木星の衛星Europaの和名は「エウロパ」に統一してほしい

翻訳の仕事をしていなくても、外国語の辞書を使うことは多いし、日本語を読むときも国語辞典や漢和辞典で確認することがある。
たいていの人は、専門家が辞書を編纂したのだから、その記載内容を信じてしまうだろう。
しかし私は、高校生のときに読んだ岩波新書、「英和辞典うらおもて」の影響だけでなく、実際に複数の辞書を比較した経験から、辞書の記述を鵜呑みにしないようにしている。

これまでも何度か、ニュース翻訳での誤訳や、オンライン辞書などでの疑問点を指摘してきたが、今回は木星の衛星 Euorpa(エウロパ)を取り上げよう。

Europa は、英語の発音に由来する「ユーロパ」と呼ばれることもあるが、天文用語では「エウロパ」と決めている。

ただ、「dwarf planet」を「矮惑星」ではなく「準惑星」としたように、専門家が決めた用語について、納得できないこともある。
自分なりのこだわりはあったとしても、他人とコミュニケーションするためには、統一した用語を使うことになる。

和訳ニュースでの誤訳を指摘したとき、担当した翻訳者はオンライン辞書だけを使っていた場合が多かった。
納期に追われる翻訳では、調査時間が足りないのはわかるが、複数の辞書を使うことが望ましい。

人気のある無料オンライン英語辞書として、アルクのトップページから検索できる、英辞郎 on the Webがある。
www.alc.co.jp/

そこで、「Europa」を検索すると、語義説明では「ユーロパ」、その他の例文などでは「エウロパ」と不統一だった。
無料だから不統一なのかと思い、月315円のPro版を申し込んでみたが、検索結果は同じだった。

Europa 名 2. 《宇宙》ユーロパ◆木星の衛星
Europa's surface エウロパ表面

…under the icy surface of Jupiter's moon, Europa, …
…木星の衛星エウロパの氷状の地表の下に…】

Pro版は初回契約月は無料なので損はしていないが、期待したものではなかったので、即刻解約することにした。
この件は、「誤植の報告」として修正依頼を出したが、改訂されるかどうかは、しばらく待たないと判明しない。


私が年間契約している有料オンライン辞書サービスは、研究社のKODで、複数の辞書を同時に検索対象にできる。
オプションで、オックスフォード英英辞典などが追加できるので、利用者の希望する組み合わせを選ぶことが可能だ。

kod.kenkyusha.co.jp/service/

ところが、Europa については、残念な結果となり、研究社に改訂の要請をすることになってしまった。
理化学英和辞典では、「【天文】 エウロパ: 木星の第 2 衛星. 」と、当然ながら正しい説明。
しかし、英和大辞典では、「【天文】 ユーロパ《木星 (Jupiter) の第 2 衛星」と、英語の発音由来の表記。
さらに、リーダーズプラスでは、「【天】 エウロペ《木星の第 2 衛星」と、第三の表記が出現した。

新和英大辞典では、エウロパのみが採録されている。
エウロパ  【天】 〔木星の衛星〕 Europa.」

それに対して、三省堂と提携しているスーパー大辞林では、エウロパを検索するとユーロパに誘導される。
「エウロパ ⇒ ユーロパ」

そしてユーロパを見ると、「ユーロパ 1610年,ガリレイが発見した木星の四大衛星中で最小のもの。半径1565キロメートル。表面は氷の厚い層でおおわれている。エウロパ。」とあり、エウロパの方がマイナーな扱いになっている。

国立天文台や学術用語集、理科年表などではエウロパにしているので、ここは統一してほしいものだ。
そして専門家には、なぜ日本語表記では「エウロパ」とするのか、発音由来ではなく字訳を用いる理由など、誰でも確認できるように公開してほしいものだ。

これからも違和感を持った場合には、いろいろと調べてみよう。

追記(5月10日):
研究社から回答があり、時期は未定だが記載の統一を検討する予定とのことだ。

広辞苑第六版では、「エウロパ」が見出し語になっていた(「ユーロパ」はどこにも出ていない)。
木星の第2衛星。1610年ガリレイが第1(イオ)・第3(ガニメデ)・第4(カリスト)各衛星とともに発見。】

また一つ、新しい辞書を買う時にチェックする単語が増えた。

追記(5月16日):
国立天文台から回答が来た。
正式な和名がなく、学術用語としても登録されていないため、現時点では「エウロパ」以外の「ユーロパ」でも間違いではないとのこと。

ということで「エウロパ」は、ラテン語読みの慣用名ということになる。
英語由来の「ユーロパ」は、「ヨーロッパ」と聞き間違える可能性もあるので、「エウロパ」にしておこう。

それでも、同じ出版社が発売している英和辞典では、統一してほしいものだ。

ついでに、52番小惑星も Europa だし、ドイツ語などで Europa には欧州の意味もあるので、混乱は続くだろう。

(最終チェック・修正日 2012年05月16日)

テーマ : 英語
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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