多くの研究者の目に留まることだろう。
ただ、この情報を一番知りたいのは、避難生活を強いられている人たちであり、日本語での発表も必要だったのではないか。
論文がアクセプトされた2月17日の時点で発表できなかったとしても、電子版で公開された3月8日には、日本語で概要を発表すべきだった。

放医研の原発事故関連情報のページには、メディア報道後の本日3月12日22時半を過ぎても何も出ていない。
www.nirs.go.jp/information/info2.php

日本原子力学会の行動指針には、社会に対する責任について、次のように書かれているのだから、すぐに日本語で情報発信してほしいものだ。
www.aesj.or.jp/rijikai/shishin.html
【「日本原子力学会の理念、ビジョン」
6. 公平、公正、透明な議論の場となり、国民・地域社会に対して、原子力に関する技術情報の最も信頼できる情報源となる

「日本原子力学会の社会に対するつとめ」
3. トラブル発生時に的確な知識を迅速に発信する。】

ついでだが、「人体に影響がないレベル」という表現は、「人体への影響が他の要因と区別できないレベル」と言い換えるべきだろう。
内部被ばくによる発がん率の上昇を心配する住民に対して、「タバコをやめればいい」と答えた専門家がいる。
「発がんには様々な要因があるため、放射性物質だけが原因と特定することは困難だ」ということだが、質問した人の立場では、何かごまかされたという気持ちになる、というのが普通の反応だ。

ところで、「プルトニウムは飲んでも大丈夫」と豪語していた大橋弘忠・東大教授に対して各メディアは、今回の論文についてのコメントを求めてほしいものだ。

テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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